コミュニケーションの本からインプットするのも効果的

小林篤氏:(コメントを見て)「コミュニケーションの本でインプットするのは効果的ですか?」と質問が来ました。そうですね、僕も最近ちょっと忙しすぎて、あまり本をガツガツ読めていないのですが、昔はめちゃくちゃ読みました。本に書いてあるtipsとか、学びとかをそのまま活かせるかというと、そういうわけではありませんが、いったん自分の中に通すというのはすごく重要だと思うんです。

あるシチュエーションでなにか問題があった時に、それ(書籍から学んだこと)が自然と出てくるというのが書籍でのインプットだと思っています。だから、そのまま一言一句覚えようではなくて、どういうシチュエーションでどういうことが活かせるのか。例えば、「この本に書いてあるこういうケースはどうなんだろう?」と意識しながら読んでいくといいと思います。

なので、コミュニケーションの本でインプットするのは効果的だと思いますよ。いろいろなところからいっぱいインプットするといいと思います。

アウトプットの出し方が自己満足ではいけない

昔、新卒で入ったすごく優秀な若者がいたんですよ。その子に「このAPIの修正をこういう感じでやってください」と依頼したんです。「わかりました」と言って1週間後ぐらいかな、アウトプットが出てきたんですよ。そのアウトプットは、すべてのインターフェイスがまったく変わっている感じだったんです。

そのAPIはグローバルで利用されるAPIなので、インターフェイスを変えると影響がすごく大きいんですよ。「なんでこういうふうに変えたの?」と聞いたら、「こっちのほうが良いはずです」というアウトプットの出し方だったんです。それは「期待を超える」ではなくて、ちょっと表現がアレですが、自己満足なんですよ。

きちんと周りのコンテキストとかを意識しながら、きちんとそれに対して応えていく。例えばこういうインターフェイスにすべきだと強く思うなにかがあるのであれば、そこをしっかりとコミュニケーションしていくことがすごく重要なんですよね。それをその時できなかったというところがその人の問題だと思っています。

そこはしっかりと話をして理解してもらえましたが、アウトプットする時に自己満足でやるのではなく、これをやることによってどういう影響が出るのかというところまで意識しながらアウトプットを出せるといいんじゃないのかなとは思います。

自己犠牲はせず、許容できる幅をしっかり持つ

(コメントを見て)「たまに『行動の意図を推測して対応できる人』という求人を見かけます」、そんな求人があるんですか。僕はそういう求人を見たことはないですが、もしかするとそういうところを意識しているのかもしれないですね。あと、仕事によっては、そういうところがけっこう重要なケースだったりもすると思います。

(コメントを見て)「現在、プログラミングサークルを運営しているのですが、できることをアピールしていたら、1年生が私のところに『教えてほしい!』と来るようになりました」、すばらしいじゃないですか。「最初はよかったのですが、何十人もの1回生と毎日何時間も付き合っていたら、自分の時間がなくなりました」、なるほど!

「当然、1年生から還元があるわけでもないし、サークル内で良いことがあるわけでもありません。エンジニアができないアピールをするのはこういうことがあるからか? と今感じているのですが、エンジニアの仕事で似たようなことは起きませんか? 確かにステップアップできるという意図はわかるのですが、嫌な仕事を押しつけられたりすることはないですか?」

僕だったら、考えるのは仕組み化ですね。同じような話をバンバンバンバンとされるんだったら、まとめてドキュメントにして送るとか。ドキュメントを書くのがめんどくさいと思ったら、誰かが話しているのを動画にして「これを聞いて」というかたちで送るとか。たぶん、やり方の効率化みたいなものがあると思うんです。というのが1点。

もう1点、#2か#3のテーマで話そうと思っていたのですが、実は、短期的に見たら自分のリターンにならないかもしれないけれど、中長期的なリターンに変わる可能性があるので、そこは可能な範囲でやるといいと思います。

ただ1つ、そういう時に注意点があります。これは僕自身も気をつけなきゃと思っているし、同じような話をすることもあるのですが、自己犠牲だけはしないほうがいいです。自分には本当にやりたいことがあるのに、なにかを人のためにやることでそれができなくなるというのは、やめたほうがいいと思います。

なので、自分の価値観や、自分ができる、許容できる幅、ここまでならできる、ここからはできないというところをしっかりと持って取り組むといいんじゃないのかなと思います。

実際、僕自身もそうですし、多くの企業もそうなのですが、できる人に仕事が集まるのはやはりすごく多いです。やはり、お願いしやすい、頼みやすいというのがあるんですよね。それを全部受けていると確かにパンクしてしまうので、ここはやり方を工夫するのがすごく重要だと思います。

例えば僕の場合だと、自分自身もやりたいことがいっぱいあるので、いろいろなプロジェクトを自分でリードしたりするんです。はじめの走り出しだけをガーッとやって、そこに伴走する仲間を集めて、走り始めたら仲間に任せるかたちです。それで、僕はまた違うところに行って、違うところの車を動かすという感じのことをよくやっています。なので、そういったかたちで工夫してみるといいんじゃないのかなと思います。

立場によって異なる情報量の差はコミュニケーションで解決する

(コメントを見て)「多角的な視点と俯瞰して物事を捉えることが大切なのですね」、そうですね。これはすごく重要だと思います。「情報量が立場によって違う可能性があると思うのですが、ズレをなくすためにはインプットが大切ということでしょうか?」、これにはいくつかの観点があります。情報の非対称性とよく言われるのですが、知識という観点での差は、例えば経験のインプットなどで少しずつ補っていけます。

プロジェクトが進んでいく中での持っている情報の非対称性は、持っている人から情報をもらわないとなくせないんです。なので、自分の情報量で判断できないとなった時は、コミュニケーションで解決していくしかないとは思います。自分が今持っている情報だとここまでなんだけれども、これで大丈夫か? と確認していくとか、そういったことができるといいと思います。

他の学生との差別化に必要なのは留学か?技術力向上か?院進か?

(コメントを見て)「プログラミング歴3ヶ月の初心者1年生です。他の学生と差別化するために1年間の留学に興味があるのですが、それよりも技術力向上に時間を割いたほうがいいと思われますか? また、院進(大学院進学)は就職に有利だと思われますか? DeNAさんのメガベンチャーに将来入りたいです」

どの選択肢を取ってもいいんじゃないのかなと思います。ちょっと無責任な言い方になっちゃうんですが、(質問者を示して)やはりTさんが何をやりたいのかを一番重要視するといいと思います。たぶんどの選択肢を取っても、全力でやっていて成果を上げて、企業側に「この人は本当にやりたいと思ったことを全力で熱量を持ってやっていたんだ」と伝われば、採用されるんじゃないのかなとは思います。

なので、院進するのが有利とか留学するのが有利とかはあまり意識しないというか、あまり気にしていないです。僕らは採用する時には学歴は見ないです。どの学校なのか、院まで行っているのか、留学しているのかなどを、実際に検討する時の材料には一切していません。その人がどういったものにモチベーションや興味を持ち、どういった熱量で取り組んでいるのかだけを見ています。

これはちょっと選考のスタンスとは違うと思いますが、私たちは今そのようなかたちでやっています。答えを言っていないような感じなのですが。なのでTさんが「自分が今これをやりたい!」と思うこと。例えば留学は留学でステキだと思うんですよね。それも含めて自分の人生を作っていく中で、「これをやりたい!」というものがあれば、やるといいんじゃないのかなと思います。

(コメントを見て)「報連相も大切」、そうですね。すごく大切です。「よく説明不足と言われるんですが、どうしたらいいですか?」と。これももう対話なんですよね。(対話は)自分の持っているコンテキストとセットじゃないと伝わらないというところを、相手の理解を測りながら話すことになるので。ぜひ、これに対応していくといいんじゃないのかなと思います。

(次回へつづく)