まず自分がAIのユーザーになってみることが大事

西勝清氏(以下、西):次のテーマにいきますね。ラストワンマイルで、AIは道具であって問題解決をしていくというところで、ではプロダクトマネージャーはどこから・何から、どう始めればいいのかというところです。小笠原さんはどうですか? どこから始めたらいいでしょうか? フレームワークとかあるんですかね?

小笠原智氏(以下、小笠原):フレームワークはちょっとまだわからないですが、カスタマイズ性やパーソナライズにチューニングできるところも魅力かなと思っています。そこが将来的なユニバーサルデザインにつながるのかなとは思っていますね。年齢、言語、流入から来たユーザーに対してどれぐらい気遣いができるかという部分で、もしかしたらAIは使えるんじゃないかなという期待をしています。

西:なるほど。Jonasも同じようなことを言っていた記憶があります。真さんはどうですか? PMとしてどこから始めたらいいですか?

佐々木真氏(以下、佐々木):うーん。非常に難しいんです。

(一同笑)

佐々木:何だろうな。これは「PMは開発のことをどれぐらい知ってるべきか問題」とけっこう似た議論だと思っています。僕は、「結局AIというものに何ができるか」ということを把握しておくのは大事だなと思っているんですね。要は、機械学習やマシンラーニングの理屈までは知らなくてもよいと思っているんです。

僕も理屈を理解しきっているわけではありませんが、少なくとも自分がユーザーになることから始めて、何ができるのかをやっていくとけっこう特徴がわかるんですよ。「AI」と一言で言っても実は主語が広くて、実はAIはいろいろあるんですよね。

まずはそういうところから始めていって、自分がプロダクトを使って、使うべきAIは何なのだろうか、その強み・弱みは何だろうか、とやっていくと、課題解決のために必要なものがわかってくるかなと思ったりもしています。

僕はこの議論がスマホの時とすごく似ているなと思っているんですよ。スマホが台頭してきた時、まったく同じ議論がされているんですよね。

歴史は繰り返すと思っていて、スマホが出た時も「学校にスマホを持ち込んできた」とか「大学でスマホを使うべきか」という議論が出たのですが、今まったく同じ議論がChatGPTで起きています。僕は必ずそうなるし、必ずあって当たり前になるし、この流れは絶対に戻らないと思っています。なので触る一択だし、やはりPMにとっての一番は自分がユーザーになることから始めることです。

今は出始めなので、まだ自分が使い倒すだけで競争優位性が作れる時代だと思います。まだコモディティにはなりきっていないと思うので、そこがやはり一番大事だし、そこから始めるのが大事だなと思いますね。

西:ありがとうございます。

木村俊也氏(以下、木村):おっしゃるとおりで、インタラクティブにAIを使うことで、AIを作れない人でも課題解決ができるようになったのは、革新的なことだと思っているんですよね。今まででは本当にできなかったことで、ちょっとデモを作ろうとか、ちょっと試そうというだけでも、ものすごく時間がかかったんですね。なので、今のこの革新的な状況は本当にラッキーなので、今は使い倒して、どんなことができるか、逆にどんな課題があるのかをふだんの生活に取り込むことが、みなさんにとってすごく得なんじゃないかなと思っています。

西:ありがとうございます。小笠原さんも先ほど「使い込んでる」とおっしゃっていましたね。

小笠原:けっこう使っています。Notion AIも毎日のように使っています。

西:ありがとうございます(笑)。

(一同笑)

AIが入っていないエディタなんて使う気にならない

西:では次のテーマに移る前に、スタートアップなNotionとして気になる点があって、それはラストワンマイルの議論です。基盤部分がコモディティ化していく中で、大企業やスタートアップの文脈でいうと、どういう理解になりますか? スタートアップにもチャンスがあると考えてもいいんですかね? じゃあ真さんに聞こうかな?

佐々木:そのチャンスというのは、どういうチャンスですかね? 要は、自分の事業を伸ばすチャンスなのか、自分たちがAIを作るチャンスなのかにもよるかなと思っているのですが……それとも全部をひっくるめてのチャンスという意味ですかね?

西:実装してビジネスをより成功させるチャンスという意味でおうかがいしました。

佐々木:ビジネス用途でAIを使う時の論点で、再学習があります。再学習が何かというと、そのデータ自体がAIの学習に使われるかどうかの話で、要は法人利用の場合、「機密が漏れちゃうんじゃないか」というのを一番気にするんですよね。

「DeepL」の時も同じ議論があって、「社内の機密文書を翻訳にかけんな!」というのがあったのですが、そういう観点が今は少しずつクリアされてきているので、そういうのを使い倒すと企業にとってもすごくチャンスがあると思います。たぶん3年ぐらいで「ChatGPTが入ってないの? プププッ」って笑われるようになると思いますね。

だから僕は、Notion AIはさすがだなと思っているんですよ。はっきり言ってこんなに早いと思っていなかったんですよ。良くて今年の終わりぐらいだろうなと思っていたら、メチャクチャ速かったので「え!? もうできるの!? さすがだな」と思いました。だからもうそうなると思いますし、先ほども言いましたが、はっきり言ってAIが入っていないエディタなんて使う気にならないですよ。

そうなるし、それが広まるのは劇的に速いと思いますね。スマホの時以上に速いと思います。だからチャンスというか、チャンスとリスクが一緒で、適用しないとアナログ扱い、怖いという感じですね。本当にそういった意味ではチャンスだし、そういった意味では変わらないと大ピンチだと思いますね。だからPMとしてはそこは気をつけていますね。

西:ありがとうございます。

PMはAIを使い倒すに限る

西:たくさん質問をいただいています。後ほど質問に答える時間も取るので、みなさんドシドシお寄せいただければと思います。あらかじめ聞きたいなと思っていた質問が複数あるのですが、今は8分の1ぐらいで止まっているので、ここからはちょっとスピードアップしたいと思います。

2番目です。「PMやテックリードはAIをどこからキャッチアップすべきか」。これは先ほどちょっとお話が出ましたね。「まずは使い切るべし」みたいなお話があったんですが、追加で「どこから始めたらいいか」になにかご意見がある方はいますか?

一同:うーん。

佐々木:本当に木村さんほど専門的じゃなくても、少なくとも裏側の技術が何なのかを知っておいたほうがいいかなと思っています。PMが自分たちのソフトウェアが何で動いているのかを知らないのは危ないのと、たぶん似ていると思っているんですよね。

要は、Railsが書けなくてもRailsが何かを知らないといけない。Railsはフレームワークやライブラリがいっぱいあって作りやすい言語ですが、その分カスタマイズ性が低いという特徴があることを知っておくことと、フロントエンドとバックエンドでどういう技術があるかを知っておくことと、同じかなと思っています。使いながらそういうことを一個一個潰して勉強していくという意味だと、結局ソフトウェアやSaaSが台頭してきた時と、やはり構造としては似ているなと思っています。

なので使い倒して、その裏側にあるこれって何だっけ? という意味で、ディープラーニングと他の違いって何だっけ? とか、強いAIと弱いAIって何だっけ? とか、汎用AIとの違いがわかると、すごく実践的なんじゃないかなと思います。はっきり言いますけど、ほとんどの人がそこまで理解しないでAIを使っているので、そこまでわかったら、それだけでもかなり強いと思います。そのへんでお二人はどうですか?

木村:言いたいことを言われてしまったんですけども(笑)。

佐々木:すみません(笑)。

木村:使い倒すに限ると僕は思っています。AIには得意分野と不得意分野があって、これはけっこう話題になっているのですが、知らないことも知っているかのように答えてしまうことがあるんですね。

ChatGPTには、裏側に大規模言語モデルが存在しています。これは非常に難しく勉強するのも大変なので、興味を持ったら勉強をしてほしいです。結局大規模言語モデルが何をしているかというと、実は質問に対してこういう言葉を並べたらきっと合っているだろうなということをなんとなく計算しているだけなんです。

だから人間の思考回路と似ているようで違うんですね。例えば「おいしいハンバーグのお店を教えてください」と言ったら、「こう答えたらいいだろうな」というのをなんとなく想像して確率的に出しているだけなんですね。だからChatGPTはハンバーグのお店を探しているわけじゃないんです。

例えば、タリーズというコーヒーのお店があると思いますが、「タリーズのおすすめのハンバーグを教えてください」と聞いてしまうと、確率的にこう答えたらいいだろうと、(メニューにハンバーグが)ないのに答えられてしまうんですね。理論を勉強するのはすごく難しいので、使い倒していく上で得意・不得意があるんだということを、やはりまずは肌感で勉強してもらうのが僕は大事かなと思っています。

佐々木:そうですね。これは「大規模言語モデル」ですからね。あくまで言語モデルなんですよ。まったくそのとおりだなと思って、なんとなく人を喜ばすのが得意なんですよね(笑)。けっこうそれっぽいことを言って「会話通じるじゃん」みたいな(笑)。

木村:大規模言語モデルについては、ちょっと難しいですね。一番簡単な話でいうと、例えば「私は木村です」という時の「私」の次にくる言葉は「は」が圧倒的に確率が高いんですよ。そういったかたちで言葉と言葉のつながりが大量に学習させられているネットワークなんですよ。基本的にはそれをつなげているだけなんです。これが大規模言語モデルですね。

西:専門的じゃないんだけど「ここを見ておくといいよ」とか、そういうのはないですか?

小笠原:僕は逆にお二人のようにエンジニア出身じゃないので、裏側のことがわかりませんが、使い倒さないと怖いなと思っているところが、AIを自分でコントロールできなかったらどうしようというところで、それが一番大きいです。AIのアウトプットを監視・チューニングができないと思っていて、どこまで制限できるのかというところがリスクヘッジと合わせて考えられるなと思っています。

プロダクトを作っているPdMとしてもどこまで責務として追えるのかがわからないのが一番怖いです。そういう意味では使い倒しつつ、AIのツールとしてきちんとコントロールの配下に置かないといけないなという危機感はありますね。

西:ありがとうございます。

(次回へつづく)