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自動運転EVスタートアップTURINGが考える e2e deep learning による完全自動運転への道(全2記事)

世界を前進させていくのは“素敵な勘違い” TURINGが「We Overtake Tesla」を掲げる理由

AWS Startup Communityがお送りする、年に1度の祭典、「AWS Startup Community Conference 2022」。日本中のAWSを利用するスタートアップが、AWSの知見を披露するHubとなる1日です。ここで登壇したのは、TURING株式会社・CEOの山本一成氏。ディープラーニングによる、完全自動運転の実現について話しました。全2回。前半は、TURINGの始まりについて。

完全自動EVを目指す、TURINGの始まり

山本一成氏:TURINGという、完全自動EVを目指す会社がどういう狙いで始まったのか話していきたいと思います。

最初にちょっと自己紹介と、メンバーについて話をさせてください。

今しゃべっているのが、山本です。(スライドを示して)ちょっと自慢をすると、私は21歳の時から、将棋のプログラムを10年ぐらい作っていました。最終的には、機械学習、大規模コンピューティングという文脈に乗っかって、将棋の名人を倒すところまでいきました。

もう1つ、HEROZという会社にいて、こちらでも「将棋ウォーズ」というアプリをすごく楽しく作っていたら最終的に上場までできました。スタートアップや人工知能をすごく楽しんできている人生という感じです。

将棋のAIがいったん名人を倒して、会社もいったんは上場できたので、次にどうしようかなと思っていました。私のような幸運な人間は、この世界にもっと、ポジティブなインパクトを残さなきゃと思っていたのですが、そういうところで、どういったところにチャレンジするのがいいのかなと、けっこうくすぶっていた時期がありました。

やはり大きな産業がいいなと、当時考えていたのは、自動車関連、医療、不動産、保険といったところでした。

(スライドを示して)車はやはりAIとコンパチビリティがあるよなと思っていた中で、共同創業になる青木さん(青木俊介氏)と出会いました。彼は今、国立情報学研究所で青木研を持っています。カーネギーメロンでPh.D.を取って自動運転をやっていて、(日本に)帰ってきました。

彼が、自動運転に関するいろいろなことや、EV産業がアメリカではどれぐらい盛んなのかを教えてくれました。彼と2人で一緒に起業しようと思ったのがちょうど1年前、2021年の8月の20日なので、会社は、今1年プラス6日という状態です。

ほかにも、私の古い友人である山口(山口祐氏)という者も入って、今、合計すると12人ぐらいの会社をやっています。

最初に入ってくれた人が「Kaggle」のGrandmasterだったり、まだ日取りが完璧には決まっていませんが、日産の人も入ってくれる予定で、だんだん会社としての幅も広がってきたなと思っています。車を作るとなるといろいろな才能が必要なので、そういった意味で、いろいろな人を集めなきゃなと思っている次第です。

資金調達もずっとがんばっていて、会社としては、創業10ヶ月目でシードの段階で10億円の調達に成功しました。EVや自動運転をやると考えると、もちろん十分とはとても言えなくて、まだまだ調達をしていかなければいけませんが、名乗りを上げることに成功したかなと理解しています。

AIを軸にした仕組みが実現できないと自動運転はうまくいかない

(スライドを示して)最初我々はどんなものを作ったかというと、もちろん車を作るという大きな目標があるのですが、その中でも自分たちが得意な人工知能に関わるところをやろうと思い、こういったものを作ってみました。

普通、自動運転はたくさんのセンサーを積んで、その上でいろいろ行いますが、TURINGは基本的に、そんなにたくさんのセンサーを積まなくても運転できるはずだと思っています。

ここにカメラがあります。これは、ヨドバシカメラで3,000円ぐらいで買ってきたカメラです。直接Webカメラから転送をした情報をパソコンに持ってきて、パソコンでディープラーニングして、ResNet18ですね。ハンドルの角度を出力して、それを車に伝えるという、ざっくりとしたシステムです。

あとでも繰り返し言いますが、やはりAIを軸にした仕組みを作らないと絶対にうまくいかないと我々は思っています。センサーの種類ももちろんありますが、それよりもものすごく良い判断器を作らなきゃいけないというのが、我々のドグマあるいはフィロソフィーです。

(スライドを示して)我々はソフトウェア集団なので、大変だったのはハードウェアです。ちょっとギョッとするような画像かもしれませんが、車をいろいろ分解したり、今ラジコンで動かしているのですが、ラジコンとつないで動かすようにしたりするのがすごく難しかったですね。

本来ならば、AIの人たちもどんどんこういう自動運転に参画、あるいはそういったハードウェア技術に参画していけばいいのですが、やはりハードウェアはそれ特有の世界観があって、なかなか参画するのが難しかったという意味です。

特に車は、車自体の値段もあって、電子回路がわかるというレベルでは、なかなか操作制御には介入できません。車は特殊な世界なんですよ。そういった意味で、けっこう難しかったですね。

ただ、今はTURINGの社内でノウハウ、技術も溜まってきて、車のハンドルだけではなく、エアコンやいろいろなレイヤーのパーツが操作できるようになってきました。

素敵な勘違いが世界を前進させていく

ちょっと話が変わって、これはAWSの「Startup Community」という話です。みなさんはスタートアップに縁がある人が多いかなと思っています。「じゃあ、スタートアップって何?」というと、もちろんいろいろな意味を含んでいるので、一言では言えませんが、なぜ2022年の今、スタートアップが大事なのか、ちょっと個人的な意見を共有したいなと思っています。

昔は国家というものがすごくうまくいっていたと思うんですよ。新幹線を作る、速い鉄道を作る、いい道路を作る、ダムを作る……そうするだけで人々の生活が目に見えて改善されていくという、今となってはシンプルな考えだったんですね。

ところが、AWSのMLOpsを作るとか、あるいは機械学習でなにか新しいサービスを作るのは、すごく役に立ちますが、そのノウハウが直感的には多くの人にわかりにくい。国家がそういったものをきちんと把握するのは、すごく難しくなっていると思っています。

こういったものを、才能のある天才やアグレッシブなチャレンジャー、あるいは、それらのチャレンジャーを受け止めるベンチャーキャピタリズム、VCが再び資本主義を加速させていったと思うんですね。

つまり、国家が本来役割を負うべきだったものが、民主化されたというか、民間にそういう力が流れていったんだと思います。

(スライドを示して)今画面に出ているのは、イーロン・マスクです。彼はVC、ベンチャーキャピタル、あるいはスタートアップという文脈を巻き込んでロケットを作ったり、自動車会社を作ったり、少し昔ではちょっと考えられなかったようなことを実現しています。

(スライドを示して)この時代は、素敵な勘違いが世界を変えるようなことがいっぱいあるんじゃないかと思っています。

素敵な勘違いとは、私の中の用語です。私は21歳の時に大学で留年をして、ちょっとやることがわからなくなって将棋プログラムを作り始めました。その後、また機械学習を一生懸命勉強して、すぐではありませんが、名人を倒せるプログラムを作れるんじゃないかと勘違いしたんですね。

当時の機械学習への理解やプログラミング能力を考えれば、完全にそれは勘違いなんですが、こういった「普通に考えたらそれは勘違いだよね」みたいなものが、やはり世界を前進させているんだと思っています。

TURINGという会社は、ものすごい勘違いをしています。(スライドを示して)どういう勘違いかというと、「We Overtake Tesla」。テスラという大きな企業も、我々はひょっとしたら倒せるんじゃないかと思って、この会社を始めました。

テスラの始まりは改造車の製造だった

車は、国内で年間50兆円クラス、世界でも300兆円クラスです。年間1億台はいきませんが、それに近い数の車が作られています。

驚くべきことに、アメリカと中国では、EVや自動運転を作るスタートアップが何百社もあって、すでにテスラや、Nio、Rivian、BYDなど、かなりの成功を収めています。

一方、日本には、もちろん(そういうスタートアップが)あって、車を作ろうとか自動運転をやろうという会社もありますが、すごく数が少ないなと思います。全部やる人たちはあまりいないと思っていて、テスラみたいになろうと勘違いする会社があってもいいなと思って始めました。

(スライドを示して)今テスラ、テスラと言っていますが、テスラはこの瞬間、時価総額が100兆円あって、年間100万台程度の車を作っています。

そんなすごい会社がどう大きくなったかというと、実は最初は、改造車を作っていたんですよね。ロータスというメーカーがあるのですが、そこと契約して、車をもらって、中のエンジンを引っこ抜いてモーターに変えて、バッテリーを入れるという感じで始めたんですね。

これを100台から1,000台ぐらい売って、次にライン工場を作って、「Model S」とか「Model X」とかを作りました。写真の真ん中に載っている白い車はModel Xといって、正確に言えばファルコンウィング……扉がファルコンの翼のように広がるんですね。これは意味があるかどうかでいうと、わかりませんが、すごくワクワクするEVを作ったんですね。

最後は「Model 3」といって私も持っていますが、なんだか普通にいい車なんですよ。

こういうふうにきちんと車を作って売る。最初は高級車でしたが、さらにもう少しアフォーダブルな車を作って売って、最終的に、よりリーズナブルな車を作って売るというのを、イーロン・マスクは最初から言っていて、なるほど、こうやってテスラは大きくなったんだなと思います。

(スライドを示して)我々もきちんと追いかけようと思って、今はレクサスをすごく改造しています。TURINGもテスラと同じように、高級改造車セグメントから攻めていこうと思っています。

実はテスラ以外にもいろいろなセグメントがいっぱいあります。今後EV化、あるいは自動運転化は絶対に来るので、このビッグトレンドに乗ろうと思っています。

繰り返しですが、TURINGはEVを作るぞという話で、車の保安基準や車の工場の話もこれはこれですごくおもしろいのですが、今回の参加者はAWSの人がほとんどで、私はMLOpsの人材が欲しいなと思って今日話をしに来たので、今回は、2つ大きなトピックがあるうちの1つにぐっと絞って、自動運転の話をしていきたいと思います。

(次回へつづく)

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