2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
提供:株式会社ラクスパートナーズ
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ーーまずは、エンジニア教育に関わるきっかけをお二人におうかがいしたいと思います。竹迫さんは今リクルートで若手の教育も含めてやられていますが、そこに至った経緯を教えていただけますか?
竹迫良範氏(以下、竹迫):前職はサイボウズ・ラボというところで10年ぐらい働いていて、全国の25歳以下の学生をお盆休みの1週間集めて集中合宿する「セキュリティ&プログラミングキャンプ」を運営していました。そこで日本のトップ層のIT人材育成をやっていました。
そこを卒業した学生さんたちは日本の大企業や外資系企業に行くのですが、日本の企業に行ったら、キャリアパスがモヤモヤしてしまって辞めてしまったり、転職しちゃったりという事例が増えてしまったんです。せっかくIPAの事業として国の税金でやっているのに、もったいないなと思っていました。
大企業の中でも、エンジニアのキャリアパスや人事制度などをきちんと型化して作れたら、若手の良い人材が活き活きと働けるんじゃないかなと思い、2015年にリクルートに入社しました。
ーー竹迫さんは「SECCON」の運営もされていたと思います。「若い人たちにセキュリティにもっと関わってほしい」という思いもあったのかなと思うのですが、あれもそういう一環でやられていたんですか?
竹迫:そうですね。ITの中でも、セキュリティエンジニアというところは、やはり国からもすごく求められているところでした。SECCONは、社会人も学生もごちゃ混ぜにして育成する感じだったのですが、やはり社会人だと業務上すぐに役立つスキルを身につけたいと思って来る人がいる一方、学生だとCTF(Capture The Flag)が楽しいから来る人もいて。
そのあたりのギャップを同じコンテストの中でどう融合させるか。そこは、いろいろ苦労しながらやっていました。
ーー同じく森さんにもおうかがいしたいと思います。森さんは今ラクスパートナーズで、いわゆる派遣エンジニアの教育の部分に関わっていると思いますが、そこに関わり始めたきっかけを前職も含めてご紹介いただけますか?
森大介氏(以下、森):うちの派遣エンジニアは正社員として今800人ぐらいいます。私は今そこの採用、育成、エンジニアのサポートの業務を担当しています。実は私はもともとは新卒からITエンジニアをやっていて、当時はCOBOLをやっていました。
竹迫:すごいですね。
森:メインフレームでCOBOLを3、4年やって、その後にベンチャー企業に転職をして、Javaをやったりしました。Web系の企業に行った後にラクスに入社して、ラクスでは派遣エンジニアとして2年ほど電子書籍のシステムの開発に携わりました。そういう業務をやる中で、「採用や営業などをする内勤職に異動をしないか」と声をかけていただいて、異動になりました。
そこからはエンジニアではなく、エンジニアをサポートする裏方に入り、結果的にラクスパートナーズは分社化したので、今は役員というかたちで仕事をしています。
ーー今の業務を担当するまでは、エンジニアとしてけっこうやられていたんですか?
森:どうでしょうか(笑)。本当に普通のエンジニアでしたし、「何をやろう、ITかなぁ?」ぐらいの感覚で就職活動をしました。たまたま常駐先がCOBOLだったんです。COBOLの時はプログラミングもそうですが、プレゼン資料を作ったり、設計資料を作ったり、また、要件定義する中でお客さんと話すことが本当に楽しくて、ITエンジニアのおもしろさを感じました。もっと技術力を高めたいと思った時に、やはりWeb系がいいなと思い転職をした感じですね。
ーーCOBOLはなかなかレガシーなので、逆に人口が少ないですよね。
森:そうですね。今だったらそれこそどこにでも転職できるかなと思いますね(笑)。
竹迫:まだ需要がすごいありますからね。
森:そうですね。需要と供給にギャップがありますね。新卒の時に50代の部長のコードを直す感じでした。
(一同笑)
竹迫:COBOLの現場に台帳ってありましたよね。なんとか管理台帳とか。
森:そうです。蛍光ペンでチェックしてテストの成果物を作ったりしていたので、Web系に行った時のギャップは本当にすごかったです。
竹迫:Webの開発現場はそもそも紙の資料がないですからね(笑)。
(一同笑)
ーー竹迫さんもエンジニア歴は長いんですか?
竹迫:はい。最初はUNIXとPerlをやっていて、1997年ぐらいからIT業界で仕事を始めて、ECサイトの構築から始めました。当時は、「テレホーダイ」という夜中の11時から定額で電話がかけ放題というサービスがあって、みんなそれでモデムでインターネットへ通信していました。普通の専用線もINS64で64kbps、それを2本引いて128とか、それぐらいのスピードだったんです。
ただ、ネットのスピードやインターネットの成長と一緒に勉強できたので、自分のスキルもそのタイミングにあわせて伸ばせることができました。タイムラインとしてはすごく良かった世代かなと思います。
ーーお二人ともエンジニア歴が長く、経験も多いというところで、エンジニアにとって必要なものをおうかがいしたいと思います。例えばスキルであったり、知識であったり、何が必要なのか。竹迫さんからお聞きしてもいいでしょうか?
竹迫:まず、最低限のIT用語がわかるというのが大前提にあると思います。数十年前は、IPアドレスについて知らない人のほうが多かったかもしれませんが、今は高校の情報の教科書に載っているぐらいで、ルーティングやルータの仕組みなども学校の授業で教わるようになってきています。なので、そのあたりのベースの知識は若い人たちのほうが一定身についていると思います。
あとは、わからないことがあった時に自分で調べられる能力を持っているかどうか。いわゆる学び方を学べているかどうかですね。このスキルがけっこう大事です。ほかには質問力ですね。わからないことがあった時に、自分で抱え込んでずっと放置しちゃうと何も仕事が進まずに詰んでしまいます。
なので、わからないことをきちんと言語化できること。質問の仕方を変えるだけでも相手の人は答えやすくなるので、そういう能力は絶対に必要なのかなと思っています。
ーー森さんはどうですか?
森:今のお話のとおりだなと思います。黙々とパソコンに向かって、誰とも1日話さずに仕事をする人ももちろんいるとは思いますが、相手がどんなものを作りたいのか、そもそもタスクとして相手は自分に何を渡そうとしているのかなど、コミュニケーションを取る中で自分の役割をわかっていないと結局何をすべきなのかもわかりません。
路頭に迷って結局質問もできず、相手から聞かれても答えられない、それで結局仕事ができないということが起こり得ます。特に今は在宅ワークが主流になっているので、コミュニケーション力は今まで以上に必要なのかなとは感じています。
ーーでは逆に、エンジニアはどうやって育てていくのがいいのでしょうか? 竹迫さんは、エンジニアを育てる上でどういうところが重要だと思いますか?
竹迫:まずは一部の業務をやりきるという訓練も大事ですが、どこかで全体の仕事の流れを一気通貫で体験しないといけないと思っています。エンジニアは専門職種なので、最初は切り取られた一部の仕事だけを受け取るんですよ。
「なぜここだけ切り取られているのか」というのは、その一部の仕事だけだとわかりませんが、その前工程の「実は別の部署のこういう人がこういう段取りをしていて」とか「裏ではこれを基に受発注がされていて」みたいな一連の業務プロセスの中で「自分はここの仕事をしているんだ」と理解することはやはりどこかで必要なのかなと思います。
ーー業務の一部をやるだけではなく、やっていることの全体を知っておくことが必要なのですね。
竹迫:そうですね。それができると先回りして考えることができるようになって、「こういう要望が来るかもしれない」とか、予測がしやすくなるんですよね。「だから備えておこう」とか、そういうこともできるようになるんじゃないかなと思います。
ーーラクスパートナーズの取り組みについて、森さんにおうかがいします。エンジニア教育に力を入れていて、3ヶ月で実践力を身につけるとお聞きしました。すごく短い印象がありますが、どのようにして3ヶ月で実践力を身につけるのでしょうか?
森:例えばSIerであれば、どんな案件を担当するのかわからないので、1ヶ月の中でJava、PHP、Androidを研修でやったりすると聞いたことがあります。
竹迫:短期間ですごいですね(笑)。
森:いろいろな技術をとりあえず経験し、その実績を基に、いろいろな案件にアサインしていきます。SESだと、ビジネスモデル上、既存のプロジェクトやチームにJOINするかたちでアサインするケースがけっこうありますが、うちは派遣というかたちなので新人だとしても単価が設定されてきます。なので、お客さまがどういう人材を求めているのか? というところから逆算してやっています。
例えば、ECサイトの開発の現場がたくさんありますが、その場合は「JavaでWebアプリケーションを構築して、ショッピングカートを付けてSQLも必要だよね。じゃあまずはここだけはしっかりやろう」という感じです。新人に対して初めから設計や要件定義は絶対に任せてくれることはないので、お客さまから求められることが何か? を定義して、そこを集中的に教育しようと考えています。
なので、いろいろなことをやるというより、まずは現場で必要になるものを学んでもらうことに集中しています。「いろいろな現場で使えるスキルを」としてしまうと、エンジニアも何を勉強したらいいのかわからなくなるので、ある程度絞ったかたちで案件に対して教育していきます。
竹迫:「これを勉強して何の役に立つんですか?」と若い人からけっこう聞かれるんですよ。そこに対してきちんと答えられればやる気になってもらえるし、フォーカスされているのはすごく良いことだと思います。
森:ほかのところを少しお話しすると、うちは今機械学習エンジニアを育成しているのですが、教育で何をしているかというと、まずは数学をやるんですね。
竹迫:数学をちゃんと教えているのはすごいですね。硬派(笑)。
森:機械学習をやっているエンジニアと相談しながら進めたんです。ライブラリやツールはやればできるけれど、数学はなかなかやらないし、仕事しながらスタバで数学をやることはなかなかないよねと。なので、研修期間は数学をしっかり押さえて、統計、微分、積分をやる。
そこから機械学習にちょっと入っていく。現場に行ってもいきなりモデルは作れない。データ前処理から入っていって「ちょっとそろそろモデルを作ってみるか」という流れがあるから、数学をやって、前処理でPythonをできるようにして、モデルをやっていこうという研修を作ってきたんですが、竹迫さんはこれをどう思いますか?
(一同笑)
竹迫:いや、すばらしいです! メチャクチャすばらしい!
森:本当ですか!?
竹迫:そこまで研修でできているところはほとんどないんじゃないかなと思います。機械学習エンジニアって、いわゆる総合格闘技なんですよね。
森:本当にそうですよね!!
竹迫:だから何を教えたらいいのかがけっこう難しい。こういうのが来たらこう返さないと勝てないとか細かいテクニックがけっこうあるんですけど、そのためにはセオリーを知っておかないといけなくて、その中でも一番汎用的で100年変わらないものって数学なんですよね。
森:そう! 僕も変わらないと思っています。
竹迫:ツールは流行り廃りがすごくてどんどん変わっちゃうんですよね。例えば、施策に介入効果があったかどうかをA/Bテストで検証するためには、統計や検定の知識が必要になってくる。
それを正しく適用できるかどうか。あとは、モデルがどういう仕組みで動いているのか。実際にはブラックボックスとして扱っても大丈夫ですが、入力と出力をきちんとつなげることがインプリメンテーションする時には大事です。その入力を合わせるためには、データをきれいにしてつなげていくとか、結果はこう出したほうがいいというのを設計できるとか、そういうことが求められます。
機械学習は仕様書で与えられないので、自分で考えてそれを作っていかないといけない。そこが他とぜんぜん違うところですね。現場によってはドキュメントもなく自己流でやっているところも多いので、難易度がすごいです。
森:機械学習エンジニアは大変ですよね。みんな「研修でやっていないことばかりやる」って言うんですよ(笑)。
竹迫:そうそう(笑)。
森:現場で数学を使うかというと、実はそんなに使っていなかったりする。だけど、その研修でしっかりやっておけば、きっと花開くんじゃないかとエンジニアには伝えています。
竹迫:数学も3ヶ月の研修に含めてやっているんですか?
森:そうです。
竹迫:じゃあ機械学習エンジニアだけは、数学も込みで3ヶ月間?
森:そうです。数学をやって、Pythonをやって、AWSをやって、モデルを作る。
竹迫:すごいですね。うちには数学の授業はないです。
森:まぁ、ある程度数学に素養がある人じゃないとダメかなとは思っています。なので、「うちは数学をやるんだよ」と伝えて「それでも入りたいです」という人に今は入社をしてもらっています。
ーーリクルートだともちろんエンジニア未経験の方も入ってくると思いますが、どういう教育をされているのでしょうか?
竹迫:まず、スペシャリスト採用とプロダクト職採用に大きく分かれています。スペシャリスト採用は、ある程度スキルを持っている人を受け入れるので、最初の研修は先輩の内製講義を含めて約1~2ヶ月で終わります。
プロダクト職の方には、ブートキャンプというIT開発の基礎を学ぶ研修を用意しています。チームで、約3ヶ月の間に課題のプログラムをひととおり企画からデザイン・設計・開発までして、最終プレゼンをします。
昔はExcelで仕様書やワイヤーフレームを作って、Javaで作っていたのですが、最近はGitを使ったり、ツールでデプロイしたりなど、そこは時代によって変えています。
ーーお二人の会社はどちらも短くバッと鍛え上げる感じがしたのですが、それでできるものなのでしょうか?
森:「できないものはできない」というのはやはりありますが、時間を短くすることによってひととおりの流れを理解できれば、その後は自分で勉強したり復習したりする流れになってくるので、まずはひととおり教えてあげることがけっこう大事かなと思っています。
うちの場合は、3ヶ月で研修が終わった後に自分の時間もあって、自分はどこがうまくできなかったのか、どこが苦手なのか。逆に技術的にめちゃくちゃおもしろくて興味があるところはどこだったのかを探る期間にもなるので、まずひととおりやるのがすごく大事かなと思っています。
一方で、要件定義や設計からやるところもありますが、プログラミングをしたからこそ要件定義や設計ができると私は考えているので、エンジニアであればまずは実際に手を動かす。ものづくりをすることが大事だと思いますし、そこに楽しみや喜びやおもしろさを感じてもらうことも大事だと思っています。
ーーエンジニア未経験の方に興味を持ってもらうためには、まず手を動かしてもらうことが大事なんですね。
森:そうですね。なので、課題のECサイトも題材は何でもいいです。靴でも洋服でもいいし、たまにラーメンを題材にしている人がいて「ECサイトのラーメンって伸びちゃうよね」とか(笑)。
(一同笑)
森:でも、ちょっとおもしろいですよね。おもしろおかしくでも興味を持ってもらうというのがすごく大事かなと思っています。
ーー特にコロナ禍では、オンラインでコミュニケーションを取ることも多かったかと思いますが、なにか工夫をされていたのでしょうか?
竹迫:リモートワークが前提になり、手厚いフォローが大事だな、と感じています。今は意識的に同じ場所に集まることができるようになりましたが、それまでは本当にリモートだったので、Slackで頻繁に連絡を取り合ったりするなど、かなり意識的にやらなければなりませんでした。コロナ禍は全部オンラインでやっていたのですが、当初は本当にやりにくそうでした。
森:うちもそうです。メチャクチャやりにくそうでしたね。
ーー具体的にどういった面でやりにくさが生まれてしまったのでしょうか?
森:難しい内容を教える中でも研修生の反応がまったくわからず、なかなか関係性も築けていない中では研修生も「わからない」と言いにくいので、そのまま授業が進んでいくということがありました。ただ、やはり研修生は「オンラインがいい」「在宅がいい」と言うので、そこの折り合いはかなり難しかったですね。
竹迫:決まった仕事を集中してやるには、在宅やリモートワークは向いているんですよ。ただ、要件を固めたり、あまり決まっていないことをこれから決めていくというところは、やはりオフラインで話し合う必要があると思います。
あとは、雑談もけっこう重要です。「実はここのところが少しわかりにくいんだよね」というのが雑談の中で聞けると、フォローしやすくなるのですが、オンラインになるとそういうことが一切見えなくなってしまうのでけっこう難しいところですよね。
あとは、声をかけていいタイミングもけっこうわからない。一緒の机で仕事をしていると、「先輩は今空いているから、ちょっと声をかけよう」とかできるんですけど、オンラインだとそういうことがまったくわからない。タイミングがわからなくて質問できないというのはすごくありました。
ーー今の話もそうですが、エンジニアは仕事の中でコミュニケーションを取る必要がある時もあると思います。そこは実は意外と見逃されがちですが、どうやってコミュニケーションの仕方を教えているのでしょうか?
森:難しいですよね。「わかんねー!」と誰かが言った時に、「何? 大丈夫?」というコミュニケーションが取れるかどうかは人による。それを教えるのはなかなか難しいです。
ただこの間、別件で「どういうプロジェクトだとエンジニアはうれしいか」というアンケートを取った時に、「オープンなコミュニケーションが取れる現場は良いよね」と答えた人がいたので、「大丈夫?」とか「今何をやっているの?」とか非公式なコミュニケーションが取れる雰囲気作り、文化作り、風土作りをやはりマネジメントの段階でしてあげないといけないと思います。
先ほど竹迫さんが「オンラインの時はSlackでかなりコミュニケーションを取っていた」とおっしゃっていましたが、本当に誰かが意図的にそういうことをやっていかないとチームはなかなかうまくワークしないなと感じています。教育って難しいなと思いますね。
(一同笑)
補足すると、うちは3ヶ月の研修なんですが、基本チーム演習なんですよ。そういう環境に最初からガンッと入ってもらって、コミュニケーションを取ってもらう。最後の成果発表もチームでやるのでコミュニケーションを取らざるを得ない環境に放り込んでいるというのはあるかもしれないですね。3ヶ月のハッカソンみたいな感じです。
竹迫:うちも研修の最後にチームを組んで得点を競い合うコンテストをやっていて、そこではコミュニケーションが大事になってくる。それだけにコミュニケーション力は非常に重視しています。
ーー次は、エンジニアのキャリアパスについておうかがいしたいと思います。キャリアパスとして、いわゆるエンジニアのスペシャリストになるパターンと、プロダクトやプロジェクトをまとめる役割になる人たちがいると思います。派遣エンジニアのキャリアパスにおいて、進め方や計画はあったりするのでしょうか?
森:うちの場合、キャリアパスを会社からは提示していません。派遣先によっていろいろな業務があって、役割も内容も違うというところでなかなか定められないんですよね。未経験で入社して、1年目や2年目だとまだエンジニアとしていろいろな業務を知る段階だし、これからわかっていくという段階なので、キャリアパスの提示はしていません。
ただ、キャリアサポート担当が一人ひとりに付いていて、今の仕事の状況や、今後どちらに進みたいのか、どういうことに興味があるか、今後どういうことをがんばっていきたいのか、どういうキャリアを積んでいきたいのかを、ヒアリングしています。
そのキャリア希望に対して「こういう現場やこういう派遣先があるから、タイミングを見てそういう派遣先に進めるといいね。そのためにはこういう勉強をしておこう、こういう学習をしておこう。派遣先でこういう業務の経験をしておくと進めやすいよね」というかたちでアドバイスをしています。
ただ、やはり「スペシャリストになりたい」と言っていても30歳になったら変わることもありますし、ライフステージによって変わることもあるので、「これにしなさい」「あれにしなさい」というよりは、その時々にやりたいことは何なのかを自分自身で考えていくことが必要だよねというかたちで教育をしているイメージです。
ーー特に強制的にこっちに、ということはないんですね。
森:うちはないですね。それはやらないほうがいいし、派遣先はいろいろあるので、いろいろな派遣先の中から自分で選んでいけるんだよと提示してあげるのが理想かなと思っています。
ーーなるほど。例えば、「Javaの現場に入っているけど、Pythonがやりたいんです」みたいな相談の仕方もあるのでしょうか?
森:そうですね。Javaのエンジニアが機械学習エンジニアになりたいということもありますね。社内のキャリアチェンジ制度を使って、機械学習エンジニアとして学び直すこともあります。
ーーリクルートの中でも当然キャリアパスがあると思いますが、キャリアパスの進め方としてはどういったものがあるのでしょうか?
竹迫:まず、エンジニア職、データ職種、ビジネスやプロダクトをグロースさせる職種などいくつか職種があります。実は、1年に1回「実は私はこういう職種にキャリアチェンジしたいんだ」と自ら申告できる制度がうちにはあります。
受け入れ先の組織が「OK」と言ったらマッチングをして、社内転職みたいなことができます。あとは、同じ職種の中でどうやって給料を上げていくかというところは、段取りができるリーダー層や、さらに多くの人をまとめて成果を出すマネジメント層や、自分の専門のスキルを活かすスペシャリストなど、職種によってそれぞれ細分化されて定義されています。
ーー日本の企業はいわゆる終身雇用型が多く、海外だと自分のスキルを活かせるところに行くジョブ型が多いと思います。終身雇用の企業だと「エンジニアとはいえ、上の役職を目指さないといけないよ」みたいなこともあると思いますが、そういうところに対して、いろいろな選択肢があることをどう提示しているのでしょうか?
森:うちの場合は、正社員で雇用はしていますが派遣契約でやっているので、いつか派遣先との契約が終了することがあります。その時に「僕は管理職になりたいんだ。自分の会社のプロダクトに関わりたいんだ」となる人はけっこう多いです。
なので、その時には正直に「転職していいよ」と言います。リクルートさんもそうかもしれませんが、卒業というかたちです。
3年から5年エンジニアを経験して、3社から5社の派遣先を経験して、自分がいろいろできるようになった先に「こういうことを自己実現したいんだ。こういうエンジニアリングをやっていきたいんだ。マネジメントをやりたいんだ」という気持ちが出てくると思っていますが、ラクスパートナーズだとそれはちょっと無理ですということが絶対にあるので、その時は「転職もいいんじゃないか」ということで、転職を止めるというよりは背中を押すかたちになります。
相談によっては「この派遣先だったら実現できるかもよ」という選択肢もやはりあるので、会社がエンジニアの背中を押すというスタンスを取れることによって、うちの会社でのキャリアの選択肢を出してあげられるかなと思っています。
もう1つは単価です。派遣契約には単価があって単価連動型でお給料が決まるので、「リモートワークで残業もないし、僕はずっとここの現場でこの給料でいい」と選択することもできるんですよね。
例えば産休から戻ってきた女性で「すごく働きやすいのでここがいいです」という人は、「目標を設定してここまでやらなきゃいけないよ」というよりは、派遣先のお客さんの満足度を得られればいいよねという働き方ができるので、わりとフリーランスの働き方に近いのかなと思っています。
そうすると、例えば会社から「新人の教育をしなさい」「若手のOJTをやりなさい」ということは言われずに、本当にエンジニアリングに集中できるという働き方が実現できるかなと思っています。
ーーリクルートだとどうですか?
竹迫:将来は起業したいと思っている人がけっこういるんですよ。でも、起業するとなると、やはりお金の管理や人の管理をしないといけない立場になるので、「マネージャーをやりたいです」という人が実は一定数います。あとはエンジニアなんだけど、自分の作ったプロダクトの売り方を知りたいから「あえてキツイ営業現場に行かせてください」という人もたまにいますね。
森:へー。
ーーけっこうそこも自由にできる感じですか?
竹迫:そうですね。受け入れる部署からOKが出れば、そこで実際に働けます。違う職種から見るとほぼ未経験ですけど(笑)。社内転職はけっこうありますね。
うちの会社には事業がけっこうたくさんあって、結婚式場探しとか、宿探しとか、中古車の売買とか、ビジネスドメインがいろいろ分かれています。事業のサイズや売上のビジネスモデルが違って、配属先によってもぜんぜん違う文化だったりするので、数年経ったら違う環境で仕事をするという働き方で長く残っている人もけっこういます。
ーー社内起業みたいなものもできるんですか?
竹迫:制度としては「Ring」という新規事業の提案制度があって、最初は業務時間外ですが、審査が通れば業務時間でやってもいい、お金も出る制度があります。
実際にビジネスとして成長させることができるようになれば、実際に外に出してみて反応を見てみる。それが通ればもちろん正式なビジネスになります。実際にリクルートの中では「ゼクシィ」とか「スタディサプリ」とか、社員の「こういうことがやりたいんです」という提案から始まった事業があるので、そこは企業文化としてはあるかなと思います。
ーーリクルートには、セキュリティやAIのところをやっている部署があると思いますが、そういうぜんぜん違うところにも異動はできるものなんですか? 例えば「今までセキュリティをやっていました。でもAIにちょっと興味があるからAIの部署に行きたいです」みたいなこともできるのでしょうか?
竹迫:理論上、受け入れ部署がOKを出せばできます。全社の人事の制度として動かしているので、実際にどれぐらいの割合で異動が発生したかは、会社の中でモニタリングをしています。
(次回へつづく)
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