育休開始前で大変だったこと

司会者:続いて次のトークテーマに移っていければと思います。「育休開始前、大変だったことは?」と。挙げるときりがないとは思いますが、まず早川さんからお願いできますか。

早川賢志氏(以下、早川):そうですね。先ほど宗廣さんの話もありましたが、僕の場合はちょうど目標を設定するぐらいのタイミングで育休の取得を開始したので、その設定が大変だったかなというのはありますね。

僕の目標設定というか、ラインマネジメントの業務は上席に引き継ぎました。「今組織がこういう感じになっていて、次のフェーズはこうなっていたいので、誰々には次にこういう経験値やロールを積ませたいのです」みたいなことは、ふだんハンズオンで見ている時にいちいち言っていけばいいのですが……。

僕は2ヶ月休みを取ったのですが、(育休を挟む影響で)3ヶ月ぐらいそこに触れられないとなった時に、事前にこういった期待値を考えるようなところは、大変だったと言うよりは一生懸命一緒に考えていったこと(だった)かなということはなんとなく覚えていますね。

司会者:引き継ぎにおいて、ファクトだけでなく早川さんの思いも一緒にしっかり引き継いだうえで(取り組んでもらったと)。

早川:そうですね。

司会者:「早川さんから直接」ではないけれど、ちゃんと本人に伝わるようなかたちで引き継がれたということなのですね。

早川:そうですね。

司会者:ありがとうございます。宗廣さん、いかがですか。

宗廣晋司氏(以下、宗廣):そうですね。僕の場合はちょっとポジションというか、役職的に判断を求められるシーンが多かったりするので、決裁ラインや稟議フロー、そのあたりの引き継ぎや権限委譲が若干大変だったなと記憶しています。

先ほどの話、質問の続きにもなるのですが「ああ、素敵です」「どんどん取ってください」と言われたあと、マネージャー層からは「あれどうします?」「これどうします?」と、いろいろその間(育休取得期間)のことを、僕が想定している以上に気にしてもらったりして。

すみません、今の質問とちょっと乖離してしまうかもしれないですが、先ほどの質問の続きで、そういったところも後押しとしてはありました。大変ではありましたが、協力をすごく得られたというところですかね。

あとはけっこう長いこと一緒に働いていて、僕ができる作業や業務も把握してもらっていたので、そのあたりは信頼して委譲できたかなと思います。だから、すごく大変なことはそんなにはなかったかなと記憶しています。上長にもそのあたりの巻き取りを協力的にやってもらったので。楽でしたね。

司会者:うふふふふ(笑)

宗廣:大変ではなかったのですが、不安はありましたね。その時はどちらかというと(自分が)仕事ができない不安を僕は持っていました。

司会者:ありがとうございます。

宗廣:すみません、このテーマの回答にはふさわしくないような。

司会者:いえいえ、とんでもないです。ありがとうございます。信頼して委譲できたのは、日々信頼関係を築けていた(からという)ことが重要なのかなと感じました。

仕事が属人化しないために心がけてきたこと

司会者:ふだんから自身が担われている仕事が属人化しないようにとか、型化していざ引き継ぐことになったとしても誰でもできるようにと、日頃から心がけていたのですか。日々の姿勢が、いざ不在になった時に寄与したことはあるのでしょうか。

宗廣:どうですかね。会議で言うと、自分がリードする内容は全部やはりみなさんに聞いてもらっていて。どこをポイントに聞いているかもあったりします。

私の組織の配下は複数チームに分かれていて、一般的な組織体系にはなっているのですが、そこの連携をいつも意識的にやっているので。それを各グループ長がしっかり連携を取ってもらっていたというところかなと思っています。

司会者:うふふ(笑)。ありがとうございます。

宗廣:なんかすみません。組織の自慢みたいになってしまいましたけど(笑)。

司会者:それだけ魅力的な、外にたくさんアピールをしたい組織ということですね。

宗廣:まあ。ありがとうございます。すみません(笑)。

育休開始のスケジュールは「えいや」で決めた

早川:思い出したんですが、僕は2人目の子どもの時に育休取っているんですよ。上の子がまだ2歳半ぐらいだったりするので。仕事のことではないのですが、妻が入院している間、子どもが生まれてからは一応義理のお母さんに手伝ってもらったりはしたものの、その期間は仕事をしつつ(の育児)だったので、そこが純粋に大変だったのは思い出しました。

司会者:へええ、確かに(そう)ですね。

早川:はい。家族構成で、上の子どもがいる純粋な大変さはあったかもしれないです。

司会者:そうですよね。大変なシーンは仕事だけじゃないですもんね。

早川:そうですね。育休開始時期の始点をいつにしようかを決めきらない状態でスタートしちゃったので、スケジュールが大変でした。

宗廣:わかります。僕も(育休取得を)いつから(するか)というのは、「だいたいこのぐらい」と決めていたのですが、明確な開始日の決め手がなく迷いました。

司会者:そこはもう「えいや」で決めていくのですか。

宗廣:もう勢いですね。

司会者:勢いで決めるものなんですか(笑)。

早川:スケジューリングが本当に大事だというところは感じていましたね。

司会者:ありがとうございます。いろいろ大変だったところは、ナレッジというか、反省点も含めてたくさん出たのかなとは思います。ありがとうございます。

育休中と復職後の働き方の変化

司会者:続いてのトークテーマですが、復職後の働き方ですね。仕事と育児のやりくりについて話してもらえればと思っています。まず、宗廣さんから話してもらえますか。

宗廣:働き方は、実はそんなに変わらなかったというところですかね。妻の予定に合わせてお風呂に入れる時間をどう確保するかとか。ミルクをあげる時間は夜で、深夜から朝方にかけては自分がやる分担で、しっかり夫婦間でコミュニケーションを取りながらやっていたので、大きくは変わらなかったかなと思います。

ただ、お風呂の時間だったり、どうしても仕事柄、ミーティングが夕方に入ったり、夕方というか業後に入るケースがあるので、そこを入れないようにブロックしたり、ずらしたりするようなところを工夫したぐらいですかね。

司会者:では、面接やミーティングの調整における周りの理解があってきちんとスケジュールは確保されているんですね。

宗廣:そうですね。調整させてもらったという感じです。ただそんなに(お風呂の)数が多いかというと(そうではなく)、その時間帯は週に5日しかないわけで、(つまり)5回調整すればいいだけの話です。毎日そうしているわけでもなく分担をして行っているというところで、大きな変わりはないですね。

司会者:ありがとうございます。お風呂は本当に大変ですもんね。体を冷やさないようにとかケアしてたら、絶対子どもの数プラス1名大人が必要と言うか。

宗廣:そうですね、はい(笑)

司会者:けっこう慌てますものね。

宗廣:最初は不慣れなのでどうしても時間がかかるとか。最近はもう慣れてきているのでアレですが、最初のほうはけっこうそういった意味では苦労したかなということは記憶していますね。

司会者:へえ、じゃあお子さんもパパもママも成長しているということなのですね(笑)。

宗廣:きれいにまとめますね(笑)

司会者:はい(笑)。きれいにまとめたところで、早川さんはどうですか。

早川:今の話は「5分以内に保湿して」みたいな。お風呂の後のゴールデンタイムみたいなのもありますね。

司会者:そうですね、本当に。ホカホカのうちに。

早川:ですよね(笑)。僕の復職後の働き方は、けっこう変化があったかなと思っています。正直、ラインマネージャーは業務が非定型で、特に僕らのようなベンチャーフェーズの会社だと、「よくわからないプロジェクトはまずこっちで整理してやっていく」みたいなところがもともとあって。

いろいろやるようなところはそんなに変わっていないのですが、育休を取っている間に、メンバーへの権限委譲が進んだんですね。

なので、定型業務のほとんどは実は下に引き継ぐことができました。それがよかったかなと思っています。復職後は実はちょっと視座の上がったミッションを設定できたりするので、干渉範囲や、ゴール設定がより広義だったり、ちょっとレイヤーの高いようなものが(僕も)設定できていました。

逆に言うと、変な言い方ですが、育休を取ったことによって次の職務に近づいたようなところがありました。

あとは仕事と育児のやりくりでいうと、朝に上の子を保育園に送るのは僕のミッションだったり、18時以降ぐらいに子どもがお風呂に入る時間があって。(お風呂の時間は)やはり子どもの人数プラ1(の)大人(の数が)必要だというところは本当にそうだなと思っているので、よっぽど何か予定が入っていない限りはスケジュールをブロックさせてもらって調整している感じですね。ゴールデンタイムに一生懸命(子どもの体の)保湿(をする)。

司会者:ゴールデンタイムに(笑)。

早川:はい。塗っていますね。

司会者:ありがとうございます。マネジメントする立場として、取り組むべきところにちゃんとフォーカスをして取り組めるようになって、組織力自体が底上げされたのはすごく新しい気づきと言うか、すばらしい視点でだなと思います。

早川:そうですね。メンバーにこんなことを言うと怒られてしまうかもしれないですけれども(笑)。任せるとある意味強制的にしっかり育つと言うか、能力値や視座が上がっていったりするのだなという(ことがわかった)のは、帰ってきてすごくうれしかったところでした。(逆に)悲しかったのは、自分なしでも組織がけっこう目標達成していたのですよね。

なので、「早川不要論」みたいなことを自分で感じて。その後ネタにして使っていたりはするんですが。本当にワンランク(組織の)ステージが上がったのは感じましたね。

宗廣:そこは僕も同じですね。

早川:ですよね。ありますよね。

宗廣:(自分は)要らないんじゃないかと。そういう不安は若干生まれましたね(笑)。ただ、やり取り、やりくりが変わったという意味だと、仕事の内容は若干変わったかもしれないですが、やはり「もっとがんばろう」と純粋に思いました。

早川:そうですね。

宗廣:いいきっかけだったかなと思っています。

早川:目標設定をメチャクチャ考えましたね。「次はどうしようか」みたいな(笑)。

司会者:組織が底上げされたので。

早川:そう。自分が次にフォーカスするところを選ばなきゃいけないっていう。

司会者:へえ、すばらしいですね。私もメンバーという立場ですが、確かに気づかないうちに、(組織の力は)上席の人間に依存している部分があるんだろうなと思います。

早川:なるほど。

司会者:不在になると、やはりそういうところを見直すきっかけになると言うか、自分自身の気づきにもなるのだろうなというのは、すごくイメージとして湧きます。早川さんは2ヶ月も休みを取っていますものね。

早川:そう。2ヶ月取っていました。

司会者:この期間、数日ではなく2ヶ月もいないとなると割り切れると言うか、不安ではあるのですが、メンバーとして覚悟を持って自走していかなくちゃいけないという気持ちになるだろうと思います。

早川:そうですね、その覚悟をもってやってくれたからというのは、やはり(組織が底上げされた理由として)大きいかなと思いますね。

司会者:メンバーという立場でも嫁という立場でも、個人の見解も入りますが、育休は長期で取ってしまったほうが全員が幸せになるんじゃなかろうかと捉えております。組織力向上って。

早川:確かにそういうところはあると思いますね。

(次回に続く)