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JOMYAKU CTO 野澤一貴さん公開インタビュー(全4記事)

JOMYAKUが下した「営業をやめて技術負債返済する」判断 開発と品質の攻めと守りのバランス

第一線で活躍するCTOに日々の業務や未来をインタビューする「Voicy公式 厳選!CTO百景」チャンネル。ここでJOMYAKU CTOの野澤氏が登壇。続いて、JOMYAKUの開発と品質の考え方について話します。前回はこちらから。

ミクシィから静脈産業のDXにチェンジした理由

やまげん氏(以下、やまげん):ミクシィ(株式会社ミクシィ)の次で急に静脈産業のDXということになるわけですが、その部分のマインドチェンジというか、なぜ急にそこになったかみたいなところはいかがですか?

野澤一貴氏(以下、野澤):だいぶそこは端折ってしまいました。ミクシィのあと起業して、そのあとにフリーランスになったんですよ。いろいろな会社さんをお手伝いしていく中でいろいろな業界のお仕事をお手伝いをさせてもらったりして。まだまだおもしろい、解決しなきゃいけないお題が世の中に溢れているんだと。

そういうところで、アドテク以外のことをやってもいいかもしれないという心境の変化があったのと、最終的に広告代理店のオプトに入ったんですよ。「野澤はまた何かアドテクのことをやるのか」と思いつつも、オプト自体に、広告事業だけではなく、新たな収益の軸を作りたいというミッションがあったんです。

その中で新規事業を連続的に立ち上げるインキュベーション会社的動きをする子会社ができて、その中のプロジェクトの1つとして静脈産業があったという背景があるんです。いろいろな事業の話などに携わらせてもらっていく中で、僕にとって一番静脈がおもしろそう・貢献できそうというところがあり、ジョインをしたという感じになります。

やまげん:なるほど。新規事業部的なところで、立ち上げ後になるんですね。

野澤:そうですね。事業開発部的なところにいました。

組織の成長に伴うCTOの役割の変化

やまげん:今は実際に何年目になるんですか?

野澤:JOMYAKU自体がですか?

やまげん:そうです。

野澤:JOMYAKUは子会社化したのは、2021年10月なんですよ。なので会社としては若いですが、JOMYAKUのプロジェクトとしてはだいたい2年ぐらいやってきている感じです。

最初の1年目は仮説・検証で、どういうプロダクトにしていくかのかたちを作るためのトライ&エラーをしまくる。そこからぼんやりかたちが見えてきたところで、ベータ版を作る。そこから拡販に向けていろいろな機能の強化だったりとかを進めているのが今、という感じになります。

やまげん:では今のフェーズとかは拡販というところで。

野澤:そうですね。拡販に向けた機能開発を進めています。

やまげん:なるほど。今はエンジニアの数が10人という話だったと思いますが、もともとは1人から始まったんですか?

野澤:そうですね。

やまげん:2年で10人に増えるというのは成長している組織でもあると思いますが、ご自身の役割の変化だったり、一言でCTOと言ってもどんどん変わっていくものかなと思っていて。何かそういったものはあったりしますか?

野澤:10人に増えたとはいえど小さな組織ではあるので、自分がその組織の中で足りていないことを足し続けるというスタンスは変わっていません。今は10人のメンバーになったので、僕が直接開発に関与することは少なくなってきています。

ただ、静脈産業における課題は配車以外のところにもたくさんあるので、そこの機能をより早く提供できるようにするために、開発組織を大きくするというところのミッションを僕は今メインにやっています。

これからは開発人数も増やしていく

やまげん:これから開発組織・開発人数みたいなところをどんどん増やしていくところ(ですか)。

野澤:そうですね。増やしていきたいところです。

やまげん:実際に何名ぐらい(募集)とかあったりしますか? これは言える範囲でという感じになるかもしれないですけど。

野澤:そうですね。いっぱい取りたいですよね。

(一同笑)

やまげん:そうですよね(笑)。

野澤:いっぱい入ってきてもらいたいなとは思っています。ただ、年々エンジニアの獲得や採用が厳しくなっているところではあるので、みなさん悩まれているとは思います。そこを今は四苦八苦しながらやっていますね。

やまげん:今は採用みたいなところに力を入れてやっていると。

野澤:そうですね。

基幹システムになり得るからこそ品質向上も重要

野澤:あと僕がけっこうハッとした部分として、今僕らが提供しているプロダクトは、業務の基幹システムになり得るポジションになるんですよね。なので今の業務からJOMYAKUに乗り換えてもらった時に、「JOMYAKUが動かなかったら仕事ができません」という状態になる未来が近くに来ると思っていて。

やまげん:確かに。

野澤:つまりはBtoCの障害というより、本当に業務に支障が起こるぐらいのシリアスさがあるので、基幹システムとしての品質をより高めていく活動は、メチャクチャ力を入れていきたいところでもあります。

やまげん:なるほど。難しいところですよね。

野澤:そうですね。僕もWebサービスを作るようなところで言うと、あまり重大に受け止めていなかった部分があるんですよね。「バグが出たらすぐに直せばいいじゃん」みたいな。「それで被る不利益はどの程度のものなのよ」と。

もちろん品質を疎かにしているわけではありませんが、それが“よりとても重要なものである”という認識に変わっていったというのはあります。

やまげん:難しいですよね。Voicyも今でこそいろいろなリスナーさんに使ってもらっているサービスですが、やっぱりそこに至るまではたくさん障害とかがありつつ、でもやはり機能開発優先みたいなところの意思決定もしながらやっていて。やはり負債もけっこう溜まっているところで、ようやくそこの部分にSREみたいなポジションを置いて、信頼してコミットしているような状況だったりしていて。でも、開発と品質の守りと攻めのバランスとか(も難しい)。

とはいえ「あるリソースは全部ユーザーさんを喜ばせるために使いたい」ということもあったりするので、「そこの守りにそんなに時間を張るのか」みたいなところのバランスは難しいなというところではあります。

野澤:そうですね。これはプロダクトの特性などによってもパラメータは変わってきますよね。

やまげん:そうですね。弊社はBtoCのサービスではあるのであれですが、これがBtoBで、かつ基幹システムなので、それが止まってしまったら本当に動かなくなるレベルだったりするのと(では)、またちょっと品質の考え方がより高度というか、レベルが高いものになるかもしれないですね。

Voicyの品質とスピードのバランスの捉え方

野澤:そうですね。品質とスピードのバランスはVoicyではどういう捉え方で今進めていますか?

やまげん:そうですね。やはりチームを作ったというところはけっこう大きくて。攻めのチームと守りのチームを明確に分けてチーム設計をしたというところが1番大きい部分ではあって。そこに行く前はみんなでワンチームみたいなかたちでした。攻めも守りもみんな考えないといけないという中で、どうしても守りのところがあったらみんなそこにマインドシェアが奪われちゃうというか。

「ヤバイ、ヤバイ!」となるところをなるべく明確に分けて、守りの部分は守るプロジェクトなりチームなりがちゃんとマネジメントすることをやって。逆に攻めの部分で、ユーザーを考えるようなところは、新しくチームを組成して考えていきたいと思っています。これは自分が考えたばかりなので、うまくいくかをウォッチしながらやっている感じです。

野澤:いいですね。守りと攻めの立ち上げたタイミングならではの学びはいろいろ出てくると思うので、ぜひそのあたりの学びは僕も知りたいです。

やまげん:いろいろお話しましょう(笑)。大きい障害とかがあると全部開発が止まってしまったりするので、それがもう本当にエラーバジェットというか、借金返済だなという気はします。

野澤:そうですね。

やまげん:なのでVoicyの話やSREのところは、なるべくレベルみたいなところを前提として置いています。やりすぎることができることはたくさんあると思うので。

例えば、日本にサーバーを置いて世界にサーバーを置いたら、GCP(Google Cloud Platform)的にはより高度になりますが、「でもそこまでしないよね」みたいな。成長するための最初に満たすべきレべルの基準みたいなものは、ユーザーファーストに決めておくべきなのかなと思ったりはします。

野澤:そうですね。

(一同笑)

野澤:本当にそうなんですよね。

やまげん:ここばかりは難しいですよね。

新規開発を止めてまで負債の返却に立ち向かったことはあるか?

野澤:例えば技術的負債というワードでお話をすると、新規の開発をしながら負債の返済を進めていくということが、一般的にやられている方が多い(ことな)のかなと思いますが、新規の開発を止めてまで負債の返却に立ち向かったフェーズはありましたか?

やまげん:実は今ちょっと設計を新しくしていて。新しく今期の取り組みとしてやっているのが開発の10パーセントぐらい、週4時間ぐらいを負債の返却に充てるという、全員のエンジニアに入ってもらう負債解消を行うプロジェクトを少しずつ立ち上げています。

ざっくりテストを書くとかドキュメントを作るとか、あとはリファクタリングをするとかになるんですけど。そういうのは現場から出てきた「そこが足りていない」とかの大型の負債みたいなものをリードしてもらって、完全に別軸のプロジェクトとして進めてもらうことをしていて。

野澤:なるほど。

やまげん:そういうのをやり始めたというかたちですね。

野澤:僕らでいうと、今はこれから拡販のタイミングですが、Amplifyで作られたアプリケーションを分解するという作業をしています。Amplifyはオールインワンでよしなにやってくれてしまう部分があります。

細かいインフラの調整やバックエンドのスキーマのマイグレーションを勝手にしてしまうとか、かゆいところを修正しづらいところがあるので。それぞれのAWSのサービスに分割して組み直す、大規模リファクタリングをやっています。

やまげん:すごい。

野澤:そのために半年間の時間をもらって、その間は営業をしないという判断を今はしています。

やまげん:けっこう大きい判断ですね。

野澤:そうですね。代表は田平という者ですが、彼自身も何社か起業を経験して今はJOMYAKUの代表を務めています。開発における負債の返却をしてこなかったがためにした失敗を、自分自身がすごく経験として持っている人なので。

(そのため、)今回は「営業を止めてでもリファクタやリニューアルの作業を進めましょう」という判断を許してもらえたということが大きなところかもしれないですね。

やまげん:なるほど。すごいですね。実はVoicyも昔データベースで動いていたものをリファクタリングしようと言ってGKE(Google Kubernetes Engine)に移して、その時にマイクロサービス的なものを作ろうというかたちで作っていたものが、負債を解消するためのものでした。しかし、それが負債化してしまって、GKEのGCPからまたAWSに戻して、AWSのEKSに載せ直すみたいなことを(やりました)。

野澤:メチャクチャ痺れますね。

(一同笑)

やまげん:確かにこの部分は意思決定でちゃんとやり切るようなところができていると、また開発効率とかが変わっていたかもしれないというところはありますね。

野澤:そうですね。ただやはり世の中に早く出したいとか、ユーザー数を伸ばしたいとか。そういう、経営上に必要なために開発が犠牲になることはけっこうあると思います。ぜひ今後のCTO百景でこのあたりの話とかも聞きたいですね。

(一同笑)

(次回に続く)

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