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「CTOが変化し、成長するためになにを考えるべきか」(全3記事)

試行錯誤→コミュニティの拡大→インダストリの拡大… 20年の時を経て、変化してきたCTO業界が次に目指すこと

株式会社overflowによって開催された、開発組織のあり方について考える1ヶ月「CTOWeek 2023 by Offers」。Week1に登壇したのは、デジタル庁CTO 兼 グリーCTOの藤本真樹氏。CTOという役職との向き合い方や求められる能力について語りました。全3回。1回目は、CTO業界の変遷と「Manage」の定義について。

デジタル庁CTO 兼 グリーCTOの藤本真樹氏

藤本真樹氏(以下、藤本):藤本と申します。大枠のスケジュールとしては15分、20分ぐらい話をして、そのあとは質疑応答とうかがっています。ご飯の時間なので、みなさまご飯を召し上がっているかもしれません。僕はまだご飯にはありつけていないのですが、がんばってしゃべりますので、お付き合いいただけるとうれしいです。よろしくお願いします。

今日はモデレーターとして大谷さん(大谷旅人氏)にゲストとしてお越しいただいています。これはなぜかというと、(理由が)2つほどあります。1個はオンラインのプレゼンテーションやセッションは、やはりまだまだ難しいし工夫の余地がいろいろあるのですが、1人でずっとしゃべっているのはなかなかね……。というのがあるので、そんな感じで一緒に誰かしゃべってくれるといいなというのがあります。

あともう1個はあれですね。「Sli.do」で質問をお受けしているのですが、これで何も(質問が)来なかったら困るので、その時は大谷さんが超良い質問をしてくれるかなということでお手伝いをしてもらっています。

先ほど話したように、オンラインはいろいろチャレンジがあるなと思っていて、今日もがんばって参りますが、1個だけ間違いなく、オンラインはテンションが低くしゃべっているとダメだなというのを超学んだので、とりあえず無駄にテンションを上げていきますね。みなさまよろしくお願いします!

20年間で成熟してきたCTO業界

始めます。「CTOWeek 2023」ということで、4人の話が1週間ごとに進んでいくんだろうなと思いつつ、1週間目の最初なので「ちょっと総論っぽい話とか、キーノートっぽい話をしてね」という話がありました。その時にあれやこれや、「何を話すといいかね?」と思ったんですが、「CTOとは」という話はけっこう今更かね? という気持ちがちょっとあります。どちらかというとその先の話をしていくといいのかね? ということで、(スライドを示して)こんなテーマにしています。

(スライドを示して)この吹き出しのマークが付いているスライドは、大谷さんもしゃべるスライドなのでよろしくお願いします(笑)。

大谷旅人氏(以下、大谷):あ、そうだったんですね(笑)。

藤本:そう。僕の肌感としては20年前ぐらいに比べると、CTOもだいぶ成熟をしてきたかねというのがありますが、実際に個人として、大谷さんは肌感がどうとかってありますか?

大谷:この20年ですよね。

藤本:「直近どうよ?」とかでも。

大谷:20年というのは、私のエンジニアのキャリアと一緒だったりします。キャリアの初めの頃は、CTOというポジションを置いている会社をぜんぜん聞かなくて、エンジニアとしても経営面で、技術的な意思決定を最終的にしている人はなかなか少なかったんじゃないのかなと思います。そこからだんだんとCTOというポジションが定着してきて、昨今ではDXみたいな文脈もあって、だいぶ多角化と干渉範囲が広がっているなという認識ですね。

藤本:すごいまじめっぽい。

大谷:そりゃまじめに話しますよ(笑)。

CTO業界の変遷とは?

藤本:ここは前段なのでアレなんですけど。(スライドを示して)テンプレを持ってきたらすごいアニメーションが付いている。これは僕の肌感でしかなくて、細かいところはズレがあるかもしれないですが、マクロに見て大枠の10年、20年前のCTOはどんなだろうというと、小さいコミュニティであれやこれや情報共有をしながら試行錯誤をしていました。

僕も一応CTOのタイトルを持って17年、18年ぐらいですが、本当に「どんなだっけ?」とか、プラクティスもよくわからない感じのところからスタートしました。それこそ海外の、特にシリコンバレー、ベイエリアの人にあれやこれや話を聞いたりするのをけっこう一生懸命していたのが10年、20年前かなという感じです。

だけどこの10年前とか5年前ぐらいのところで、CTOを置くコミュニティやスタートアップがだいぶ増えてきて、そのノウハウもだいぶ蓄積され、それこそ論文も出てきました。探せばちょこちょこ出てくるとは思うんですけど、(論文)とかでノウハウの蓄積もできたかなと思っています。

(スライドを示して)「いろいろなコミュニティ」。僕もそうだし、たぶん来週話す名村さんも一応、一応というと怒られるな、きちんと入って理事をやっているCTO協会が立ち上がったのが2019年とかなので、(今から)3、4年前ですね。その前進にであるCTOのFacebookグループに数百人の人がいたり、そういうコミュニティがあったり、AWSさんのCTO Nightがありました。

あとはVCから投資を受けると、VCで横のつながりをサポートするコミュニティがだいぶ大きくなってきて、パブリックな情報やセオリーや、「表では言えないけど、こういう時はこうだよね」というセオリーやナレッジみたいなのがすごく広まってきて、これ自体は本当にすごく良いことだなと思っています。

インダストリの拡大によりCTOが増えている

藤本:最近はどんなかね? と見てみると、(CTOが)増えてきていて、すごく良いことだなと思っているのが「インダストリの拡大」です。

いわゆるCTO、特にソフトウェアメインをドメインにするCTOのお仕事が、いわゆるインターネット業界のスタートアップに限らず、そこからさらにいろいろな、それこそ大きな企業や業界でインターネットが必ずしも専業じゃないところでもCTOが増えて、インダストリがすごく増えてきたのが昨今だと思っています。

これはすごくいいなと思っています。どちらかというと、そういうセオリー、ナレッジをきちんと横に展開して、ソフトウェアをより上手に使っていこう、良い組織を作っていこうというムーブだと思います。それはすごく良いです。

ですが、僕らがその次に考えるべきことを、そろそろみなさんと一緒に考えていくタイミングかね? ということで、その次に僕らはどういうことを考えて、どういうことを目指していけばいいのか? にもっとトピックをシフトしていかないと、余計なお世話かもしれないですが、業界全体の進歩がちょっと止まる、あるいはスローダウンしちゃうかなと思います。

そう思っているので、(今日の発表は)そんなことを考えるきっかけになればいいなと思っています。時間もそんなにないので、今日はスライドも少なめでトピックもぶっちゃけ1個だけです。ただそのきっかけになればいいなと思って、今日はこのトピックで時間を使わせてもらおうかなと思っています。前振りは以上です。

すごいCTOがいる状態とはいったいどんな状態なのか?

藤本:じゃあ何を(やるのか)ということを考えた時にということで、次の話にいきます。VPoEやCTOとか、偉い方々がけっこう集まっているので、これはぜひみなさんも一緒にこのタイミングで考えてもらえるとうれしいなと思っています。

今自分がいる会社、みなさんがいる会社で、世界一のCTOがいた。あるいはなんかよくわからないけれど、ある日目覚めたら自分が世界一すごいCTOになっていた。

あくまで1人の人間なので、24時間寝ないで働けるからすごいとか、そういうのはナシですが、すごいCTOがいる状態ってどういう状態ですかね。そうだったらどうなるだろう? というのを、ちょっと考えてみてもらいたいなと思っています。

当然、僕より優秀な方はみなさんの中にも山ほどいると思いますが、それでも「世界一か?」と言われるとわからないと思うし、得意なところや足りないところもそれぞれあると思います。それがすべてすごかったら会社はどうですかね。あるいはどんなことが起こって、今はどんなだろう? というのをちょっと考えてみていただきたいなと思っています。ということで、この質問は事前に大谷さんに振っておいたのですが、いかがですか?

大谷:そうですね(笑)。宿題は事前に(笑)。

藤本:きっと絶対におもしろいことを言ってくれるんだろうなと思っているんですけど。

大谷:そんなにハードルを上げないでください(笑)。

藤本:大谷さんも“すてきCTO”かもしれませんが、やはりもっとすごい人はいるわけです。自分がメチャクチャすごいCTOだったら、会社はどういう状態になっているのか。なにかありますか?

大谷:そうですね。CTOの役割が、私もよくわからなくなっています。技術的な視点から、完璧に経営にコミットするというミッションを完璧にできる人がいるのであれば、プロダクトなどが会社を引っ張り続ける上でも調達にまったく苦労しないとか、技術的なプレゼンスを強く出せて採用にもまったく苦労しなくて、十分なリソースがあるから、技術的な負債も最短で解消できて、セキュリティ的なインシデントも起こさないで、瑕疵・毀損しないとか考えました。

要は全体的に経営プロダクト、BizDevやマーケティング、採用マートの全方位的に憂いがない状態になるのかなとちょっと思いました。

藤本:なるほどね。憂いがない状態か。

大谷:迷い。そうですね。

藤本:なるほどね。

おすすめは自分の理想と現状を文字にしてみること

藤本:ちょっと話が逸れますが、今一番悩ましいなと思っているのはどのへんですか?

大谷:今だとですか(笑)!? たぶん、ぶっちゃけた話、そこは調達ですよね。

藤本:はいはい。

大谷:そういったところで、例えば、PLG型(Product Led Growth)。会社のプロダクトの成長とともに、その会社の資本政策に直結するところが描けているかというと、まだまだできていなくて、そこは悩んでいますね。

藤本:なるほどね。そっか。特にすごく大きなところじゃない限り、CTOが負っている役割にはけっこうグラデーションがあって、特にプロダクトにもある程度コミットしているCTOだと、そういうのはあるっちゃあるかもしれないですね。これは別に正解がある話ではないです。みなさんもこれを機にいろいろと考えてみてください。

あと、個人的おすすめとしては、文字にしてみることです。自分の理想とするところと、現状との差分なので、そういうのをきちんと文字に起こしておくのはけっこういいかなと思って、おすすめをしたいなと勝手に思っています。

マネージャーの役割は「チーム・会社・プロダクト・プロジェクトをきちんとゴールまで持っていくこと」

藤本:(スライドを示して)ちょっと話は逸れますが、「マネジメント」という言葉があるじゃないですか。英単語としてもそうですが、マネジメントというと、「経営」みたいな感じの訳になります。マネージャーというと、EM、エンジニアリングマネージャーみたいな感じで言いますが、「Manage」って何よ? ということです。

本当に経営からチームマネジメントまでみたいな感じで、言葉の定義はメチャクチャ広くて、マネジメント(という言葉)だけ使うと、けっこうこれはconfusingなのでは? とわりと常々思っています。だけどこの中ですごく大事で共通することで、先ほどの話にも噛むのでこの言葉を出しています。みなさんももう聞き飽きている言葉だと思います。

(スライドを示して)ここになんとなく道っぽいやつを出していますけど、本当に経営者からチームのマネージャーまで、一番求められるのはチームなり、会社なり、プロダクトなり、プロジェクトをきちんとゴールまで持っていくことです。

その役割、責務を追っている人がマネージャーで、その責務の範囲やカテゴリはいろいろです。繰り返しですけど、(マネージャーに求められることは)人やプロダクトやプロジェクトをなんとか現状からこの先にたどり着く・たどり着かせることです。その責務を負っているところを広く、最大公約数として表すと「マネージャー」という言葉になるよねと思うわけです。

そのためのセオリーやナレッジは本などがすごくいっぱいあるので、みなさんはそういうのをいっぱい勉強していると思います。当たり前ですが、CTOも一応その意味では、何かしらの責務を持って会社経営をして、ここにたどり着こうというマネージャーだったりするわけです。

それで、その時に「何がなきゃいけないか」というと、当たり前なんですが、ゴール設定がきちんとないといけないよねということです。「ここに行きたい」というのがないと、仕事や責務が「何じゃそりゃ」みたいなことになります。超当たり前な話ですが、今日は1時間で、そういうところに立ち返ってみるきっかけになればいいということで、あえてこの普通の話題を出してみました。

(次回へつづく)

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