プロダクトが伸びないことはけっこうつらい

――逆にプロダクトマネージャーをやっていてつらかったことはありますか?

奥原拓也氏(以下、奥原):やはり、自分が担当したプロダクトが伸びないことはけっこうつらいです。プロダクトマネージャーの価値はプロダクトを成功させることだと思います。例えば、新規事業をゼロから担当するとなった時、コロナにぶち当たったこともあって、なかなか伸びない時期がありました。その時はしんどかったです。ただ、腐らずにやってきたからこそ、今があると思っています。

ちなみに、新しいことを始める時が憂鬱で……人と関わることがけっこう苦手なんです(笑)。それなのに、なぜプロダクトマネージャーをやっているんだろうという話ではありますが。

会社が大きくなって、いろいろな部署ができて、もはや違う事業まで出てきています。組織が大きくなると、今までのノリが通じなくなってきます。今までのノリとは、スタートアップで人数がメチャクチャ少ない中でのあうんの呼吸のようなもの。それが、ちゃんと「なぜ」を伝えないといけなくなります。

それまで自分はプレーヤーとしてやってきていて、1人で突破するのが得意でした。人やチームを動かす、みんなで勝ちにいく、それがなかなかできないわけです。

上長に言われたのは「みんなが向かっているところは一緒だし、一番考えるべきなのは、やはりその人が笑顔になること。どうやったらその人が笑顔になるのか、幸せになるのかを、社内でもいいし社外でもいいから考え抜くこと。」ちょっと言葉は堅いですけど、利害関係を一致させること。これが、人が動くインセンティブにもなるしモチベーションにもなるので、そこをひたすら考えました。

柔らかい言葉で言うと、どうしたらその人が笑顔になるか。クライアントだったら、どうしたらその人が会社で褒められるか。それをひたすら考えることを上長に教えてもらった時に、自分のコミュニケーションが改善したと思います。

人と人とのハブになるコミュニケーションを教わってこなかったんです。学生でベンチャーにボンと入ったので。研修はないですし、今が自分のキャリアの中で一番大きな会社なんです。まさに今が。ずっとそうなんです。

なので、大きい組織で人をマネジメントしたり、いろいろな人と関わることがあまりありませんでした。あまりなかったというか、ぜんぜんなかった。プロダクトマネージャーとしてチームのみんなを導くという意味で、そこはけっこう苦労しました。今も苦労しています。

プロダクトマネージャーの「しくじり先生」

――「みんなの利害を一致させる」「みんなが笑顔になるようにする」ことについて、いろいろな人がいると思いますが、一人ひとりの話を聞きながらやるのですか?

奥原:そうですね。マネジメントでいったら1on1の頻度を上げます。その人がより大きな仕事ができて給料が上がるために、自分はどうすればいいのかと。

『嫌われる勇気』です。自分を変えることはできるけど、他者を変えることはできないから、やはり自分が変わるしかない。相手を動かすのではなくて、自分は何をしたいのかを考える。部署間でどのような力学が働いていて、どのようにすればこの人は笑顔になるのか、マネジメントではそれを調べます。

例えば初めて交渉する時には、相手のことを聞いて探るわけです。どのようにすればこの人が笑顔になるかという情報を聞くと、その人の立場や目標、追っているものがわかってきます。「あっ、なるほど」と。それがすごい学びですし、事業が成長すればみんなハッピーになるので、そのあたりもけっこう意識しています。

――適材適所が大事であることが聞いていてすごくわかりました。プロダクトマネージャーとして失敗したことはありますか?

奥原:失敗はメチャクチャしていますね。エンジニア出身だからかもしれないですけど、Howで考えがちなんです。プロダクトアウトというか、解決策から入ってしまうことがけっこうありますね。なぜかというと、技術がわかっている分「こういうことができる」と考えてしまう。

過去の話でいったら、「すぐ作っちゃえ」「実装して出しちゃえ」などと。そして、結局使われずに機能をクローズしないといけない。その時点ですでにいろいろな労力がかかっているので、「しくじった……」というのはありました。

――そのしくじりをどうやって乗り越えたのですか?

奥原:まず、開発のプロセスにおいて、そもそもなぜそのようなことが起きるのかを言語化しました。やはり不確実性が高い状態で世の中に出すから、起きるのだと思いました。

例えば、「こういうものが欲しいです」「それだったら、これをあげます」であればわかりやすいですよね。でも、toCのサービスの場合、ユーザーはこのように言っているが、本当は違う課題が存在していた、ということが往々にしてあります。まずはそこを明確にする。課題は何かを特定する。そこに対してプロトタイプを当てることを、僕は解決策として考えています。

プロトタイプというと大げさですが、ペラ1でもモックでも良いのです。「あなたの言っていたことはこういうことですよね」と可視化して、できれば動く状態で使ってもらう。労力を無駄にせず、使われないものを生み出すことなく、ユーザーの課題を解決するものを提供する。それが最適だと思います。

プロトタイプを作るよりもリリースしたほうが早い時もあるのですが、トータルで考えるとそのほうが早い、それが今の僕のプロダクト作りの哲学・方法論になっています。もちろん、この方法を取るほうがいいケースもあれば、リリースしてしまうほうがいいケースもあるので、そこは使い分けをしています。

プロダクトマネージャーを任されたときのアドバイス

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