2024.10.10
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事業化を通じたさらなる価値のスパイラルアップ&デンソーのポジショニングと特徴 ~生産技術・現場力を武器に日本・世界の製造業を支える製造業プラットフォーマーへ~(全1記事)
提供:株式会社デンソー
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横瀨健心氏(以下、横瀨):私からは、「事業化を通じたさらなる価値のスパイラルアップ」をテーマにお話しします。
私は、FA事業推進部という部を担当しています。先ほどの2名と同じく、バックグラウンドは生産技術です。新製品の開発などを行いながら製造部では海外ラインの立ち上げなどを経験した後、北米では生産技術統括を担当しました。
その後、この後に紹介する、デンソーの自動化の手法を教材としてまとめ、タイ政府とのジョイントプロジェクトの立ち上げを経験しました。それをベースとした新事業をタイで発足し、今に至ります。
本日私からは、デンソーの中でアナログをいかにデジタルに変換していくのか、どういう壁を乗り越えていくのかについてお伝えしたいと思っています。
これらを実現するためには、形式化・標準化が非常に重要になりますが、それに並行して、みなさんに伝えられるように教材化を行い、人材育成を行います。このようなことを行いながら、デンソーの外にお届けできるようにしています。その1つのかたちが、この後に紹介するスクールや、ロボットをセル化したロボットセルです。
こういったものをお客さまへお届けすることで、人材育成や生産性向上に貢献しています。私たちデンソーも、このような活動をする中でどんどん学んでいく中で、価値をどんどんスパイラルアップさせていきます。
いくつか事例を紹介します。まず、「世界一の製品を世界一の生産ラインで」です。これは私たちが徹底的にこだわってきたことです。
デンソーの生産システムの歴史を少し振り返りますが、1950年代から単一の工程の合理化を行いながら、それをラインや工場全体に広げてきています。本日、2名が紹介したフレキシブルな生産システムは、実は1990年代から開発を進めてきていますが、先ほどのような技術が、進んできたことでやっと形になってきたのが今の状況です。
創業期の生産合理化は、1950年代、1960年代、欧米の技術を見て、真似しながら自作をしていって、そこからさまざまな工夫をしながらいかに安くいいラインを作るかに挑戦してきました。
(スライドを示して)創業時の生産技術部長でのちの副社長の青木(青木勝雄氏)が、「家庭料理の味がするローコストオートメーション」という言葉を残しています。また、「外から買えないものは自分たちで作って差別化していこう」とも言っています。このようなDNAがデンソーにはずっと引き継がれており、設備を内製化していく工機の部門や、ロボットを内製化して販売するデンソーウェーブという会社が(スライドを示して)このような活動につなげています。
先ほどのセッションで「コンカレントエンジニアリング」という言葉がありました。これは生産を準備していく段階の中で、あらかじめきちんと設計しておかないと、後になって問題が大きく出てしまうので、設計の前段階からしっかりとフロントローディングを行い、良い生産設備、製品の設計を同時に進めていくプロセスのことです。
これまでのこだわりを徹底的に形式化、標準化して、その上でそれらを人材育成に活用しています。やはり私たちのDNAの中には、「モノづくりは人づくり」が深く刻み込まれています。
このようなことはデンソーの外においても価値を提供できるのか? 私たちの培ってきたノウハウをいかにわかりやすくお伝えできるか? ということを考え、「Lean Automation」というコンセプトにたどり着きました。
(スライドを示して)こちらは、リーン生産、Lean Manufacturingの基本である、ムダを徹底的に排除した生産方式を自動化で追求していくアプローチのことを言っています。
図で説明します。生産活動の中にはあらゆるムダがあります。これをそのまま自動化してしまうと、ムダまで自動化してしまうことになり、大きなコストがかかってしまいます。
そうではなく、自動化する前に、設備のムダや作業のムダを減らしていきながら、正味の作業だけ自動化していく。これがLean Automationの基本です。
このような自動化の基本的な考えをお伝えする教育ができないか? ということで、タイで最初にスタートしました。これから、海外において人件費がどんどん上がっていく中、単純にロボットだけを入れていくと生産性は上がりません。なんとか日本のものづくりの良さを取り入れたいということで、タイ政府、日本政府の力を借りながら、教材としてまとめて、みんなが学べるような場となるラーニングファクトリーを作ってきました。
(スライドを示して)こちらがラーニングファクトリーの様子です。座学でいろいろな方法を学んだり、その後は自分で手を動かして設計したり、自分の手作業の動きをロボットに反映していったりしながら、最後は受講生の工場にみんなで行って、実際のラインをカイゼン、自動化していく。このように、かなり実践的なプログラムになっています。
こういったことを通じ、タイで持続的に使われていくような「ものづくりの基盤」を導入してきました。これまで、約1,600名が卒業しています。
非常にご好評をいただき、バンコクからスタートした活動が、北部や東部へ拡大していった結果、タイでは3ヶ所で行っています。
その後、日本へ逆輸入して、デンソーの中では、後ほど紹介するLean Automation スクールとして、また東京大学の研究でも一部使われています。
(スライドを示して)こちらが、デンソーで行っているLean Automation スクールです。ものづくりに関わる様々な業界や業種の方々にお越しいただいて、実際にLean Automationの手法を学んでもらい、みなさんで議論をしながらより良い自動化のアイデアを作っていきます。このように実践型のカリキュラムになっています。
そこではさまざまな声をいただきました。「私たちの工場では、もう少し物流を合理化したいんだよ」とか「IoTを使ってみたいんだけど、何から始めていいかがわからないよ」などの声にもお応えして、随時、カリキュラムを拡充している状況です。
先ほど東京大学のお話をしましたが、さらなる形式化、デジタル化ということで、「Digital Triplet(デジタルトリプレット)」という技術開発に取り組んでいます。こちらは、人の知識や活動をAIモデル化する活動です。
スライドの左下の写真は、スクールで使う教材用の設備で、先の2名から紹介があったものと同じく「サイバーフィジカルシステム(デジタルツイン)」を構築しています。これを活用してサイバー上(デジタルツイン上)でいろいろな問題を解決していきます。
熟練の作業者が、問題を解決する時のナレッジをモデル化して、どんなことを考えて問題を解決したのかをAIに覚え込ませていく(デジタルトリプレット)ことで、これから、ものづくりの熟練の方がどんどん卒業してしまう状況下でも、先輩たちが培ったさまざまなノウハウをAIに蓄積していくことで、次世代につないでいきたいとの思いで研究開発を進めています。
最後に、ファクトリーオートメーション事業ということで、先ほど松谷(松谷勲氏)、新井(新井裕明氏)から紹介をしたとおり、ロボットを商品として販売しています。
(スライドを示して)こちらのように、デジタル上で設計をして、それをリアルな世界へ落とし込んでいきます。リアルな世界は、先ほど2人の事例にあったように、変動が激しくなっていくので、さまざまな形にロボットやラインが変体することで、いろんな製品を作れるようになります。
一度作ったラインは、サイバー上に保管されて、簡単にコピーができます。海外であっても日本国内であっても、どんどん新しいラインを短時間で作っていけます。こういったコンセプトで商品展開しています。
先ほど紹介したようなロボットや生産設備を作っていくデンソーのグループ会社もあるので、こういったメンバーと力を合わせながら、お客さまの困りごとを解決していく活動を進めております。
デンソーは、ユーザーとして先進的な生産ラインを設計して使い込んでいくというところと、私たちのような、ロボットを供給するメーカーとしての役割と、それを最適にインテグレーションしていくシステムインテグレーターの3つが融合しているのが1つの特徴になると思います。こういった特徴を活かして、デンソー社内外の両方の生産性を上げていきながら、世界一のものづくりを実現していきたいという思いです。
私からのご報告は以上になりますが、この後、小宮さま(小宮昌人氏)から、こういったデンソーの活動は外から見るとどのように見えるのかという観点でお話しいただきたいと思います。
小宮さん、よろしくお願いします。
小宮昌人氏(以下、小宮):小宮から、「デンソーさんのポジショニングと特徴」について発表いたします。
最初に自己紹介です。政府系のベンチャーキャピタルであるJICベンチャーグロースインベストメンツという会社に所属しています。スタートアップとの連携やイノベーションの支援をしています。
それ以前は、製造業をはじめとした産業向けのコンサルティングを行っていて、製造業向けプラットフォームやデジタルツイン・メタバースなどの書籍を出しています。
グローバル、国内のさまざまな製造業の企業を見る中で、デンソーの位置付けや、世界で何が起こっているのかについて、今日はお話ししたいと思っています。
今までのプレゼンの中でも出てきたように、インダストリー4.0と呼ばれる製造業のデジタル変革の中でサイバーとフィジカルの連携はとても重要になってきています。
そうした中で、デジタル上での検討と、実際のオペレーションが密接にリンクしてきています。
そこで何が起こっているのか。今までは熟練の方が構想・設計をして現場で実践をしていく流れがプロセスとして明確に共有がしづらく、暗黙知や人の中に閉じたかたちになりがちでした。
これがデジタル上で残ることにより、誰もがわかるようになっていく。新人でもすぐにキャッチアップして、新しいアイデアを出したり、グローバルにコラボレーションができます。
さらには、先ほども外販のお話がありましたが、ノウハウを持っている企業が、外に対してソリューション展開していく。こうしたかたちで製造業のビジネスモデルが一気に変わってきているのが今の変化です。
こうした中で、グローバルで大きな構造変化が起こっています。今まではノウハウを持っている企業でないと、なかなか製造業は参入がしにくかったのですが、例えばベトナムの自動車メーカーである、VinFastという会社は、BMWから設計ライセンスを買ってきて、BMWのライン構築を行ったラインビルダーに同じラインを作ってもらう、もしくは、先端のデジタルツールを使ってキャッチアップすることで参入してきている状況です。
こうした構造変化が日本企業にとって何を意味するのかというと、2つあると思っています。
どんどん新規参入の企業が製造業に来る中で、こうした企業とどう戦っていくのか、日本企業は何を強みにしていくのか、というところを問われているのが1つ。
そしてもう1つが、こうした新規参入の企業は、ノウハウや今までの現場が蓄積してきた技術を求めているので、日本企業にとって自分たちのプロダクトだけではなく、こうしたものを売っていくという新しいビジネスモデルがこれから出てくるということ。
こうした際に、先ほど3名からご紹介いただいたように、デンソーは、創業時から1秒のロス、1個の不良品に徹底的にこだわって技術開発をしてきたということで、これらの技術を提供していくことによって、世界の製造業を支えていくプラットフォーマーになり得ると思っています。
ものづくりだけではなく、技術を提供していくことが日本企業のこれからの勝ち方になると考えていますが、こうした取り組みをリードしているのがデンソーであると捉えています。
具体的には、先ほども出ましたが、工場の中でユーザーとして徹底的に技術を使いこなしているということと、そこのノウハウを基に他社に対して伝えていく、他社の製造業を引き上げていくということを行っており、ものづくりの教育やものづくりのためのパッケージ、ソリューションを作って展開しています。
先ほども例に挙げていただいたタイのLASI(Lean Automation System)も、タイ政府全体の国家プロジェクトとして重要だと評価をされています。もちろんこの先端のロボット技術やデジタル技術は当然重要ですが、それよりも重要なのは、そこに裏打ちされている現場や技術の部分です。
これからデジタルの役割がどんどん広がっていく中で、ツールとしてのデジタルは重要ですが、より重要になるのが、そこに掛け算する技術、オペレーション、ノウハウです。
デンソーからは、Lean Automationというかたちでお話しいただきましたが、これらが、デンソーのものづくりの歴史の中で日々試行錯誤し体系化し培ってきたものです。
ここは、外から参入してきて簡単に蓄積できるものではありません。ここがしっかりあるからこそ製造業を支えていく、自分たちの競争力になりますし、世界の製造業を支えていくプラットフォーマーになり得ると思っています。
デンソーの特徴は、ここの強みを持っていることと、先ほどもスパイラルアップとお話ししましたが、自社として技術をとがらせていくこと、先端のものづくりを実現していくことと、それを外に提供していくことで世界の製造業を支えていく。
さらには、日本の国際競争力。日本の強みと言われてる製造業をしっかりと支えて、日本を引っ張っていく。製造業のインフラ、プラットフォームになっていく。
こうした姿は、世界の中でも類を見ないモデルです。今日は、多くの学生さんに参加していただいていると思いますが、デンソーは正解がない中で、新しい製造業のあり方を作り上げていく新しいチャレンジができるフィールドだと思います。ぜひ、積極的なチャレンジをしていただいて、日本や世界の製造業を変えていただけたらと思っています。
株式会社デンソー
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