少しでも相手の期待を超えていくと、キャリアの打席が回りやすくなる

山元亮典氏(以下、山元):けっこう時間も迫っているところですが、せっかくなのでCTOとしてのマインドみたいなところもいろいろ聞けるとうれしいなと思っていて。

先ほどけっこう話してもらったところではあると思うんですが、CTO百景は「Webエンジニアたちに夢と希望を与える」という目的でやっていて。がんばっているエンジニアたちに、どんなふうにがんばったら成長できるのか、技術的に成功するにはどうしたらいいのかというようなところで、気にしていること、常に意識していることとかあったりしますか?

赤澤剛氏(以下、赤澤):そうですね。技術論というよりは仕事論に近いかもしれませんが、やはり少しでも相手の期待を超えていくという成果の出し方をすると打席が回りやすくなるので、相手の期待を超えていくこと。人と責務を少しオーバーラップして超えていく。自分がきっちり責任範囲をこなしていると思っている時は、ほぼ100%、他人から見ると責任範囲としてちょっと狭いんですよ。

山元:なるほど。

赤澤:強い組織は必ず(そこが)のりしろみたいに被っていて。それが被りすぎていて、「あぁ、そこ、俺もやっていた」となったらもったいないですが「俺がやるつもりだった」「でも私がやるよ」「あぁ、いいね」という関係性を強いチームは持っているので、やはり少しずつ期待を超える。少しずつ責務を超えていく。

(期待を)大きく超えていくのももちろん大事なんですが、常に超えた状態を維持して拡大していくのは、やはり自分のキャパシティとか他人の評価から出てくるところがあるので、これは仕事論として1つあるかなと思います。

何かやってみるかというチャンス。打席が回ってきた際には、失敗するかどうかとは関係なく、とりあえず立ってみることが僕はけっこう大事というか、好きで。先ほども(話に)あったんですけど、(それに関係することで)「じゃあCTOになるかどうか」ということで(言うと)、なんか……。

「CTOになるのが嫌だ」と思われないCTOでいよう

赤澤:でもやはりそれで1つ意識していることがあって。「CTOになるのが嫌だ」と思われないようなCTOではいようというのは常にあります。要は「しんどそう」「大変そう」とメンバーに思わせてしまったらもったいない。「CTOって悪くないな。自分も、ほかの会社でも今のこの会社でもやってみたいな」と思われるような仕事とか働き方にしたいなというのは常に思っています。

そういう時、CTOとかVPoEとか(の役職は)「何かあった時には、とりあえずやってみる」ぐらいの感覚が僕はすごくいいと思っています。

なったら辞めることができて。(でもそんな時に)“CTOから降りる”という言葉で表現されると、僕はこの後、もう絶対に悪い方向にしか行かなくなっちゃうじゃないですか。辞めるとか(笑)。

山元:(笑)。

赤澤:でも違って。この後違う会社に行く、違うプロダクトを作る、ICになる、VPoEになる、普通にエンジニアとしてやる、どれも僕の中ではキャリアとしてはアップグレードにしかならない。変化するということは常にいいことだと捉えているので。

このあたりは「何かになった次は降りるしかない」じゃなくて、常に変化し続ける。やはりアジリティというか、俊敏性というか、常にそこに対応していくというところは、働き方とか自分のキャリアでもありますね。もう半年後、1年後を見ていたら、僕は十分だと思っています。

エンジニアのリソースは「プラスチックの箱」である

赤澤:最後にCTO的に意識していることというと、繰り返しになっちゃうんですけど、やはり経営課題と技術課題を連結させられる人。「エンジニアがやった問題はエンジニアが解消してね。でも、プロダクトの機能はみんなで考えて作るから、両方やらなきゃいけないよ」となると、やはり疲弊しちゃうと思うんですよ。リソースは決まっているので。

山元:そうですね。

赤澤:だから、そのリソースをしっかりみんなに理解してもらうために……。ちなみに1個思い出したんですが、事業メンバーにはエンジニアのリソースを考える時に「プラスチックの箱だと思ってください」とよく言っていて。経営にエンジニアをどう考えてもらうかなんですけど、弊社の経営陣はみんなコードを書いたこと自体はあったりして、そもそも理解が圧倒的なので、こう言わなきゃいけなかったというわけじゃなくて、時々比喩表現で出すんです。

「プラスチックの箱」と(いう表現で)言った理由は、やまげんさん。箱に物が入らなかった時に、箱に怒りますか? 「箱の努力が足りない!」とは言わないじゃないですか。

山元:はい(笑)。

赤澤:箱に入らないものは入らなくて。

なぜプラスチックかなんですけど、プラスチックの箱って、無理やり詰めたらちょっと広がりますよね。やわらかいから。で、どうなるかというと、割れますよね。だから「そういうものです」と。無理やり詰めたらちょっとだけ広がるんですけど、割れちゃって組織は壊れるんです。箱に入らなかった時は、箱の努力が足りないんじゃなくて、箱を広げるか、入れるものを減らして次のスプリントに移すしかない。

だから、エンジニアというものは努力とか根性という話じゃない。それを個人として思う分にはいいけど、上長ましてや経営が絶対言っちゃいけないワードで。僕らはプラスチックの箱をどう中長期で広げていくか、入れるものをどうコントロールするかしかないということは理解していく。

エンジニアとかソフトウェアの特性とかを経営としてしっかり一緒に理解して、それで作っていくというところがCTOの1つの役割かなというのは、今でも自分の中でけっこう腑落ちして心掛けている点ですね。

山元:僕自身がもうめちゃめちゃ勉強になりました(笑)。

赤澤:プラスチックの箱(という比喩)はいいでしょう? わかりやすいでしょう? 「わかります? プラスチックの箱に『おまえ、なんで入らないんだよ』って言わないでしょう。そういうもんですよ」と。

だから「がんばって押し込む」というのは、自分のマインドとしては大事だけど、「それを経営が言ったら始まらないよ」と。「自分の思いとして持つにはいいけど、上の人が言ったら終わっちゃうよ」というワードがあって、(これは)その1つですよね。

ちなみに、あといくつか代表例で言うと、「背中を見て育て」みたいなことを上の人が言うと終わるし、ましてや経営が「嫌だったらおまえが変えろ」とか言いだすと、もう地獄だと思うんですよ。「自分が変える」という(のは)マインドの問題であって、経営がそれを言ったら会社として終わっているから。

自分がマインドとして持つ(分)には(それは)大事な思いではあるんだけれど、上の人が言うと絶対にメンバーを絶望させちゃうワードがあるんです。開発でいうと、リソースの話はそうですね。

だから僕たちは、がんばる・がんばらないで言うと、個人でいうとがんばるに決まっていると。ただ、がんばるというのは戦術ですよね。僕らが経営だったら戦略を練らないといけないから、リソースをどう配分するか、どうコントロールしてお客さまと合意して、例えばスケジュールをコントロールするか。

このあたりがやはり少なくともCTOとして絶対にやらなきゃいけない。メンバーを絶望させてはいけないというところはけっこう心掛けています。

山元:めっちゃ勉強になりました(笑)。

赤澤:本当に? よかった、。本当によかった。良いことを言えた、よかった。セーフ?

山元:セーフ(笑)。

赤澤:セーフとは言わないですけど(笑)。

山元:でも、これはけっこう、あれじゃないですか。エンジニアメンバーもそうですし、やはりビジネス側、経営者の方だったりマネージャーの方だったりから「どうにかならんのか?」みたいな会話は今、日本中でけっこうあるのかなと思っているので、本当に全員に聞いてほしいぐらいの内容でしたね。

赤澤:とはいえ、「がんばる」みたいな状況はゼロではないですけど。でも、「どうにかならんかね?」って言われたら「どうにもなりませんね!」という感じですね。

そこはそういうもんだよって。だからこそ僕らは、短期的じゃなくて中長期で見て、リソースとか、個々のスキルを上げていくとかを常に考えていかなきゃいけない。

そのためには、先ほど話につながるんですが、合理性の追求じゃなくて、例えば技術的な発信をちゃんと業務として応援するとか、そういうことも含めて、エンジニアがエンジニアとしてストレッチできる環境を(作る必要があります)。

短期的に見たら非合理に見えるかもしれない。やったことがない技術をやることも含めて。でも、それが最後は合理につながる。箱が広がって、できることが増える状況につながるので、そういう非合理を取ることが最後(に)は合理的な勝ち筋(になるということ)です。これを経営としてやるという感じですね。

山元:めっちゃ勉強になりました。

言語化することでセルフコミットする

赤澤:(ここまでいろいろと語ってきましたが、)ちょっと「おまえ、(かっこよく言ってるけれど)できてないことがいっぱいあるだろ?」ってメンバーにも言われそうだ(笑)。「おまえ、もっと会社として、サービスとして成長させろ」と事業メンバーに言われそうだから(笑)。

山元:先ほど「棚に上げていく」って(笑)。

赤澤:おお、うまいこと言うなあ(笑)。そうですね。はい。そういった像を目指して、心掛けています(笑)。

山元:がんばっていますと(笑)。

赤澤:道半ばでございます。はい。

山元:でもそういう方針がないと進む方向がわからないので。まさにCTOになっても何をしたらいいかわからない方が、たぶんたくさんいると思います。

やはりまだまだ若い職種というか、この間、(日本)CTO協会のミッション・ビジョン・バリューみたいなものも聞かせてもらったんですが、やはり若いからこそ「自分たちがCTOとして情報交換をするベースを作らないと」みたいなところをお話しされていて。そのとおりだなと思っています。

赤澤:ありがとうございます。やまげんさんに言われて思ったのが、ちょっと言い訳っぽくなっちゃうかもしれないですが、僕自身、今完璧にできていることを話したというよりは、(できていないこともあるかもしれないけれど)でも本心でこうありたい、こうあらなければならないという像を自分でしっかり言語化して、ここでやまげんさんと聞いてくださっている方に話すことによって、自分にセルフコミットしている感じも確かにあるかもしれないです。

山元:僕を立てていただいて、ありがとうございます(笑)。

赤澤:メンバーがもし聞いてくれていたら「おまえ、やれよ」と言われるかもしれないので。でも、そういうのも大事ですよね。あるじゃないですか。勉強会でも「LTをやる」と決めてから勉強するとか。

山元:そうですね。駆動経営というか。

赤澤:そうそう。“言って駆動”です。今回も僕は「CTOのマインドをさもできているかのように“言って駆動”」です(笑)。

山元:“言って駆動”(笑)。

赤澤:ここからもう一段階がんばります。

山元:実行を。

赤澤:実行します。はい。

山元:素敵な話がいろいろ聞けたのですが、もうあと3分になりました。コメントをけっこうもらっています。「プラスチックの箱、めっちゃわかりやすいですね」と。

赤澤:よかった。うれしい。聞いてくださって本当にありがとうございます。

山元:あと「プラスチックの箱、エンジニアが幸せになれる表現ですね」というところで。僕もこれはすごく(思います)。

赤澤:そうなんですよ。プラスチックは広がるのがポイントで。短期的に(は)広がることができるんですよ。鉄でも木でもないので。でも、パキンッて割れるじゃないですか。

山元:はい(笑)。

赤澤:そのニュアンスを伝えたいので、プラスチックと。だから「プラスチックって広がるけど割れますよ」と言うと、みなさん「それは困るね」って。「組織って壊れちゃいますよ」と。

山元:僕、(これから)めっちゃ使うと思います(笑)。

アルファドライブは絶賛エンジニア募集中

山元:(先ほどは少し音声が)途切れちゃったということで再開して今話しているかたちですが、クロージングにいけたらと思っています。

もし最後に宣伝とか今後のイベント予定などがあったら、ぜひおうかがいしたいのですが。

赤澤:そうですね。ユーザベース全体で絶賛採用拡大中です。特にアルファドライブではまさに今新しいSaaSを立ち上げていて。スタック的に僕らはすべてのプラットフォームがAWSで、フロントはReact、Next.js、TypeScriptで、サーバーサイドはGo言語とGinでサーバーを立てているというスタックなんですが、絶賛エンジニア募集中です。

エンジニア、SRE、QA、プロダクトマネージャー、全方位募集中で、どんなコミュニケーションルートでもいいです。何の応募でどの内容で書いても、僕は絶対につなぎますので。

エンジニアのところで「プロダクトマネージャーです」と書いていただいても「ありがとう!」って感じです。Twitter、Wantedlyなどなど、何でも全部大丈夫なので、何かあったら連絡ください!

山元:ぜひ連絡をしてください。素敵な組織にジョインをしたい方が今日増えたんじゃないかなと思うので。

赤澤:それでいうと「雑談させてくれ」というのもウェルカムだし、「ご飯おごってくれ」と言われたらおごりますよ。「ランチおごってくれ」だったら「ランチ食べよう!」となるので。人と話すのはやはりめちゃくちゃ楽しいですね。

山元:カジュアル面談的なのもウェルカム。

赤澤:ウェルカムです。来いと言われても、行きますから。

山元:ということらしいので、これを聞いているみなさんは、Twitterだったりからぜひご応募ください。

じゃあ、こんなかたちで今日は締めにしたいと思います。あらためて、本日はお時間をいただきありがとうございました。

赤澤:こちらこそありがとうございました。

山元:めちゃめちゃ楽しかったです。

赤澤:聞いてくださったみなさんも、夜遅くまでありがとうございました。本当にありがとうございます。

山元:ありがとうございます。これ自体、アーカイブでも公開されるので。ずっと聞けるものになっているので。

赤澤:失言しなかったと思うので、大丈夫です(笑)。

山元:リスナーのみなさんもありがとうございました。

赤澤:本当にありがとうございました。