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重要なのは“翻訳者”の能力!?「プロダクトマネージャーのコミュニケーション術」(全5記事)

うがった目で物事を見たほうが立体的な理解ができていい プロダクトマネージャーとして大切にしていること

プロダクトマネージャーとして大切にしていることは何なのか。Sansan株式会社の西場正浩氏と、スマートニュース株式会社の森山大朗氏に、PMおよびエンジニア組織を率いるVPoEの双方の立場からお聞きしました。全5回。前回の記事はこちら

いかに早く自分が飽きるポイントまで持っていくかというゲーム

藤井創氏(以下、藤井):そうしたら今度は、たいろーさんから西場さんになにかおうかがいしたいことあれば。

森山大朗氏(以下、森山):そうですね。西場さんは、役割が変わってきていると思うんです。ただ、人間はやはり飽きる動物だと思うので、マネジメントにせよプロダクト開発にせよ、「まだやらなきゃいけないのに」みたいな、飽きちゃ駄目なタイミングでも「そろそろこれは飽きたな」って思ってしまった時にどうされてきましたか? 

西場正浩氏(以下、西場):なかなか難しい質問ですね。立場もあるので答えづらい質問だなとは思いつつも。

僕は、飽きっぽいんですよ。例えば、僕は研究をやっていたんですけど、論文を書いていたんですけど、論文を書くのは好きじゃないんですよね。なぜなら論文を書く時はだいたい結果がもう出ているから(笑)。結果が出ている話をやるのがあんまり好きじゃなくて、飽きちゃうんですよね。

大きなネタだったら、その後の発展があるんですけど、小ネタだったら論文に発展がないんですよね。別にほかの研究者とディスカッションして新しい糸口が見つかるとかそういう話ではなくて。教授からも「ネタがあるのになんで書かないの?」と言われるんですけど、まぁ、飽きっぽいんですよ。

仕事の中でも、飽きたなというのは多々あるから、今、いいのかどうかわからないんですけど、VPoEも、これを公式のやつで話すと全部カットされるんですけど、今日はライブ配信なのであれなんですけど、VPoEも長くは続けないだろうなというのは最初からあって。

森山:おぉ。

西場:それが、飽きる時、飽きることを前提に動いているし、自分がどうせ飽きるから、たぶんたいろーさんみたいな、いかに早く自分が飽きるポイントまで持っていくかというゲームだと思います。

今この課題に対して自分が取り組んだら、だいたいこれぐらいまで行けそうな気がする。じゃあ、それをいかに早く達成するか。それを追うみたいなことをやると楽しいし、まぁ、ある程度したら、どうせ飽きるので(笑)。

なので、ちゃんと今は、最近は大人になったので自分がやることをやったタイミングでちゃんと飽きれるように、飽きたタイミングでやったと言えるように、そういうデザインをしていますね(笑)。

やはり、昔ほど無責任なことはできなくなったので、飽きること前提で最初から物事を考えています、というのが答えかなと。で、やれるようにしています。

森山:僕も生贄を用意するようになりましたよ。

(一同笑)

育てておいた後継者に全部ぶん投げて「俺は別のことやる!」みたいな感じで(笑)。でも、その人が出世したりするとうれしいので、Win-Winだったりするんですけどね。

西場:僕の場合は、自分が得意な領域をいかに早く終わらせるか。自分のコピーみたいな人や、自分と同じような人ではなくて、自分と違う価値を組織にもたらせる人やプロダクトにもたらせる人、チームにもたらせる人をいかに見つけるか。

だから、自分が「これをやってほしいな」と思うところをもう全部自分でささっと終わらせて、「自分だと、自分の特性上これ以上はちょっと無理かな」とか、「得意領域じゃないからスピード出ねぇな」と思った時に、ぜんぜん違う強みを持った人を入れるのが、組織の循環にはいいかなとは思っていて、そういう人をどんどんどんどん育てていきたいし、見つけていきたいなとは思いながら、飽きることの対策をしています。

森山:非常にクリアな回答、ありがとうございます。

自分1人で考えていても型を見極めるのは無理

藤井:ありがとうございます。今お二人の話を聞いていて、やはり、お互い似ている悩みがあるんだな(笑)というのを思って、非常に参考になりました。

時間が過ぎてしまったんですけど、一応ここからQ&Aで、質問があれば、ぜひチャットであったり、あとはTwitterでいただければと思います。

ちょっと、1つだけすでに質問があって、それをおうかがいしたいんですけど。

先ほど、たいろーさんのお話の中に、型というか、自分に合ったものを、合ったやり方でやればいいというのがあったと思うんですけど、そういうのを見極める方法がもしあればというのが質問で来ているんですけど、たいろーさん、どうでしょうか。

森山:見極める方法ですか?

藤井:自分の型を見極める方法があれば知りたいという質問が来ています。

森山:これは、自分1人で考えていても見極めるのは無理なんですよね。例えば僕は、2022年に本を出版して、Voicyという音声コンテンツも毎日配信しているんですけど、文字を書くほうがはるかにつらかったんですよ。

でも、人によっては、毎日Voicyで音声配信するとかアホ……アホじゃないですけど(笑)「気が狂ってんのか、この人」と思う人もいるじゃないですか。でも僕は、音声のほうがラクなんですよ。

これは個人的にすごい気づきで。でも、これって発信してみないと、実際に本を出してみないと、わからなくないですか? 

だから、なにかしらアウトプットして、なにが苦しくて、なにがラクかという答え合わせをして初めてわかることで。何もせずに悶々と考えても絶対わからない。自分探しという森の中に迷い込むだけだと思います。

藤井:なるほど。とりあえずやってみるというか、自分でいろいろやって見て、合っているものを探すということですね。

森山:はい。そうしないと手掛かりがないので。

自分たちのコアバリューは何か

藤井:次の質問ですが、これはたぶん西場さんにだと思うんですが、「ヒアリング後に、ヘルシーなものが食べたいと言われた時から、本質的に求められるところにたどり着くまでにどのような思考、どのような行動を取るんでしょうか?」という質問で来ています。

西場:ねぇ。某有名ハンバーガーショップはどうやったんでしょうね。本当にすごいなと思いましたね。

なんか、あれですね。今は、どうなんだろうな、自分だったらという正解はわからないですし、自分が今思っている話だと、やはり「自分たちのコアバリューは何なんだっけ?」というところはあるでしょうね。

やはり「某有名ハンバーガーショップはハンバーガーなのに、サラダを売り出してどうするの?」とは思うじゃないですか。素人だと思うけど本人たちがやってしまった過去の失敗があるわけで。

その中にいるとよくわからなくなるんだと思うんですけど、だからこそ、「自分たちが提供したい価値は何だっけ?」という話と、その価値の提供のHowの部分に関しては、他社比較をやっていくしかないのかなとは思いますね。

僕はけっこう凡人なので、比較とか、自分たちのコアの価値を明確にしていくプロセスを踏まないと、やはり自分たちが作るべきものややるべきことはわからないんですよね。

まぁ、感覚的に「これだ」と言えたり、そういうのを感性でわかっている人はいると思うんですけど、僕は手順踏むので。

やはり自分たちが「今売れているものって何だっけ?」と。「某有名ハンバーガーショップで一番ヘルシーなハンバーガーって売れるんだっけ? たぶん売れてないよね」という話かもしれないし。「お客さんってなにを買っていっているんだろう?」という話とかかもしれないし。

ひょっとしたら、テストマーケティングをやってみようとか。一部の店舗に置いてみようみたいなことをやって探索をしながら、その中でもしなにか出てきたら「自分たちが提供する価値ってどこにあるんだっけ?」と他社比較して、「どこに自分たちの優位性があるんだっけ?」と考えていくんだろうなとは思いますね。

そういうテストマーケみたいなことは、たぶんやっているんだろうなと思います。昔ちょっと話題になったのは、新製品のハンバーガーがあって、表参道かどこかで、新製品のハンバーガーを店名を隠して販売していた時期があって、実は弊社でした、みたいな話とかも。テストマーケなのかはわからないですけど。

本当はそうやって試行錯誤しているんだろうな、とは思うので、そういうテストをどうやって設計するかとかを続けていくしかないかなというイメージです。あまり回答になっていないですね。

まぁ、難しい。試行錯誤しましょう、テストをしましょう、テストマーケしましょうとか、自分たちの認められているプロダクト価値は何だったっけということをしっかり意識しましょう、そういうことでしかないのかなとは思います。

森山:でもたぶん、人間はどういう生き物なんだろうという理解、つまりメンタルモデルが、聞いたら正解を言う生き物だという前提で質問しちゃうと、ユーザーインタビューやユーザーリサーチはうまくいかないんですよね。だから、お客さん自身の意見と、お客さんに起きている事実を分けなきゃいけなくて。

過去に、知り合いの、けっこう稼いでいるアフィリエイターの人がおもしろいことを言っていたんですけど、その人はダイエット系キーワードでSEO成功して、けっこう集客できているらしくて。

ダイエットのキーワードでユーザーが来た時に、どんな広告を見せるとクリック率がいいかというと、スイーツだと言っていましたからね。

(一同笑)

ダイエットで集客しているんだから、ダイエット商材だと思うじゃないですか。でも、やはり人間には本音と建前があるんだと、そういうメンタルモデルを彼は持っていました。人間理解が深いな、複眼的に見ているなと感心した覚えがあります。みんなきれいごとばっかり言っているけど、裏ではみたいな。そういう、うがった目で物を見たほうが立体的な理解ができていいんじゃないかと思うことはありますね。

西場:確かにね。そういう意味だと、ペルソナというところで、メンタルモデルみたいな話があるんですけど、メンタルモデルも、言われてすんなり「あぁ、そうだね」とできる人とできない人がいると思っていて、僕はたぶんできなかったタイプなんです。

一番やりやすかったのが、メンタルモデルを考えずに、妻が、どうやったらダイエットするんだろうねとか、先ほどの某有名ハンバーガーショップも、妻がわざわざ行っているのに、サラダを買うか、みたいな話だと思うんですよね。いや、たぶん買わないなって。

たぶん妻は、めっちゃお店選びにこだわって、「せっかくここに来たんだから、ここのお店で一番おいしいものを食べたい」とか、「ジャンキーなものが食べたい」と言って、たまにハンバーガーを食べたいとかなるわけですよね。

すると、メンタルモデルというと難しいけど、そういう行動しねぇなみたいな話で。

森山:近くにいる人を観察したほうがよっぽどいいですよね。

西場:今の話を聞いて思いましたね。妻の行動だったらなんとなくイメージが湧くみたいな。

先ほど、妻にこの「YouTube」の動画のURLを送っちゃったから、後からなにか言われるかもしれない。

(一同笑)

藤井:ありがとうございます。質問の回答になりましたでしょうかね。

ほかにご質問はありますかね。なければここでいったん終わりにしたいと思います。西場さんとたいろーさん、今回のログミーTechのライブ配信にご参加いただいて本当にありがとうございました。

本当に、すごくおもしろい話というか、大変貴重な話が聞けたのかなというところで、私もプロダクトマネージャーではないにしろ、すごく勉強になった部分もあったので、参考になるなと思いながら聞いていました。ありがとうございました。

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