Keynoteのテーマは「サステナブルなチーム」

藤本真樹氏:こんにちは。ということで今年も「GREE Tech Conference 2022」が始まりました。拍手!

(会場拍手)

ありがとうございます。オフラインはマジで久々ですねというのがあって、まずはご挨拶ですね。オフラインで会場にいらしていただいているみなさん、今日はいきなり寒くなりましたが、そんな中いらしていただいて本当にありがとうございます。忙しい中ご視聴いただいているオンラインのみなさま、今日は1日よろしくお願いいたします。

今年は、「Discord」もやってみようということで開設しているので、ぜひオフラインのみなさんも参加いただけるとうれしいです。

僕はちょっと(手元にPCがないのでDiscordの)チャットが見られないのですが、陰口なりなんなり叩いて、お使いいただければと思っています。というか、このオープニングの動画メチャクチャかわいくなかったですか? ということで、あれを作った方に勝手に「ありがとうと」といったかたちでございます。挨拶はそんな感じかな?

そんな感じで、今日はこのあと3トラック、各セクションいろいろなお話があるのでみなさんになにかしら持ち帰ってもらえたらうれしいなと思っています。前座で正味15分ぐらい、僕からお話をさせてもらえればと思っています。

こういうところのKeynote、けっこうテーマ選びが難しくないですか? と思っていて、TechConだしすごくスペシフィックな技術の話、例えば昨日読んでいたやつだと、2ヶ月ぐらい前にGo 1.19が出たじゃないですか。メモリモデルが新しくなったよとすごく長いドキュメントがあって難しいので、こういうのを解説したらきっとそれっぽいんだろうなと思いつつ、ごく一部の人しかうれしくないみたいな。

「Keynoteとは?」みたいになるし、会社の宣伝をしまくろうかなとも思ったんですが、それは僕はうれしいけれどみなさんどれぐらいうれしいかわからないとなったので、抽象度の高いお話に落ち着くわけですよと思っています。「こういう話をしたらいいんじゃないの?」というのがあったら教えてください。

昨今の情勢で実感した「当たり前のことが当たり前には続かないということ」

今日はサステナブルっぽい話をしていきたいなと思っています。なんでこの話をしようと思ったのか? というところなんですが、この2、3年は本当にいろいろあったよねと思っていて、これはたぶん肌感覚としてみなさんもあるんじゃないかなと思っています。

僕らが当たり前だと思っているものは意外と継続しないんだ、そういうことが普通に起こるんだ、ということを節目節目で実感するということがこの数年あるんじゃないかなと。少なくとも僕はあるなと思っています。

例えば、まさに今回のオフラインもけっこうチャレンジで、できるかどうかわからないけれど、やるならすごく小規模で。今日オフラインの参加者はすごく数を絞らせていただいています。なので、(オフライン参加者の内訳は)内輪と外部の半分ぐらいじゃないかと思いますが、それでもこういうのを久々にやってみたいなと、ちょっと無理矢理やらせていただいたという感じです。

この数年で僕らの生活はガラリと変わったわけです。5年前の僕たちにこうなるよと言っても「は?」と。そんなのを信じられる人やイメージをできる人はほとんどいなかったと思うし、そういう可能性があると思って生きていた人はまぁいないよねと思うわけです。

あとは、すごくいきなり円安になったりするわけじゃないですか。今は倍まではいっていませんが、この先3倍になるかどうかもわからない。それは僕らにも影響がいっぱいあるよねというのもありますし、すごくセンシティブな話ですが、世界情勢という意味では、今は日本では平和に暮らせますが、そうじゃない人たちはやはりこの1年ですごく増えたし、そういうことって普通に起こるよねというのもあれば、天災もこの数年でやはりいっぱいあったわけです。

もう少し小さなところでいえば、そういう変化は別に悪い話だけではありません。直近の話題だと、AIの話で「StableDiffusion」で生成された絵が僕らの生活にどういう影響を与えるのか、これはどうなっていくんだろうと。すごく変わっちゃうんじゃないかというところ。

あとはなんだろう。「GitHub Copilot」をみなさんどれぐらい使われているかわからないんですが、あれもあのまま進化したらもしかして僕らの仕事になるかね? とか、やはり思ったりするわけじゃないですか。

そういうのもそうだし、毎日のプロジェクトでいえば、あまり縁起でもない話をするのも……。どうしてもこの話は暗くなりがちで申し訳ないのですが、昨日まで一緒に働いていた人が今日から一緒に働けなくなるかもしれない。「辞めました」というのがあってもおかしくない。

昨日と同じ今日が繰り返されることというのは、必ずしもあるわけじゃないよねということをきちんと考えながら生きていかなきゃいけない時代になってきているんじゃないか、みたいなことをしみじみと実感するわけです。

そういうのがあって、こんなテーマにしてみましたというのが前段でございます。あまり明るい話じゃなくて申し訳ないのですが、根が暗いのでしょうがない。

サステナブルなチームとは何か?

「サステナブル」という言葉を使いましたが、それはどういうことよ? みたいな話があるなと思っています。ここからどのビューで見るか? ということなんですが、僕らがお仕事をする上で一番よくある単位のチームで一応軸を据えて、ちょっとだけお話をしてみようかなと思っているわけです。

「チームというのは、ある種のただの集まり」というのは、ほんのちょっとだけ違っていて、これは人によって定義はいろいろかもしれませんが、基本的には「こういうことをやろうね」という目標が決まっている集まりがチームであるというのは、だいたいみなさんもそうだよねと思ってもらえるかなと思っています。

「ここに向かいたいんだ」となっていて、そのために一番何が大事か。当然どこに行こうかという共通理解、あるいはビジョンみたいなものが大事というのは、昨今のチームマネジメントですごくいっぱい話される話です。そこがないと、どこに行くんだという話になるので、精度、粒度、あるいは成熟度はチームによってちょっとずつ違いますが、そういうのはもちろん大事です。

そこが決まったら、次に何が大事かというと、じゃあそこにどうやって継続して立ち続けられるか、向かって行き続けられるか? というのがやはりすごく大事なんじゃないかなと、あらためて思ったりする昨今なわけでございます。

ビジネスで、よく言う「最後まで立っていればだいたい勝つ」というのはある種の真理でもあって、最短距離じゃないかもしれないしすごく早くないかもしれないけど、きちんとゴールに継続して向かい続けられる、ちょっとずつでも進んでいく。それをできるだけ長く続けられるというのは、すごく大事なこと(だと思います)。その相対的価値はすごく上がっているし、僕もけっこう大事にしていきたいと思っているところです。

「外的コンテキスト」を忘れずに見ることが大事

じゃあ継続するためにどういうことを考えるかというと、チームという単位、いわゆる内的なコンテキストでいえば、そのチームのメンバーとどうやっていくか。これをどうやっていくかというのは、昨今の日本でもチームマネジメントというカテゴリがだいぶ浸透したり成熟したりしてきているので、すごくいっぱい話があるんですね。

ここでその話をつらつらしてしまうと数時間経つので、それはそれで。ちょっと忘れがちなところで、チームとしてきちんとゴールに向かっていく、あるいは向かい続けようということを考えると、外的コンテキストを忘れずに見ましょうねという話になります。

これは当たり前といえば当たり前なんですが、忘れがちなので出してみました。会社にチームがあったら、その外側のコンテキストとしてその上のチームがあります。大きくいうと会社です。当たり前ですが、会社が立ち行かなくなったらチーム継続どころじゃないので、チームをどうこうしようと思ったら、会社のことをきちんと考えていく必要があります。

それはいいんですが、外側にはある種、国とか地域とかがあって、今ここでいえば日本がどうこうなってしまったら、会社をどうこう言っている場合じゃないので、そういったことをどれぐらい考えるかはあれなんですし、実際にアクションするかはぜんぜん別で、日々そんなことまで考えていたら面倒臭くてやっていられないです。

だけど実際のところは無関係ではなくて多少なりとも意識はしていく必要があるし、できるに越したことはないので、僕も昨今副業とかをしているわけです。さらに外の世界といったらあれですが地球の話があって、ここしばらく言われているSDGsはそうだよねと。

人類が滅びたら会社どころじゃないよねと。それはそうだという話なんだけど。地球をやると、その次に宇宙が来るわけじゃないですか。「宇宙かー」と思って、エネルギー保存の法則は宇宙全体で成り立つって、宇宙はどうなっているんだろうとググってみたら、「そこはまだよくわからん」という偉い人のコメントがあって、エントロピーとか波とか、なんかのアニメを思い出すなと思った感じですかね。

何が言いたいかというと、あれです! やばい、くだらないことを言っていたらマジで話が飛んでいった。

(会場笑)

これはチームマネージャー向けの話というよりも、そこで働くみなさん一人ひとりに対する話です。チームとしてどうやって継続的にやっていこうかと考えた時に、基本的には自分の仕事にフォーカスするわけですが、そういった外側にあるいろいろなコンテキストに考える比重や、それに対してアクションする比重をちょっとだけ増やすということは、これからの時代にけっこう大事になってくるよねと思うし、僕もそういったところを意識していきたいなと思います。

これはけっこう大事になってくるんじゃないのという話の1点目でございます。

サステナブル≠ステーブル

もう1個、これは最後の話ですが、長くやろうとすると、人はどうしてもそれを「安定する」とほぼ同義で捉えがちですが、真逆であると。少なくともぜんぜん違うことである、ということを僕らは忘れずにいる必要があるよねということをあらためてここでお話をしていくわけです。

例えば今みなさんがいるチームや、あるいはマネージドしているチームがほどほど良い状態だったとします。この良い状態をできるだけ続けるための努力はけっこう難しいわけです。世の中あるいは内的な、人も変化していくし。この状態をあと5年続けようといってもこれは人間としてけっこう難しい。

同じ状態が続くということを前提にするのはけっこう危うかったりします。仮に今、チームとして良いかたちでゴールに向かっていく状態としましょう。ただ、それを維持するということではぜんぜんないんだということを僕らは覚えておく必要があるかなと思っています。

そのメンタリティが僕はけっこう大事だと思っています。例えばリーグ戦をやって3連勝しているぜという感じだと、4連勝、5連勝したくなるじゃないですか。でもだいたい負けるわけですよ。なんだけど、リーグ戦だったら最後に1位になればいい。

勝ったり負けたりするけれど最後に1位になればいいよねというメンタリティと、「3連勝したからこのままずっと勝たないといけないんだ」だと、想定外の事態が起きた時の心の持ちようがけっこう変わってきます。

ちょっと精神論っぽいですが、人間には体があって心もある。そういったもので動いているので、心の持ちようは大事だなという話です。例えばあなたがチームマネージャーをしていて、すごくコアのメンバーからいきなり「明日辞めます」みたいなことを言われたらだいたいショックを受けるわけじゃないですか。

僕も受けるわけですけど。現実問題、ここでショックを受けて思考停止している分、チームとしてはちょっと時間の無駄なんですよね。だったら「そういうこともあるよね」と言って、それはそれとして「じゃあちょっとでも良い方法にするにはどうしようか」と、すぐに考えたほうがトータルは良いわけなんです。

辞める・辞めないに関しては、チームマネジメントがんばれとかあるかもしれませんが、そういうのに近いいろいろなことが正直絶対にあるじゃないですか。そういうことに対して「そういうこともあるよね。じゃあどうしようか」と、その上でチームをもっと良くしていこうねと、チーム全体がそういうメンタルだったらすごく楽しいよねと思います。

「いろいろ」について常に考えておく

今は内側の話ですが、外側で本当にこれからいろいろなことが起きると思うので、そういったことを大事にしていければと思っています。そんなことをやっていく中でいろいろあるんですけどいくつか。本当に時間がなくて、すごく抽象度が高いのですが3つほど書いてみました。

「杞憂」という言葉があるじゃないですか。あれの詳しい故事は、確か道教かどこかの『列子』にエピソードがあります。聞いたことがあるかもしれませんが、あれは空が落ちてくるかもしれないとか、地面がいきなり割れてなくなってしまうかもしれないとメチャクチャ心配してご飯も食べられないみたいな話からスタートするんですね。

僕らも同じで、10秒後にすごい地震が起きるかもしれない、これはすごくしんどいということがありうるけれど、心配してこの場にじっといてもしょうがない。心配することはいっぱいありますが、その上で僕らはどうするかというところで、目を背けるのでもなく、忘れるのでもなくて、「そういうこともあるよね」と。

「あったらこうしようか」と。「最悪こうすればいいよね」ということをボトムラインにしっかり考えて、その上でそれはそれとして日々がんばるということをちょっとずつやっていくというのはすごく大事なんじゃないかなと思っております。

当たり前のことをきちんとやる

2点目。今日はそんなに特別なことは話していませんが、当たり前なことでその上でやったほうがいいことっていっぱい出てくるわけなんです。僕も43歳になってつくづく思うんですが、こういう当たり前のこと、あるいは続けたほうがいいよねということを続けられる人というのは、僕を代表にほぼいないわけです。

やったほうがいいよねと客観的に思うことがあるじゃないですか。それをきちんとできたら100点どころの話ではなくて、すごいことですよと。なので、すごく特別ななにかじゃなくてもいいけれど、当たり前のことをきちんと続けていくというだけでけっこうすごいです。

逆にそれがどれだけ難しいかという話なんですが、これは2年ほど前に僕の中で大ブームがあった『独学大全』という本にあります。

この本には、なにか続けるのは根性では絶対に無理なので、きちんと外的な環境を作って頭を使って続けてやっていきましょうと書いてあります。これが2点目です。

当たり前の一歩先ができたら天才

最後に、僕らはどうせやっていくならちょっとでも良い世の中にしたいなと思っているし、良い成果を出したいなと思っているし、ソフトウェアエンジニアだったら良いコードを書きたいなと思っています。僕らが持っている当たり前のことをきちんとやるというところから、ほんの一歩でも先に。これはもう1つだけ良くしたらなんかかっこいいじゃんみたいなところです。

チャレンジをしてうまくいったらメチャクチャ楽しそうだねみたいなところ、ほんのちょっとです。1日1個でもいいし、1週間で1個でもいいし、もう少し意識して積み重ねるというのがすごく大きい成果だったり、あるいはイノベーションと呼ばれているものだったりにつながります。

本当に地味だけど当たり前のことをきちんとやるというところと、本当にちょっとだけ、それを越えてなにかやってみようというところに積み重ねができていると思うし、逆に積み重ねなしには、どこにもたどり着けないと思うんです。そういったことをあらためて大事にしてやっていきたいなということで、今日のカンファレンスの準備をしてきたわけでございます。

ということで、前座のお話はこれぐらいにして、ここから3トラックに分かれて始まりますので、みなさん今日は1日楽しんでいただければと思います。どうぞよろしくお願いします。私からは以上です。ありがとうございました。

(会場拍手)