「目的」と「本当に必要なもの」にギャップがある場合のベストプラクティス

及川卓也氏(以下、切通):2個目が「私(及川さん)に質問です」というもので。ちょっと質問がわからないところがあるんですが、「発表では事例が紹介されていましたが、認知から行動でギャップがあるプロダクトの場合、一般(的)に良いプラクティスはあるのでしょうか?」。

これはちょっと切通さんに一緒に考えてほしいんだけど、「認知から行動でギャップがある」と言っているのは、このNode-AIのようにAIツールが必要なんじゃなくて、実際になにか要因分析が必要というのが本当の目的だけれど、それをたどっていくと最終的には簡単に使えるAIツールが必要というところにたどり着くという、そのギャップのことを言っているんですかね?

切通:そうですね。僕はそれなのかなと思いました。「事例が紹介されていました」というのはアレですよね。(僕が)「事例でまず想起をする」と言っていたので、そこなのかなと。まさにNode-AIのところなのかなと思いましたね。

及川:なるほど。わかりました。そうなんですよね。一般(的)に良いプラクティスがあるかというと、難しいかなとは思います。人って自分が行動する時に、どういったペインがあるかとか、ゲインを求めているかをしっかりと自分の中で分析して、腹落ちしてなにかやっているとは限らないと思うんですよね。なので、やはり自分の心がおもむくままになにかを求めてしまうかたちにはなると思います。

だからNode-AIがやろうとしていることというのは、一種王道だなと思っていて。「最終的に欲しい」という、その時に顧客の方が考えているものをリードにしたかたちにして。「でもその人が本当に欲しいものはこういうものじゃないか」というところにうまくストーリーをつなげていってあげる。

それを例えばマーケティング的なことでやるのも良し、もしかしたらプロダクトとしてそういったような……。うまくマイグレーション(する)というか、そういうものを作り上げてしまってもいいんじゃないかなと思います。

やはり顧客って、自分が今欲していると思っていることを、「そうじゃない」と説得されたりすることは別にうれしいわけではないので。本当に欲しいものに自然にたどり着くようなストーリー展開なり、プロダクトの中でのオンボーディングみたいなところの流れをうまく作ってあげるのがいいんじゃないかとは思いました。

ツールの差別化で工夫しているところ

及川:ということで、ちょっとこれは終わりとしまして、あと2つぐらい(質問が)あるのでサクサクといきたいと思います。順番でいきますね。「最近はノーコードAI開発ツールもたくさん出てくるようになりましたが、プロダクト・マーケティング面でなにか工夫・差別化していることはありますか?」。

切通:たくさんあります(笑)。そうですね、やはり一番Node-AIの売りというか強みだと思っているところは、裏に研究開発チームがいるというところが1つの差別化ポイントなのかなとは思っています。

まずは先ほども言ったとおり、データ分析に関して本当に精通をしていて、研究開発をしているチームが我々の背後にはいます。しかも、もちろんレベルが高くて、国際学会とかトップカンファレンスにとおるようなチームがいるので。そことすごくつながっているというところがあります。

しかもただつながっているだけではなくて、例えばライブラリレベルで連携しているところもあるので。1回前の例だと、トップカンファレンスにおおしてから1ヶ月そこらでNode-AIに搭載した例もあったりします。そういった技術の尖った部分は、やはり1つ大きな差別化ポイントかなと思っています。

ちなみにNTTでやっているので、NTT研究所ともつながっていて、そちら側の尖った技術も入れることができるのも、1つ大きなポイントかなとは思っています。

あとポジション的な話ももちろんあって。ノーコードAI開発ツールはいろいろありますが、途中僕のほうでコラボレーションというところに特化しているという話をしたんですけれど。

やはり分析に対して効率化するツールが、だいたいノーコードのAI開発ツール。データサイエンティストの置き換えをするとか、データサイエンティストが楽になるという言い方をしていますがそうじゃなくて、ビジョンにもあったとおり、我々としてはなるべくいろいろな企業さんにAIで課題解決をしてほしい。つまり、AIプロジェクトを成功させてほしいと思っているんですね。

そのAIプロジェクト全体に対して寄与するというところは、Node-AIが特化しているところかなと思うので、そういったポジションでも1つの差別化、工夫ポイントかなと思っています。

及川:あと私から一言だけ言うと、切通さんが自己紹介していたように、切通さん自身が研究者でもありデータサイエンティストでもあり。そういう人がプロダクトマネジメント、マーケティングもやっているというのは、けっこう差別化要因になると思うんですね。

本当にわかっている人がどういうメッセージを出せばいいかを考えているというのは、一緒に伴走している私から見ても非常に強い強みです。目に見えるところで具体的に何が違うかはまだなかなか言いにくいところはありますが、今後こういったところはどんどん出てくるんじゃないかなと期待しています。

「Node-AI」が誕生した背景

及川:じゃあ次の質問にいきます。「このプロダクトはそもそもどうやって生まれたんですか?」と。「マーケットという存在を確認してから生まれたのか、それとも社内でトップダウンの指示みたいなかたちで作ってから顧客を探していったのか、どっちか」という質問です。

切通:これは前者かなと思ってはいます。実は後者の側面もちょっとありはするんですけど、前者がすごく大きいかなと思っています。というのも、我々今はNode-AIチームとなっていますが、前身のチームがあって。そこのチームで何をしていたかというと、いわゆるデータサイエンティストのチームだったんですね。

そこで製造業のお客さんに対して、いわゆるAI案件をやっていました。製造業のお客さんに対して、例えばデータをもらって、品質予測みたいな課題をデータサイエンスの力で内製で解いていって、それでお客さまに結果を渡すことをやっていました。

今出てくるかわかりませんが、「NTT Com AI」「製造業」とかで検索していくと、そういうニュースリリースを出しているので、それを読んでもらえるといいかなと思います。

そういったものをやって、ニュースリリースとかを出していく中で、やはりお客さまの中でもそういうのをやっていきたいと言う方がすごく多いのも感じていました。なので、おそらくお客さまがAIの開発をできるというところは、かなりニーズがあるんだろうなというのは、潜在的には思っていたのもあります。

あと我々自身としても、毎回コードを書いて分析したりするわけですが、やはりそれは非効率的だなって。自分たちがデータサイエンティストとしてやっている時に思うことがあったんですね。

自分たちのニーズとしても、おそらくお客さま(のニーズ)も一緒なんですが、ノーコードですぐに効率的にデータ分析ができるところに、かなりニーズがあるんじゃないかなとは思っていたところもあります。

さらに言うと、コラボレーションも自分たちとかお客さんとやっている時に出てきたニーズだったりはしていて。どうしてもコミュニケーションコストがすごく多くなって、むしろそちらが大変だという話もあったりして生まれたところなので。

やはりトップダウンというよりは、内発的な理由と、あとマーケットを実際に相対してきたところからNode-AIが生まれたというのが結論になるかなと思っています。

及川:私からも補足すると、このトップダウンの指示によりというのは、なにか大企業的なネガティブな感じがしていて。

切通:そうですね(笑)。

及川:NTTコミュニケーションズさんの中で、そういったものがぜんぜんないとは言えないとは思うんですが、一方で、私も長く技術顧問をやらせてもらっている中で、そういったものよりも、むしろ切通さんがいるような研究開発に近い部署は、顧客をはっきりと見つけていなくても、「こんな技術でこんなプロダクトが作れました。これをどこに当てていこう」というような、いわゆるボトムアップのかたちで。

Howから始まって、その後しっかりとビジョンだとか対象のマーケットだとか顧客を探してというやり方。後付けなんだけれど、これはこれで整合性が取れると思うので、こういうやり方のほうが多いかなと。

ちょっとトップダウンは、大企業的に……。「なんか上司が無理強いしてきて」みたいなのがあるとしたならば、NTTコミュニケーションは、別にポジショントークじゃないけれど、そんなに(そういったものは)多くない。技術主導で始まるやつは存在するけれども、それでもちゃんと整合性を取れるようなアプローチを取っているのが多くなっているなとは思います。

ということで、ちょっと質問が1個だけ残ってしまいましたが、時間となったので、以上で終了としたいと思います。