セッションの概要と、鈴木の自己紹介

鈴木健太郎氏(以下、鈴木):よろしくお願いします。このセッションでは、「ざんねんなプロダクト開発事典」というテーマでお話しします。

人類の誕生から500万年。人類は文明を持ち、世の中にはさまざまなプロダクトが生まれ、プロダクトもさまざまに進化してきました。

そして令和の現代。プロダクトもプロダクト開発も高度化したはずなのに、世の中にはまだ“ざんねんなプロダクト開発事例”がたくさんあります。

このセッションでは、これまで私が見聞きし、体験した“ざんねんなプロダクト開発事例”をいくつか紹介します。そして、(その)“ざんねんなプロダクト開発事例”から学びを得て、素敵なプロダクト開発を目指すためのヒントになればと考えています。

このセッションは、私、鈴木健太郎がお話しします。TwitterではPMに関する記事や雑感などを日々投稿しています。年齢は39歳で、開発ディレクター/PM歴は、新卒からほぼ一貫して続けているので17年になります。大手上場企業3社を経て、現在は株式会社Timersというベンチャー企業でプロダクトマネージャーリーダーという職を担当しています。

一応、私が担当しているプロダクトを簡単に紹介すると、家族の絆を深めるプロダクト「Famm」というブランドを運営しています。これはお子さまの写真や動画を共有するアプリから、今だと撮影会やママ向けのキャリアスクール、出張撮影など、「子育て家族の理想のライフデザインに寄り添うブランド」を展開しています。

ご家族連れの方や我々のプロダクトに興味がある方は、資料にQRコードを載せているので、ぜひご参照ください。

なぜプロダクト開発では「どうしてこうなった?」が起きてしまうのか

では話を戻して、本題に移りたいと思います。「プロダクト開発って複雑ですよね」という話からです。

(スライドを示して)こちらの画像ですが、海外のPMコミュニティで投稿されていた画像です。文字の部分に関しては全部英語だったのですが、非常におもしろい画像だったので、私が英語の部分を日本語にして投稿してみたところ、5,000近い「いいね」がついて、私のTwitter史上一番バズった記事になったという感じです。

「いいね」がついたということは、共感度がとても高い画像だったのかなと思っています。また、先ほど話したとおり、こちらは海外から持ってきた画像なので、日本でも海外でもプロダクト開発では往々にしてこのような状況に陥ってしまいがちなのかなと思っています。

なぜプロダクト開発ではこのような「どうしてこうなった?」という状況が生まれてしまうのでしょうか。(スライドの)このページ以降では、私が今まで経験したり見聞きしたりした、“ざんねんなプロダクト開発事例”になってしまうケースをいくつか、時間の限り紹介できればと思っています。

本当は、パッと思いついたもので20事例ぐらいあったのですが、今回は(発表時間が)20分と時間が限られているので、6個か7個に絞って紹介させてもらえればと思います。

もし共感できる問題があったり、あと、この後に解決事例のケースのケースみたいなものも簡単にお話ししますが、もし共感(できるもの)などあったら、コメントをいただけると励みになります。

今回は3つのパート、企画と開発と運用に分けて、それぞれのステップで発生しがちなざんねんなプロダクト開発事例、(ざんねんな)ケースを紹介させてもらえればと思います。

企画ステップの問題 プロダクトゴールを決めていない

まず1つ目です。プロダクトゴールを決めていない問題です。これは新しいプロダクトや機能を作る際に、プロダクトアウトというか、機能ややることありきで企画が進んでしまっている場合に、こういう問題に往々にして陥りがちだなと思います。

こういった際に、質問すること自体は非常に前向きで正しいことだと思いますが、メンバーが「この企画の目的、ゴールって何ですか?」と聞くと、担当者から「まだ今は決められないな」「わからないな」みたいな感じで「とりあえずやってみよう」という感じに丸め込まれてしまうケースを、過去の経験からたくさん見てきました。

プロダクトアウトでスタートすること自体は私はそんなに悪いとは思わないのですが、ここで大事なことは、「企画をリリースして顧客の何をわかろうとしているか」というところは、忘れてはならないポイントだと思います。

また、PMが「プロダクトゴールはこれだ。これにしましょう」みたいな感じで宣言して決めたとしても、実態としてはだれも腹落ちしていなくて、みんながみんな好きなプロダクトゴールみたいなものを思い描いていたり、目指しているような状況に陥ると、一体感が失われて集中力がなくなってしまう状況になってしまうかなと思っています。

プロダクトの(企画)初期や機能リリース初期に関しては、プロダクトビジョンまで決めることは必ずしも必要ではないと思います。しかし、初期でなにを検証するのかとか、どういった状況をわかりたいのかといったことを決めることは、仮説検証をして次のステージに早く進むために必要なことだと思います。とにかくここを決めないと、時間だけがやたら過ぎてしまうという感じですね。

このような“ざんねん”を避けるアプローチ事例としては、まず「直近で解決したい顧客課題は何だっけ?」というところに絞って、そこに対しての企画を絞り込むようなことをすることをおすすめします。また、「関係メンバーとそもそもゴールイメージがすり合っていなさそうだ」という雰囲気を感じたら、きちんと議論やワークショップの時間をとって、メンバーとゴールイメージをすり合わせることもおすすめします。

企画ステップの問題 Input過多/Output過多問題

続いての問題です。「Input過多/Output過多問題」と私は称しています。Outputに関しては、このあとに話す運用フェーズの話とちょっと近くなるんですが、Input・Outputとセットにしたほうがわかりやすいので、このタイミングで説明させてください。

まずInput過多に関して、ある大学教授が言っていた話ですが、日本企業の大きな問題として、オーバープランニング、オーバーアナリシス、オーバーコンプライアンスみたいな状況に陥って、企画がなかなかモノにならない。作りきれなかったり、あとは出来上がったものの、なんかぼやけてよくわからない、尖りがないような状況に陥ってしまう場合があります。

一方で、じゃあOutputを重視すればいいのかというと、これも過剰だと良くないという話です。やたらと指示しまくったり、現場が忙しすぎる状況を作り出してしまうと、現場の人や指示する側も、(問題を)発見する時間が取れず、最終的にアイデアとモチベーションが枯渇してしまう状況に陥るのではないかと考えています。

このOutput過多の状況が続くと現職への視野が狭くなって、最終的に転職を考えがちな状況になったりするかなと思っていて。実際、私もそういうケースをけっこういろいろ見ているという感じです。

このような“ざんねん”を避けるアプローチ案としては、「なるべく小さく早く実績を見る方法を考えてみる」ことが大事かなと思います。

先ほど過剰な計画、分析、規則にとらわれすぎるのは良くないという話をしましたが、これらに関しては絶対に時間を取って検討すべきだとは思っています。ただ大事なこととしては(計画、分析、規則)を検討した上、リスクマネジメントを予測した上で、取れるリスクはちゃんと取りにいくことが大事で、チャレンジングな姿勢やプロダクトに尖りを生むことで、わかりやすいプロダクトになるのではないかと思っています。

またOutput過多に関する話でいうと、とりあえずなんとか時間を見つけて、分析やふりかえり、社内勉強会などでInputする時間を少しでも確保すると、アイデアをストックし続けることができて枯渇しないような状態になるのかなと思っています。

(次回につづく)