早川氏が育休を取得して感じた「制度の穴」

司会者:続いてのトークテーマが最後です。育休を取って思うことについて、総論というか、ちょっと大きなテーマになりますが、それを話してもらえればと思います。早川さんからお願いできますか。

早川賢志氏(以下、早川):わかりました。そうですね、大変さみたいなところは宗廣さんからたくさん語ってもらおうかなと思っているので、僕からは「人事的にやはりこうだなと思った」という話をしたいと思います。

育児休業中は給料が出ないじゃないですか。収入がない状態になって、雇用保険から給付金が出る感じです。「よく調べておかないとけっこう困るよ」ということはみなさんも調べておいたほうがいいし、取る人にもちゃんと案内してあげてほしいなと思ったポイントです。

自分が取らなかったら、たぶん、下手したら(他の人も)あまり詳しく知らなかったんじゃないかなと思います。給付金は一般的に平均月収の6掛けぐらいもらえるイメージがたぶんあって、これはけっこう知っている人がいると思うのですが、実はそれには上限金額があって。端数はちょっと覚えていないのですが、30万ちょっとなんですよね。

それ以上はもらえないということを、僕は(育休を)2ヶ月取ったと話したのですが、それはけっこう後半に調べて知ったんですよね。2ヶ月取っちゃったので、その期間はわりと収入が減ってしまって、収入というか手取りが減ることが発生しました。

出産にもお金がかかるので、わりと家計にダメージを与えてしまったということを(育休を)取ってからわかったというのと、給付金支給までのリードタイムもすごく長いんですよね。

ここで語り始めると長くなるのですが、丸2ヶ月間入金がないようなこともザラに発生するので。一定の現金を持っていないと本当に暮らせなくなっちゃうので、取る時は計画的にやっていかないと、後々痛い目に遭うことがあります。

やはり取ってあらためて思ったのは、今日は特に男性管理職のようなメンバーでウェビナーをやっているのですが、男性が取得できない理由は実はそのあたりもあるのじゃないのかなっていうのはありますね。

女性は産後休暇が義務で、その流れの中でスムーズに育休に入っていく人たちが多いと思うので、家庭の中だと女性の育休が相対的には高くなってくる傾向は間違いなくあるなと思うのですが、そこに加えて男性も2ヶ月間手取りがない感じになると、なかなか長期での家庭のサポートは難しいのかなというのは、本当に身に染みてわかったところがありましたね。

司会者:ありがとうございます。生々しい話にも触れていただいて、ありがとうございました。世の中のペインに気づくきっかけにもなったということですよね。

早川:そうですね。

司会者:法律や制度で賄える分・賄えない部分を、民間の企業が例えば手当てを出していくようなところは各社の動きとしてあるかなと思うのですが、SHIFTも(その制度が)できるイメージはありますよね。

宗廣晋司氏(以下、宗廣):たぶんできると思うんですよね。というか、すでにそういう仕組み・スキームが(SHIFTには)あります。うちの会社のふるさと納税のスキームは、一時的にかかる費用を会社が立て替えてくれて、ふるさと納税の活性化を促進しようという取り組みがあるので、そのスキームを使えばできると思います。会社がそこを一時的に補填するのもできなくはないのかなと。すみません、法律のことが絡んでくるので強くは言えないのですけれど。

早川:そうですね、むしろこの場で言うと「じゃあ実装しようよ」みたいな話に(笑)。

宗廣:そうっすね。

司会者:あはははは(笑)。カルチャーとして(笑)

早川:あくまでも個人の見解という話ですけれど。

宗廣:はい。社風的にはそういうことをけっこうすぐやりそうではあるので。

早川:そうですね。

宗廣:けっこうな人数(が育休)は取っていると思うのですが、ちゃんと計画的にしたほうがいいと思います。僕の場合は1カ月弱ぐらいとったんですが、「あ、そうだ。今月は給料ないんだ」となった時は、もうちょっと計画的にしておけばよかったなと思いました。勉強不足だったかなというのは、取る側もそうかもしれないですが、会社側もそういうようなところが(あったのかなと)。

早川:そうですね。

宗廣:(勉強できるような機会が)あるといいのかなと思いました。別に会社に対するクレームというわけじゃないですからね。

早川:そこの実感がありますよね。やはり実入りがないと暮らすことはできないよねというのは本質的にあります。あまり政治的な話があるとアレですが、制度の名前を変えるというよりは、実を取りに行くところが、取得率を上げていくという議題で考えると、そこがあるかなと思っています。

SHIFTは社会課題を解決する会社みたいなコーポレートビジョンを謳っていて、(育休)取得率を高くすることが社会の課題というわけではないとは思うのですけれども、それによって、仕事における男女間の家事・仕事のバランスを変えていって、将来的に総労働力を確保していく観点で言った時には、そのあたりの制度を整えることは大事かなと、個人的に思っています。

宗廣:SHIFTらしい回答でしたねでしたね、今(笑)

早川:SHIFTはそういう社風の会社ではありますよね。

宗廣:ああ、そうですね。でも確かにそれは、自分は今回反面教師じゃないですが、メンバーが「出産を予定しています」と言った時、「ああ、じゃあ育休取りなよ」と促す場合に、一応制度のことも「こういう落とし穴みたいなのがあるから気をつけてね」「計画的にね」というところを一言添えられるようになったのはプラスでしたね。すみません、話のテーマからちょっと逸脱しちゃいましたけど。

司会者:いえいえ。

早川:変な広げ方をしちゃってすみませんでした。

司会者:とんでもないです。確かに世の中的に取得率が上がらない真因みたいなところがちゃんと探れているのかは重要なポイントですよね。

広川:そうですね。

宗廣:そうだと思っています。

司会者:すごく壮大なお話になりましたね。国家を語るみたいなお話になりましたね。

宗廣:そんなですかね(笑)

早川:そんなつもりでもなかったですけどね。ちょっといきすぎちゃいました、失礼しました。

司会者:いえいえ(笑)。ありがとうございます。

宗廣氏が育休を取得して感じた「家事・育児の両立の大変さ」

司会者:テーマに戻ってのお話ですが、宗廣さん、どうでしょうか。

宗廣:育休を取って思うことですかね。取っている期間でいうと、やはりすごく仕事が好きだなと思ったのもあるのですが、やはり育児の大変さ、どちらかと言うと家事・育児の両立の大変さがすごく身に染みてわかりました。

想像以上に大変なことだったので。あまり表現的にはよくないかもしれないですが、仕事が逃げ場(というわけ)ではないのですが、仕事をしているほうがまだだいぶ楽なんじゃないかなと率直に思いました。

育児・家事の両立のほうが断然大変だと思ったので、そういう意味だと仕事に復帰できる喜びは、その分、多少嵩増しされていたりするかもしれません。

なので、ウィークデーはどうしてもできないという意味だと、夜から朝方にかけてとウィークエンドは、しっかりと育児だけじゃなくて家事もしようと心がけるようになりました。

回答になっていますかね。そういうふうに身に染みましたという。

司会者:身に染み(笑)。

宗廣:はい。育休を取ってわかったというのもありますかね。やはり1日ずっと一緒にいることの大変さだったりは、目が離せないプラスアルファ家のことをしなきゃいけない。自分はいつ休むんだ、奥さんはいつ休むんだろうと思うので、それがきっかけなのかもしれないですが、奥さんの睡眠時間の確保をどうするかをよく考えるようにはなりました。

司会者:ありがとうございます。私の旦那にも聞かせたいなと思いながらも、今ボソッとコメントをしますが(笑)。でもそうですよね。育児をしていると、ほんとうにTo Doがこなせないと思ったほうがいいですよね。「これをやろう」と思っていたことが、1から10あるとして、1出来たらよかったぐらいな。

宗廣:たぶんそうですね。

早川:ほんとうにそうだと思いますね。なので、やはりできることは自分でやろうと思うようにはなりましたね。

司会者:ありがとうございます。