「今日の夜の12時でアクセスできません。解雇です」と突然言われた

猪塚武氏(以下、猪塚):酒井さん、続いてよろしいでしょうか。酒井さんはレイオフだったのかっていう。

酒井潤氏(以下、酒井):ははは、なるほどなるほど(笑)。いや、実は私も。splunkにいた時に急に解雇されたんですよ。

解雇当日の話をすると、やはり急に大部長みたいな人から「とりあえず今日は一切働かなくていいです。HRから連絡が来るから、それだけは参加してくれ」と。

要はビデオのミーティングがあるから参加してくれっていうことで、これはもしかしたらレイオフかな? みたいな感じでした。参加したら、全チームメンバーがそこにいたんですよ。300人規模なんですが、全員がZoomにいました。

HRの方が話し始めて、「このZoomに参加している方は、今日の夜の12時でアクセスできません。解雇です」みたいな。そんな感じで、もうババンと話された感じです。

みんな唖然としちゃいました。解散にもいろいろあると思うんですよ。例えばMetaでいうと、先ほどタクさん(河根氏)のようにコンサル会社がコンサルしてなにかの指標で勝手に解雇するケースとか、スキルがない人を解雇するとか、いろいろ理由あると思うんですけども。

私のところはチームごと丸ごと解雇という感じだったので、解散にも理由があると思うんですよね。日本の方々は、解雇というとスキルがない人だけが解雇されるんじゃないかというイメージあると思いますが、アメリカはそうではなくて、サービスがうまくいかないとか、ちょっとこのサービスでは雇いすぎたよねみたいな感じで、スキルに関係なく解雇するのはけっこう日常茶飯事です。

なのでこっちの人は、解雇に慣れているわけではありませんが、一応そういう感じでしょうかね。私の会社ではそんな感じでした。

ただ、私はちょっと特別扱いしていただいて、その後HRの方から「ちょっと特別なのだけど、話がある」みたいな感じで話が来たんですよ。もうどうせ解雇だからいいけど、まぁ話そうか、みたいな感じでHRの人と話したら、「あなたはちょっとユニーク系です」という感じで、他のリテンションオファーみたいなものを貰ったんですよ。

リテンションオファーが何かというと、今日解雇じゃなくて半年間は(会社に)いられます。さらに、人によっても違うのですが、例えば日本円で2,000万円ぐらいボーナスが出ますよという話と、あとは社内で他のチームに移動してもいいですよみたいな話も受けたので、完全な解雇というよりもアフェクティットみたいな感じだったのが、私はラッキーだったんですよね。

私はある程度チームの中で評価されていたので、そういったかたちを取ってもらえました。他にも数人だけそういう方がいたので、そういった人たちがチームの後片付けをする感じです。

私も社内チームの求人を見ていたんですよ。それに応募して受かれば他のチームに行けるんですね。ただ、私は自己紹介で言っていなかったんですが、実は今ハワイでリモートで働いているんです。他のチームはリモートが駄目だったんですよ。

最近社長が変わって、いきなりレイオフだ、コストカットだ、利益上げろ、リモートも駄目だとなったんですよね。なので私もこの際チャンスかなと思って、完全に解雇になる前に転職しちゃいました。そういったかたちで解雇からの転職という感じになりました。

「ChatGPTが出てきたからエンジニアは要らなくなる」は、ちょっと言い過ぎ

猪塚:中屋敷くん、周りにそういう人はやはりいっぱいいますよね? そんなことはない?

中屋敷量貴氏(以下、中屋敷):いっぱいではないんですが、話は聞いています。みなさんたまにグループごとやチームごとレイオフになって、LinkedInやFacebookで投稿されることはあると思います。そんなに自分がPay Attentionしていないのもあって、あんまりこう。聞くことはあるんですけど。

猪塚:なるほど、わかりました。もしなにか関連事項であれば。なければスキップでいきます。

中屋敷:ただ、聞いた話だと、それこそ先ほどあったように、ちょうどレイオフのタイミングとChatGPTなどのジェネレーティブAIが盛り上がってきたタイミングが揃ったので、そのあたりで遊んでいる人がいたり、ちょうど起業するいいタイミングかもと言っている人の話はちょこちょこ聞きますね。

酒井:今、ChatGPTの話が出たんですけども、最近シリコンバレーで合計10万人以上が解雇されているじゃないですか。ちょっと忘れたんですが、Googleが1万人以上、Metaが何人以上とか、いろいろな企業で合わせて確か12万人ぐらいが解雇されているので、もうかなりの人が解雇されています。

「ChatGPTとかが出てきたからエンジニアが要らなくなって解雇したんでしょうか?」と聞いてくる知り合いがすっごく多いんですよね(笑)。

でも今回の解雇は、「ChatGPTやAIが来たからエンジニアが要らなくなった」とはちょっとまた別の話じゃないですか。バズワードやChatGPTが出たから、それが理由でエンジニアが要らなくなったと思っている日本の方がすっごく多いのは、ちょっとびっくりしましたね。

私の個人的な考えとしては、イーロン・マスクさんがTwitterでバァンと解雇したので、イーロン・マスクが解雇したからうちも解雇しても大丈夫だろう。要は、今だったら悪い評判はつかないだろう、みたいな感じで、チャンスだからとりあえず解雇する感じだと思うんですよ。

猪塚:そうですか?

酒井:それは私のイメージですね。GoogleにしろMetaにしろ、もちろん企業の利益が上がっていればいいんですが、経営者視点で、ある部署で人を雇い過ぎちゃったとか、このサービスを始めちゃったけどやめたいんだよねというのもあると思うんですよね。

でもそれで、他の人が解雇していない時に解雇しちゃうと、自分の会社の評判が悪くなるので、あまりよろしくないですよね。でも今はいろいろな企業が解雇しているので、今だったらOKだから、今のうちに解雇しておこうというところはあると思います。

もちろんFRBの金利が上がったとかコロナの影響とか、そういった景気も影響すると思いますが、チャンスの時に解雇するという系のほうが大きいかなと思います。なので、ChatGPTが出てきたからエンジニアは要らなくなる説は、ちょっと言い過ぎなのかなというところはあるかもしれないですね。

河根拓文氏(以下、河根):関連はゼロだと思いますね。ぜんぜん関係ないです。

シリコンバレーをまだ目指していいのか?

猪塚:解雇は関連ゼロだとして、ここから戻すところはChatGPTの影響がありますか。本来だと100戻るところが50とか。

河根:どうかなぁ。

猪塚:ない?

酒井:そこを論じるのはまだ早いと思います。

河根:うん。

酒井:そもそもエンジニアが解雇される前に、他の業種のほうが先に解雇される気がしますよね。やはり企業にしろ株にしろ、普通はフラットというか緩やかに伸びるはずで、企業も株もやはり上がり過ぎるとどこかでバブルが起きて、弾けると思うんですよ。

私が以前働いていた会社は、日本円で言ったら給料が4、5,000万円だったのですが、これだけしか働かないのに5,000万円ぐらい貰っていいのかみたいな感じだったので、ちょっと給料バブルだったんですよね。それはなぜかというと、やはりシリコンバレーの企業が競争で社員の取り合いをする中でどんどんどんどん給料だけが上がっちゃったからで、それを弾けさせたほうが会社としてはいいと思います。

なのでこの機会にバンと解雇しちゃえば、他の社員にもちょっとボーナスあげるのを控えたり、今解雇しているんだからお前らの給料をちょっと下げるぞみたいなことも言いやすいので、バンと今解雇するのは経営者の戦略的にはいいのかなと思いますけども(笑)。ChatGPTとはあまり関係ないのかなとは思いますね。

猪塚:シリコンバレーはまだこれからもぜんぜん元気ってことですね。日本の人はシリコンバレーを目指していいぞってことでよろしいですか? あと、シリコンバレーバンクが潰れた影響もないですか。

酒井:もしかしたら、シリコンバレー(バンク)が投資したところもあるかもしれませんが、さほどじゃないですかね。シリコンバレーバンクも確か買収されたんでしたっけ。

猪塚:はい。

酒井:ただそれもバブルの影響というか、景気にもよるんじゃないでしょうかね。シリコンバレーバンクがちょっとこう倒産しかけたっていうのは。

猪塚:なるほど。

河根:原因・結果は逆だし、銀行がどういうふうに貸付けしたとか、特別事情もありますよね。あとはインフレ抑制で金利が急速に上がったことが原因。特有事情と金利の上昇なので、あれがトリガーではないですね。逆ですね。

酒井:確かに確かに。

河根:レイオフでけっこうエンジニア、エンジニアと言われますが、例えばMetaでも、一番食らったのは当然ながらエンジニアではなくて、リクルーティングをしている人とか、そもそも人を雇わなくなったから採用担当は要らないじゃんと、採用担当の人が一番大変だったんですよね。

Metaみたいな企業だとエンジニアの人数が多いので、人数だけ見ると多く見えるかもしれませんが、割合で言うと実は他の部署のほうが高かったりしているので、レイオフ、シリコンバレー、エンジニアが大変というわけでもないです。あと、先ほど十何万人がレイオフされたという話もありましたが、その人たちの多くはビジネス系というか、企画系というか、人事とか、そういう人も含まれているということは認識しておいたほうがいいですね。

彼らがすごい技術を使って起業できるかというとできないので、そういう人もいっぱい市場に出てきたということは認識しておいたほうがいいかもしれないですね。

猪塚:なるほど。じゃあ結論としては、シリコンバレーをまだ目指していいっていうことでよろしいですか。

酒井:はい。

猪塚:酒井さんがうなずいているんで。

酒井:いいと思います(笑)。

(次回へつづく)