自己紹介

宇野雄氏(以下、宇野):本日は「noteが目指す未来とクリエイターの未来〜そこにCDOの野望を添えて〜」と書きました。僕がnoteとして外部のイベントに登壇するのはこれが初めてです。この資料は昨日の夜に作り始めて、今朝見たら少し変なテンションの資料が含まれていました。そこは「あ~、この人は眠かったんやな」みたいな感じで、温かく見守ってもらえればと思います。

あらためて、note株式会社でChief Design Officerをしている宇野雄と申します。僕がnoteに入ったのは2022年の2月なので、まだまだ新米社員です。前職はクックパッドという会社にいて、2020年のSocial Impactに出演しました。またお声掛けいただき、ありがとうございます。本日はよろしくお願いします。

まず簡単に紹介します。「noteってナニ?」。そろそろ知ってくださっている方も多くなってきた感じはありますが、一応説明します。クリエイターが文章や画像、音声、動画を投稿して、ユーザーがそのコンテンツを楽しんで応援できるメディアプラットフォームである。我々は“メディアプラットフォーム”と呼んでいます。このあたりが、後ほどのコミュニティの話につながってきます。

noteが意識している「グロースサイクル」

note株式会社のミッションとして、「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」。これを本当にずっと大切にしている会社です。逆に言うと、これしか考えていません。

(スライドを示して)グロースサイクルというものを持ってきました。僕たちはいろいろな施策を考える上でも、コミュニケーションを取る上でも、常にこちらを見ながら考えています。

クリエイターが最初に集まります。そこでクリエイターがコンテンツを生んでいきます。それを読んでくれる人、見てくれる人、聞いてくれる人、そういった人たちがさらに集まります。

そうすると、そこからコンテンツが売れたり、SNS上でシェアされたりします。そこからnoteというものを知ってもらったり、見にきてくれる方がさらに増える。そうするとクリエイターも増えていく。この循環を僕たちはいつも見ています。

こういったCtoCのコンテンツ、UGCのコンテンツには、「コンテンツを生み出す側」と「(コンテンツを)見る側」という、ニワトリと卵みたいな関係性が常にあると思います。僕たちは迷った時に「クリエイターから始まるんだよね」「この人たちが輝く世界が、僕たちの目指す世界である」。それを常に意識しています。

クリエイターとは何か?

「じゃあクリエイターって何ですか」という話があると思います。Wikipediaを引っ張ってきました。最初に「創作家、制作者」と書いてありました。

先ほど言ったとおり、僕たちは誰もが創作を始め、続けられるようにする会社です。なので、大げさな話をすると、僕らは地球に住む79億人をクリエイターにしたいんです。「総人類クリエイター化計画」みたいなことを考えているわけです。

クリエイターという言葉は、作家とか写真家とか画家とか。あるいは僕たちデザイナーのような人たちなど、ごく一部の表現者を指す言葉として使われていることが多かったと思います。

僕たちnoteは「そうじゃなくていいんじゃないか」「プロじゃなくていいじゃない」「誰もがなにかを作れる時代じゃないか」。そう思って会社が作られ、そしてプロダクトが作られています。

この“創作家”という言葉が、そのまま先ほどご紹介したミッションにつながってきます。文章を書くのはもちろんですが、動画とか音声とか。料理やDIYだって創作です。

そういったなにかを生み出すすべての人たちをクリエイターと呼びたい。そんなクリエイターを支えるということが、僕たちが一番大切にしている考え方です。

“クリエイターエコノミー”という世界を作りたい

“クリエイターエコノミー”という単語があります。この単語を知っている方はいますかね。最近は、けっこう耳にするようになりました。僕たちは、これをnoteという場やコミュニティを継続させる仕組みとして、とても大事なものとして捉えています。

(スライドを示して)1つ図を持ってきました。左側が今までの生産者、消費者との関係みたいなところです。別にこの形態がなくなっていくわけではありませんが、新たなかたちとして、右側のクリエイターエコノミーという世界を作りたいと考えています。

一番身近な例は、YouTubeとかがそうかもしれないですね。誰もが発信者になって、販売者になって、生産者になって。そして誰もがそれを買う側になって、読む側になって、その人たちもまた次にクリエイターになっていく。みんながある意味対等な立場にある。クリエイターが特別なのではなくて、あなたもクリエイターで、私もクリエイターだと。

一方で、私たちも販売者、生産者の立場だけではなくて、それを買う側になるし、生む側になるし、見る側になる。僕たちはこのクリエイターを支援する。でも僕たちだけではなくて、みんなが支援し合う世界を作りたい。そうすることによって、クリエイターによる巨大なコミュニティができ上がると思っています。

今回のテーマである「コミュニティ」を、“価値を生むコミュニティの1つの答え”だと考えています。社内で「noteの街」とか呼んだりしていますが、僕たちはここに対して全張りしています。

クリエイター同士の横のつながりもあるかもしれないし、それを生んだ人たち、買った人たちのコミュニティもあるかもしれない。買った人同士、読んだ人同士のコミュニティもあるかもしれない。僕たちはこれらが複雑に絡み合っていく世界を目指しています。これが僕たちnoteが考えるコミュニティ、目指したいコミュニティの1つのかたちです。

ただ、実際の障壁はまだまだ大きいです。みなさんもなんとなく経験があると思いますが、noteを書いて公開する時ってやはりちょっと緊張しますよね。「みんな読んでくれるのかな?」「こんな内容を発信していいのかな?」とか。

でも、僕たちにとってはどんな内容でもいいんです。だから「初めてギターを買ってみました」とか、そんな話でもいいのかもしれないし、「ペットを飼い始めました」とかでもいいかもしれません。

すでに時代はいろいろな多様性にあふれたものになってきているので、多くの人に読まれるものだけがいいものじゃない。もしかしたら、日本では数人しか興味を持っていないかもしれない。でも、そういう人たちに届けられたらそれはそれで幸せなかたちじゃないか。そういう世界を築いていこうとしています。

noteという会社でデザイナーは何をしているのか

今日参加の方々はデザイナーの方が多いと聞いているので、「じゃあそんなnoteという会社において、デザイナーはどんなことをしているんですか」。それに対して、答えをいくつか持ってきています。

まず1つ目です。「デザイナーって何をする人?」という定義です。(スライドを示して)これが、僕が今考えている最新のデザインの定義です。これは僕が言っているだけです。世の中で正しいかどうかは知りませんが、こういったことを考えています。

「形のないものに、形を作る。触れないものを、触れるようにする。見えていないものを、見えるようにする」。抽象的なものを具象化する、あるいは具現化する。そういったものがデザイナーの仕事なんじゃないかなと最近は感じています。

ひと昔前はPhotoshopなどでデザインを作ることが主な仕事だったと思いますが、そういうこともいろいろと変化してきましたよね。

noteの中では、「デザイナーがもしかして一番触っているのはMiroなんじゃないか」と思う日があります。Google DocsとかFigmaとか、もちろんいろいろなものを使いますが、まずその前に、かたちのあるものにする過程がたくさん存在しますよね。その過程からデザイナーの仕事が始まっていて、noteの中ではそういう場にどんどん呼ばれる人たちになってきています。

僕もこの前、チームを横断したプロジェクトのMTGに参加しましたが、変な話、もう表層的なデザインの話じゃないんですよ。「私たちは何を伝えるべきなんだろうね」「どういう伝え方ができるんだろうね」。そこから1つの手段として、デザインを僕たちは用いているという話です。

デザイナーにあるといい能力

これらをやっていく人たちというのは、どういう能力があるといいんだろう。これもちょっと深夜のテンションっぽいところがだんだん出てきてしまっていますが、「想像力と創造力。IMAGINATIONとCREATION」というものを持ってきました。

先ほど僕がお話しした「形のないものに、形を作る」みたいなところにつながってくる部分です。やはり見た目のデザインではなく、その先の未来のためにある想像力と創造力。妄想力と言ってもいいのかもしれないです。考える力と、それを作り上げる力を用いて、デザインの力で実行する人をデザイナーだと僕は考えています。

また、noteにおいて「全員でデザインをする」。デザイナーのためだけのデザインじゃないし、特定の人たちのためだけのデザインじゃない。会社全体でデザインをしていきたいんです。

それこそコミュニティと言うと、いろいろな問題も出てきます。どういった人たちがそこにいるのか。多彩な人たちが数多く入ってくると文化の違いも出てくるかもしれない。あるいは、今僕たちは解決できていないけれど、言語の問題も出てくるかもしれません。アクセシビリティもその一環ですよね。

なので、デザイナーだけが持っている能力でどうにかできる世界はとっくに終わっていると考えています。法務なのかもしれないし、経理なのかもしれない。そういったあらゆる分野の人たちと一緒になってデザインをしています。それを先ほどの定義に合わせると、(それを)けん引していく人を“デザイナー”と呼んでいるようなかたちですね。

なので、僕らの仕事をすごく抽象的な言葉で言うと、でっかい夢を描くことです。とびきり大きなやつ。「最高にうまくいった時に何ができるの?」という話を僕はよく聞くんですよ。「こんな機能を作ろうと思います」「じゃあこれって、一番大成功した時に、使っている人たちはどうなっているんですか。そこから逆算していきましょうよ」と。

中途半端なものを作っても、先に行く時に1段登ったぐらいでは、ゴールにちゃんと近付いているかはわかりません。だから、きちんとゴールをイメージしましょう。しかもとびきりでっかいやつ。そのための階段をどう作っていくか。その階段をどうデザインするのかが、今考えているデザインです。

noteで求められるデザイン

ただ、実情としては残念ながらここまでには至っていないわけです。これは僕が友人Aさんに聞いた話です。「noteってどんなメディアですか」。そうしたら「テキスト中心で長文も多めでちょっと意識高め」と言われました。

まあこんな感じですよね。恐らく今日聞いてくださっているみなさんも、こんなことを思っているんじゃないでしょうか。最初のほうにお話ししたように、僕たちはテキスト中心というところに絞っているつもりはないです。ただ実態として、そういった使われ方をしているのは事実としてあります。

ちょっと意識高め。ここもこんなつもりはないんですよ? やたら猫の写真ばっかりを上げる人がいたり、占いのお話とかをされている方もいます。そういったものにこだわる必要はありません。ただ一方で、そういったものがちょっと好まれてシェアされやすい。で、結果としてそういう記事がさらに増えやすいというのがあるのは事実です。

でも最近で言うと、小学校とかのホームページにnoteをそのまま採用してもらったり。使ってくださる方々の年齢層もだんだんと下がっていくでしょうし、もっと違う方向性にいくと思います。僕たちは「マルチメディアプラットフォームになるんだ」と言っていますが、「現在はここにいるよね」ということは確かなことだと思っています。

でも「どんなデザインがそこで求められるの?」かというと、もっと広い世界なんですよ。クリエイターの創造を100倍にする。「noteと向き合っていると、いろいろな創造力が湧いてくる。創作意欲が止まらなくなる」とか。「何かを書き始めたら、当初は200文字ぐらいで終わらせようかなと思っていたけれど、いきなり他の人に『こういうことなんじゃない?』と言われて、(そしたら)どんどん膨らんできて、10,000文字ぐらいの大作ができた」とか。

また、クリエイター同士とか、読み手とか、聞き手とか、そういった方々の刺激を受けて、さらに新しい創作をしたくなる。もしくは今まで創作をしたことがない方が、何かを始めてみたくなる。そういうデザインを僕たちはしていかなきゃいけない。それが新しいかたちのコミュニティにつながるものだと考えています。

そう考えると、やはりまだまだだと。「noteって、けっこうスッキリしてもう完成されているじゃないですか」みたいなことを言われますが、僕の妄想から見ると、まだまだだと。(今の話を聞いて)そのギャップの大きさがわかってもらえたと思います。

今までにないものを生むということは、それだけ足りない人がいるということ

ここから僕の妄想タイムです。もっと仲間が欲しいです。CXOの深津と、CDOの僕。さらに10人の仲間がいます。でもせめて2年ぐらい(の間)には、あと10人ほど増やさなきゃいけないと思っています。

(スライドを示して)右下に書きました。僕の妄想です。人事未確認です。このセッションを弊社CFOも見ているみたいなので、後で怒られにいきます。というところで、「でもまあやるんだよ」という意志を僕は強く持っています。

僕たちは、noteというワンプロダクトにデザイナーを実質全張りしています。でも先ほどお話ししたように、もっともっとやらなきゃいけないことがある。今の状態ももしかしたらある程度は成功と言えるのかもしれませんが、まだまだ階段の1歩目、2歩目を進んだぐらいのところです。

いろいろな仲間が欲しいです。CTO、CXOがいます。プロダクトデザイナーがいます。グラフィックデザイナーがいます。UXリサーチャーがいて、UXエンジニアがいて、イラストレーターがいます。これが今のnoteです。

それに対して、じゃあこんな人たちも要るよね(というもの)。UXライター、アートディレクター、コミュニケーションデザイナー、その他もろもろ。いろいろなポジションを新たに作っていく予定です。

今までにないものを生もうとしている。つまり、それだけ足りない人たちがいるということです。(スライドを示して)もちろん左側の今までどおりの職種も絶賛募集します。僕たちは「ここをもっと使いやすくできるだろう」とか、「もっといろいろな人に使ってもらえるようにできるだろう」みたいな地道な積み上げもやりつつ、事業を次のフェーズに引き上げていく必要があります。

そんな力強い人と働きたいと思っておりますので、プロダクトデザイナーを中心に、より大きな舞台に挑戦したいと一緒に考えてくれる仲間を募集しております。なんなら僕の寝首を掻きにくるような方々に入っていただいてもいいかなと。

「宇野さん、noteのこの夢を実現するためには、もう宇野さんがCDOじゃダメなんですよ」。そんな人が現れてくれる。それはつまり、noteが次のステージに向かった証拠なのかもしれないので、歓迎します。

noteは本気でデザインの会社になる。この武器を持って、どれだけ大きなことをできるのかを野望として掲げている会社になることが、僕の使命です。

最後にちょっと宣伝です。「note デザイナーマガジン」というものを、まさしくnote上で展開しています。こちらでは、日々noteのデザイナーがどんな活動をしているのか、どういうものが生み出されているのか。先ほど紹介した職種の人たちがどんな活動をしているのかを見ることができます。それでは、本日はご清聴ありがとうございました。