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『人生で3回CTOを経験した人』が語る市場価値を高めるためのキャリア選択のススメ(全4記事)

「苦しいこともあるけれど、“はたらく”ことは総じて楽しい」 CTOがベンチャー経験を経て辿り着いた“はたらく観”

技育祭は「技術者を育てる」ことを目的としたエンジニアを目指す学生のための日本最大のオンラインカンファレンスです。ここで登壇したのは、パーソルキャリア株式会社のCTOである、岡本邦宏氏。エンジニアの市場価値を高めるためのキャリア選択について発表しました。全4記事。1記事目は、岡本氏のキャリアと「はたらく」ことへの価値観について。

モデレーターの自己紹介

田中里奈氏(以下、田中):『「人生で3回CTOを経験した人」が語る市場価値を高めるためのキャリア選択のススメ』というタイトルで、私はモデレーターというかたちでCTOの岡本と進めます。よろしくお願いします。

まず、私の自己紹介です。パーソルキャリアの新卒エンジニア採用チームでオーナーをしている田中と申します。りんりんと呼んでいただけたらと思います。私は2015年にパーソルキャリアに入社して、法人営業、キャリアアドバイザーの仕事を経て、今の新卒採用に異動しました。

(スライドを示して)私のハッシュタグが3つ書いてありますが、パーソルキャリアの中では女性活躍推進の団体に所属していたり、週一でテニスのスクールに通っていたり、絶対音感があると自負している感じです(笑)。今日はよろしくお願いします。

右上に佐和子(綿貫佐和子氏)が載っていますが、人事がもう1人参加しているのでチャットを送ってもらえたら、佐和子が見逃さずにキャッチします。そちらもお願いします。では、岡本さんお願いします。

CTOを複数回経験してきた岡本氏の経歴

岡本邦宏氏(以下、岡本):はじめまして。CTOをしている岡本と申します。エグゼクティブサマリー的にさっと話します。僕は20代の前半にオーストラリアにいきなり飛び出しました。お金がないながらも日本食レストランで働くのは嫌だなと思って、あちらで会社を立ち上げたり、セールスをやっていました。

そこで得た知見を含めて、会社を売って日本に帰ってきました。スキルセットも含めて、度胸がついたこともあったので、ソフトバンクやサイバードという会社でコンテンツの事業責任者、いわゆるフロントエンドをやっていました。フロントといってもエンジニアリングのフロントではなく、企画やプロデュース業をやりながら、子会社のCTOもやっていました。

僕のターニングポイントとなった会社でもあり、数字、企画、顧客目線、事業目線のスキルアップにつながったと思っています。

(スライドを示して)株式会社レコチョクでは、約600億円の売り上げた「dヒッツ」というサービスを立ち上げたり、ヘルスケアのスタートアップの取締役CTOをしていました。僕の名前で検索したら、資金調達のところにもけっこう赤裸々に書かれています。ヤフーキャピタルかな? 1.5億超出したり。

あとは、スキルシェアサービスのココナラとか、IPOに導いたところの技術統括をやっていました。そのあと音声ベンチャーのVoicyや不動産テックベンチャーで技術顧問をやりました。今もいくつかやっています。

そのあとにパーソルに入社しました。その頃は総合HR(Human Resources)カンパニーだったのですが、今はまさにテックカンパニーへの移行の旗振りをしているところです。

1週間にパン1斤、4徹、5徹は当たり前の世界で働いてきた過去

田中:チャットでも「オーストラリア行きたい!」というコメントをいくつかいただいています(笑)。岡本さんのキャリアはおもしろいので、具体的にキャリアジャーニーにしてみました。いくつかお話しいただけますか?

岡本:おもしろい部分をピックアップすると、オーストラリアの永住権を取得したのが1つあると思います。今となっては、なかなか取得は難しいので、とても良い経験だと思います。

当時、渡豪した時は、本当にお金がなくて、1週間にパン1斤で過ごしていたのは本当の話。僕は今体重が70キロくらいあります。個人情報ですけど(笑)。でも、その時は本当にお金がなかったので、178センチで59キロくらいまで落ちた! 渡豪費、全財産30万円くらいで誰も知人がいない異国の地で生きていかないといけなかったのです。その手段として、会社を設立してなんとか生き延びたという話です。

先ほどボッシュ株式会社さんのお話の中にも英語の話がありましたが、僕はエンジニアリングってHOWだと思っています。結局それを使って何を成し遂げるかとか、プレゼンスを高めていくのかという話だと思うので、まさにそれを20代前半でやったことは大きかったと思っています。

サイバード時代はおもしろくイケイケと書いてありますが、まさに六本木ヒルズにあったのでちょっと調子に乗っていたところもあります(笑)。その時、矢沢永吉さんとかEXILEさんとか、いわゆるエンタメコンテンツを全部で30個くらい担当として管掌していました。

PL(Profit and Loss Statement)、いわゆる事業収支ですね。ほかにBS(貸借対照表)とか。あとキャッシュフローなど、自分で事業計画の設計をやらなければいけませんでした。当時の開発言語はPHPだったんですが、フレームワークはCakeだったかな? まだ1系というだいぶ古い時代でした。

PLは売上と収支なので、売上がいかなかったら利益、いわゆるボトムで事業の帳尻を合わせるみたいなことをやっていました。自分でエンジニアの一員としても開発しているので、利益貢献を算出するために、自身の稼働率を上げればいいと思ってやっていました。とはいえ、24時間って平等じゃないですか。事業責任者、企画プロデューサー、テックリード等と兼務を沢山していたので、企画職に専念していると開発が進まず、自身がボトルネックになり、リリースできなかったことがありました。

そういった苦い経験もしたり、徹夜、4徹、5徹は当たり前のような働き方をしていました。今だと絶対ブラックです。こんなメチャクチャなことは真似しないでください(笑)。だけど、そういうことがあったからこそ今の自分は強くなっているし、逆にメンバーにもそういうことをやらないでくれって言えるのかなと思います。

次によく聞かれることとしましては、経験のライフログの表に記載している、日本初の歯学部です。ヘルスケアスタートアップを立ち上げた時、医者の世界はいわゆる既得権益だと思っていて、その部分を民間から変えていこうとするのはなかなか難しいと思っていました。師業・士業の世界では、民間の声は聞いてくれないことが多くあります。業界的にも、儲かっているから、変える必要がない!と思っている人がとても多く、これが業界のDX化が進まない要因でもあると思っています。

「じゃあ自分でライセンス取っちゃえ」と思って歯学部に入りました。メチャクチャと言えばメチャクチャなんですけど(笑)。「いやー、先生、僕歯学部行っていたので、わかります!」と言うと、話を聞いてくれたりするので、エンジニアですが、僕の一つの武器であることは間違いないと思います。しかし、僕のライフログってあまり参考にならないかもしれませんね(笑)。

流れで見るとわかるとおり、一環して動きや働き方がずっとベンチャーなんですよね。(パーソルキャリアは)今だいたい400人テックやエンジニアメンバーがいますが、会社全体では5,000人、グループ全体だと6万人くらいいる1兆円企業でメチャクチャ大きな会社です。僕の人生の中でも、この規模をマネジメントにかかわるのは初めてです。

(スライドを示して)右側に古い商慣習と書いてあります。よく考えてもらいたいのが、日本は製造業で大きくなった国ということです。自動車産業もそうですね。なので、町工場のような製造業、建築、不動産業もそうだし、HRも結局古い商慣習で、いまだに昔の商売のフローでやっているんですよね。

そこに対して、今風に言うとDX文脈は逆にカチッと当てはまるんじゃないかなと思ったんです。産業を変えるという言い方を僕はよくするのですが、テックで変えることができるとしたらHRもおもしろいだろうなと思って、今パーソルキャリアでCTOをやらせてもらっています。

田中:ありがとうございます。コメントでも「歯がきれいだと思ったら、歯学部出身だった」というコメントが(笑)。

岡本:ありがとうございます(笑)。

田中:確かに歯学部出身のエンジニアってめっちゃめずらしいと思います。

岡本:いないんじゃないですかね。

田中:あまり聞いたことないですね。

苦しいこともあるが、「はたらく」ことは総じて“楽しい”

田中:ここからは、みなさんに「はたらく」ことに対してどんなイメージを持っているか、ぜひ回答いただきたいと思っています。(画面を見て)「大変そう」がちょっとずつ伸びてきましたね。お、いいですね。

岡本:いいですねぇ。

田中:「ワクワクする」がめっちゃ多い。その次が「大変そう」「できればはたらきたくない」「早くはたらきたい」。これ、どうなんでしょう? 半々という感じです。みなさん、ありがとうございました。岡本さん、これを踏まえてお話しいただきたいと思っています。

岡本:当たっているかもしれません。僕は20代前半の頃、正直働きたくなかったんですよ。その頃は氷河期だったので、「はたらく」ことをイメージするのが正直難しい時代だったんですよ。

僕、1社目は今で言うヤフーモバイルなんですね。イー・アクセスだったので。入社するまでは正直ビクついたというか、チキンになっていたりもしたんです。いざ飛び込んで働いてみると、ビジネスの言葉がわからないんですよ。先ほど僕が言ったBS、CF(キャッシュ・フロー計算書)もわからない人がいると思いますが、当時の僕もそういう状態だったんです。

だけど、だんだんインプットが多くなってアウトプット量が増えてくると、成し遂げられる量が多くなるので、楽しくなってくるということがあるじゃないですか。

総じて何が言いたいかというと、僕もエンジニアでCTOをやっていて、数字の面とか、顧客の満足度を高めるとか、会社の経営のことを考えたりする中で苦しいこともありますが、総じて「楽しい」がキーワードかもしれません。

自分でオーナーシップを持つ。当社ではキャリアオーナーシップと言っていますが、能動的にきちんと動けるようになると、たぶん学生の頃よりも幅が広がるし、当然お金も入るだろうし、考え方も変わるだろうし。そういう意味では、ワクワクするという言葉が当たっているかはわかりませんが、ポジティブに捉えてもいいかなと思っています。僕の「はたらく」イメージは、「楽しい」ですかね。

田中:気持ち的に、初めは嫌なこともあったかもしれませんが、やっていくとわりと楽しいというか、ポジティブになっていくという感じなんですね。

岡本:そうですね。この中にもエンジニアを目指して個人で開発をしている人がいるんじゃないですか? サービスを使ってもらって、いいコメントが返ってくるとめっちゃうれしいじゃないですか。それと同じ感覚だと思います。

それでお金を頂いて、そのお金をまた技術やプロダクトに再投資して、新しいリリースをして、また喜んでもらえるみたいな、いいエコサイクルがやはり僕の中の「はたらく」かな、と思っています。

「はたらく」時に大切なのは「自分を正しく認識する」こと

田中:併せて、岡本さん自身の「はたらく観」というところで、これまでどういう価値観を持って「はたらく」ことを選んできたかを教えてほしいです。

岡本:先ほどCTOの役割について話をしたと思いますが、まさにそのとおりで、CTOもあくまで役割でしかないんです。今でもそう思っています。スキルセットをはじめ、いろいろなことを吸収する際に、自分の役割を正しく認識するのは大事だと思うのです。僕は立ち位置と言っています。

背伸びしたければすればいいのですが、当然、無理をすると自分の立ち位置が正しく理解できなかったり、正しいアウトプットができなかったりすることもある。たぶんそこが、「はたらく」観という意味で外からも求められるところかなと思います。いわゆる期待値の擦り合わせを主に行っていくことが大切だと思っています。

例えば、僕はよく「田中さんだったらこういうことができるやろう」という話をします(笑)。田中さんもがんばるんですが、期待値の擦り合わせがうまくいってなかったら、たぶん田中さんの中でのアウトプットが少ないねという話になると思います。そのあたりの目線合わせとか、自分の中で「はたらく観」を自己認知するのはすごく大事だと思います。たぶんそういうことは学生の時はあまりやらないと思うので。

田中:なるほど。「はたらく」に対するみなさんのイメージと、岡本さんのイメージを擦り合わせしてきました。今日は、市場価値を上げるためのキャリア選択というテーマですが、今後みなさんは一般的にこういう流れで就職活動をやっていくのかなと思います。

(スライドを示して)その中でも今日は左の3つですね。自己分析、業界分析、企業分析、このあたりのお話をしていけたらと思っています。右側の面接については、日曜日にパーソルキャリアの講演でお話しするので、もしよかったらそちらも聞いてください。

自己分析をすることで、自分の言葉に“力”が出る

田中:(スライドを示して)この4つのトピックでやっていきます。まず「自己分析って必要?」、2つ目が「まずは市場理解から」、3つ目が「市場価値の高いエンジニアとは」、最後が「市場価値を高めるためのキャリア選択とは」という流れになっています。

みなさんの一般的な自己分析は、おそらくこういうイメージですよね。自分の特徴を理解するためにこれまでの経験や考え方を振り返って整理する。仕事選びの軸や、自分自身のことを明確にするのが一般的な自己分析です。岡本さん、自己分析は必要だと思いますか?

岡本:結論から言うと、必要です。学生の頃に僕もやっていたかと言うと、正直やっていませんでした。例えばパーソルキャリアに来たいとか、どこかのサービスを使ってなにかをやりたいという時にも、自分には何ができるのだろう? ってあまり考えたりしないと思うんですよ。

学生さんなので、それはそうなんですが、結局面接を受けなきゃいけないじゃないですか。私たちは聞く側なので、当然前のめりで聞くんですが、(回答の)内容が似たり寄ったりしている時があります。その中でも突出してわかりやすく説明してくれる人がいるのですが、おそらくそれはその人自身が自己分析できて、内容の濃淡がきちんと分かれているからだと思います。ちょっと言い方が抽象的ですけど。

自己分析の中で、自分のストロングポイントは何かとか、自分は何を伝えたいかという時にけっこう言葉に力が出るんですよね。そこにちょっとしたグラデーションができるので、聞く側もはっきりインプットしやすいというのは正直あります。

自己分析している人としていない人のしゃべり方の構造化の仕組み自体もぜんぜん違います。無理にやる必要はありませんが、やる必要があるかというと、やったほうがいいという感じですね。

いきなりはできないと思うのでいろいろな本を読んだり、こういうイベントに参加して、やってみる癖をつけるのがいいかもしれませんね。仕事でも役に立つので。

田中:確かにそうですよね。私も岡本さんに「これやっていいですか?」と言う時に、なぜそれをやりたいのか、その先を何につなげたいのかという部分を分析して思いを込めて伝えていて、いつも「よし、やろう!」と言ってもらっていると思うので。

確かにそういうことは今後の仕事にも活きるし、まずは足元として自分が行きたい企業に行くためにも大事なのかなと、今の話を聞いて思いました。

岡本:そうそう、あと1つ。例えばバイトやサークル活動をしている人も、それを誰のためにやっているのか、なぜやっているのかを深掘りするといいかもしれない。

出口戦略という言葉をご存じかどうかはわからないのですが、結局誰のためかということにつながりやすいので、その2つはいったん考えてみるといいかもしれませんね。

田中:なるほど。ありがとうございます。

(次回へつづく)

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