安心して仕事ができる環境を作ってくれるPMとはやりやすい

橋本将功氏(以下、橋本):みなさんこんにちは、パラダイスウェアの橋本です。

中島大輔氏(以下、中島):中島です。

古長谷莉花氏(以下、古長谷):古長谷です。

橋本:「だれプロラジオ」第35回は。

古長谷:「優秀なプロマネはここが違う」です。

橋本:優秀なプロマネはどこが違うと思います? プロマネ、いっぱい見てきている?

中島:見てきていますね。前回お話に出た心理的安全性とかは最近の言葉ですが、安心して仕事ができる環境を作ってくれる人が、一緒にやりやすいかなと思います。

橋本:明確ですね。

中島:非常に明確です。

橋本:仕事はいろいろな条件が毎回あるから、ある程度の大変さとか、判断がシビアというのは、一定のレベルにある人はわきまえていると思うんですね。だけど、そこに心理的安全性が確保されているか、されていないかでぜんぜん違いますもんね。

中島:違ってきますね。

橋本:シビアな状況で、「やっぱりこれ全部やり直し」みたいなことを平気でやってくる人とはもうやってられない(笑)。

中島:やってられない(笑)。もう、できない。

PMとしてうれしい言葉は「また一緒に仕事をしたいです」

橋本:古長谷さんは何が違うと思う?

古長谷:けっこうふんわりしているんですが、「もう一度この人と仕事したいな」と思える人はいいプロマネリーダーかなと思っています。

橋本:僕のPMとしての一番のご褒美の言葉は、プロジェクトが終わった時にメンバーの人から言われる「どこかでまたもう1回仕事したいですね」。これは僕、一番うれしい。

中島:いいですね。

橋本:お客さんに喜んでもらうのは、プロジェクト目標が達成できたらもちろんあるわけですが、それって本来、そうでないといけないものじゃないですか。だけどメンバーの人は、僕の良いところも悪いところも全部知っているわけですよね。そこは隠せないから。僕の不手際も当然あったわけだし、そういうできたこと、できなかったことを全部ひっくるめた上で、「もう一度一緒に仕事がやりたいです」は、僕は一番本音の評価な気がしています。

中島:確かにそれはいいですね。

優秀なPMが持つ、“経験の深さ”と“懐の深さ”

橋本:僕は、また軍事に喩えちゃいますけど(笑)。

古長谷:戦いますね(笑)。

橋本:目標達成すること、これ自体は一番大事なことなんだけど、メンバーを守れるかどうかも同じぐらい大事です。目標達成したんだけど、死屍累々ですという状況は、ぜんぜん優秀じゃないと思うんですよ。

昔は本当に「ソフトウェアエンジニア」ではなくて「プログラマー」という言葉がよく使われていて、要は「人手を集めればシステム作れるじゃん」みたいなノリの時代もありました。今はそういう時代ではないし、人を入れ替えると、全体に影響するケースがすごく多くなっていて、人の使い捨てみたいな考え方で通用する時代ではもうなくなっているなというのはありますね。

僕が優秀なプロジェクトマネージャーだと思う要素が何かというと、そりゃそうだという話なんですが、“経験の深さ”、“懐の深さ”。最近読んだ記事ですごく気に入った一言があって、「ある専門性の領域のプロが何かというと、その領域で考えられるすべての地雷を踏んだ人」という。この定義、すごく良くないですか?

中島:すごいですね。1個1個全部経験済みなんですね。

橋本:「全部踏んできました」みたいな。

中島:それはすごい。

古長谷:「よくぞご無事で」みたいな感じ。

中島:確かに、それはある。

橋本:みんな無事ではないけどね(笑)。

中島:なにかしらの傷を負っていますよね。

橋本:1回自分が痛い目に遭っているから、どこにリスクがあるかがわかるわけですよ。どこに地雷が埋まっているか。踏んだことがない人は平気で歩いて行くんだけど、そこはたぶんあるよみたいなのが事前にあって。今、自分がコンサルティングとしてやっているのって、そういうことだったりするんですね。

ほかに大事な要素は「腹で考えられるかどうか」

橋本:だから、経験の広さ、深さはすごく大事だと思うんですが、若い人に向けてこういう要素がすごく大事だよというのを1つ挙げるとすると、「腹で考えられるかどうか」だと思っているんですよ。

中島:頭では?

橋本:腹。何が違うかというと、頭で考えるときれいなソリューションを出そうとしちゃうんですよ。賢い人ほどそうしやすい。それが求められる場合もあるんですが、PMは人と技術とお金みたいな、全部ごった煮の世界なので、いろいろな条件が頭に入るでしょ。そしたら1度腹で消化しないと、正しい答えは出てこない。

この腹に落として考えることができないと、条件反射で返しちゃう。問題が起きた時に、ヒステリー起こしちゃったり、パニックになっちゃったり、お客さんから何か言われた時にもうそれだけでグロッキーになっちゃったりとかは、1度腹にためて、それはどういうことなのかをよく考えないといけなくて。それってやはり経験が浅いうちはすごく難しいんですよ。

中島:主観的になりすぎるというところも1つありますよね。僕はゲームに喩えて「FPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)はダメだよ」「TPS(サードパーソン・シューティングゲーム)で見ないとダメだよ」とよく説明をします。

橋本:俯瞰でね。

中島:自分を俯瞰して見ていないと、攻撃を「痛い痛い」と受け入れすぎちゃう。ちょっと俯瞰でいると、「なんか痛そうだな」「痛い状態だな」という状態でいられる。1歩引いた状態じゃないと、けっこうきつい、つらいという感じになる。

橋本:でも、痛み自体はあるんですよね。

中島:ある。感覚として痛みはあります。

橋本:(痛みは)あるんだけど、それをそのままリアクションにしないというか。

中島:そうですね。

橋本:要件定義のところでもお話ししましたが、けっこうよくあるのが、一生懸命案を作ってこれを受け入れてもらおうとして、摩擦が起きること。お客さんが欲しいのはそれじゃないとなると、変えていかないといけないわけですよね。

だけど、「今日も寝ずにがんばったから、これを通したい」みたいになっちゃうと、そこで「え」となるでしょ。

中島:エゴを捨てたほうがいいですね。

橋本:そうですね。

中島:けっこう精神的な話ですよね。

橋本:そうなんだけど、僕が今まで会ってきた人たちで優秀なPMだなと思う人たちは、みんなそういう人たちですね。

古長谷:すごく難しいのが、今ある「即レスがいい」みたいな風潮。

橋本:そうそう、だからそれがそうじゃない。

古長谷:矛盾しちゃいますよね。「早く返さなきゃ」「早くしてあげなきゃ」と親切心で思っていると、お腹で考えられなかったりしますよね。

中島:消化する時間がね。

橋本:それはすごく簡単で、「はい、わかりました。考えます、検討します」と返す。

中島:「見ています」「やっていますよ」というリアクションをするのは、すごく大事ですよね。

古長谷:判断の話ですよね。

橋本:そう。例えば日中にちょっとシビアな話がSlackで飛んできた時は、「ちょっと待ってください。その話を確認したいので電話させてください」とか「オンラインミーティングいいですか?」とか、1回入れて、そこでよく聞いた上で自分で夜中考えたり、関係者に裏を取ったり、調整の余地があるかどうか考えたりすると、結果的に腹で考えることになっていきます。「言われたから言い返す」だと、やはり厳しいですね。

優秀なPMはお客さんともメンバーとも上下関係を作らない

橋本:ほかにも、(優秀だと思うPMは)上下関係を作らないですね。コミュニケーションがフラットな人ばかりです。これは、お客さんに対してへりくだらないという意味でも、上下関係を作らない。上下関係を作っちゃうと、プロジェクトという1つの目標に向かうべきところで、余計な要素が入っちゃうんですよね。

1回へりくだると、お客さんに要求するべきことが言えないし、お客さんにやってほしいことも言わなくなるし、「やっていただく」になってしまうので、プロジェクトメンバーとして、1つの目標をやるんだからフラットですよねというのが本当は理想です。そこに近づけていかないといけないし、メンバーに対して上から言うと、自分の判断が間違っていた時に取り返しがつかないですよね。

あと、メンバーが下から物を言いにくくなって、言われたことしかやらなくなるという、デメリットがメチャクチャあります。

中島:本当にデメリットとしかないですね。

橋本:上下関係を持ち込もうとする人が多いんですよ。それと会社の中でプロジェクトやっていると、難しいんですよ。会社は基本入社年次で上下関係があるでしょ。先輩、後輩がいて、「お前は後輩だから俺の言うこと聞け」みたいな感じとか、あるいはプロジェクトの指揮系統と会社の指揮系統がごっちゃになっている場合もあるでしょ。

プロジェクトリーダーは課長という感じになっていると、必然的に主任や担当レベルの人たちが部下になるので、言うことを聞かないといけない感じになったりするんですよ。だけど本来、上下関係はデメリットにしかならないから、外したほうがいいんだよね。

その時々の状況に応じてベストソリューションを提供しなければならない

橋本:優秀なプロマネの条件。心理的安全性を確保してくれる人。これも確かにそうだと思います。もう一度一緒に仕事したい人。もう最高の評価だと思います。僕からは、1つ挙げました。経験の幅と深さをできるだけ蓄積できていると予測不能な事態があってもいろいろ判断ができるかなと思います。

また、これからPMとして習熟していきたい人にお伝えしたいのは、腹にためること。腹にためるのはどういうことかというと、条件反射しないということですね。

PMは、人、お金、技術などいろいろ考えなければいけないことがあって、その時の状況でベストなソリューションを提示する役割もあるので、起きたことに対して過剰反応しないというか、脊髄反射しないみたいなところはすごく大事かなと思います。

「だれプロラジオ」第35回は。

古長谷:「優秀なプロマネは何が違う?」でした。

中島:この動画が良かったと思ったら、グッドボタンとチャンネル登録をぜひよろしくお願いします。

橋本:お願いします。

中島:それではまた次の動画でお会いしましょう。ご視聴ありがとうございました。

橋本:ありがとうございました。