生産性と創造性を向上させる「Notion AI」

佐々木真氏(以下、佐々木):さて始めます! では、よろしくお願いします。PM ClubのShinです。本日は2つのセクションに分けます。前半では自己紹介がてら、「Notion AI」についてお話をおうかがいし、後半では生成系AIとプロダクトマネージャーの関係について話していけたらと思います。

はじめに、Notion AIのリリースおめでとうございます! Notion AIの概要について紹介していただいてもいいですか。

Jonas Lavoie氏(以下、Lavoie):もちろんです。祝っていただきありがとうございます。すでに多くの人にとってNotion AIは、執筆・プロジェクト運営・知識の一元化において最も人気のあるツールの1つとなっています。

Notion AIで仕事を素早く効率化することで、より良い文章を書くことができます。また、より広く考えさせてくれるAIアシスタントを利用できます。これは高価なAIアプリではなく、Notionのワークスペースに完全統合されています。日々のワークフローに組み込まれたNotion AIとNotionの柔軟なインターフェイスの組み合わせは、劇的に生産性と創造性を向上させます。すべてのユーザーにAIの約束を実現する、初の文章作成と生産性向上製品です。

佐々木:アルファ版を僕も試したのですが、そこからの学びはなにかありましたか。

Lavoie:ええ、もちろんです。初めてアルファ版を触った時、編集に関連するアクションが予想以上に多く、Notionの総ユーザー数の一部に過ぎないアルファユーザーが、1日に数億語を編集または生成していることがわかりました。11月のアルファ版リリース以降、私たちはNotion AIを完全に再設計しています。新しいインターフェイスでは、実際に自分の文章と対話でき、あなたが満足するまで、フォローアップのプロンプトを与え続けてくれます。

Notion AIはブレインストーミングパートナーになる

佐々木:日本のユーザーもとても楽しみにしています! Notion AIのローンチに当たって、どのような課題に直面しましたか。

Lavoie:私たちが直面した課題は、Notion特有のものではなかったと思います。より広いAI産業に関するものでした。すべてのものが速く変化しており、毎日新しい変化があり、新しいローンチがあり、新しいモデルがあり、新しい会社があります。そのため、これらを追随するためには多大な時間とエネルギーを使いますし、同時にユーザーが常に安全かつ保護されていることを確認する必要があります。このチャレンジは楽しくもあり、イノベーションなのです。

佐々木:Notion AIは、どのような課題が解決できると思いますか。

Lavoie:Notion AIは、ブレインストーミングのパートナーとして、ユーザーの創造性やアウトプットを強化させるためにデザインされています。ライターズ・ブロックに苦しんでいる時、白紙のページに何を書けばいいかわからない時に、Notion AIに下書きを書いてもらえます。

文脈の切り替えも、ネットからのコピー&ペーストもなく、すべてが1つの場所に集約されることで、自身のフローステートに集中できます。そのため、AIはブレインストーミングパートナーとして、なにかを決断をする時に助けてくれます。決断をする時に長所と短所をまとめてくれます。下書きを書かせて、納得がいくまで何度も編集させられます。

今後Notion AIはどう発展していくのか?

佐々木:リリース後の日本と世界の反響はいかがでしたか。

Lavoie:すばらしい反響でした。信じられないほどの速度で導入が進んでいます。ヨーロッパや私が住んでいるアメリカなど、世界中で導入されているのを確認しています。しかし、実は世界で最もNotion AIの導入が盛り上がっている場所の1つは、日本なのです。これにはかなり驚きました。注目されていることは知っていましたが、その注目度は驚異的でした。

佐々木:Notion AIは、今後どのように発展していきますか。

Lavoie:まだスタートしたばかりです。発展のプロセスの中の早い段階にあります。これからプロジェクトマネジメント機能にAIを追加していくので、プロジェクトマネジメントやタスク整理にNotionを利用している場合、AIはそれらに大きな一歩をもたらすでしょう。

例えばこのような世界が想像できます。AIがNotionの機能を構造化して活用し、チェックリスト形式でアクションアイテムを要約します。(ユーザーは)AIにデータベースの作成を依頼してタスクをデータベースに入れてもらう。このように常に進化していきます。

Lavoie氏が生成系AIと関わるようになったきっかけとは?

佐々木:それではセクション2に進んでいきましょう。ここからは、AI時代のPMについて話をしてみたいと思います。Jonasさんは、生成系AIとはどのように関わるようになったのでしょうか?

Lavoie:良い質問ですね。私はキャリアの大半を、創造とテクノロジーの交差点で過ごしてきました。私は建築業からキャリアをスタートしました。家や高層ビルを建てる建設業でした。しかし、別の方法で世界により大きな影響を与えることができるとすぐ気づきました。それは、私が情熱を注いでいたテクノロジーとソフトウェアでした。

私は「知識」と「貿易」という2つの重要な人間の相互作用に自然と惹かれ、約20年間これら2つの世界を航海してきた中で、コンピューターの行動を予測する能力が向上していることが明らかになってきました。

このように、非常に高度な予測形式を持つ生成系AIは、建設業で培った私の創造的な側面と、応用技術で得た科学的な側面の両方を合わせて発揮できる世界に感じました。そのため私にとっては自然な流れでした。

AIは今後アメリカから急速に発展していく

佐々木:現在ChatGPTなど、さまざまな言語モデルがAPIをリリースしていますが、今後アメリカ発のSaaSにはすべてAIが搭載されると思いますか。

Lavoie:はい、そう思います。そして今後アメリカから急速に発展していくと思います。必ず急速に国際的になることでしょう。例えば、生成系AIや情報検索といったAIアプリケーションの需要は英語以外の地域でも強く、場合によってはそれ以上に強くなっています。

LLMsやその他のAI関連技術は、相互作用する言語に関係なく、自然で本来のものに感じられます。これにより世界中の企業が、地域やターゲットとなるユーザーに合わせたローカルで適切な体験を提供するチャンスが広がります。今まさに模索中の新しい機会です。

AIはすべての問題の解決策ではない

佐々木:AIが普及した時、AIをどうプロダクトに活かすのか、考えるべきポイントは何だと思いますか。

Lavoie:まず、AIがすべての問題の解決策と見なされるべきではありません。非常に優れた新しい種類のハンマーですが、とても重いハンマーです。つまり、シンプルな仕事や決定論的な仕事には、AIは過剰だと思います。AIは、入力に微妙なニュアンスがある領域で輝くと思います。

少しおかしな例を紹介します。日本の街の人口の数値データを含む、行と列のあるテーブルを想像してください。AIを使ってそのテーブルを昇順・降順に並べられます。確かにAIにはそれができますが、私はお勧めしません。なぜなら人工知能の力を借りなくとも、それを調べる方法があるからです。

人はどこでもAIを目にすることに疲れてくるでしょうし、常にAIを使いたいとは思わないでしょう。時にはもっとシンプルな方法で、やり遂げる方法があります。良い答えは1つではありません。問題に対して複数の答えがあるかもしれません。こういった場面で、AIは一番の力になってくれます。

時が経つにつれAIがどんどん安価になっていけば、さらにより多くのAI機能を導入できます。近い将来、いろいろな場所で現れるようになりますが、すべてのAI利用が良いとは言い切れません。

AI自体は主要な差別化要因にならない

佐々木:一般的にAIが今までの競争優位性を乱していく中で、自分たちのプロダクトの独自性・優位性をどこに見出していけばいいと思いますか?

Lavoie:基礎となるAIレイヤーは、すでに統合・一般化されていると思います。現在、重要な基礎となるモデルは一握りです。みなさんご存じのOpenAIのChatGPT4や、GoogleのPaLM、そしてOpenAIのライバルとも言えるAnthropicのClaudeなどがあります。これら3つが、よく目にするメインのモデルだと思います。そこにはあまり大きな違いはありません。

モデルを利用する上での真の違いは“ラストワンマイル”に現れます。つまり、そのモデルの力をどのようにユーザーに伝えるか。自問自答しないといけない質問は、以下のものです。

あなたが提供している既存のプロダクトは、AIによって強化できるユニークな点がなにありますか? ターゲットオーディエンス、あるいはターゲット市場における、あなただけが理解している重要な側面は何ですか? AIにより、時間をかけてより多くの顧客を維持することができますか? あなたが使用量に応じたサービスを販売している場合、AIを活用したアプリケーションを考えることはできますか?

AI自体は長く、主要な差別化要因にはなりません。全員が何かしらのかたちでAIを利用することになるでしょう。しかし、優れている点を見つけ、そこにAIを応用すれば、より早く競合他社に差をつけることができるはずです。そしてそこから、AIの次の段階と、AIが解き放つものを探求し始めることができます。

AI時代にプロダクトマネージャーが意識しておくべきことは?

佐々木:AI時代にプロダクトマネージャーが意識しておくべきことや、身につけるべきスキルは何だと思いますか。

Lavoie:前の質問から少し続けると、AIはツールキットの中の新しいツールに過ぎません。成功したPMは、技術ではなく手元にある問題と機会に焦点を当てます。AIはただのツール、ハンマーなのです。

単体ではハンマーは何も解決しません。釘が必要ですよね。その釘は何なのか。今まで非常に解決が難しいとされてきた課題もありますが、今後は取り組むことができるかもしれません。

PMとして今はより大きく考えることが必要であり、この新しい考え方は、非常にゆっくりと動く老舗のビジネスで働いている人々との差別化になります。彼らはみなさんのように、大きく創造的に考えることができないのです。

現実の世界に目を向けて、AIの宣伝文句の「渦」に流されず、チャンスとユーザーの問題に目を向け、人と話しましょう。ユーザーは人間です。どのように感じているのか、どのような課題を抱えているのか、これらを解決しようとしてください。解決するためのうってつけのツールが、今みなさんのツールキットの中にあります。

何よりも楽しもう、クリエイティブになろう

佐々木:さて、私から最後の質問です。最後にこの動画を視聴している同じPM職の方にメッセージをお願いします。

Lavoie:社会の先端が変革する瞬間に最前列で立ち会えるのは、幸運なことだと思います。これは私たちがこれまで見たことがないものです。そして、今日のAIを支える巨大なエネルギーは、時には恐ろしく、私ですら目が回る時があります。

でも、みなさんに知っていただきたいのは、私たちはまだ始まったばかりだということです。私たちにとって長旅になるでしょう。社会を変えることになるでしょう。AIは長年の多くの問題から私たちを解放する可能性を秘めています。医療であろうと、エネルギーであろうと、産業であろうと、社会科学分野であろうと、私たちはAIを良いことに使えます。

私からみなさんに伝えたいことがあるとすれば、AIは強力だからこそ、良いことに使いましょう。この技術を使いこなすチャンピオンになりましょう。AIで問題を作らずに、解決していきましょう。良い管理者でありましょう! そして何より楽しみましょう! あとクリエイティブにね! 今こそが一番クリエイティブになるべき時です。

佐々木:日本のPMに向けたすてきなメッセージでした。Jonasさん、本日はありがとうございました!

Lavoie:こちらこそ!