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10〜1000 名開発組織に向き合ったCTO 経験から語るキャリア論(全4記事)

「俺たちが次のザッカーバーグになるんや」 寝る時以外はコードを書く生活で得た、松本勇気氏の“自信”

技育祭は「技術者を育てる」ことを目的としたエンジニアを目指す学生のための日本最大のオンラインカンファレンスです。ここで登壇したのは、株式会社LayerX・代表取締役 CTOの松本勇気氏。自身のCTO経験から、キャリア論を語りました。全4回。1回目は、今までの松本氏のキャリアについて。

アジェンダの紹介

松本勇気氏:みなさんよろしくお願いします。今日は私からみなさんに「10〜1000名開発組織に向き合ったCTO 経験から語るキャリア論」というタイトルで、僕がここまでどういうキャリアの考え方をしていたのかなどを、お話しできればと思っています。あくまで一例でしかないのですが、ベースに何を考えていて、どうやってエンジニアから今の代表取締役まで来たのかという話をさせてください。

僕は、けっこう難しめな言葉使ってしまったり、よくわからないことを言ってしまったりするので、わからない時は本当に気軽に「?」と1文字でもいいので、書いてもらってもいいですし、質問はチャットにいつでもください。では、よろしくお願いします。

(スライドを示して)今日は、大まかにはこんな感じのコンテンツで話をしようかなと思っています。まずは、背景を知ってもらうために、僕が過去どういうキャリアを進んできたのかを具体的に話して、キャリアにおける僕の考え方の中にある「リスクとリターン」「ポートフォリオ」「探索と振り返り」「短期・中期・長期」という概念を説明したうえで、僕のキャリアは改めてどういう考え方だったのかを振り返りたいと思います。そのあとに、CTOまで登り詰めるために技術的にどういう成長をすべきかや、どういうことに取り組んでいけばいいのかを、話せたらと思っています。

どちらかというと、具体的な技術要素の話というよりは、キャリアの考え方や、どういうモチベーションで物事に向き合えばいいかを、話したいと考えています。

大学生時代に起業を経験 さまざまな会社を経て生まれた自立に対する意識

さっそく、僕の過去のキャリアというか、どういう仕事をしてきたのかの話をさせてください。(スライドを示して)2022年になったのでちょっと古いですが、年表にするとだいたい今はこんな感じです。僕がプログラミングを始めたのは、2010年頃です。大学に入ったのが2008年で、2010年頃にプログラミングを始めて、こんな感じでGunosy、DMM.com、今のLayerXという流れになっています。

(スライドを示して)この中でどういうことをしてきたのかが大事かなと思いますが、僕は大学2~3年ぐらいから、起業をしています。どういうことをやっていたかというと、3つの会社の立ち上げや、立ち上げた会社の手伝いをしていました。最初はプログラミング経験がありませんでしたが、実は僕の最初のキャリアはCTOで、とりあえず友だちと起業しようとなった時に、友だちがCEOをやると言うから、僕はCTOをやったといういきさつがあります。何もわからないところから、僕のエンジニア人生が始まったという感じです。

過去に何度か学生起業ブームが来ているのですが、この頃はちょうどその1つが来ていました。2006年、7年のあたりにSNSがスタートして、世界中でガンガン成長していて、「Facebook」などがガンガン伸びている時期、2010年ぐらいです。『ソーシャルネットワーク』といういい映画があるので観てほしいのですが、それを観て、みんな「俺たちが次のザッカーバーグになるんや」みたいなことを言い出していた頃です。

この頃、僕は何もできなかったのですが、いきなりARをやらされて、ARのSNSを作ってみたり、その中でiOSアプリやサーバーサイドを書いたりしていました。この時は、寝る時以外はコードを書くという、ひどい生活をずっとしていました。「ひどい」と言いましたが、僕はこういう生活もすごく好きなんです。

その後は、もしかしたらユーザーもいるかもしれませんが、「すごい時間割」というアプリの開発をしました。同じシェアオフィスにいた会社のお手伝いをしていましたが、こちらでもiOSやサーバーサイドの開発をやっていました。そこから高校の先輩の起業のお手伝いで、人材系の会社でサービス開発をやっていました。(コメントを見て)アプリを使っている人がいますね。僕が作った頃のコードは残っていない可能性もありますが、うれしいです。

そのあと、一瞬フリーランスになりました。会社と会社を移る隙間が1~2ヶ月あったので、個人で開発を受けていました。ぶっちゃけ今考えると、こんなんで納品したのかみたいな品質ですが、この頃の一番重要なこととして、コーディングをやっていたら、個人で稼げるじゃん、食べていけるじゃんみたいな発見がありました。

会社をいろいろ経て、「個人で稼げる、自立できる」ということを意識として持ち始めた結果、自立して生きていくうえでは、多少のリスクを取っても死ぬことがないのではないかと思うようになりました。そこから僕は、今の方向に向かっていったわけです。

Gunosy時代に経験した、未知との戦いの連続

(スライドを示して)そのあと、Gunosyという会社に行きました。大学4年生の頃ですが、4年生の頃に1回休学しているので、大学5年生と言えばいいのかな。入社と書いていますが、アルバイトで入って居座っていました。

居座って、社内のKPIダッシュボードの整理からスタートして、iOSアプリや、いろいろなものの開発をやっていました。気づくと社内のプロダクトは、機械学習以外すべて自分がやってきた状況になっていて、その翌年にプロダクト側の統括の執行役員になりました。アルバイトから社員、そこから執行役員という感じです。その翌年に会社が上場して、組織が荒み始めたタイミングでCTOになりました。

2016年には新規事業を担当して、組織の立て直しもできてきました。「ニュースパス」というニュースアプリを出したのがこの年です。2017年に子どもが生まれたので、育休を取って、その後、LayerXの前身となる、ブロックチェーン研究室を立ち上げています。

当時は、実は機械学習をやったことがありませんでした。機械学習を勉強して、そこからGunosyの根幹を支えている記事と、広告の配信アルゴリズムの刷新をやりました。当時、レコメンドエンジンというと、いったんバッチを回して、配信対象を作って、それを配信するような仕組みでした。それを、リクエストが飛んできたらリアルタイムに瞬間計算をして、その瞬間で一番いい広告を返せるアルゴリズムを開発しました。売上が20%ぐらい伸びて、それによってけっこう評価されました。売上も伸びて、株価も上がってハッピーな時代がありました。

(スライドを示して)この時は「未知との戦いの連続」と書いているのですが、訳がわからないんですよね。3ヶ月に一度アプリをメジャーアップデートしていたので、Gunosyバージョン1から4までが、だいたい1年間で移っていました。

また、組織が荒んでしまったところで、エンジニアの大量離職や、売上成長の鈍化がありました。しかも、僕自身は執行役員になったのが24歳で、CTOになった時が25歳で、チーム内で最も年下で、もっと言うと会社全体から見ても僕が一番年下という時代がしばらく続いていました。

他にもGo言語の本番採用は、この時代にはほとんどありませんでした。でも僕は、GoのAPIサーバーでほとんどフルリプレイスしていくようなことを、ここからスタートしました。この時大事だと思ったことが、「意思決定に全力でコミットすること」、「文句を言わずにやっていくこと」で、結局自分のキャリアにとっても技術力の向上にとっても、すごく効いたと思っています。

この時は、僕はiOSも、Androidも、Goでサーバーサイドもやって、AWSのインフラを作って、Webの本を書いたり、機械学習もやったりしていました。今や「MLOps」という名前になっていますが、「MLOps」という概念がない頃に、自分で車輪の再発明をして作ったりしていました。意思決定に全力でコミットすると、いろいろなチャンスがもらえて、そこでメチャクチャ技術が伸ばせるというのが自分の中でありました。結果として意思決定に全力でコミットすることの重要性をすごく感じたのが、Gunosy時代の教訓です。

(コメントを見て)ちなみに「共感したうえでということですかね」と書いていますが、ミッション、ビジョンに共感することは大事ですが、「自分としてはこっちのほうが絶対いい」みたいな、その瞬間の意思決定に納得できないことは当然あります。それでも決まったら従うというのはすごく大事です。決まる前に文句を言うのはかっこいいですが、決まったあとに文句を言うのはかっこ悪いと僕は思っています。なので、ビジョンには共感し、意思決定に納得しないことがあっても、決まってしまったら、全力でそれに従っていくということをすごく大事にしています。

(次回へつづく)

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