2030年、日本社会におけるデジタルの向き合い方はどう変化しているか

春日重俊氏(以下、春日):本日は、「ものづくり・ことづくりの未来を考える」というテーマで、約40分間いろいろな観点からディスカッションができたらなと思っています。

講演のテーマですが、未来といってもその到達地点が2050年なのか2030年なのか、そういうところでもぜんぜん見えてくる観点が違います。

なので、よりリアルにという点で、ちょっと先の未来ということで2030年に日本はどうなっているのだろうかとか、社会でのデジタルの向き合い方にどういう変化があるのかというところをさまざまな視点から話していきたいなと思っています。

まずは、今回の登壇者の自己紹介をさせていただきたいと思います。今話しているのがChatworkで執行役員CTOをやっております、春日と申します。Chatworkでは、エンジニア、プロダクトマネージャー、デザイナーという、プロダクトに関わる人材をすべて管掌している役になっています。続いて、ゲストにも自己紹介をしていただけたらと思います。小田島さまから自己紹介をよろしくお願いいたします。

POS分析・需要予測・画像解析の仕組みを作り提供する、小田島春樹氏

小田島春樹氏(以下、小田島):みなさんこんにちは。 有限会社ゑびや、そして株式会社EBILABの小田島と申します。僕は実際に店舗の運営をしながら、さまざまなテクノロジーを活用するということを人口が12万人の田舎でずっとやっている人間です。

最近は自分たちの店舗だけではなくて、自分たちの作った仕組みが多くのサービス業の方や、リアルな店舗を運営する方々に使っていただけるんじゃないかなと、自分たちで仕組みをサービス化してEBILABという会社から提供するということをしています。

主にやっているものは、POSの分析であったり、需要予測であったり、画像解析の仕組みを作っていったりというところ。あとは、さまざまなハードウェアから収集してきたデータを統合して、可視化をするダッシュボードを作っていきながら、ただ単純にデータ分析する仕組みだけを作るのではなく、実際にデータを見てどんなアクションをしたら会社の経営や店舗の運営に役立つかというアドバイスもやっている人間です。

今日は2030年の未来ということで、僕らがやっていることもそうですし、このメンバーが感じている世界観を少しみなさんと共有できればと思っています。どうぞよろしくお願いします。

データ活用やエンジニアについて情報を発信しているマスクド・アナライズ氏

春日:では、マスクド・アナライズさま、自己紹介をよろしくお願いします。

マスクド・アナライズ氏(以下、マスクド):マスクド・アナライズと申します。名前だけでも覚えて帰っていただければと思います。みなさんもIT関係のお仕事をされていると思いますが、もともと私もITスタートアップに在籍しており、現在は独立して書籍や記事の執筆や、イベントへの登壇、社外向けの講習会やセミナーなどをしています。

今日お話しする少し先の未来ですが、執筆した記事では企業でどのようにAIやDXを活用するのか、先ほど小田島さまからもお話がありましたが、どうやってデータを活用するのかなどをお伝えをしています。

今日は、どうやって企業がロボットやデータサイエンスを活用しているか、エンジニアがどういうかたちで活躍をして新しい技術を開発するか、そういった少し先の展望についてみなさんとお話しができればと思っています。

2060年には日本の全人口の約30パーセントが減少すると言われている

春日:「2030年に中小企業はどうデジタルと対峙しているのか?」というところで、いろいろとお話しできたらなと思います。

2030年まであと7、8年後ですが、そのタイミングで労働人口が650万人ぐらい不足すると言われています。不足するといったところで何かしら手当をしないといけないと思うのですが、ぜひ小田島さまとマスクド・アナライズさまがどう考えられているのか、それぞれの視点から語っていただきたいなと思っています。

小田島:もう人口減少と言えば僕なんじゃないかというぐらい、日本中で人口減少の話をさせていただいています。僕が思うこれからの日本の姿をちょっとだけお話させていただこうと思います。

これは僕もよく話をする話で、みなさんもこの図を見たことがあると思います。2010年をピークに日本の人口は減少していくという、厚生労働省が出している図です。2008年ぐらいをピークにどんどん減っていくと。30年というか2060年には日本の全人口の約30パーセントが減少すると言われています。

みなさんの中ではあまり馴染みがないかもしれませんが、コロナ禍になって私たちがやっている店舗ビジネスはだいたい売上で30パーセントから50パーセントが吹っ飛んだんですね。もうビジネスができないよというレベルまでいったのが2020年から2021年の間の話なんですよ。

この時は30パーセントぐらい減っていっているという状況で、30年後、40年後の未来は今のこの厳しい状況が当たり前な状況になってくる。そして2030年というのがまさにこの変化を大きく感じる年になると、僕自身もすごく感じています。

固定費倍増、売上縮小、原価高騰で「まったく儲からない」状況に突入していく

その中で、どんなことを僕たちはしていかないといけないのか、ビジネスを運営していかないといけないのかというのを、ちょっと1個の簡単なグラフにまとめました。「今後日本で起こること」と書いてあるのですが、やはり日本の人口がどんどん減っていってしまう。特にビジネスをしていると、売上のパイがどんどん小さくなっていくと。一方で商売をするにあたっては原価があって、その原価は間接的なものも含めて海外にけっこう依存しているんですね。

食料自給率はおよそ34パーセントと言われていて、エネルギーも全部海外に依存している。その原価はどうなっているかというと、実はこの10年間を見てもずっと上がっているんですね。なぜ上がっているかというと、世界の人口はどんどん増えているから。日本の人口は減っていって世界の人口は増えていって、原価も上がっていく。

今のままやっていくとやはり売上も取れないし、利益もぜんぜん取れないよねという、そんな状況に日本は今突入していっています。さらに働く人たちですよね。人口が減るとともに生産年齢人口比率という1つの働く比率も減ります。そうなってくると働く人たちの価値が上がるので、働いている人にとってはとても良い環境になります。

ただ、事業をしている側からすると、今まで40万円で来てくれていた人たちが今後は80万円出さないと働きに来てくれないかもしれなくなる。仮に今10人が働いていたとして、そのあとも10人が働くのであれば、固定費は倍増、売上は縮小、原価は上がっていくということです。もうまったく儲からない状況に突入していくというのが、これからの10年、20年を見据えた日本で起こることなんです。

これは日本全体の話ですが、僕がいる地方はどうかというと、もうすでに起こっているんですよ。人口も減っていっている、高齢化比率も高まっていて、なかなか購買のパイはなく、原価は上がっていっている。しかも最近は、インフレや円安でさらに上がったり。固定費に関してはまだ思いっ切り上がってはいませんが、今の状態でもかなりこれに片足を突っ込んでいる状況です。

必要となるのは、付加価値向上・新規ビジネスモデル開発・効率性向上

まずはこういうことが起こるという前提で、事業を考えていかないといけないなと僕たちはずっと考えていました。じゃあそこに対してどういう行動を取ったらいいのか? (スライドを示して)今日話したい内容はすべてこの1枚に書いていますし、僕がやっている事業はまさにこれなんです。

生産性を上げていくには何をしたらいいのかを考えていかないといけない。売上の総利益を上げていくためには付加価値を作っていかないといけない。そして新しいビジネスを作っていかないといけない。

もう1つは、40万円で10人働いてくれている方々のビジネスがあって、(働く比率が減ると)80万円で10人となり、固定費が倍になってしまう。じゃあどうしたらいいのかというと、10人でやっている仕事を8人で、そして7人、最終的に5人でできるようになれば固定費は変わらないわけですね。

そのために何をしなきゃいけないかというと、効率性の向上です。私たちでいうと、ロボットであったりセルフレジであったり。もしくはバックオフィスの業務をものすごく縮小していくとか、コミュニケーションロスをなくしていく仕組みをどんどん作っていきながら少しずつ変えていく。そんなことをやっていかないといけないなと10年前に思ったんです。

もしかしたら10年後には、これをもっと強く意識しないといけない時代背景があるんじゃないかなと僕は思っています。その中で何が必要かというと、やはりいろんなテクノロジーの活用をしていくこと。画期的には大きく変わらないかもしれないけれど、本当に少しずつ効率性を上げていくということはものすごく重要になってくるんじゃないかなと思います。ずっとそう思いながらビジネスをしていました。

店舗系のビジネスをメインに話をしているので、マスクド・アナライズさまから「この業界はこうだよ」みたいな話、もしくはこの話にすごく似ているよねというお話があったらぜひ教えてほしいなと思います。ざっくりですが、ちょっとこんな感じに思っていました。

春日:小田島さまありがとうございました。店舗系のビジネスのところで、最先端のやり方が徐々に浸透して、いろいろな企業もこういうかたちでなっていくんじゃないかなと思って、大変参考になる話でした。

(次回へつづく)