2024.11.29
“マニュアル作成が進まない問題”をAIで解決 管理者の負担も軽減できる、先進AIツール活用法
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松本勇気氏(以下、松本):エンジニアだからこそ、できたことがいっぱいあったという話があったと思いますが、特にその中でも、組織づくりやプロダクト開発に着目してお話をうかがいたいなと思って、このスライドを持ってきました。
「エンジニアバックボーン経営者ならではの、開発の仕方、組織づくり、開発者体験の向上施策とは?」と、ちょっと難しげなんですけど。要は、みなさんがエンジニア視点で、組織づくり全体で気にしていることがあって、それがひいては開発組織をどう作るかにつながってきていると思います。
みなさんは、ほかの経営者ともお会いすることが多いと思っているのですが、ほかの経営者と比較した時に、自分が組織運営上エンジニアであることで作れているプラスなど、パッと思いつくものはなにかありますか?
福田涼介氏(以下、福田):うちはほかの会社と違ってちょっと特殊なルールが1個あって、基本的にタスクに期限を振らないんですよ。
松本:おお~。
福田:会社の方向性としては、一番大切なことは速く進むことです。速く進みながら、80点を連発で出してくださいというルールの下、タスクに期限をつけないというのをやっています。
自分が開発する側だと、タスクがついていることによって手を抜くことがすごく多いんですよ。手を抜くというか、悪い意味で作り方的にちょっと楽しちゃうので、それをなくせば、事実上、機能追加の時のリファクタリングをきちんとやるし、技術的負債が残らないんじゃないかと思って、運用しています。実際にうちはびっくりするぐらい技術的負債が少ないんですよ。これは、すごくいいルールだったなと今振り返ると思います。大きなリファクタリングを2回ぐらいしかしたことがないので。
松本:期限を置かないってすごい話ですね。ビジネス上達成したい期限はやはり作るじゃないですか。
福田:はい。
松本:そこのマネジメントはどうしているんですか? 起業していると、やはりマイルストーンはどうしても置かなきゃだよね。
福田:はい。
松本:僕もわかるんですよ。開発組織の中で、締め切りではなくて、順序だけ決めて最速でやろうねという話し方だと思うんですけど。経営者としてそれをやる時に、一方で、お客さまとかいろいろな人への約束もある中で、どうマネージしているんですか?
福田:期日がないと言っても僕の中では期待しているスピード感はあって、よほどのことがない限りだいたいそれどおりに進むんですよ。
なので、期限は伝えていないものの、その期限プラス、バッファーを30パーセントぐらい取ってマーチャントには言っているんですよね。今のところそれで事故ったこともなく、向こうもちょっと遅れたぐらいでは何も言わないので、その開発体制を前提に置いた上で、すべてを回している感じです。
松本:これはおもしろい話で、逆に一般的には、期限を置いても遅れているじゃんみたいな話のほうが多い気がするんですよ。
社長、CEO、経営者、もしくはPdMのところで期限をある程度コミットして、それが達成できるように全体の生産性を上げるみたいな動き方をゆずしおさんがしているという理解です。
福田:そうですね。
松本:そこがエンジニアとしては、めちゃくちゃ働きやすいですよね。
福田:そうなんですよ。そこがけっこう良くて。
松本:いわゆる開発者体験の向上というところで、ただ単に押しつけられた期限ではなくて、お互い信頼し合って期限なしでやってみるという、1つおもしろいTipsだなと思いました。
福田:そうですね。
松本:山内さんはどうですか?
山内奏人氏(以下、山内):これは別にエンジニアに限った話じゃないんですが、うちの会社にはミッションやビジョンがないんですよね。これはなぜかというと、もともと僕は別にミッションやビジョンを達成するために作った会社ではないというのがあって。
なので、わりと技術力や、それこそデザインもそうですが、「こういうサービスっていいよね」とか「こういうプロダクトってイケてるよね」みたいなものを持った人たちが、自分たちの好きなものを作っていった結果、生きていけるのがベストだよねという考え方をしています。
ミッションやビジョンがない代わりに、態度や宣言でけっこう定義していますね。「触っていて楽しいものを作ろう」という宣言をしていて、それがけっこうプロダクトの成長に活きているなと感じています。
松本:会社全体でそういった、迷ったらこっちみたいな態度を決めているんですか?
山内:そうです。なので、どちらかというとトップダウンな言葉というよりは、ボトムアップというか。今いる地点からこういう方向に行きたいよねという言葉で定義付けるようにしています。
松本:全体であり方を整えておいて、それでコミュニケーションを効率化するみたいな。やはり開発者が、ほかのチームと議論する時の共通言語にもなるのでいいですよね。弊社でもけっこうそういったことを徹底してやっています。
プロダクト開発において、いろいろな天秤の上で悩んだら、この価値観に沿って意思決定しますよというものができている。その発想にはどうやって至ったんですか?
山内:ミッションを決めようという話になった時に、いや、ミッションは決めたくないよねって思ったんですよ(笑)。
松本:おもしろい(笑)。
山内:ある種、目的地を決めるのって、なかなかなことだと思っていて。それこそコンサル出身で、この領域にすごく知見があって、この領域を構造改革したいという経営者だったら、そういうのはたぶんパッと出てくると思うんですよ。
でも僕の会社は、本当に高校1年生が起業した会社なので、「自分の作りたいものを作りたいもん」ってなっちゃって。なので、ミッションを決めなかったという感じです。
松本:めっちゃいい話ですね。ミッションを決めないが、その代わり僕ららしさは決めようみたいな、そんなプロセスということですよね。
山内:そうですね。
松本:ちなみにこの話を聞いてみて、ゆずしおさんはどうですか? 一時期、ミッションに悩んでいるのに相談に乗ったことがあったので、ちょっと振ってみました。
福田:そうですね。ミッションはどっちかというと会社がどうしたいというよりは、僕がどうしたいかみたいなものを言語化しています。うちだと、「ソフトウェアで『出来ない』をなくす」というのが一応ミッションとしてあります。
とはいえ、これが会社に浸透しているかと言われればそんなことはなく。ただ、「何をしたいんですか?」と聞かれたら、「ソフトウェアを使ってできないことをできるようにした結果、お金が欲しいんですよね」という話を、僕はするようになったというのが1つあります。
同時に、ミッションを考えましょうとなった時にだいたい出るのが、「じゃあ、バリューも考えましょう」という話じゃないですか。バリューに関しては、ずっとペンディングして早3年ぐらい経っていますね。
松本:(笑)。でも、ソフトウェアを中心に世の中を変えようというのは軸に置いているんですね?
福田:まぁ、そうですね。だから、売るものはソフトウェアというのは徹底していますね。
山内:それでいうと、僕らはそれも決めていないので、5年後にハードウェアをやりたいよねという話を最終面接でもよくしていますね(笑)。
松本:でも、テクノロジーを中心に考えていくというのはやはりありますよね。
山内:そうですね。
松本:いきなりファンドをやろうとか、そういう話ではなくて、ハードウェアって出てくるのは。
福田:ファンドはファンドでちょっとおもしろいかもしれないですけどね(笑)。
松本:ファンドはファンドで今もやっていますが、楽しいです。
福田:そうですよね。
松本:なるほど。
松本:あっという間に終わりの時間がどんどん近づいてきているんですが、1個だけ、「みなさん、悩んだ経験はないのかな?」というのを聞いてみたいと思います。やはり技術的な意思決定と経営的な意思決定のトレードオフを取らなきゃいけない瞬間があると思うんですよ。
例えば、先ほどゆずしおさんが、2回大きなリファクタリングをしたと言っていましたが、リファクタリングって、1つ難しい意思決定だなと思っています。CTOは、社長と現場の間に挟まれて悩みがちですが、みなさんはすべてを自分で決めることができるじゃないですか。
例えば、技術的負債と経営の間の意思決定って、みなさんはどう考えて向き合っているんですか?
福田:それは……いい質問ですね(笑)。
(一同笑)
松本:けっこう決めるのが難しいポイントだと思っているんですよ。
福田:とはいえ、スタートアップである以上、一定の成長率ベースで売上を伸ばさないといけないというのはあって。でも、その意識をエンジニアに持たせているかというと、僕は持たせていないです。
うちだとGMV(流通総額)に対して課金しているので、GMVがこのぐらいになったらだいたいこのぐらい売上が出るというのがわかるわけじゃないですか。
エンジニアが思っているのは、でかいマーチャントを取るために必要な機能をきちんと作りきる、ぐらいなんですよ。だから、売上に対してはあまり意識がなくて。
で僕は逆に売上に対して意識があるので、今の人件費と諸々の諸経費でこれだけ売上を出すと黒字だよねというのを考えながらやるんですけど。仮にリファクタリングが3ヶ月かかるとしたら、売上的に、先に3ヶ月分の貯金をしますね。
松本:リファクタリングも含めて事業計画を作っちゃうイメージですか?
福田:そうですね。だから、その期間は開発が止まるのを考慮した上で伸ばしています。
松本:なるほど。それをもうトップで決めているからこそ堂々とできますみたいな。
福田:うん。
松本:ちなみに、山内さんはどうですか?
山内:僕は自分が技術者だという認識があまりないので、そういう意味では、けっこうそれぞれに任せちゃっています。各エンジニアもそうですし、それこそブランドも負債は溜まっていくと僕は思っているので。
松本:そうですね。
山内:ブランドやファイナンスなど、僕よりプロフェッショナルがいるというスタンスで組織を作ってきているので、基本的に僕のポジションは、すべての外野からああだこうだ言うという感じですね。
松本:ちなみにその視点でちょっと1点。逆に頼る先の、例えばCTOやテックリードに対して、山内さんから求めたいコミュニケーションってどんな感じのものなんですか?
山内:本当にピュアに現状を教えてほしいという感じかなと思いますね。僕の知らないことを知っていてほしいし、その中でこういう意思決定をしようとしていて、背景はこうというのをきちんと伝えてほしいという感じです。
それでいうと基本的には、僕が意思決定を全力で応援できるような座組を整えていきたいという動き方をしています。
松本:ともすると、「リファクタリングしなきゃ」が先に来て、コミュニケーションを取りにくるケースも多いので、「ピュアに伝える」というやり方もけっこう難しいなと思ったんですけど。ピュアの意味合いってけっこう難しくないですか(笑)?
山内:そうですね。わりと彼らのスキル頼りになってしまっている部分がすごくあるなと思っています。とはいえ、そういう採用や組織の作り方を、ある程度はできてきてはいるかなという感じはありますね。
松本:ある種、先ほどの行動様式など、みんなが大事にするものがそろっていて、それを前提にコミュニケーションしてくれているならこうだよね、という話が合意できていると。
山内:そうですね。
松本:やはり、迷ったらこうだよねという意思決定軸がそろっているというのは、ゆずしおさんと山内さんの話を聞いていても大事なんだろうなと思います。
これは、プロダクトを開発する最初にいつも決めることが多い内容だなと思っています。やはりここが、ものづくりをやってきた経営者の強みなんだろうなと感じました。ただの工程表じゃなくて、みんなのエモーションも乗せて1つのプロダクトとして作っていこうぜ、みたいなものが活きている気がしました。
松本:あっという間に時間が来てしまって……。
福田:早い。
松本:あと2分になってしまったので……早いですね。
最後に、みなさんから一言、エンジニアと経営者、どちらに向けてもいいんですが、メッセージがあれば一言ずついただいてもいいですか?
福田:いろいろなシチュエーションの方がこれを見ていると思うんですが、もし見ている方が大学生、高校生、20代の場合、プログラミングを学ぶコスト自体はすごく下がっていると思うので、自分が作りたいものを作ってみるのを1回やるといいんじゃないですかね、と思います。
松本:ありがとうございます。
松本:山内さん、お願いします。
山内:経営者をやったことのないエンジニアは、経営に携わってみたら、ある種、おもしろいものが見えてきたりするかもしれないし、逆に、エンジニアをやったことがない経営者は、エンジニアリングをやってみるとけっこうおもしろい意思決定ができるようになったりするのかなと思っているので、ぜひどっちもやりましょう、という感じですかね。
松本:はい、ありがとうございます。
福田:ありがとうございます。
松本:お二人と今日話して、ものづくりをできる人たちが会社づくりをすると、会社丸ごとプロダクト感があって、とても楽しそうだなというのが素直な感想です。
開発者体験が今回のカンファレンスのテーマにはなっていますが、良い開発者体験がある会社を作るためにも、経営者もエンジニアリングをちょっとかじってみようぜというのが、今日のみなさんからのインプリ(インプリケーション)だと思いました。
では、本日のセッションをこちらで以上とさせていただこうかなと思います。ゆずしおさん、山内さん、ありがとうございました。
福田:ありがとうございました。
山内:ありがとうございました。
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