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ものづくり・ことづくりの未来を考える(全3記事)

2030年、私たちはデジタルとどう向き合っているのか? よりバーティカルに最適化されてく未来のコミュニケーション

職種に関係なくさまざまな切り口でChatworkのプロダクトを語り尽くす「Chatwork Product Day 2022」。Keynoteに登壇したのは、株式会社EBILAB 代表取締役の小田島春樹氏と、イキリデータサイエンティストのマスクド・アナライズ氏。業界全体の動向に関する分析を交えながら、未来について議論しました。全3回。2回目は、テクノロジーが人々に受け入れられる流れについて。前回はこちら。

プロダクト開発で重要なのは、技術的に良い+使いやすさ、扱いやすさ、わかりやすさ

春日重俊氏(以下、春日):では、マスクドさまからどう考えるのか、あとはまた違った業界についてお話しいただけたらなと思います。

マスクド・アナライズ氏(以下、マスクド):ありがとうございます。小田島さまからいただいた話は、私もすごく重要に考えていますし、実際に取材をさせてもらう企業も課題として受け止めておられます。特にEBILABさま、ゑびやさまですと、店舗ですが、みなさんも最近ファミリーレストランなんかで配膳のロボットを見たことがあると思います。

例えば小田島さまがお話ししたデータの活用として、需要の予測であったり、来店の客数の予測を活用されていますよね。これも単純に予測するだけではなく、キャンペーンを行ったらどれぐらい来客数が増えそうとか、あるいは東京のお店ならこの時間にこれぐらいお客さんが来そう、大阪だったらこれぐらいと予想できます。

例えば回転寿司チェーンのお店は需要予測をうまく活用しています。これを実際にをやる上で何が必要かというと、ゑびやさまがすでにやられていることではありますが、データの蓄積ですね。

天気、曜日、来客数、どんなお客さんがどんなものを注文したか……そういったデータを溜めることで予測精度が上がります。さらにデータをどう溜めるか、どう活用するか、簡単にデータを取り出すにはどうすればいいか、どんなデータベースを使ったらいいかなどを考慮して使いやすい仕組みを作ることが、今日参加されているエンジニアの方々の役目と言えます。いわば、技術的に良いもの+使いやすいものです。

例えばゑびやさんには年配のパートの方がいると思いますが、そういった方にも使いやすい仕組みとか、データを可視化しやすい仕組みを作りこんでいくのが、普及させるためのキーになります。

取材でドン・キホーテさんやヤマト運輸さんなど、BtoC向けの企業では、現場が使いやすい仕組みを意識しており、単純に技術的にすごいこと+使いやすさ、いわば扱いやすさ、わかりやすさが、技術を展開していく上でみなさんが意識すべき点だと思っています。私からは以上です。

よりバーティカルに最適化されていく未来のコミュニケーション

春日:ありがとうございます。業界が違うとぜんぜん違う未来になっていくんだなとひしひしと感じる、すごく良いご意見だったと思います。

私自身も小売業はこれからどんどんDXが進んでいくんじゃないかなと思っていますし、最近でいうとオリンピックですね。本当は2020年開催だったものが(コロナ禍によって)2021年になりましたが、それをきっかけに実はロンドンは非接触のクレジットカードがはやり出して、いわゆるモバイルバンキングみたいなところで、よりキャッシュレスの世界が日本でもどんどん広がっていく。今はまだまだ現金を使う機会が多いと思いますが、デジタルに決済できるところがどんどん増えていくんじゃないかなと思っています。

Chatworkとして2030年にどんな未来になっているのかというと、必ずこうなるかどうかはわかりませんが、弊社では、仕事でチャットを使う人の数がどれくらい進展しているのか、毎年対外的な機関を使ってアンケートを取っています。

そのデータに基づくと、全職種で日常的に使われているところは、今は18パーセントぐらいなんですね。一方で携帯電話の普及率はどうなのかというと、いろいろな人に使われている。チャットもおそらくそういうツールになっていくと思っていて、仕事上でちょっとしたやり取りをするというビジネスコミュニケーションはチャットが主体になってくる。そんな未来が2030年ぐらいにかけて徐々にやってくるんじゃないかなといったところ。

あとは小田島さまがお話していた生産性を効率化させるための仕組みとして、マシンラーニングやAIなどチャットのところでいうと、いろいろなシステムやボットと連動しながら業務効率化を図るというところがバーティカルごとに(変わる)。

コミュニケーションはたぶん業界ごとにいろいろ変わってくると思うので、よりバーティカルに最適化されるコミュニケーションになっていく、改善が働くという未来になっていくんじゃないかなと思いますね。なので、大きな10年の流れでは、お二人も言っていたようにデータの利活用をどうやっていくのかが1つの大きなテーマになるんじゃないかなと考えています。

1度でも便利だと認知されれば、プロダクトは世の中に浸透していく

小田島春樹氏(以下、小田島):個人間では、LINEを含めていろいろなものが進んでいくのですが、これが法人や企業になった瞬間にいろいろなものが止まっていくんですよね。過去の時代の流れを見ていくと、10年とか15年とか遅れて企業にやってくるというのがやはりあるじゃないですか。

その観点でいうと、10年後メール文化からチャット文化に変わっていくというのは間違いなく来るでしょうね。今が18パーセントであれば30パーセント、75パーセントという世界が普通に来るのかなと思っています。

春日:今小田島さまがおっしゃっていたように、携帯もはやったのはコンシューマーからだったんですね。法人携帯は10年とか15年遅れたので、やはり人間は変わることに心理的に抵抗が強いんだろうなと思っていて(笑)。僕たちみたいな登壇もZoomでやっている層というのは全体から見るとアーリーアダプター層だと思うんです。

だけど僕は世の中の流れとして、人が1度便利だと思った物やサービスは本質的に課題解決しているプロダクトとして受け入れられるんだろうなと思っています。だからスマートデバイスは10年ぐらいかけてほぼ行き渡った。こういうところがあるんじゃないかなと思いますね。

小田島:先ほどのお話の中にあったとおり、いろいろなものがそのチャットの中に飛んでくるというのを僕たちもまさに作っています。例えば売上のデータを自分たちが見に行くのではなく、プッシュで飛んでくるという状況が作れたら便利なんですよね。便利な世界を作っていくというところでいくと、一般化していくんだろうなと僕らも使っていて思いますね。

春日:そうですね。みなさんも感じる瞬間があるかなと思うのですが、例えば僕も子どもがようやく小学校に上がったところで、つい最近まで保育園の送り迎えをしていました。その時に、園とやり取りする時はなぜか全部手書きみたいな。でもこういうシーンはたぶんまだいろいろなところであると思うんですよね。

小田島:集金とかもそうですよね。

春日:集金もなぜか手作業だなと思っているのですが、デジタルで1度体験すれば「こういう便利なやり方があるんだ」と世の中が変わってくるんじゃないかなと思いますね。

僕も前職でそういう体験がありました。前職はリクルートという会社で、「ホットペッパービューティー」というプロダクトはクーポンを配っているサイトだったんですが、美容院を予約できるかたちにプロダクトが方向性を大きく変えたんですね。

予約のほうにしたと同時に初めは「はやるのかな」というかたちで、2、3年ぐらい予約件数が伸び悩んでいたのですが、わざわざ電話しなくてもボタン一発でできる便利な世界を1度体感すると人間は元に戻れなくなるんですよね。たぶんそういう不可逆なデジタルの体験がほかにも出てくるんじゃないかなと思います。

マスクド:やはり1度体験してもらうと印象も変わるので、今日の参加者には、現場からボトムアップするなら興味のある人から使ってもらうのが良いでしょう。そこから広めていって賛成派が増えてきたら、最終的に部長などに提案して全社に展開する。そのような流れがいいと思いますね。

春日:便利なものとはいえ人間はいきなり変わるのか。やはり少しずつ変化していくんだろうなと思います。弊社は新卒採用もやっているのですが、2024年から入ってくるのはコロナ禍で全部過ごした子になってくるんですよね。

この間も聞いていてビックリしたんですが、(大学も)オンラインで出席をする。たぶん僕たちの持っている価値観とまったく違う子たちが世の中に出てくる。そういう子たちがイノベーションを起こしていくんだろうなと個人的に思っています。

(次回へつづく)

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