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【働き方×デザイン】 社会の非効率を解決するデザインとは_Goodpatch Anywhere(全2記事)

「わかりあえる仲間ならこんなことにはならないのに」 フルリモートチームにおける、“心理的安全性”確保の難しさ

社会課題×デザインをテーマに社会課題に取り組んでいる企業が登壇する「ReDesigner Social Impact Day」。各登壇者は、Design Action・Creative Actionの重要性が叫ばれている中、自社が社会課題に対してデザインの力でどのようなアプローチを取っているのか、その中でデザイナーはどのような役割を担っているのかを話しました。ここで登壇したのは、株式会社Goodpatch Anywhereのデザインマネージャーである五ヶ市壮央氏。チームデザインにおける、Goodpatch Anywhereの取り組みについて発表しました。全2回。前半は、「デザインの今」と「知らない」から生まれる不信感について。

「東京にいる・出勤する・フルタイムで働く」をやめたGoodpatch Anywhere

五ヶ市壮央氏:Goodpatch Anywhereより「フルリモートチームでデザインの力を証明する」という話をします。よろしくお願いします。まずは自己紹介をします。五ヶ市壮央です。日本では11ファミリーしかいないというすごくレアな名字を持っています。

UXデザイナーとしてソニーの子会社で10年ほど経験を積んだ後、Goodpatch Anywhereでデザインマネージャーとして、デザインの仕事に従事しています。

Goodpatch Anywhereは、Goodpatchの組織の1つです。コロナ禍になる前の2018年、デザインの力をもっと世の中へ届けるために、「東京にいる・出勤する・フルタイムで働く」をやめた組織がGoodpatch Anywhereです。

どこでもリモートで、その人にとって適切な時間に、子育て中でも介護中でも地方に住んでいても海外でもデザインができる。そうすることで世の中にいるデザイナーの力をもっと世の中に届けていくことを目指す組織です。私は今札幌にいて、ほかの仲間たちもフリーランスや副業タイプの人が多いです。私たちは「チームでデザイン」を掲げていて、住んでいる場所も違う、持っている職能も違うチームでやっています。

特殊なケースでは、宇宙に関する案件が出てきた時に、さすがに宇宙の案件をやったことがあるデザイナーはいないだろうと思ってメンバーを探してみたところ2人もいました。そんな特殊なメンバーが集まっているのがGoodpatch Anywhereです。

デザイナーは専門家や職人であると同時にチームメンバーとなる必要がある

プロローグとして、「デザインの今」はこんな感じだという話をします。これは、みなさんに話すような内容ではないのですが、造形や表現だけを中心に取り組む時代は完全に終わっています。「『デザイン経営』宣言」が出ましたが、そこに書かれているようにデザインに求められる領域はものすごく広くなっています。

例えば、ビジネス、テクノロジー、クリエイティブ、人間、領域ごとの専門性、社会的意義。デザインに求められる領域のごく一部ですが、これらが個人に求められていて、ここに関する知識・スキル・経験がデザイナー個々人に必要です。

なので、もう1人ですべての領域をカバーできる時代ではありません。スターが1人でなんとかできる時代は終わりを告げてしまいました。今は「チームの時代へ」と言われていると思います。

(スライドを指して)ちなみに、デジタルプロダクト開発に求められる人材・スキル・経験を抜粋して書いてみたところ、溢れんばかりにありました。読みたくないです。デジタルプロダクトには、異なる専門性を持った人材が必要になってきます。開発領域だけを抜粋しましたが、私のわからない範囲では、経営、法務、特許、HR、CS、SDGsというように、文脈がまったく異なる仲間とのコラボレーションが絶対に必要です。

デザイナーは専門家や職人であると同時に「チームメンバー」となる必要があるでしょう。その上、リモートの時代です。コロナ禍になって、自宅で仕事をする方も多いのではないでしょうか。悪いことばかりではなく、リモートのほうが生産性が上がるという声も聞きます。

ただ、コミュニケーションの怖さはなかなか拭えておらず、テクノロジーを活用できていない企業にリモートを適用するのは難しいし、対面に過度な期待があるとリモートに対する恐怖は拭い切れないでしょう。

デザイン領域に求められることが増えた時代では、文脈がまったく異なる仲間とチームになる必要があるけれど、リモートの時代でコミュニケーションの難易度が高くなっている。それなのに時代のスピードは上がるばかりです。どうしましょう。

今回のセッションのテーマは「すべては知ることから」

今回は、さらっとしか紹介できませんが、1999年にIDEO(アイディオ)がショッピングカートを作ったことを紹介する動画が「YouTube」に上がっていました。有名な動画なので、どこかで見たことがあるのではないかと思いますが、ここに「チームであることにはこんな意義がある」という心理的安全性の意義が詰まっています。

この動画では、「事業の制約を知っている」「いろいろな事業やスキルを持っている仲間の強みを知っている」そして「ユーザーが中心であることを知っている」これらをIDEOは知っていますと言っています。そんなチームを作るために必要なのはチームのデザインだと言われていますが、それはどこでも言っているんです。そんな簡単にうまくいくんだったら誰だってIDEOになれるじゃないかということで、今回は「すべては知ることから」というテーマで、チームについて話そうと思います。

「知らない」から生まれる不信感

みなさん、こんな経験はないですか? 仕事はうまくいかないことだらけですね。デザイナーであれば、企画に関われない、エンジニアとうまく連携できない、上長に伝わらない。デザインにかかわらず、みなさん、これに近いことがあるのではないでしょうか。わかりあえる仲間ならこんなことにはならないのになと。

なぜ、わかり合えないのか。それは、それぞれの正義、それぞれの事情があるからです。(スライドを指して)正義や事情とはなに? がこれらですね。ユーザー目線、事業目線、開発目線、運用目線、スケジュール都合、予算都合、アサイン都合、マーケティング戦略、ブランド戦略、採用・育成戦略、長期目標、中期目標、短期目標、個人の目標。それぞれが見ている世界がぜんぜん違います。

それぞれの正義とそれぞれの事情があって、立場も役割も違うので、お互いを知るのはものすごく難しいですが、知らないと絶対に不信感が生まれます。

不信感って、なんでしょう。「ちゃんとやっているかな?」「いつできるかな?」「なんでそうなっているのかな?」「なんでそこまでしかできていないのかな?」「なんでそう判断するのかな?」「もっとできるのでは?」「なんでそれをやる必要があるのかな?」「意味あるの?」「やる気ある?」「やる気が空回りしてない?」そして「なにか言われそうで怖い」という気持ちになってきます。

知らないのはお互いの事情だけではなく、事業がわからないことや、自分たちのやり方が正しいのかという不安も「わからない」に含まれます。ユーザーのことがわからない、業界のことがわからない、なかなか形にならない、全体像が見えない、着地点が見えないことがどんどん不信感を生みます。

一方で、部署が同じになったら意外にいいやつだとわかったという経験をされた方、いませんか? 私もそうです。私の仲間にも、違う部署にいた時は敵対していたけど同じ部署になったらメチャクチャ仲よくなった人がいます。これはやはり、知っていると安心感が生まれるということなんですね。

これまで、なぜ不信感が生まれるとよくないかについては話していませんでした。「知らない」「不信感が生まれる」「攻撃or防衛する」という流れになっていきます。

「知っている」「安心感が生まれる」、そうして初めて「本質に集中できる」。これからそういう話をします。

ダニエルキムの「成功循環モデル」

(スライドを指して)この図を見たことがあるでしょうか? ダニエルキムの「成功循環モデル」と言われている図です。左側が「知らない」「不信感が生まれる」「攻撃or防衛する」というサイクルです。

「結果の質」について。例えばみなさんが、上から1000億円の売上を達成しなさいという目標をもらったとします。そうすると、上司と自分の関係は原因追求型になります。「なんで1000億円売上達成できなかったんだ?」「えっ? それはこういう理由だからです」という「言い訳をする会」がどんどん生まれます。

思考も、なぜできなかったのかを守りの姿勢の感情で捉えるようになって、「行動の質」も自分を守るため、うまくいかないことをどうにかごまかすため、正しいことを証明するために変わっていきます。結果はだんだん悪くなっていきます。

逆に「関係の質」からコミュニケーションを取ると信頼が構築されます。そうすると「思考の質」も、「何を言っても大丈夫なんだな」とか、本質そのものに対して話ができる感情になって、「行動の質」もどんどんチームに貢献するように変わっていくので、やっとユーザーを見ることができるようになります。

スライドの左側は、ずっと上長を見ていたんです。右側は、やっとユーザーを見られる。そうするとよい結果が生まれるというのが、デザイン界隈でいうところの成功循環モデルの例です。

(次回へつづく)

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