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自分なりのデザイナーキャリアの見つけ方〜過去・現在・未来の可視化〜(全3記事)

自身と向き合い、自分にとっての幸せや働きやすさを見直す 「デザイナー向けキャリアプラニングシート」の効果的な使い方

THE COACHとReDesignerで共同開発をした「デザイナー向けキャリアプラニングシート」の開発の裏側や、どのようにキャリアプランニングシートを活用すればいいのなど、デザイナーのキャリアについて多面的に話す「自分なりのデザイナーキャリアの見つけ方~過去・現在・未来の可視化~」。ここで株式会社THE COACHの小林氏、株式会社グッドパッチの佐宗氏、盛川氏が登壇。続いて、キャリアプランニングシートの使いかたについて話します。前回はこちらから。

キャリアプランニングシートをどう使えば効果的な棚卸しができるか?

盛川貴之氏(以下、盛川):次の質問に移れたらなと思います。先ほどちょっと紹介した、今回のキャリアプランニングシートについてです。これは駆け足で説明はしたものの、どんなふうに使うと効果的な棚卸しというか、自分にとって悩みを解消するものになるのかというところを、開発した2人にぜひ聞ければと思っています。では、こばかなさんからで大丈夫ですか?

小林かな氏(以下、小林):THE COACHのパートが後半に寄っているので、もしよければ佐宗さん、先にお願いしてもいいですか?

佐宗純氏(以下、佐宗):わかりました。どのように使うと効果的な棚卸しができるかですよね。まず、このキャリアプランニングシートは記入することが目的ではなくて、自分自身と向き合うことが目的です。なので、完璧に全部記入しようと思わなくていいと思います。

あくまで自分が考える上での視点出しとか。プランニングシートの右側にヒントみたいなのが書いてあって、意外とそこが使えます。いろいろな視点の質問が散りばめてあるので、「確かにこの視点では考えていなかったな」とかの気づきのために使ってほしいです。

だから、1人で使う場合はきれいに書くというよりは、自分自身の中で考える時間を増やす、ないしはその機会作りをするという意味で使ってもらえるといいかなと思います。

2人以上で使う場合、ここはたぶんTHE COACHさんの領域だと思うのですが、実際に作ってそれを発表してみて相手からなにか質問をしてもらうと、その対話の中で自分自身が気づくことがあると思います。そういうふうに、複数人で使うのもいいと思います。

盛川:手段にし過ぎないようにというところですよね。取っかかりとしてでもいいかなと思うのですが、先ほどお話されたとおり、切り口というか、どんなかたちで触れて考えてみる時間を増やすのが大事なのかなというところで。こちら、こばかなさんはいかがですか?

小林:そうですね。キャリアプランニングシートを作る上で、コーチングという観点からやはり大事だなと思うのが、自分が本当に心の底からやりたいと思っているのかどうかという点です。

例えば「この年収が高いと思うのか」とか、「平均と比べてどうなんだ」みたいな話は気になる気持ちもメチャクチャわかると思いつつ、例えば「年収が1,000万円にいったら自分は果たして本当に幸せなのか」みたいなところは、完全に人それぞれになってくるので。

「自分にとっての幸せや働きやすさとはいったい何なんだろう」というところで、外側の声ではなく自分自身の声を聞くことはけっこう疎かにしがちだったりします。そこをサポートできるといいなと思って、このシートの開発に向き合っていったというところです。

キャリアプランニングシートのステップ紹介

小林:画面の共有をさせてもらいつつ、私の例もシェアさせてもらえればと思います。

盛川:ありがとうございます。

小林:(スライドを示して)先ほどちらっと紹介があった中で、ライフチャートの作り方、この4ステップが後半に入ってくるのですが、過去にあった出来事を振り返りつつ、感情を書き出しつつ、願いを書き出しつつ、人生で大切にしたいことを書き出すようなステップがあります。

(スライドを示して)文言が違うんですけれど、まず「想像する」ですね。想像するステップを踏んだ後に、その内容で未来の自分を具体化していき、それを体感してみる。コーチングの上級テクニックですが、体感した後にもう1回それを想像してみるのがこちらのステップです。

「この問いに答えていけばいい」というように本当に簡単にまとまっているのですが、例えば「もしなんでも叶うとしたらどんな人生にしたいですか?」みたいな。

上司から「君はデザイナーとしてどうなっていきたいんだ?」と言われると、会社にとってのお利口な回答をしたくなる人が多いと思います。「じゃあちょっとマネージャーになって、50人くらいのチーム束ねられて」みたいな、なんかそういうふうに言いたくなる感情が芽生えてくると思うのですが、本当は自分はマネージャーではなくて、例えば「プレイヤーとしてずっとやっていきたいな」みたいに思っている時に、それをなかなか受容してもらえるような環境がないと、自分の心の声として出にくいという場合です。

「何でも叶うとしたら」とか(の質問で)、制約なく考えていくのがコーチングの中ではやはりおすすめな考え方なので、「自由に言葉や絵でもいいので書いてみましょう」みたいなところです。

おすすめとしては、仕事という軸ももちろんありますが、どういう暮らしをしたいかとか、自分自身の生き方、あり方をどうしていきたいかみたいな。そういう考え方で洗い出してみるのもおすすめです。

私の場合は、仕事ではクリエイティブなことに熱中しつつ、犬を3匹飼っているみたいな自分にとっては大切だけどほかの人にとったらどうでもよさそうなことも含めて書いていくことを、まずステップ1ではしています。

(スライドを示して)ステップ2は、「具体化する」と書いてあります。抽象的なことはなんとなく浮かべられていますが、具体的にと言われた途端、けっこうハッとします。

「何しているんだろう、2、3年後」みたいな。考えるのはかなり難しいですが、想像は自由なので、自分でも無邪気に書いてみました。例えば今話題のWeb3に関わって、シンガポールとかに移住しているかもなみたいな。まったく英語はしゃべれないのですが(笑)。ちょっとそういうのも無邪気にとりあえず出してみます。

こういうふうに無邪気に出してみたことを体感してみることを、ステップ3に書いています。ちょっと目をつむってとかでもいいので、シンガポールにいる自分を想像してみます。

そうした時に、新学期のようなワクワクを感じる一方で、不安事項としては「やはり日本に帰りたいな」と、「やはり」みたいなのが出てきたりもします。

こういう「ちょっと待った」という自分の心の声もしっかりとキャッチして、そういった不安事項も書き出してみるのが、このパートではけっこうおすすめな点かなと思っています。

これは、最後に「ふたたび想像しましょう」というところで、「なんでも叶うとしたらどうしたいか」と1回ぶっ飛んだ発想をして、現実的になりつつ、あらためてみたいなところをまとめるパートです。

私の場合、ずっと海外にいるのはさすがに無理かなと思ったので、例えば「2拠点生活になっているといいな」とか。そういった自分にとっての心地よい着地点が見つかったりもするかなと思うので、こんなふうにまとめています。

(スライドを示して)どうしてこういったことをこのプロセスでやるのかですが、これはTHE COACHの資料で、人の意識を図にしているものです。「氷山モデル」という心理学の用語があるのですが、「人が意識できている領域は1から3パーセントで、残りのほとんどは無意識だよ」と有名な理論で言われています。

自分自身が例えばマネージャーになりたいと理性的に思っていたとしても、無意識的にはメチャクチャ「プレイヤーになりたい」とか、「本当は農業をしたい」とか思っているかもしれない。ここにいかに気づけるかで、自分らしく生きられるかどうかが左右されるのではないかと私たちは考えています。

なので、現実に起こる出来事、これまでのキャリアを振り返るとか、それに対してどういうきっかけでどういう行動をしていったのかという行動もしっかり振り返りながら、思考、感情、さらにその感情の底にある自分自身の信念や、ソース、源がいったい何かも一緒に深掘っていくのがすごく大事なポイントになってくるかなと思い、THE COACHのパートを作っています。

結局、行動や起こる現実は、「自分自身がどういう信念を持っていて、どういう感情になって、こういう思考になったからこういう行動を取った」と全部つながっています。下のほうが土台としてはかなり大きくなってくるという意味で、自分自身が本当は何を願っているのかという、無意識に入っていくような問いを用意しています。

ここはもちろん自分自身で時間をかければやれると思いますが、問いがあると「ここまで行けるんじゃないか」と。ここに着目して振り返ってもらえるといいのではないかということになっています。

盛川:なるほど、ありがとうございます。ワークにも記載いただきながらの実際の見本例で、すごく参考になったのではないかなと思います。

「体感する」にどのように取り組んでいるか

盛川:質問が来ている中で関連しそうなものがあったので、ちょっと聞ければと思います。実際のワークで「体感する」ことをどのように工夫されているか、教えてもらってもいいですか?

小林:「実際のワークでどのように体感する工夫をされているのでしょうか?」。ありがとうございます。(スライドを示して)こちらは、シートの横のほうにちょっとヒントみたいなものを記入しています。

「体感すると言われても」と思うかなと思うので、ポイントやヒントを見ながら進められるようになっています。ここでは五感を意識するのがおすすめと記載しています。

目をつむって想像するのがおすすめというところで、例えば何が見えるか聞こえてくるか。その場のシーンを臨場感を持って想像してみることを、実際のコーチングセッションでもやったりします。5分とか10分とか時間を区切って、目をつむって瞑想するような感じでコーチングセッション中にやったりもするのを真似してみることがおすすめだったりします。

ほかにも詳細のポイントはいろいろあるので、ぜひダウンロードしてチェックしてもらえればと思います。

盛川:ありがとうございます。参考になりましたでしょうか。

キャリアプランニングシートをフラットに書くなら自分がフラットな時がいい

実際に今の自己理解のシートに関して、佐宗さんにも取り組んでもらったので、もしよければ教えてください。

佐宗:自分は明確にみなさんに伝えたい学びが1個あったので、それも踏まえて伝えたいなと思っています。だいぶガチで書きました。もしグッドパッチ社員がいたらちょっと恥ずかしいのですが。

自分はどうやったかというと、「まずキーワードを3つ出すとしたら何だろうな」というところから入りました。自分の場合、まず場所が最初に出ました。だからたぶん、今の自分は場所が非常に大事なんだなと。あと人、誰と働くかですね。働くだけではなくて、誰と暮らすかも入るかもしれません。それから肌触り感ということが出てきたんですよ。「感情豊かに生きたい」みたいな、そんなイメージです。

先ほどこばかなさんの話に、シンガポールの話が出たのですが、自分もアジアとヨーロッパにすごく興味があるんです。なので、Goodpatch AsiaとGoodpatch Europe、あとGoodpatch Tokyoを行き来しながら、各拠点に自分のチームを持って、いろいろな人に触れ合いながら感情豊かな人生を送りたいみたいなことを書きました。

どんな自分になりたいかを、パッと出てきた3つのキーワードに沿ってそれぞれ書いてみました。Goodpatch Asiaの代表をしていて、ReDesignerがアジア進出して、東京・上海・ソウル・ベルリン・ロンドン・パリを行き来している、みたいな。

周りには今のReDesignerチームが笑っていて、ただ笑っているのではなくて、ハードシングスを突破した苦労感が垣間見えている。

(一同笑)

そんなところだといいなと思ったんです。あと、言語が異なるチームメンバーが増えていて、もしかしたら今日みたいなイベントも違う拠点でやっているかもしれないです。経営陣とか妻と話しながら、Goodpatch Asiaを拠点に「グッドパッチで何をしていこうか」みたいな話をしているみたいな。

あと「体感する」というところも、直感的に出てきたものをキーワード化しました。「ワクワク感」や「ガヤガヤ感」は自分でも「ああ、初めて認識したな」と思いました。社会的なプレッシャーもあるとか、英語とか、いろいろ書いています。

不安というところで、こばかなさんは犬でしたが、自分は猫です。猫を海外に連れていくのは大変だという話です。

最後にいろいろ想像しました。世界を舞台にデザインとビジネスで戦える人材になりたいとか、ReDesigner含むDesignPlatform事業というグッドパッチの自社事業があるのですが、そのグローバル化を推進したいと書きました。

これは見た目はいいのですが、結局仕事の話になってしまいました。これは先ほど、こばかなさんが言ったように、暮らしという視点が不足していて、どうしても仕事の文脈で考えてしまいました。

なぜ仕事の文脈で考えたのかを思い返すと、仕事の時間中に書いたんですよ(笑)。なので、無意識に仕事が入ってしまったんでしょう。

なので学びとして、フラットに書く時は近くのファミレスやカフェとか、自分がフラットな時に書いたほうがいいと思いました。中身はどうでもよくて、みなさんに伝えたいことです。

5点以下の状態であればもう1度考え直す

小林:これはいい学びなのと、星のページは、私の中で提案して入れたこだわりのページなのですが、この1個前のピンクのページで、自分自身がいったいどうなりたいのか、ビジョンを言葉にしてあらためて冷静にそれを見た時に、本当に心が響いているのか。ワクワクして「これ絶対やりたい!」みたいになっているのか、「ちょっと模範解答っぽい方向に行っちゃってるな」と思うのか。

自分自身が心の声を聞けているかどうかを、このシートでわりとチェックしやすいのではないかなと思っているので、ぜひ。8点くらいだったらけっこうフィットしているほうかなと思いますが、これが5点以下とかだったら、もう1回元のところに戻って考え直してみるような使い方がおすすめです。

佐宗:確かに、この星があることで自分自身に問い直せるのはいい順番だなと思いました。

小林:ここは大事ですね。

佐宗:なるほど。恥ずかしげもなく具体的なところをお見せしてしまいましたが。

盛川:すごく具体的に書いていただいて(笑)。

小林:見ているこっちもワクワクしていました(笑)。

(次回に続く)

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