手伝う理由には「ストーリー」が必要

やまげん氏(以下、やまげん):せっかくなので、リスナーの方からもお便りや質問も募集できたらなと思うんですけど、何かあったりしますか? すごい、でもあっという間でしたね。

山崎大輔氏(以下、山崎):すみません。なんかバカみたいな話をずっと。

やまげん:いえいえ、そんな。

山崎:これ、お便りってどうやって見るんですか? 1個しか見えないんですか?

やまげん:ホストが一覧を見ることができます。今いただいたお便りを貼りつけています。

山崎:ありがとうございます。

やまげん:じゃあ、「Voicyの顧問を受けてくださった理由が知りたいです」と。

山崎:そうですね。僕は、いわゆるCTOとかエンジニア界隈でいうと、中くらいの知名度で、超有名ではない。

やまげん:ええ? そうですかね(笑)。

山崎:自分の評価としては、僕はちょっと前にちょっと活躍したエンジニアって感じなんですよ。だから今の活躍されている社長の方で、僕をちゃんと知っていて、かつ、僕にたどり着く人はけっこう少ないんです。

緒方さん(株式会社Voicy代表取締役・緒方 憲太郎氏)もそうだったと思うのですが、僕が十何年前に1人で会社をやっていた時に、とある有名な会社の人から「手伝ってくれ」という話が来たんですよ。当時はリーマンショック直後で、いろいろ大変な時期でしたが、「うちみたいな弱小の会社をよく見つけてきたな」という感じだったんです。それだけ彼らは困っているし、(うちにすら)声をかけるぐらいの切迫(状況)だったんですよ。

僕は超有名なエンジニア、社長というわけでもないので、僕にたどり着くのは地味に難しいんです。

あともう1つ話があるのですが、XTechの手嶋さんという、今LayerXの取締役員をしていて、昔メルカリに出資してすごい儲けた、すごく有名な方がいらっしゃいます。

彼は「ストーリーがあった」という言い方をよくしていて。僕はなぜ緒方さんと知り合ったかも忘れてしまいましたが、緒方さんは「あっ、これは手伝う理由がある人なんだな」とたどり着いた方だったんです。

いろいろ話があり過ぎて、なんでそういうふうに思ったかも忘れてしまいましたが、やはりストーリーがあったというのがすごく大きかったです。

やまげん:なるほど。なんかすごくうれしいですね。

山崎:大企業の方とかはすごくお金とかがあって、「お金はいくらでもいいからやってくれ」みたいな話はけっこうあったのですが、その代わりにすごく大変だったり、無茶をなんとかしてくれみたいな話がけっこう多かったんです。そういうのも別に悪くはないのですが、そこを手伝う理由がないんです。

僕はこの業界で25年ぐらいやっていますが、やはり縁みたいなものをすごく大事にしたくて、そういう意味で、技術顧問は今3つか4つぐらいやっています。今受けているところには、先輩とか、ちょっと断れない人がやはりいるわけです。

やまげん:はい(笑)。

山崎:「お前、なんでやらないの?」と言われれば「すみません、やらせていただきます」と言わざるを得ないみたいな、そういうところもあります。例えば、その会社に、僕の知り合い、お世話になった人が、どういう理由かわかりませんが、3人も4人もいるわけです。

Reproさん(Repro株式会社)というところがそうなんですが、あそこは僕がお世話になった方が2人ほど入っていて、「あれ、なんでいるんですか?」みたいな。「そういう話だったらちょっと」みたいな話で。あとは社長とけっこう昔からの知り合いだったとか、そういうのもあって。やはりストーリーがないと(受けるのは)ちょっと厳しいんですよね。

今聞いているエンジニアの方もそうだと思いますが、今エンジニアは、がんばれば給料が上がる時代で、(どの会社も)ちょっとした給料はもうどこも出す時代になってきています。じゃあ、なぜその中からその会社を選んだかという話には、やはりその人なりのストーリーがあるはずなんですよ。そこはありますね。

やまげん:なるほど。

やまげん氏がVoicyに転職した時のストーリー

やまげん:僕もVoicyに入ったのには、けっこうストーリーがあります。

山崎:何ですか? 聞きたい。

やまげん:僕はもともとヤフーにいて、ハッカソンとかをやっていて、その時は音声アプリを作っていたんですよ。

山崎:ヤフーで?

やまげん:ヤフーのハッカソンみたいなもので音声アプリを作りながら、藤門さんに「つまんないね」じゃないですが、「響かないね」みたいなことを言われるから「ぐぬぬ」と思いながらやって。ただ、情報発信器になるようなものを作っていました。

これから音声広告とかの時代になった時に、スピーカーはどこにでもあるインフラなので、どこでも携帯でキャッチして情報を受け取れるようなものを作っていました。

「音声インフラを作る」みたいなことを妄想して終わっていましたが、その時に緒方さんの記事を見て、「メチャクチャ僕がやりたかったことやってるな」みたいな感覚がありました。「とりあえず転職しようか」というのはあまりなかったですが、「やってみようかな」みたいな感じで、あれよあれよと入社しました。

山崎:そういうストーリーみたいなのがありますが、僕がよく言うのが、人生というか、エンジニアもそうですが、やはりやること、やれることが多過ぎて、選び切れないんですよね。

なんでもできちゃうじゃないですか。別に音声エンジニアでもいいし、広告エンジニアでもいい。だからそういう点でいうと、素敵なストーリーみたいな、僕はよく「素敵な勘違い」と言いますが。そういう意味でいうと、緒方さんは素敵な勘違いをさせてくれる人ですよね(笑)。

やまげん:なるほど、確かに(笑)。引き付け力が高いですからね。

山崎:緒方さんは高いですね。

やまげん:なるほど。すごくうれしいですね。緒方の魅力が理由という感じですかね。

山崎:そうですね。やはり緒方さんはすごくいいですね。

やまげん:そういった縁でこうやって一緒にやれているのは、すごくうれしいですね。ありがとうございます。

音声コンテンツにはエンジニアリングが介在する余地がある

やまげん:もう1つ質問があります。、「Voicyにどんな未来を感じていますか?」というお便りも来ています。

山崎:でも、これは「緒方さんの書いた『ボイステック革命』を読んでください」みたいな話になっちゃうんですけど。というのは、未開拓過ぎるんですよね。みなさん、高校時代とかにラジオ聞きました?

やまげん:僕はちょいちょい聞いていましたね。

山崎:僕らの世代だと、「オールナイトニッポン」という深夜ラジオがあって、(それを)ずっと聞いていたんですよ。就職してラジオを聞かなくなっちゃったんですけど、Voicyを聞いた時にその感覚がすごくよみがえってきて。僕もいくつかフォローしていてずっと聞いているんですけれど、そういうことがあって。「ラジオの代替としてのVoicy」みたいなことがまずあります。

あと、ボイステック革命の話でいうとラジオだけでは終わらなくて。今、可処分時間の取り合いみたいなことをよく言われるじゃないですか。「ガムのライバルはスマホ」みたいな。「ガムを買わなくなったのは、スマホを使って暇つぶしができるから」みたいな。

可処分時間の戦いみたいなものがあるんですけど、音声は目と別なので、ながら視聴ができるんですよね。それってけっこう大きくて。よく比較として出されるのが、例えば、美術館のようなところで「この情報知りたいな」と思った時に、スマホを開いて検索して、(検索した)文字を見ながら作品を見ることはできないじゃないですか。

だけど、音声を聞きながら作品を見ることができるので、そういう人間の可能性を拡張できるような話が『ボイステック革命』には書かれているんですけど、ああいうのとかがあります。

そういう可能性がメチャクチャあるのにもかかわらず、今はプレイヤーがメチャクチャ少な過ぎるのと、それに対するインフラが脆弱過ぎることです。技術的には音声は動画と違って、インフラコストがメチャクチャかかるわけじゃないじゃないですか。

やまげん:そうですね。

山崎:テキストよりはかかるけれど、動画の何十分の1という感じじゃないですか。

やまげん:そのとおりですね。

山崎:そのギャップがすごくあるのにもかかわらずプレイヤーが少な過ぎるので、余地があり過ぎるんですよね。そういえば、一時期ライブチャットで苦戦していることとかあったじゃないですか。

やまげん:はい。

山崎:「意外と詰まる」みたいな話があって。エンジニアリングが介在する余地があるなという感じだったので、そのあたりですかね。

やまげん:ありがとうございます。やはりゆくゆくは音声インフラを作っていきたいので、(それは)まさにVoicyが目指したい世界そのものですね。

山崎:そうなんですよね。今のインターネットはやはりテキストじゃないですか。動画は目が奪われちゃうので、ながらはできないという意味では危険なんですよね。そういう点でいうと、音声はどういう時間にも割り込むことができるので、余地はありまくりだなという感じです。

やまげん:そうですよね。僕も緒方さんの話を聞いて目から鱗が落ちたなと思ったのが、「耳の可聴時間は目よりも広い」ということは、時間的なところで広がるのはそうなんですけど、年齢的なところでも広がるということです。

山崎:どういうお話ですか?

やまげん:例えば、赤ちゃんも最初は目が見えませんが、コミュニケーションを声で取るし、お年寄りも目が不自由になって寝たきりになってしまっても、最後は声でコミュニケーションするということです。

山崎:なるほどね。

やまげん:やはり目よりも耳は、人生の時間も長いのかなと思っていたりもしています。

山崎:そうですね。

やまげん:その分ソリューションが生まれるんじゃないかなというところはあって、そういうのを作っていきたいですね。

山崎:そうですよね。あとラジオみたいな話の文脈でいうと、ボイスは編集時間がすごく短いというか、ないじゃないですか。だから、嘘がつきにくいのはすごくよかったですね。

やまげん:確かに。

山崎:ここのアドリブでうまいこと騙せるんだったら、それはもう、その人の素じゃないですか。

やまげん:それはそれで、エンターテイメントとして。

山崎:そうそう。だからそういう点でもすごくいいなとは思いましたけどね。

やまげん:確かに。今はこれがそのままコンテンツになりますからね。なるほど。ありがとうございます。すごく楽しかったですね。「おもしろいです」というコメントもいただいています。

山崎:本当ですか? よかったです。

(次回に続く)