日本でWeb3に来ているのは誰か

渡辺創太氏(以下、渡辺):追加でもう1個質問してもいいですか? アメリカだとWeb1をやっていた人たちがWeb3をやるんですよ。それこそマーク・アンドリーセンというMosaic(※世界初のブラウザー)を作った人とか、イーロン・マスクさんとか、ジャック・ドーシーさん(※Twitter創設者)とか、ピーター・ティールさん(PayPalの創業者)とか、Web1から来ている人たちがすごくやっていて、日本だとWeb1、Web2の人たちがまだWeb3に来ていない印象があります。石濱さんもこれは感じたかなと思うんですけど。

石濵嵩博氏(以下、石濱):川邊さん(川邊健太郎氏)が「STEPN」をやり始めたと聞きましたよ。

渡辺:ヤフーの?

石濱:ヤフーの川邊さんがSTEPNをやり始めたという情報がちょっと入ってきましたね。

古川健介氏(以下、古川):熊谷さん(熊谷正寿氏)とかはメチャクチャ早いね。

堀江裕介氏(以下、堀江):クリプト系をやっていますもんね。

古川:そうですね。

渡辺:GMOですね。

渡辺:そうですね。

日本でWeb3に来ている人が少ない理由

渡辺:大日方さんから見てそこの差は何だと思いますか?

大日方祐介氏(以下、大日方):Web3はやはり本当にグローバルな世界なので、日本の上の世代の人たちだと、そもそも英語に抵抗がある。あとは成功されている方々だと、いきなりWeb3の海外のカンファレンスに行くと、10代や20代のお兄ちゃんに「お前誰だよ」みたいな扱いをされるわけですよ。そこを乗り越えてまでやるんだ、みたいなものはけっこうハードルが高いのかなと思います。

堀江:あとは日本で言うと、すでにある程度のポジションニングを築いている会社からすると、新しい波が来ることを本当に心から歓迎しているかどうかがわからないんですよね。ヤフーや、メルカリに変わるものが新しく出てくるタイミングがこういうタイミング。

とはいえ攻めなければいけない。攻めなければやられる側だから、どこかのタイミングでは出てくると思うし、彼らが本気を出した時に、ここの人たちが始めていたとしたら100パーセント負けます。彼らが本気になる前のタイミングにしか間口が空いていないから、そこがいつなのかを見極めるのは本当に大事なことかなと思います。やはり大企業が本気を出してしまえば、お金や技術力もすごくて、PayPayを見て驚いたので。そういう戦いになる前の、いかがわしいと思われているタイミングが最後かなと思います。

Web1、Web2の歴史の中でみんな学習をしている

古川:それで言うと、意外といかがわしいと思われていないのが日本のWeb3な気もしています。その前のWeb2やモバイルのほうが、はるかにいかがわしいと思われていた印象はありますよね。

偉い人みんながWeb3に興味を持ってやりたいなと思っているのを、意外と感じます。

大日方:そうなんですね。

堀江:それはたぶんWeb1、Web2の歴史の中で、そういうものが来た時に乗っておいたほうが得だとみんながラーニングしているからだと思うんですよね。

古川:そうですよね。

堀江:つまりその波を見くびっていた人たちが過去に損をしているケースが多いから、1回は片足でも乗っていたほうが、早いうちに乗っておいたほうが合理的だよねと。

古川:ちなみに「GROUPON」というサービスが15年ぐらい前に、メチャクチャ流行ったことがあって、それが波として150社ぐらい日本でも参入して、グループ購入でグローバルで1万社ぐらいいたんですよね。

あの時もリクルートからGMO、ヤフーまで全部参入して全員死んだので、そういうこともありますよね。

石濱:でもさすがにGROUPONよりもはるかに大きい波じゃないですか。

(一同笑)

石濱:GROUPONでそんなバトルを繰り広げたなら、Web3でももう少しやれよと思うんですけど。失うものが大きすぎて、捕まりたくないとか税金を納めたくないとか。

古川:それはありますね。逆に言うとGROUPONがなんであんなに熱狂していたのかがわからないですね。

(一同笑)

インターネット黎明期に大企業を脅かす側がプレイヤーとして存在し始めている

堀江:でも僕は、ヤフーの状況もわかるし、ベンチャーの状況もわかります。やはり彼ら的には1個でもリスクがある事業があると、全体に影響が出る可能性も十分あり得るので。例えば1兆円の利益を出している会社が、あえて先陣を切っているかというと、たぶん先陣は切らない。けれども後続でも勝てると思っているから、先にベンチャーにやってもらい、あとから攻めるというのが勝ちパターン。先に行ってもらって、リスクを潰して行けると思った段階で100倍ぐらいの資本で戦うみたいな。

古川:そうですね。Zホールディングスの川邊さんや、ヤフーの社長の小澤さんはインターネット黎明期に大企業を脅かす側だったので、その感覚がわかっているというのは1つありますね。

堀江:起業家としてメチャクチャ怖いんですよ。

(一同笑)

堀江:グループ内にいても、僕らが作ったサービスと、彼らが作ったサービスが競合したりしているんですよ。「勝ったほうが残ればいいよね」と言われるぐらい、すごく自信があるんですよね。「でも、良い市場だったら1兆円でも叩くけど」みたいな。本当にPayPayでとてつもない金額を投資しているし。

ああいうプレイができるプレイヤーが存在し始めていることが、Web1、2の時との大きな違いかなと思います。優秀なシリアルが大企業のトップ。

古川:ヤフーとかのトップが今シリアルアントレプレナーということですね。

堀江:彼らはすごく学習速度が速いので、あの人たちがカンファレンスでWeb3と言い始めたら、もうカウントダウンが始まる。

大日方:それこそ今の学生や若い人たちは、今の海外のWeb3に入り込んでいて、仲間を作って作り始めています。

古川:ちょっとわからないんですが、世代間がけっこう絶妙で、2003年、2004年ぐらいにブログを始めていた人はSNSの波から少し外れていて、ちょっとしか外れていないのに、あの人は超古いと言われるみたいなこともあるので、例えば今Web3をやっていた人たちが3年後に、「あの頃のWeb3の人たちじゃん」みたいな。

(一同笑)

古川:「あの人たち、なんかがんばっていたよね」みたいなところがけっこうありますね。

渡辺:なるほど。ヤバいですね。

古川:2000年代にユーチューブをやっていた人たちはユーチューバーになれなかったんですよね。2004年、2005年ぐらいからがんばっていたけど、メチャクチャ古い。編集も古いし、ノリも古い。それはちょっと気をつけたほうがいいかもしれません。

大日方:常にアップデートしていかないといけない。

重要なのは、「あいつらを倒すぞ」という同士を見つけること

堀江:こういうところで本当に価値があったことが何回かあって、その内の1個が、SFCの最初の授業でクックパッドの佐野さん(佐野陽光氏)が講師で来て、そこでクックパッドの話を初めて聞いて、起業しようと思って5年後にぶつかるんですね。

(一同笑)

堀江:そこの授業に日吉キャンパスから大竹君(大竹雅登氏)も出ていて、そこの事業に来ていた2人が、そのあと3,000億円になる企業を一瞬で良い感じにしていくという。

(一同笑)

古川:そんな授業はやっちゃダメですね。

堀江:でも僕はメールを送っているんですよ。ここはこうやって改善をしたほうがいいって。

一同:へー。

堀江:それはやらなかったけど、きちんと返してくれて。

石濱:返したんだ。

堀江:そうそう。だから佐野さんは器が大きいなと思いました。だからWeb2の7年前とかはイベントがものすごくいっぱいあって、ここでつながって同志が生まれて、前のやつらを倒すみたいな。「あいつらを倒すぞ」みたいな。

古川:でもたぶん僕らは倒す敵とすら思われていないと思うんですよね。

堀江:そうですね。だからやっている企業のみなさんのほうが上だと思いますが、そういう心意気の同志を見つけられるのが重要だと思うし、何なら別に日本にいる必要はないと思います。

けんすう氏がイメージする、Web3でやりたいこと

大日方:そうですね。けんすうさんは、ずっとWeb1、Web2でものを作られていて、かつコミュニティサービスとか、そういうかたちのサービスをけっこう多く作られてきたのかなと思うのですが、けんすうさんから見て、今はどういうかたちで考えられているんでしょうか。けんすうさんがやるとしたら、どういうことをイメージされているのでしょうか。

古川:インターネットの黎明期に、みんなが思っていた理想のインターネットのかたちができるパーツが揃ってきたなというのがあって、堀江さんとかをよくご存じだと思うんですが、楽天レシピさんとかは、レシピ投稿にお金を払うことをやって失敗した事例があるんですよ。Web2.0の時は、参加してくれる人にインセンティブを渡したら失敗すると言われていたことがありました。

なので、インセンティブをあげてはいけないと。食べログさんや、クックパッドはそんな感じなんですが、僕はそれはちょっとおかしいなと思っていたので、そういうのができるようになったのはいいなと思っています。

僕も2010年に、当時「クラウドワークス」とかがなかったので、クラウドソーシングサービスを自分で作って、それで記事を投稿してくれる人にお金を払ってメディアを作るみたいなことをやったんですが、あれもやはり無理矢理というか、サービスが発展しなくても審査が通るギリギリの記事を書くのが一番合理的になるんですが、それだけだとサイトとしてはおもしろくなくなるというのがありました。

なんかうまい方法がないかなと。株とかが配れないかなと言っていたんですが、そういうことをできるようになった分、メディアやコミュニティを作れそうだなとは思っていますね。

今は、白紙の上に新しいものを作れる一番おもしろいフェーズ

大日方:なるほど。堀江さんはどうでしょうか。

堀江:delyでも当然Web3という言葉が、ジワジワと議論をされるフェーズにはなってはいるんです。「(クラシルを作ったからには世界を獲らないといけないという気持ちとWeb3の波を見過ごして良いのか」という思いも今はあります。

大日方:なるほど。

堀江:それぐらい思いきりリセットをしてやってもいいぐらいの、大きな波が来ているじゃないですか。

古川:今、なにもやっていない人はラッキーですよね。

大日方:なるほど。

堀江:そのうえで僕らは、今までの材料をどう活かすかと考えて、こねくり回すわけです。ネイティブにゼロからできるのであれば、もちろんもっと有利な立場でできるかもしれません。僕らはモバイルの端っこしか残っていなかったので、やれることが少なかった。今のフェーズは、まだ誰も絵を描いていない白紙の状態の上に新しいものを作れる一番おもしろいフェーズじゃないですか。

ここで乗らなかったらたぶんみなさん5年後に死ぬほど後悔すると思います。5年後になって、みんなあそこに乗ればよかったと気づくようになる。僕だって5年前に戻ったら、ビットコインを絶対に買っているけどその時はみんな過小評価しているので。大人が過小評価しているものをみんなが理解できているのであれば、ここにかなりの可能性があると思います。

あと15年、20年は来ないと思ってやっているので、僕も取りに行くし、みんなも取りに行ったほうがいいかなと。一緒にがんばっていきたいなと思っています。

Web3は気合いを入れてやったほうがいい

大日方:なるほど。石濱さんはなにかありますか?

石濱:先ほどのサイバーエージェントさんの例は大きな企業だからできることで、僕たちにはできない。それこそもう半年や1年でたぶん機会は閉まっちゃう。結局Web2.0もメルカリ以降は成功事例がほぼないんですよ。特にB to Cだとほぼない状況で、5年や6年やってもパーンッと弾けるものがないというのが事実です。

Web3も、僕はおそらく資金力がメチャクチャあればPayPayみたいなものが出てくることもあり得ると思うんですが、みなさんがやれる領域だったり、資金力だったりでいくと、ここ半年や1年ぐらいで同時におじゃんになると思っているので、そのぐらいの気合いでやったほうがいいなと思っています。あと僕は、こういう話をメチャクチャ長いことあたらしい経済さんで記事を出しているので、今までのも含めてぜひ読んでください。よろしくお願いします。

(一同笑)

新しい領域で挑戦していく人がどんどん増えてほしい

渡辺:2つあって、1つ目はWeb3は暗号資産やブロックチェーンがけっこうバックグラウンドで入っていると言われますが、ブロックチェーンが誕生して13年や14年しか経っていないので、15年以上ブロックチェーンをやっている人は世の中に存在しないんです。例えば違う領域だと、専門家たちが上にガッといて年功序列で抜けるまでそこが空かない状態なんですよね。

そういった意味で、Web3がいっせーのーせで走りだしている。しかもインターネットでは1990年代くらいなので、すごくチャンスだなとは思うのですが、それと同時に、みなさんがおっしゃったとおり、もっと大きな資本が入って制度や規制が整った時は、かなり難しい。お金で殴られる戦いになってくるので、難しくなってくるんじゃないかなと思います。

だから今がチャンスだなとは思います。もう1個良いのが、やはりWeb3の領域はデフォルトでグローバルなんですよね。例えば暗号資産のドージコインが三菱UFJの時価総額を抜いたとかAstarも2000億円くらいですが、これとかも一種のマーケットサイズのファクターで、日本のマーケットではこういうことをやっていません。

日本のマーケットでやっているのか、世界のマーケットでやっているのか。しかも24時間365日動いているのでけっこう精神的にハードなんですが、その中でつく額もけっこう変わると思います。なので0→1からグローバルで若くて体力のある人が有利な領域なので、挑戦していく人がどんどん増えればいいなと思います。

堀江:そこが一番大きいですよね。Web2からWeb3に入った時に、その国境の境界線がかなり溶けた感じが明確にあるじゃないですか。実はみなさんにとって、そこに一番大きな可能性がありますね。トップラインの伸びというか、やはり国内のどこの会社も詰まっちゃっているので。

古川:2000年ぐらいにインターネットサービスを個人でやって成功した人は、裁判や警察沙汰のリスクを追っているんです。だから誰もやらなかった。モバイルのアプリを作って逮捕されることはあまりないじゃないですか。なので大企業が強かったんですが、今Web3で税金をどうしようとか、法的にどうだろうというのがある。

渡辺:確かに。

今Web3の波があるというのはメチャクチャ幸運なこと

大日方:でも本当に4年前、5年前にCryptoAgeをやり始めた時に僕らが生まれてからきちんとレディな状態で来た初めての大きな波だと話していて、僕らはWeb1の時は子どもだったし、Web2の時は高校生や大学生で、なにかやれるかというと、そうじゃなかった。

だから堀江さん(堀江裕介氏)は、まさに最後の最後に滑り込んでWeb2で大成功を作った最後の世代だと思っていて、年齢関係なく今ここに来ている方たちは、ハートが若くてWeb3でなにかをやりたいなと思っている人たちだと思うので、そういうタイミングで、今Web3の波があるというのはメチャクチャ幸運だなと思っています。

僕らもここでいろいろな仲間を作ったり、学びを深めて引き続きこの業界でやっていきたい思っているし、一緒にがんばってやっていきたいなと思っています。

古川:世代だけはどうにもならないけれど、今この波が来ているのはメチャクチャラッキーですよ。

大日方:時間もちょっと過ぎているので、これでセッションを終わりにしたいと思います。

一同:ありがとうございました。