登壇者の自己紹介

松本勇気氏(以下、松本):みなさん、こんにちは。私からは「注目の若手起業家が語る! エンジニアバックボーンならではの経営、開発とは?」ということで、今日お呼びしているお二方と一緒に、エンジニアリングができる起業家とはどういうことなんだろう、どういうメリットがあるんだろう、みたいなお話をさせていただけたらなと思っています。よろしくお願いします。

福田涼介氏(以下、福田):よろしくお願いします。

山内奏人氏(以下、山内):よろしくお願いします。

松本:さっそくですが、自己紹介を簡単にいたします。私は松本勇気と申します。今CTO協会では理事を、LayerXでは代表取締役CTOをしていまして、私自身もエンジニア出身の代表取締役というところで、お二方と似たようなかたちでエンジニア経営をしています。

私の話よりも、お二方のプロフィールをいろいろうかがいたいなと思っていますが、まずは福田さん、「ゆずしお」さんと呼びます。自己紹介を簡単にお願いしてもよろしいでしょうか?

福田:初めまして。ゆずしおこと福田涼介と申します。今、株式会社Stackの代表取締役として、「Shopify」の拡張アプリを提供する会社をやっています。

僕はエンジニアとして初めて働いた会社は、当時(創業)2年目のメルカリで、大学生の時に、2年ぐらいフルタイムでインターンをしていました。その後、DMMで1年ちょっとの間、新規事業の立ち上げをして、その後、起業するという流れで今に至っています。よろしくお願いします。

松本:よろしくお願いします。ちなみにゆずしおさんは、僕もDMM時代に一瞬かぶっていますね。

福田:はい、かぶっていますね。

松本:次は山内さん、お願いします。

山内:はい、山内奏人です。15歳の時に起業した会社が、今のWEDという会社です。当時は、パソコン少年でプログラミングや個人開発の走りみたいなことをずっとやっていて、その流れで起業をしました。2018年6月にレシート買取アプリ「ONE」というサービスを出して、それがわりときちんと伸びているフェーズです。よろしくお願いします。

松本:よろしくお願いします。

福田:よろしくお願いします。

松本:15歳というのはちょっと驚きですね。

福田:すごいですね。

松本:そのへんをちょっと今日は掘らせてください。

山内:ぜひぜひ。

プログラミング歴4年で、ノリで起業した福田涼介氏

松本:さっそくですが、最初は「起業とプログラミング、どっちが先? どんな経緯?」というタイトルを書いています。まずはディスカッションというよりは、ぜひお二人の経歴とか今に至るまでの流れをもう少し深掘りしたいなと思っています。みなさんがなぜ起業に至ったのかというところも含めて、いろいろうかがわせてください。

ということで、ゆずしおさんからうかがいたいなと思ったんですけども。そもそもエンジニアリングと起業と、これまでどう出会ってきたのか、どういう流れで自分の会社をやっているのかを、ちょっとうかがってみてもいいですか?

福田:そうですね。まず、「起業とプログラミング、どっちが先?」と言われたら、プログラミングが先です。僕は大学に入った18歳の時からプログラミングをずっとしていて、今9年目です。起業したのが2018年なので、実際にプログラミングを始めて4年ぐらい経ってから起業をしています。

プログラミングをやるきっかけですが、僕は家系が在日で、家系の中に起業している人たちが多いんですよ。だからといって起業したいわけではなかったのですが、(起業しても、起業しなくても)どっちでもいいなというのがあって。大学に入った時に、たまたま大学の寮に住んでいた先輩が、東大の起業家サークルTNKの新歓に連れていってくれたんですよ。

松本:それは何歳の時ですか?

福田:18歳ですね。だから本当に大学の入学式の日とかですね。当時、コロプラの副社長をされていた千葉さん(千葉功太郎氏)とお話をする機会がたまたまあったんですよ。僕は当時、IT企業に疎かったので千葉さんを存じ上げなかったんですが、「起業したいんですよね」という話を、ちょっと口から出した時に、千葉さんに「今から起業するんだったらプログラミングぐらいできたほうがいいんじゃない?」と言われて、「確かに」と思って、始めたのがすべてのきっかけです。

松本:ピュアすぎないですか?

福田:そうなんですよ。「確かに」と思って、その日に本屋で買ったのが、『絶対に挫折しない iPhoneアプリ開発「超」入門』です。その後、その筆者がメルカリに入社されて、一緒に働いていた時期がありました。というのが経緯ですね。

松本:じゃあ、プログラミングは最初はiOSから入って。

福田:そうですね。基本的にはモバイルアプリから入って、今はフロント全般を必要に応じてやりますという感じですね。

松本:じゃあ、順序的には、頭の中には起業しようかなというのが一応あって、最初の手段としてエンジニアリングから入ったという感じなんですか?

福田:そうですね。それで、ハマった感じですね。

松本:あっ、ハマったんですね(笑)。

福田:そうですね。なんだかんだ3年間は普通に企業で働いているので。

松本:そこから起業に至るまでは、どういう経緯だったんですか?

福田:「いいタイミングがあれば起業しようかな」ぐらいのマインドでずっと働いていました。それこそDMMでは事業部がなくなったので、どうするかというタイミングで「起業しようか」と思って、けっこうノリで起業しちゃったのが今の会社のきっかけですね。

松本:ノリで起業(笑)。

福田:けっこう両方ともピュアすぎる理由かもしれないですね。

松本:なるほど。ゆずしおさんは、けっこう昔から知っていますが、常にわりとピュアで真っ直ぐですよね。

福田:わりと僕は、その時にやりたいことをそのままやっていますね。

ECプラットフォーム「Shopify」の拡張機能を提供するに至った経緯

松本:今やっている事業も少し深掘りしたいなと思うんですが、実際に今やっている事業って、どういうきっかけでそのカテゴリーに行き着いて、何をやっているんですか?

福田:まず、今やっている話からすると、Shopifyという、オンラインストアを構築するカナダの会社のサービスがあるんですけど。コロナ禍になってからここ2年半ぐらい、Shopifyが日本ですごく伸びているんです。

いろいろなブランドが自分たちのオンラインストアを立ち上げていて、基本的にはShopifyはオンラインストアだけのイメージがあるんですが、POSとかも提供していて、コマース全般的に使えるんです。

それをブランド全体で導入している企業がすごく増えてきていて、それらの企業に対して、足りないパーツをソフトウェアとして、拡張機能を提供しています。

提供しているのは大きく今2つで、Shopifyのデータを使ってモバイルアプリをノーコードで作れるサービスと、Shopify上で運用しているブランドの会員プログラム。

例えば顧客に100円につき1ポイントを返したり、年間5万円以上買ったらゴールドランクになって送料が無料になったり、CRMに使えるような会員プログラムを簡単に構築できるソフトウェアを提供しています。

今、導入ブランドが150ぐらいあって、それこそアパレルの大手から充電器のAnkerとか、あとは飲食だと日清食品とかサントリーとか、けっこう大手のみなさまに使っていただいています。

もともとそのサービスは、僕自身がiOSエンジニアをしていたモバイルアプリを作る「Appify」から始まっています。起業したての時は、僕はどっちかというとC向けプロダクトが好きだったんですよ。僕も使うから(C向けプロダクトが)好きで、いろいろな検証をする上で、簡単にアプリを作るために、社内で構築セットみたいなものを自分たちで用意していたんですよ。

それを使って、2週間ぐらいで新しいアイデアをアプリにして出すというのをやっていたんですけど、ある時、ほかのスタートアップの子から「それが良くない?」「うちのやつも作ってほしい」みたいに言われて。

アプリが簡単に作れるというのも意外といいかもなと思っていたら、2019年ぐらいにノーコードブームが起きて、その波にうまく乗ってアプリを作らせようと思った時に、「抽象度がそろって同じフロントのアプリって何だろう?」「やはりECだよね」となって。最初に「BASE」のアプリ化をやって、その後、Shopifyのアプリ化に対応して、対応したところからコロナがスタートです。

松本:ある種、タイミング的には良かったですね。

福田:本当に全部運が良かったですね。

松本:起業家の実力に運は含まれていると思います。

福田:運は、けっこういい要素でした。

松本:その流れを聞くと、「納得」とはなるんですが、けっこう渋いところをやられているなという印象がありました。

福田:そうですね。それで言うとあまり目立たないですよね。

松本:ある種、toB向けのツールをひたすら開発・販売しているみたいな。

福田:そうですね。そうなりますね。

松本:「若手起業家としては、けっこう渋いところをやるな」みたいな感じはちょっとあります。

福田:確かに確かに。市場的に日本だけで見ると小さいかもしれないですが、けっこうなシェアを取れるので、そこを軸に大手が使ってくれているというところもあって。どれだけ大手内のソフトウェアを食っていけるかというのを今がんばっているところです。

松本:ありがとうございます。

11歳の時にプログラミングのコンテストで最優秀賞を受賞した、山内奏人氏

松本:すみません、そろそろ山内さんからしゃべらせろという雰囲気を感じているので(笑)。

山内:いやいや(笑)。

松本:同じ質問をまた、山内さんにぶつけたいんですけど。起業やプログラミングに出会ったきっかけ、起業に至るまでの流れをあらためてうかがってみていいですか?

山内:けっこう長くなっちゃうかもしれないんですけど。まず、7歳の時に父親からいらなくなったパソコンを譲り受けたんですが、それがわりと壊れていてネットにつながらなかったんですよね。

そのパソコンには、「Word」と「Excel」と「PowerPoint」とプログラミングぐらいしかなかったので、それでプログラミングを始めたというのが、プログラミングとの出会いです。

最初はC言語をやっていて、疲れてきちゃってRubyをやり始めたという感じ。それが10歳とか11歳ぐらいですね。11歳の時にRubyのプログラミングのコンテストに出て最年少で最優秀賞をいただいたのが、プロダクトを作っていこうと(思うきっかけに)自分の中でなったという感じです。

松本:ちなみに、どんなコンテストだったんですか?

山内:Rubyを使っておもしろいサービスを作って、それをプレゼンするみたいな。それがわりとプロダクトづくりを全部1人でやりましょうみたいな感じだったんですね。その時にプロダクトを作ることが、けっこう好きになりました。

個人開発みたいな感じで自分でサービスを作ったり、スタートアップを手伝ってみたりしていたのが、11歳から15歳ぐらいまでです。

「15歳の個人とは契約できません」と言われたので起業

山内:15歳の時に、VisaのプリペイドカードにビットコインをチャージするというサービスをRailsで作っていたんですね。それでVisaのカードのライセンスをカード会社から借りなきゃいけないとなった時に、「ちょっと15歳の個人とは契約できませんね」と言われちゃって。

(一同笑)

山内:それだったら会社化して、会社として契約したらいいんじゃないのかということで起業したのが、今の会社という感じですね。

松本:着眼点がすごいですね。プリペイドカードにビットコインをチャージ……。

山内:当時、海外ではウォレットにそういうプリペイドカードのペイメントがついているサービスが出てきて、日本にはまだなかったので、ちょっと作りたいなと思って、という感じですね。

松本:たぶん、ビットコインATMとかが出てきていたりした頃ですよね。

山内:そうですね。ちょうど3万円台ぐらいに入った時期だったかな。

松本:そこが起業のきっかけになっていろいろな事業を展開していった。

山内:そうです。

「作ったらおもしろいんじゃない?」のノリで、レシートの買取アプリ「ONE」を開発

松本:今は、ぜんぜん違う事業ですよね。やられているところとかも。事業内容とか……。

山内:そうですね、レシートの買取アプリというサービスをやっています。この事業に到達するまでの間に、もう1個プロダクトがあって。

Visaなどのカード決済を受け付けるのには、端末、ターミナルが必要なんです。カード決済を受け付ける端末が必要なんですけど、当時はまだナンバーレスがあまりなくて、カードの券面をOCRしたら普通に決済を回せるじゃんと思ったんですよ。そういうプロダクトを作って1年ぐらいやっていたんですけど、カード会社にすごく怒られました(笑)。

松本:(笑)。

山内:盗んだカードでお金が抜けちゃうという仕組上の課題があって、それで怒られてサービスは終了したんですけど。そのプロダクトの時に、なにかを読み取ってお金が手に入るというのは、インタラクションとしてすごくおもしろいなと思ったんですよね。

なので、これをなにかに活かしてサービスを作ったらいいんじゃないかということで、レシートを読み取ったらお金がもらえるというサービスに行き着いた感じですね。

福田:へぇ、おもしろいな。

松本:レシートを読み取ってお金に換えるという発想を、その歳でしていたわけですよね。

山内:そうですね。でも、どちらかというと、そういうアプリを作ったらバズるかなみたいな感じのテンションでした。ビジネスモデル的にどうこうというよりは、「作ったらおもしろいんじゃない?」みたいなノリで作った感じでした。

松本:そこから辻褄を合わせていって、今があるみたいな。

山内:そうですね。なんだかんだ今週(※登壇当時)でもう5年目だったりするので。

松本:事業軸も広がっていますよね。ただ買い取るだけじゃなくて、データを販売したり。

山内:そうですね。いろいろなことがようやく最近できるようになってきたかなと(思います)。

松本:お二人の話を聞いていると、とにかくプロダクトアウトで、作っておもしろかったらそれを大きくしていくみたいな、そんな流れを踏んできたんだなというのをすごく感じました。

やはり、そのあたりはプログラミングできるメリットですよね。みなさん作れるので、見せて楽しいものをプロダクト化するみたいな。

山内:そうですね。あとは、僕も数年はコードを書いていないですが、何が作れて何が作れなさそうかというのが、なんとなく肌感としてわかるのは、すごく良かったなと思っています。

(次回へつづく)