ゲーム以外のすべての時間を勉強に費やした

富永裕貴氏:クラウドエースに入っていろいろやっていたのですが、全体的にはだいたい勉強していました。『FF XIV(ファイナルファンタジーXIV)』は継続してやっていたのですが、それ以外の時間はやることがないというのもありますが、だいたい勉強をしていました。

だいたいがどれくらいかというと、本当にすべてだと思ってほしくて。『FF XIV』というゲームはだらだらと長い時間ずーっとやるようなゲームではなくて、「じゃあ今日の夜9時から4時間このボスを倒す練習をしましょう」と仲間内で決めてやるゲームで、そんなに時間を取られないゲームなんですね。昔のゲームみたいに朝から晩までレベリングするとかそういうことはなくて。

なので休日に『FF XIV』をやるとしても4時間〜6時間くらいプレイするだけで、あとの時間は全部暇なので、会社に行って1人孤独に暗ーい会社の部屋で勉強をしていました。

これはトライビートに最初に入ってからも同じで、基本的にやはりなにもできない時はすごく勉強をしていました。今でこそ勉強に費やす時間は減りましたが、当時は本当に死に物狂いで、空き時間をとにかく見つけた瞬間になにか記事を読むとか、読んだものを自分で実践してみるとか、そんなことをたくさんやっていました。

トレーナー資格を得て表彰をされたのですが、その勉強していたことがいろいろなことに結びついているので、ラクをしていたわけでは決してなかったと思います。

これが実は今日一番言いたかったことで、ラクしてうまくいくことはたぶんありません。もしかしたらそういう方もいるかもしれませんが、少なくとも私の経験上は、やはり勉強こそがすべてを解決するみたいな、そんな感じでした。

これは幸いなことに、高校受験がけっこうためになったんですね。高校受験は塾に通っていたのですが、偏差値がすごく低くて「このままだとヤバい」と塾の先生に言われて、「じゃあ本気で勉強します」と宣言して、学校と部活以外の時間は寝る間も惜しんで、お風呂に入る時間も惜しんでだいたい勉強していました。

なんなら修学旅行の間もずっと勉強していましたっていう、ちょっとヤバいヤツでした(笑)。観光しないで近くの喫茶店に1人でこもって勉強して、夜のホテルでも本当は友だちと談笑する時間が楽しみなはずなんですけれども、速攻で自分の部屋に帰って勉強していました。

その勉強する習慣が大人になって活きたんだなということに、この歳になって気づきました。「なんで受験勉強するんだろう?」と思う子どもたちがもしかしたら今もいるかもしれませんが、僕は大人になってようやく受験勉強をする意味がわかった感じです。

スクエニで発揮できた自分の価値と感じたモヤモヤ

クラウドエースの中で表彰もされて、ある程度システム開発をやると、なんかやりたいことがなくなったんですね。個人として組織の中でできることがなくなってしまってちょっと飽きてきたので、「じゃあパブリッククラウドじゃ絶対にできないことってなんだろう」と考えた時に、オンプレミスデータセンターが頭をよぎったんですね。

ゲームのためのイベントでやっているプロデューサーが、ゲームのアップデート情報を配信する番組で、ちょいちょい採用の宣伝が挟んでいたので、『FF XIV』というゲームが採用活動にけっこう力を入れていて、エンジニアを募集していることは知っていたんですね。

スクウェア・エニックスの採用ページを見たら、『FF XIV』のインフラエンジニアという、ドンピシャっぽいことが書いてあったので「ちょっと応募してみよう」と応募してみたら、スルスルと採用されてしまって、「え? じゃあスクエニに行きます」となったのが2年ちょっと前ですね。2020年のことでした。

行ったはいいのですが、やはりオンプレミスはあまりにも知らないことが多すぎて、パブリッククラウドで育ってきた自分にとってはもう未知の領域ばかりで、もう本当に大変でした。

でもまぁスクウェア・エニックスの『FF XIV』のチームは、本当にすばらしい人格者ばかりで、僕のことも嫌な顔をせず受け入れてくれますし、その中で僕にしかできないこともやはりいくつかありました。『FF XIV』のために動いているいくつかのサーバーを移設したり、パブリッククラウドと両方使うためにどうしましょうみたいなことをやったり、そういうところで自分の価値を発揮できました。

スクウェア・エニックスの『FF XIV』チームのすばらしいところは、みんな当たり前のように『FF XIV』が好きで、当たり前のように毎パッチ毎パッチを楽しみにしているところです。みんなが同じ方向を向いてエンジニアリングをしているというのが当たり前の環境だったので、これは今まで私が所属してきたトライビートと、クラウドエースにはないすごくいい点だと思いました。

当然そうやって仕事をしていると、エンドロールに自分の名前が載っているんですね。これには本当に感動して、初めて載った時はガチ泣きしちゃいました。『FF XIV』を9,000時間ぐらいやっているのですが、自分が最も愛したゲームに自分の名前が載っていて、ちょっと感極まってしまいましたね。今も話しながらちょっと泣きそうになっています。

でも、結局自分の最も優れたパフォーマンスは出せていない気がすると、ずっとモヤモヤはあったんですね。やはりパブリッククラウドとそれにまつわるオープンソースソフトウェア、フロントのNext.jsとかNestJSとかにすごく興味があって、そっちをやりたいとやはり考えちゃって。

「エンジニア組織の成長に寄与したい」という思いが出てきた

そうやって考えるのと同時に、エンジニアリング組織論というものにちょっと注目し始めたんですね。本を紹介してもいいですか? そんな予定はぜんぜんなかったのですが。これですね、みんな読んだほうがいいと思う、個人的超ベストセラーがこちらの本です。

この本は本当に組織の中でエンジニアリングをする人すべてに役立つことが書いてあります。この本を読んで、「こういうことに取り組むお仕事をしてみたいな」と思い始めたのですが、組織の成長に寄与する上でスクウェア・エニックスという会社はあまりにも自分にとって大きすぎるので、この組織にいたらできないなと思ったんですね。

じゃあどこに行ったらできるだろうと思った時に、都合のいい会社があったんですね。という話をする前にちょっとCMを挟ませてください。

なんのページだという感じですが、そんな私が9,000時間以上プレイし愛した『ファイナルファンタジーXIV』というゲームは、フリートライアルをやっています。「FF XIV」「フリートライアル」とかで検索してもらえれば絶対出てきます。

オンラインゲームをやったことがない人は、当然オンラインゲームに抵抗があると思います。私も初めてやる時にはちょっと怖かったので、気持ちはすごくわかります。

そんな方に向けて、朝日新聞にこんなコラムが投稿されています。『FF XIV』のプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹さんのコラムで「人は、なぜオンラインゲーム(MMORPG)をプレイしないのか」というタイトルで検索すると、吉田直樹さんの記事がヒットすると思います。

オンラインゲームなんですが、パーティプレイを強要されなくなってきています。すべてではありませんが、1人でも十分楽しめるゲームにだんだん進化を遂げています。本当にシナリオもゲームも、そのシナリオを彩る音楽やフィールドもすべてがあまりにも良すぎるので、年末年始特にやるゲームが『ポケモン』しかないという方はぜひ『ファイナルファンタジーXIV』もやっていただけるといいと思います。

(質問を見て)「PKなどはないのでしょうか」、PK(プレイヤーキラー)という要素はありません。対人はありますが、フィールドでいきなり敵対的なプレイヤーに襲われることはありません。とにかく自分がやりたいようにゲームができて、基本的にそれを邪魔するものはありません。

コンテンツもたくさんありますが、気が向いた時にやりたいことをやればよいというふうに設計されているので、現代的なオンラインゲームと言えると思います。

フリートライアルでは、だいたいレベル90まであるうちのレベル60まで遊べます。シナリオのボリュームとしては、大作RPG2本分くらいを無料で遊ぶことが可能なので、ぜひ『ファイナルファンタジーXIV』フリートライアルを手に取っていただき、もしお気に召しましたら購入していただけると幸いです。

月額は1,400円くらいです。ガチャは一切ありません。月額1,400円に加えて、気に入ったファッション装備、おしゃれ装備などがあれば追加で固定の金額を出して購入すればいいというビジネスモデルになっています。

「確実に貢献できるはず」と思いクラウドエースに出戻り

というCMを挟みまして、クラウドエース株式会社にまた戻ってきたわけですね。スクウェア・エニックスに2年在籍して、2022年4月にクラウドエースに戻ってきました。

先ほどお話しした組織のテクニカルマネジメントを考えた時に、非常に都合が良かったんですね。これはちょっと言い方が悪いかもしれませんが、そこに在籍している人たちのことは非常に尊敬していて、そこの力になりたいと思った時にすごく都合が良かった。

なにより、クラウドエースのビジネスの主な要素であるGoogle Cloudは資格もたくさん持っているし、かなり詳しいはずで、クラウドエースが生業としているシステム開発における、フロントエンド、バックエンド、それらの非機能要件、それらを実行するためのクラウドアーキテクチャやデータ分析などにおいて、ある程度パフォーマンスを出せることが自分でもわかっていたので、確実に貢献できるはずだと思っていました。

クラウドエースを一度辞める前に、高校の頃からの親友がちょうど転職を考えていたので、「こういう会社があるよ」と紹介したら、今システム開発部という部署の部長職にいるんですね。同い歳の高校の親友が。

組織構造上では直属の上司と部下という関係なので、これはすごくおもしろいと思って振る舞っています。社内だと上司と部下の、「ごっこ」じゃないですけど、上司と部下っぽいコミュニケーションを意図的にしているので、「こいつらの言葉遣いおもしろいな」と周りから見られていると思います。

ただですよ、全部が順風満帆なわけではありませんでした。「組織的なテクニカルマネジメントをしたい」と言って戻ったはずなのに、やっているのは8人チームのピープルマネジメントなんですよね。みんなのメンタリングとか。

「なんかもうちょっと広い領域のことを考えたいぜ」とモヤモヤしていましたが、今日この登壇をする前に開催されていた社員総会で配置替えが発表されていて、「組織のテクニカルマネジメントをやる新しい新設部署に行け」と言われていたので、ようやく1月からはやりたいことができるなという感じで、ちょっとテンションが上がっています。

クラウドエースは、私が最初に入っていた頃はエンジニアが6人くらいしかいなかったのですが、今はもう100人ぐらいいるんですね。100人くらいいるとやはりフットワークがメチャクチャ重いんですね。これが嫌で嫌でしょうがないので、自分が本当に解決したい課題に対してエンジニアリングをサッとやるために、同じくクラウドエースで仲良くなった人と2人でUTAHAという会社を作りました。

(次回へつづく)