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自律型開発チームの作りかた(全4記事)

「対話をし続けられるチームこそが、いいプロダクトを作れる」 CTO・新多真琴氏が贈る、エンジニアリングマネジメントの秘訣

2017年から開催してきた「明日の開発カンファレンス(通称:アスカン)」。今回は、EM(エンジニアリングマネージャー)の方を招き、開発・エンジニアとの関わりや、組織の中での活動についておうかがいをしました。ここで登壇したのは、株式会社Cake.jp、CTOの新多真琴氏。自律型の開発組織を作る上での試行錯誤について発表しました。全4回。4回目は、物事をうまく運ぶために必要なことについて。前回はこちら。

物事をうまく進めるために必要なのは“対話”

新多真琴氏(以下、新多):結びです。マネージャーというロールに初めて体当たりしてみてからの変遷を、わーっとお話ししてきました。メンバーレイヤの頃と違って、扱う課題の複雑度とか抽象度が高いことが一番大きな違いかなと思います。

あと、時間軸があるんですよね。メンバーと話していて、その時には「わかりました」と言ってくれたけど、1週間後に「やはり納得できません」と言われて、「あっ、そうなんだ」みたいな。そこからまた話が始まることもあります。

先ほどの大野さん(大野晋氏)の話にもありましたが、わかりやすい正解はないので、技術選定にしろチーム設計にしろ、どの選択にもトレードオフがあるので、たぶんそのうちほころびが見えてくるんですよね。

あと、これはピープルマネジメントの話ですが、視点や情報量をメンバーよりいっぱい持っているのは当たり前なので、そこの差分を理解しないと容易に事故が起きるんです。「このぐらい知っているでしょう」という頭で話すと、「何の話?」となって、「おっとっと」となるのはよくある話だと思うんです。そういうところが大変だと思っています。

じゃあ、それをうまく進めていくために何が必要かというと、やはり対話なんじゃないかなと最近ずっと思っています。技術選定の時にもお話ししましたが、まずは相手に興味を持つことです。自分や周りにも興味を持ってもらうようにいろいろな工夫をしましょう。

あとは、詳しくはググっていただければと思うんですけど(笑)、クリス・アージリスが提唱した「推論のはしご」を上らない、上らせない。自分自身も上らない、相手に対してレッテルを貼らないようにするのは大事です。逆に、相手が自分に対してレッテルを貼ろうとするのを、きちんとゆっくり解きほぐして上らせないこともマネージャーとしては大事なことです。

そういう対話を、各ステークホルダーと、もちろんチームメンバーと、私とも、し続けられるチームはいいプロダクトを作れます。自律的な組織がいいプロダクトを作れるんじゃないかと思ってやっていっているのですが、まだまだ道半ばなので、これからのあらたまさんに乞うご期待という感じですね。

採用の話を聞きたかった方がたぶんいると思いますが、ぜんぜん盛り込めなかったので懇親会でよろしくお願いします。みなさんの試行錯誤もぜひ教えていただきたいと思うので、逆にメンバーレイヤだけどこういうことが気になりますという話もぜひ教えてもらえたらと思います。以上です、ありがとうございました。

今やっている業務の中でCTOから一番かけ離れている業務は?

質問者1:今、ご自身がやっている業務の中で一番CTOからかけ離れている業務はなんでしょうか?

新多:自分のスペシャリティから遠い順でいうと、デザインマネージャーとPdMです。でも、それがCTOの役割ではないかというと、そんなことはないと思っています。

曲がりなりにも開発組織を預かる身なので、そこに属してくれている人たちが働きやすく、いっぱい成果を出してくれるためにどんなサポートができるか、伴走できるかを考えるのも自分の仕事だとは思っています。なので、あまり遠いと感じたことはないですね。

PdMに関してはもっと適任がいるとは思っているんですけど(笑)、諸々の理由からこういう建て付けになっています。採用が叶ったら、ぜひ一緒に走りたいと思っています。

質問者1:ありがとうございます。

メンバーと対話する上でのコツ

質問者2:大変貴重なお話、ありがとうございます。非常に聞きやすいスピーチだったと思いました。また、サービスや商品がすごく好きなんだなというのが伝わりました。

最後のまとめのさわりのところで、対話が大事だというお話をされていたと思います。いろいろなメンバーがいると思います。その中で、ご自身で心掛けていることや、ルールはありますか? 対話が苦手な人も多いと思うんですよね、僕も含めてですけど。なにかコツみたいなものはありますか?

新多:テクの話と精神の話、どちらがいいですか?

質問者2:両方お願いします。

新多:(笑)。じゃあ、テクの話からいくと、今、1on1は基本的にリモートでやっているんですね。これは、オフィスのキャパとか、フルリモートで働いてくれているメンバーがいるとか、いろいろ理由はあるんですが、基本的にリモートでやっています。

そういう中で、仕入れられる情報が少ない。メンバーによっては顔出ししてくれないこともあります。それは本人の自由に任せようと思っているのでいいんですけど、いかに情報をパケロスせずに受け取るかという点で、同じ「Googleドキュメント」を用意して、今なんの話をしているかというのを共有しています。

これはもう普通の会議などでもやると思いますが、話を聞きながら書き取って、「こういうところに課題を感じているのか」「こういうことをもっとやっていきたいと思っているのか」と、話しながらまとめています。そこから議論をさらに膨らませて、それが記録として残っていくということをやるようにはしています。

それをすることで、メンバー自身もどういう話をしたかを振り返って、そこから内省につなげてもらうこともできると思っています。これがテクの話です。

精神の話でいくと、(スライドを示して)ここに書いている推論のはしごの話は、そうだなとすごく思っています。人間はなにかを認知する時に起きた事象、例えば、マイクスタンドが倒れたという事情から、自分が見たい事実を吸い上げて、それを情報処理して、相手はこうに違いないと考えてしまうんです。

例えば、フジワラさんがここを通る時に足を引っ掛けてバタンとなってしまったとします。あいつは本当にドジだなとか、バタンとうるさくして私に危害を与えようとしたんだなと、考えようと思えば考えられるわけじゃないですか。そんなことないですけどね(笑)。本当はないそういう事実を自分の中で作り上げちゃうことは、人間はすごく得意なんです。想像力が豊かなので。

例えば、メンバーからネガティブなことを言われたり、逆に私たちからメンバーにこういうところが課題だと思うと伝える時、その性質を理解して丁寧に伝えなければいけないシーンはたくさんあると思うんです。

そういった時に、「あなたを攻撃しているわけではない」と。ただこういう事実があって、これをどう解釈して、どうやってみんながうれしい方向につなげていこうか、ということを事実として認識してもらって、感情に対してもしっかり寄り添ってあげる。

その上で「みんながうれしいことってどんなことだっけ?」と一緒に考えることをやれたらなと思います。これはまだ100パーセントできているとは言えませんが、そういうのが大事だなと思って取り組んでいます。それは、メンバーに対してもそうですよね。相手に対してそういうふうに接してほしいと思っていますし、機会があればそういったことは言うようにしています。

質問者2:ありがとうございます。コーチングの技術の中でも、好奇心を持って傾聴することは非常に重要だというナレッジがありました。そういうことに通じるところがあると思いながら聞いていました。ありがとうございます。

新多:ありがとうございました。

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