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CTO目線でのキャリア形成論 〜「エンジニア35歳定年説」 は真っ赤な嘘〜 (全3記事)

「20代の頃はスキルを鼻にかけた嫌なエンジニアだった」 「態度を改めなさい」と言われ気づいた、人を幸せにする意識

技育祭は「技術者を育てる」ことを目的としたエンジニアを目指す学生のための日本最大のオンラインカンファレンスです。ここで登壇したのは、株式会社レアゾン・ホールディングス 取締役 CTOの丹羽隆之氏。自身の経歴を振り返りながら、転職するうえでの学びについて話しました。全3回。3回目は、仕事における一番大事なことについて。前回はこちら。

20代の頃は相当扱いにくいエンジニアだった

丹羽隆之氏(以下、丹羽):今まで偉そうな話や自慢じみた話が多かったかもしれませんが、僕自身もたくさん仕事をしています。最初の自己紹介でも言ったとおり、悪いほうに持っている男なので、その1つを紹介します。

小学生の時からPCを触っていたので、社会人になった時は周りよりもプログラムができました。ちょうど会社でもアセンブリ言語の開発からC言語を使って開発するかたちに切り替わっていくタイミングで、大学でC言語をやっていたこともあり、少し重宝されていました。ただそのせいもあって、恥ずかしいことに20代の頃は相当扱いにくいエンジニアだったと思います。

周りのエンジニアやエンジニア以外の職種の人にけっこうきつく当たっていて、本当に嫌な奴だったと思います。みなさんはそんなことしていませんよね。いずれ痛い目を見るので、そういう人は改めたほうがいいです。

ゲーム業界で実績を積んで転職をした会社では、ゲームはプログラミングスキルが必要なのでスキルだけは一歩抜きん出ていました。それを鼻にかけて周りの人たちに、やれ「仕様書が間違っている」だの「作ったあとから仕様書が変更されると二度手間だ。時間の無駄だ」だのと言っていました。本当に嫌な奴です。そんなことを続けていたら、入社して1~2ヶ月くらいの頃に当時の上長に呼ばれました。そこで言われたことが、人生で大きな転機になりました。

その時に、「丹羽君がプログラムできることはみんなわかっているけど、どんなにできる人でもいずれミスするよ。その時にミスをカバーするのは一緒に働いている周りの仲間なんだ。今のような態度を続けていたら誰も助けてくれないし、いずれ痛い目にあうからすぐに態度を改めなさい」と言われました。

この時、すでに30歳を超えていたので、学生のノリが抜けないというか、赤ちゃんみたいでしたね。これを聞いて自分でも本当に恥ずかしくなって、そのあとからはリスペクトを持って周りの人に接するようにして、「本当にすみませんでした」と謝罪しました。

実際にこの直後、僕は、クライアントの会社に顛末書を出して、直立不動で話をするくらいの大きなミスをやらかしました。本当に首筋が寒くなったんですが、その時に助けてくれたのは同じプロジェクトの仲間でした。「こんな急ぎの案件は彼じゃないとできない」とか「こういうミスもあったけど、製品はすごく良いものです」などと周りが言ってくれて、大きな問題になることなく収まりました。

確かに、一定規模のアプリケーションであれば1人で作れると思うし、1人の天才によって生み出されたアプリケーションは世の中にたくさんありますが、今はどんどんアプリケーションが複雑になって相互にAPIやネットワークが連携して動くようなものが多いので、エンジニア1人でできるものは限られています。

スマホでも、スタンドアローンで動くアプリはもうほとんどありません。他のサービスと連携したり、ネットワークを使っていたり、OSの機能を使っていたり、やはりいろいろな人と連携して仕事ができるようにならないと今後は厳しいと思います。

一番重要なのは「人」である

いろいろ話しましたが、一番重要なことは人だということを伝えたかったんです。人と仕事をする、もしくは人を幸せにするという意識が重要です。また、他人に対してリスペクトを持って接することも重要だと思っています。

実はエンジニア業界はけっこう狭いです。Linuxを作ったLinusさん(Linus Torvalds氏)はコミットに対して以前Fワードを使ったりと、厳しいコメントをしていましたが、最近キレイになって帰ってきました。僕が35歳を超えてもエンジニアとしてやってこられたのは、周りの人や以前一緒に仕事をしていた人が、誘ってくれたり、助けてくれたり、もしくはついてきてくれたりするからです。

ほかにも、海外で仕事をする時や外資系に就職する時には、リファレンスチェックというものがあります。これは僕がCTOと今期のCHROを兼任していることにもつながります。当社はテクノロジーファーストを掲げるITベンチャーではありますが、重要なのはやはり人だと考えています。

そういう意味で、テクノロジーファーストの会社の人事・採用のトップがテクノロジーのトップだという話をCTOから聞いて、確かにそうだなと思ったので、今はCTO兼CHROとしてテクノロジーに加えて人事・採用の仕事もしています。10~20代の時に描いていたコンピューターグラフィックスエンジニア像ではありませんが、テクノロジーに関わって、50歳を過ぎても新しい仕事や挑戦ができているという意味では、35歳定年説は嘘だと思っています。

みなさんにも35歳で終わることなく、35歳を超えてもやりたいことや好きなことに取り組めるエンジニアになってほしいと期待しています。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答

司会者:ありがとうございました。チャットに来ていた質問について丹羽さんにお聞きします。「好きなことを仕事にすると嫌いになると聞いたことがありますが、丹羽さん自身にそういった経験はありましたか?」です。

丹羽:僕は嫌いになったことはありませんが、周りに飽きたという人はいます。ただ、仕事の内容に飽きているだけで、テクノロジーやプログラミングに飽きているわけではないと思います。先ほど話題に出た、もともとゲームのサーバーエンジニアでフードデリバリーのmenuの立ち上げ時にサーバーエンジニアをやっていた人も、たぶんゲームにはもう飽きていたけれど、新しい事業は楽しんでやっていたと思うので、嫌いになることはないのかなと。

大事なのは、どの軸が好きかです。僕はゲームよりテクノロジーが好きだったので、その軸では未だに嫌いではありません。

司会者:得意なことや武器についての質問をたくさんもらっています。「得意を知る段階はどのあたりですか? 新卒入社で考えると、入社して3年くらいで自分の得意なものがわかってくるものなのでしょうか?」。

丹羽:もっと早くわかると思います。うちの会社では1on1をやっている時に「ここがすごくよかった」と周りから褒められるし、「すごく助かった」と言われると、「ここは自分では得意だと思っていなかったけれど得意なのかも」と気づくと思います。

司会者:「上下関係と横の関係、どちらをこれまで大切にしてきましたか?」についてはいかがですか?

丹羽:こういう性格なので、上下というより人として接することに関しては、上の人に気に入られがちでしたが、横とも仲は良いです。最初の会社の同期とも未だに連絡を取っているし、それ以外の会社の同期や年齢が近い人とも仲良くやっています。あまり上下で考えたことはありませんが、一緒に仕事をした人には次も一緒に仕事をしたいと思ってもらえるように、(関係を)大切にしています。

司会者:「海外で働くためにはどれくらいの英語力を要しますか?」。エンジニアとしてだと思いますが、丹羽さん自身はいかがでしたか?

丹羽:僕は、大学生時代ぜんぜん英語ができなかった(笑)。TOEFLはひどい点数でしたが、英語のサイトで技術系の言葉を読んでいたので、テクニカルタームならなんとかなるだろうと思って行っちゃいました。プログラミング言語を覚えられるくらいなので、みなさんは大丈夫だと思います。どちらかというと物怖じしないとか、間違っていても大きな声で言うほうが大事ですね。

司会者:「アウトプットには、トークや登壇などアプリ開発以外のことも含まれますか?」。

丹羽:含まれると思います。僕は、若い時は興味がなくてあまりやりませんでしたが、やっておけばよかったと思います。日本に戻ってきた時に、今はもうありませんが、「SoftLayer Bluemix Summit」などで登壇したことが結果的にプラスになったと思います。ぜひやってください。

司会者:「転職先が複数ある中で、現職を選んだ理由をもっと詳しく聞きたい」。なぜレアゾン・ホールディングスに決めたのか、僕も聞きたいのでお願いします。

丹羽:当時、外資系のメチャクチャ大きい会社や日本国内のメガベンチャーと言われるような会社からも内定をもらっていましたが、僕は熱気のある中で仕事をすると、自分のパフォーマンスが120パーセントにアップするような気がしました。それがうちの会社を選んだ理由です。

昔いたスクウェアはFF7がリリースされる前に入社して、「今後の業界を変えてやるぞ!」という熱気を感じながら仕事をしたことがすごく強く印象に残ったので、そういう会社に入りたいと思ってレアゾン・ホールディングスを選びました。実際にそんな会社なので、そういう会社で働きたい人は応募してください。

司会者:「“得意を知る”に付随した質問です。新卒の時点で、ある程度自分の得意分野という仮説を持っていたほうがいいですか? 今はまだ自分が何が得意で、何が強いのかがわかっていません」。

丹羽:最初は好きなことから入ったほうが続きます。好きから入って、その中で少しずつ周りと比べて、他の人より楽にできているとか、他の人が苦しんでいる時に自分は苦しくないということが得意なことだと思います。歳をとると、どんどんメタ視できるようになるので、そこは年齢を重ねるごとにいけるようになると思います。まずは好きなことから始めてほしいです。

司会者:「就活中です。業界を調べていますが、ITや通信には興味が持てなくてSEになりたいとフワッと感じています。これから研修制度のあるIT企業に入ればいいのか、大学生活はグダグダのモラトリアムでした」。丹羽さんは最初のキャリア選択をどう思いますか?

丹羽:スライドを使って話しましたが、今の平均就労期間は3年なので最初の会社が人生のすべてを決めるわけではないと思います。きちんと研修制度のある会社もあれば、OJTでどんどん現場を覚えていけという会社もあって、どちらが正解とも言えませんが、どちらでも成功している人を見ています。もし強制力を持って教えてもらったほうがいいと思うのであれば、それも悪くないと思います。

司会者:「海外で働く魅力」はどうでしょう。

丹羽:当時はコンピューター系の情報の7割以上が英語で書いてあり、アメリカがITベンチャーの先進国だったし、エンターテインメントにも興味があったので行きました。チャンスがあれば行くことをおすすめします。

ただ、アメリカ人はすごく働くので労働時間が長い。そういう時に日本食が食べたくなったり、漫画が読みたくなったり。今は電子コミックがあるから大丈夫なのかな。そういう日本の文化に飢えるタイミングは来ると思うので、友だちに話して送ってもらうとか、その担保はやっておいたほうがいいと思います。

司会者:最後の質問です。「未経験でエンジニアを目指す場合は休学して学んだほうがいいか。それともインターンとかで経験を重ねたほうがいいか。また、プロダクト作成を経験しておいたほうがいいか」です。丹羽さんの見解を聞かせてください。

丹羽:(経験を)しておくに越したことはありませんが、僕は大学時代が最後のモラトリアムタイミングだと思っているので、どちらかというと人としておもしろいことが、将来社会人になった時に意外に重要だと思っています。ただ、今の若い方は真面目なので、インターンを含めてお金をもらったほうが真剣に学ぶと思うので、インターンやアルバイトをして、お金をもらう分きちんと仕事で返さなきゃと思いながら進めるのがいいと思います。

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