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講演2 アグリッドについて(全1記事)

2022.06.29

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働く人々の笑顔の広がりで持続的成長できる農場を目指す スマート大規模農場「アグリッド」が実現する“人と機械の協働”

提供:株式会社デンソー

"誰でも・どこでも・安心して作れる"農業を目指し開発された、 次世代農業用ハウス「プロファームTキューブ」、大規模農業ハウス「アグリッド」、自動収穫ロボット「FARO」について紹介する「【デンソーが目指す農業の”製造工場”】DENSO Tech Links Tokyo 15」。ここで登壇したのは、デンソーアグリテックソリューションズの中里圭佑氏。スマート大規模農業「アグリッド」における取り組みについて発表しました。

デンソーの製造部門で培った経験を活かして農業の生産性向上を目指す

中里圭佑氏:私はデンソーアグリテックソリューションズで営業技術を担当している中里です。

入社して最初の6年は生産管理部に在籍し、製造工場の生産性向上活動に従事していました。2012年に、社内の公募制度を利用して新事業推進室へ移動し、食流通、特に最上流の農業に携わってきました。そのあと、これから紹介するアグリッドの立ち上げに際して、製造部門で培った経験を活かして農業の生産性向上に関わってきました。

大規模農業における困りごと

Tキューブ(プロファームTキューブ)のパートで、植物の生育環境を整えることで成長を促進させ、安定した収穫量が得られるようになるという話をしてきました。

ただ、導入する設備が高価なため、小さな農場では投資回収に長い期間がかかってしまいます。そこで、投資回収を早くするために農場の規模が大きくなり、まるで工業用製品の製造工場を思わせるような巨大施設になってきました。

写真の右側はオランダで撮った写真ですが、こういった大規模農場が日本でも広がってきています。

その一方で、大規模農場ならではの困りごとも出てくるようになりました。例えば、農場が大きくなると、それだけ多くの作業者が働くようになり、その管理も大変です。

また広いところでは、東京ドームの2倍以上の面積を擁する農場もあり、収穫物や残渣(ざんさ)を運ぶ移動距離が長くなってしまいますし、なるべく効率的に運ぼうとすると1回の荷量も増えてきます。例えばトマトの場合だと、10キロ近くの収穫物を入れたコンテナを数十単位で一気に運ぶことがあるのですが、かなりの重労働です。

他にも大規模農場では、農場内にパッキングをして出荷ができる施設を併設しているところもあり、納入先ごとにパックやラベルが異なるため、出荷作業が複雑になってしまいます。

また、大規模農場だけに関わることではありませんが、植物を扱う上で一番のネックとなるのが、相手が生き物で旬や病気によって、収穫量が大きく増減してしまうことです。

こうしたことにより仕事量に大きな波があり、安定した雇用を確保しにくいところが大きな困りごととして挙げられます。

世界の農業支援事業への貢献を目指すスマート大規模農業「アグリッド」

こうした困りごとを解決するために立ち上げたのが、スマート大規模農業の「アグリッド」です。

アグリッドは大きく2つの側面を持っています。1つは「自分たちで大規模農園を運営することで新たな問題点に気づき、改善につなげていく」という側面と、もう1つは「自分たちが開発した技術を実践投入して、市場へ投入する前の使い勝手を確認する」という開発拠点の側面です。

私たちはアグリッドを通じて、次世代施設園芸モデルを構築して世界の農業支援事業へ貢献していきたいと考えています。

アグリッドの動画があるのでご覧ください。アグリッドは、三重県のいなべ市にあり、このようにミニトマトを作っています。ハイワイヤー方式といって、天井に向かって蔓を吊り下げて栽培しているのが特徴で、高所作業車に乗って作業をすることもあります。

動画には、後ほど紹介する自動収穫ロボットの「FARO」も出ています。このように、ロボットが収穫し、収穫コンテナに載せ、運搬をするという一連の作業を自動的に行っています。

また、収穫したコンテナは動画に出ているラックに載せられ、自動運搬ロボットの「AGV」によって、出荷場へ自動で運搬されます。

目指すのは人と機械が協働し、働く人々の笑顔の広がりで持続的に成長できる農場

次に、アグリッドでデンソーが目指す農業についてです。アグリッドは、単なる自動化ではなく、人・機械それぞれに得意な分野を分配することで、人と機械が協働し、働く人の笑顔の広がりで持続的成長ができる農場を目指しています。それを実現するのがDXであり、生産統合システムが陰で支えながら人と機械をシームレスに融合させています。

多様な働き方に対応

ここからはアグリッドの取り組みの一部を紹介していきます。まずは勤怠管理システムです。先ほど、農場では多くの人が働いていると説明をしましたが、アグリッドでは多様な働き方に対応しています。

例えば、子どもの送迎、ランチ、旅行などのイベントの合間で働いたり、自分の体力に合わせた勤務時間で働いたり、作業者はスマホで働きたいシフトを登録して、管理者はシステム上で勤務管理を立案できます。さらに、人が足りない時は機械が作業の手伝いをすることで、シフト計画を柔軟化することができます。

農場では、季節によってさまざまな作業があり、当日の作業指示は、管理者が朝礼時に行うのが通例です。アグリッドでは、1人ひとりの作業者がタブレットを持ち、あらかじめシステム上で立案した作業計画を元に作業指示を確認できます。

このため、例えば出勤時間がバラバラでも管理者は毎回説明する必要がありません。また、次に行う作業が文字として表示されるので、作業者も迷うことが少なくなりました。

働く人がDXでつながることで総合力を発揮

次に生産統合管理システムです。改善を行うためには、まずは基準に対して正常なのか異常なのかを見極める必要があります。アグリッドでは各作業者の異常報告がタブレットを通じて挙がってくるようになっています。管理者はそれを見て、対応ができるようになっています。農場で働く人のリアルな声が集まることで、総智・総力でより良い農場作りにつなげていけます。

機械の得意分野を最大限に活用

次に自動搬送システムです。先ほど大規模農場では移動距離が長いという話をしましたが、アグリッドでは残渣(ざんさ)や収穫物をAGVという自動搬送システムで運搬しています。これにより作業者の運搬の重労働を軽減しています。

また、収穫物は出荷場において自動的に重量を計測され、梱包前の一時置き場に順番に並べられます。これにより、収穫物の順番管理を自動化しています。あらゆる人が働く場作りのために、機械の得意分野を最大限に活用しているのが特徴です。

工業的な視点でムリ・ムダ・ムラのないシームレスな工程設計

アグリッドでは、設計段階から工業的な視点で工程を最適化することで農場全体のモノの流れをスムーズ化しています。また、選果場・出荷場では各作業者の役割を明確化し、分業を行うことで各作業者の習熟度を早く上げられるような工夫もしています。

また、選果や梱包を行う作業者以外に「みずすまし」と呼ばれる収穫物や、梱包材を専門で運搬する作業者を配置し、工程の全体調整を行っています。

私からは以上です。ありがとうございました。

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