GitHub Copilot Chatを触ることでWindows Copilotの後の世界を体感できる

菊地洋氏:私は菊地と申します。ワークスアプリケーションズという、日本企業向けに会計ソフトなんかを作っている会社で働いています。勤続十数年で、実は基本的には同じ製品をずっと開発・保守しているキャリアなので、みなさんとは違ったキャリアという点でちょっと違った見方の話ができればおもしろいのかなと思っています。

今日のスライドは「Speaker Deck」に上げているので、リンクなどは(スライドを示して)こちらからクリックしてもらえればと思います。「GitHub Copilot Chatを触ることでWindows Copilotの後の世界を体感できる」というテーマでお話しします。

先ほどみなさんからありましたとおり、私も「Microsoft Build」に現地で参加させていただいて非常に刺激を受けました。

登壇の話をいただいた時に、ぜひ「GitHub Copilot」あるいは「Copilot Chat」について話したいと思って、準備してきたのですが、実はこのGitHub Copilot Chatって、「Microsoft Build」の新情報というわけではないんですね。Buildより前からありました。

それにも関わらず、なぜこの話をぜひしたいのかというと、私がこのGitHub Copilotを触って、Windows Copilotが実はこういうことなんじゃないかというのをかなりつかめた気がするので、私の考えをシェアさせていただきたいと思いました。

GitHub Copilot活用に必要な3つのS

まずはGitHub Copilotのおさらいというところで、すでに触られている方も多いと思いますが、キャッチフレーズとしては「あなたのAIペアプログラマーです」というところで、基本的にはコード補完みたいなものです。ゴーストテキストと言うらしいですが、例えば、JavaScriptで関数名を書くと中身をこうやって書いてくれます。すごいです。

BuildではいくつかGitHub Copilotのセッションがあって、これが非常にまとまっていておもしろかったので、その結論だけちょっと持ってきました。彼らは、「Copilotは非常に強力ですが、限界はあるのでうまく使ってください」「うまく使うためのベストプラクティスとして、まず言えるのはこの3つのSです」と言っていました。

(3つのSは、)Single、Specific、Shortです。まずSingleは、一度に1つのことだけをやらせる。Specificは、なるべく要求を明確にしてコンピューターにわかるように指示をする。Shortは、あまり長いことを書かせないでアウトプットが短くなるようにすることを意識して使う。パターンが得意なので、正規表現、CRON、CSSなどが非常に得意です。

それをやって生成した時に「信頼はしてくれてもいいけれど、検証するのはあなたの仕事ですよ」ということで、いろいろなところで言われていたのが「これはCopilotであって、オートパイロットではないので操縦席に座るのはあなたですよ」ということで、検証はしなさいと(言っていました)。一番印象に残ったのは、「Context is everything」ということで、ちょっと一言で言うのが難しいので私の解釈を(スライドを示して)ここに書いています。

GitHub Copilotができること

GitHub Copilotは、今書いているソースコード、コメント、関数名、ファイル名、エディタ内で同時に開いているファイルなどの情報を基に結果を生成しています。なので、逆にこういうことを意識しながらCopilotにうまく情報を与えてあげることで良い結果が得られます。それも一発で決めようとするのではなくて、何度も繰り返しながらコメントや関数名を微修正していく。

そういうことを繰り返していくことで、それ自体もまたコンテキストになるので、最終的に良い結果が得られやすいという、非常におもしろいセッションでした。

それで、Copilot Chatですね。これはCopilotとはまた別のやつになっていて、今はプレビュー版みたいな感じでウェイトリスト制です。Buildに現地参加した人はこのウェイトリストを飛ばして使えるようになるという特典があって、私も恩恵をいただいてさっそく触ってみましたが、これは非常にすばらしくて感動しました。ぜひこの場でシェアさせていただきたいと思ったのですが、UIとしてはこうやってサイドバーが出てきて、そこで対話型のインターフェイスで会話ができます。

それで質問ができます。コマンドがいくつか用意されていて、コードのブロックを選択して/explainとやると、そのコードの説明を書いてくれたり、/testsとやると今書いているコードのテストを書いてくれたり、あるいは/fixとやるとエラーを直してくれたり。まぁ、すごいです。

GitHub Copilot Chatは“体験”がすごい

なにがすごいかというと、私としてはやはり体験がすごいなと思っています。まずサイドバーにこいつがいて、かなりのことをやってくれるので、VSCode(Visual Studio Code)の中でずっと作業というかコーディングというか、検証とかが完結できるのでVSCodeから出ていかなくてよくなるんですよね。先ほどイテレーティングみたいなのがありましたが、レスポンスがすごく速くて快適なので、何度も繰り返すということがぜんぜん苦になりません。

フロー状態が中断されないという体験がすばらしいなと思いました。ChatGPTでも同じようにコードについて質問したり、コードを書いてもらったりできて、実際に生成されるコードを比較すると今の段階ではChatGPTのほうが良いみたいですが、体験としてはCopilot Chatのほうがすばらしいと思っています。

ペアプログラマーと一緒に仕事をするぐらいの感覚でフロー状態を継続できるという体験ができたので、ぜひみなさんにもこれを体験していただきたいと思っています。

対話型インターフェイス「Windows Copilot」

話は変わりまして、Windows Copilotですね。これはBuildの新情報ということで、みなさんニュースサイトなどでご覧になったかもしれませんが、これからはWindowsのサイドバーにAIアシスタントが統合されて、会話型のインターフェイスでやってくれますというのが大々的に発表されました。

YouTubeあるいはセッションの動画に90秒のかっこいい動画があるのでぜひみなさんに見ていただきたいと思っています。けっこう凝縮された動画で、いろいろなことをやっています。何をやっているのか書き出してきたので、上から読んでいきたいと思います。

対話型インターフェイスなので自然言語で会話するのですが、まずはこれですね。「集中したいんだけど」みたいなことを話しかけると「じゃあ……」とCopilotが「通知をオフにしましょうか?」「ダークテーマにしましょうか?」とサジェストしてくれて、「Yes」とボタンを押すと実際に通知をオフにしてくれたり、ダークテーマにしてくれたりという操作までしてくれます。

次にPDFファイルをペッと投げつけます。そうすると「これをどうしてほしいんですか?」といくつか選択肢を出してくれるので「サマライズしてください」とやると要約してくれます。「仕事用の音楽ってどんなのがあるの?」と話しかけると「こういうおすすめのプレイリストがあります」と言うので、「じゃあこのChill Vibesというものを頼むよ」と言うとSpotifyが立ち上がってこれをかけてくれる。

あるいは「仕事でロゴ画像を作るんだよね」と言うと、Adobe Expressを立ち上げてくれて、ロゴ作成用のテンプレートを開いてくれます。ロゴができたら「これをどうしたらいいですか?」と聞いてくるので、「デザインチームに送ってくれ」と話しかけるとTeamsで送ってくれるという非常にすばらしい、かっこいい動画があって、現地は拍手喝采というか私も感動して見ていました。

Windows Copilotは本当にすごいのか?

ですが、みなさんこれを聞いてどう思われましたか? というところで、冷静に一個一個を見てみると「何がすごいんだろう」というのがちょっと難しいなというのが正直あって。

例えば、ダークテーマやSpotifyは別に自分でも起動できますよね。少し前にMicrosoft365 Copilotのデモがありましたが、あのデモはこれとは違ってやっていること自体がそもそもすごかったと思うんですよ。

例えばOutlookのメールのスレッドを読んで、その文脈を踏まえて、メールの返信を自動で書いてくれるとか、AIがあったらこうなるのかみたいな感動があって、やっていること自体がすごかったと思います。

それに比べると、先ほどの90秒の動画はそこまですごくないなというところもあって、それに対して彼らが言っていたのは「このWindows Copilotによって起こることは、まずすべてのユーザーがパワーユーザーになることです」でした。あとは「フローに常に留まれるようになります」と言っていました。

なので、体験なんですよね。先ほど大嶋さん(大嶋悠司氏)からも「CopilotはExperienceの部分だ」という話があったと思いますが、別に集中モードにできるから便利とかではなくて、Centralized AI Assistance、1ヶ所で集中管理されているAIアシスタントなのでフローが途切れないという体験がすごいと言っています。

じゃあ「体験したいですね」となるのですが、6月にプレビューが出てくる予定なので、まだ体験ができないわけです。なので、GitHub Copilot ChatでWindows Copilotと類似の体験ができるという話を今日はさせていただきたいと思います。

GitHub CopilotとCopilot Chatは確かにすごい

またGitHubの話ですが、確かにこいつはすごくて、関数名を書くだけで中身を書いてくれたり、質問もできて/testsでテストを書いてくれたりします。質問も、今私が書いているソースコードや、あるいは過去にした質問などのコンテキストを踏まえて回答をしてくれるので、当初はコード補完のツールぐらいに思っていましたが、私の想像を超えたすばらしいアウトプットが出てきました。

もう1つ、チャットウィンドウが出てくるので最初は会話するのかなと思っていたのですが、別に会話なんかしなくてもよくて。ソースコードを開いて/testsと打つのは、会話じゃないですよね。世の中でChatGPTが盛り上がっていた時に、よく「AIにうまく指示する能力がこれから必要になる」とか「部下にきちんと指示できないやつはAIを使えない」とか言っている人がけっこういました。

ですが私は、コンテキストを踏まえて動いてくれるものを触って、ようやくこのAIアシスタントにどのような可能性があるのかがある程度わかった気がしています。なので、ぜひみなさんにもこれを体験していただきたいと思っています。

まとめ

今回はTech Meetupということで、ここにいらっしゃるみなさんは開発者が多いと思いますが、非常にラッキーだと思います。期待の新機能であるWindows Copilotはすばらしいですが、まだ触れません。なので、どういうものになってくるかはまだわかりませんが、このCopilot Chatの体験によってWindows Copilotでどのような体験が可能になるかを一足先に体験できると思うんですよね。

それは誰もがパワーユーザーになれることであるとか、フローに留まれることであるとか、コンテキストを読んで動いてくれるから、会話をしなくてもよく動いてくれるところであるとか。

繰り返しになりますが、Windows Copilotの動画ではSpotifyやJiraのチケットを切ってくれるなど、大したことはしていませんでした。ですが、Windowsの中にはコンテキストになりうる情報がファイル、メール、スケジュールなど大量にあるので、いずれは/testsと書いたらテストを書いてくれるというようなすばらしいものが今後出てくると思っています。あるいは、そういうすばらしいプラグインを作ることがここにいるみなさんの責務になってくると思うんですよ。

なので、開発者のみなさんはぜひAIアシスタントの未来を一足先に体験ベースで想像していただきたいと思っています。どういうプラグインを作ってCopilotを拡張すれば世の中にインパクトを与えていけるのかを、世の中に先んじて考えられる非常にラッキーな立場にいると思うので、ぜひ体験していただきたいと思っています。

というところでまとめです。GitHub Copilot Chatを触っていただくとWindows Copilotが来た後の世界を体感できるようになるということで発表をしました。ご清聴ありがとうございました。