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メタバースに欲しいデザイナースキルとは(全2記事)

「人は何をもって現実とみなすのか」を話すのがVRの世界 デジハリ准教授が語る、前提知識としてのVR・メタバース・UX

XRやメタバース領域のおもしろさ、なぜいま注目されているかの背景、技術的な最新情報を一緒にキャッチアップし、ヒントを得られることを目指した「メタバースラボ #2 メタバースとデザイン」。ここで株式会社キッズプレート代表取締役であり、デジタルハリウッド大学准教授の茂出木氏が登壇。まずは前提知識としてVR、メタバース、UXについて整理します。

自己紹介

茂出木謙太郎氏:みなさんこんばんは。お忙しいところ今日はようこそ。「メタバースに欲しいデザイナースキルとは」ということでお話しします。思ったよりページが多くなっちゃって、よく考えたら30分では話が終わりません。だけど今日は端折ってお話しするので。

また、僕もメタバースラボに入っているので、フレンド申請をしてお友だちになっていただくなど、そういうところでまた続けてお話できたらいいなと思います。

僕の名前は茂出木といいます。デジタルハリウッドで先生もやっています。上が世を忍ぶ仮の姿ですね。下が真の姿で、授業中や打ち合わせも全部これで出ているんですよ。だから僕とZoomで打ち合わせをすると、漏れなくこの真の姿で出て行きます。今日も取引先の社長に何の前触れもなくこの格好で出て行って、「こんにちは」と挨拶をしました。

略歴というか、今日お話をするのに説得力のあることを言っておかないといけないなと思って、「こんな本を出しています」というのを並べました。これは南カルフォルニア大学の先生がアメリカで出した本を日本向けに監修・監訳したものです。2001年くらいに『Webサイトユーザビリティハンドブック』として出しているんじゃないかなと思います。

そのあと『XHTML時代のWebデザインバイブル』というのも監訳しています。あとは、もしかしてWebデザイナーで試験を受けた方もいるかもしれないですが、CG-ARTS協会のWebデザイナー検定の教科書で情報のまとめ方のところを書いています。

『xReality』はどうでもいいと言ったらどうでもいいんですが、ホリエモンが「VRがこれから来るぜ!」とすごく言っていた、2014年頃に出た本です。ということでいくつか受賞をしています。最近だと「異能ベーベーション・2121年ジェネレーションアワード」にノミネートされていたのでうれしかった。小さい記念品をもらいました。あとは「茨城デジタルコンテンツ・ソフトウェア大賞2020」の優秀賞をいただきました。

僕は1989年に美大を卒業して、そのままメーカーでグラフィックデザイナーになりました。最初は手作業でデザインをして、そのあとDTP(DeskTop Publishing)をやってWebデザインをやって、SNSや動画コミュニティをやって。2015年ぐらいからVRやARのコンテンツの制作をやっています。

(スライドを示して)こういういろいろなものを作っています。VR制作だと仏像を見ることができるコンテンツを1年がかりで作ったり。

あとは「バーチャル名刺背景ジェネレーター」といって、Zoomの会議の背景に使えるようなものを生成するソフトウェアを、実はWebで無料で公開しています。これは2020年の5月ぐらいに緊急事態宣言が出た時には公開していて、テレビとかでわりと紹介されました。

みなさんは今ヘッドマウントディスプレイを付けてメタバースとかに入ったりしていいますが、もうちょっと簡単にアバターになれないかなということで。最近は、PCとカメラだけで簡単にZoomにメタバース空間を作ってオンラインミーティングや授業などに参加できる「NICE CAMERA」というソフトウェアを作っています。

VRとは一体何なのか?

今日はVR関係者ではなく、わりとグラフィック系やWebデザイン系の方が多いと伺ったので、とりあえず共通認識をもう1回したいなと思っていまして。散々言われてきていることなので、聞き慣れている人や「もう聞いたよ」という人も多いかもしれませんが、一応共有します。

VR、バーチャルリアリティとはいったい何なのか。バーチャル・リアリティは、現実ではないけど、本質的には現実と同等の環境を作る情報技術である。「コンピューターの作る空間でさまざまな体験をするための技術ですよ」というのがバーチャル・リアリティです。何が言いたいかというと、今は「Oculus Quest」とかがすごく売り出されているせいで、ゴーグルをして見るものがVRだと思っている人がほとんどなんですよ。

「PlayStation VR」とか、もう「VRはこういうものなんじゃないの?」と思っている人もいるかもしれませんが、実は聴覚のVRもあるし、味覚のVRもあるし、嗅覚のVRもあるし、触覚のVRもある。さまざまなものがVRで、それらすべてを統合して体験できる技術を高めていくのがVRです。

だから、最終的には「人は何をもって現実とみなしているのか」という話をするのが、究極のVRなんですよ。「現実とは何か」みたいな話をするような、そういう世界がVRの世界なんです。

そういう意味では「三次元の空間性」と「実時間の相互作用性」と「自己投射性」。自分がここにいるということがわかること、時間をちゃんと共有できていること、三次元の空間がコンピューターの技術で作られていると。(スライドを示して)よくAIPキューブと言われているのでここにも使ったんですが、臨場感と対話性と自律性が、(1,1,1)の赤い頂点のところにいくのが究極のVRなんですね。

このどれかが1じゃなくて「0.7かも」とか「0.1かも」とか、少しずつポジショニングがされていって、「これはこのぐらいのVRだよね」みたいな評価をされていくんですよ。VRはそういう世界です。だからVRは実はすごく奥が深いということです。

ということで、時間と空間を超えた世界を構築・体験できるというのがVRのすごいところなんじゃないかなと思っていて。今日ここにいるみなさんも日本のどこにいるかわからない。もしかしたら日本だけじゃなくて、世界のどこかにいるわけですよ。そういう人たちと空間を超えて会えるとか、昔いた人をここに蘇らせられるとか。そういうのを全部超えていって認識できる世界を作れるのが、VRのおもしろいところですね。

メタバースとは何か?

もう1つ、メタバース。これは最近はもうバズワードとして言われているので、みなさんも知っているとは思います。”超える”という意味の“メタ”と、ユニバースの“バース”を合わせてメタバースということで、コンピューターやネットワーク上に構築された空間のことをいいます。

「メタバースとは何か」については、3月か4月ぐらいにいろいろな解説本が出ます。clusterの社長の加藤直人さんもたぶん書かれていたと思います。みなさんがそれぞれ「メタバースというのはこんな感じですよ」という説明をされています。日本に限らず海外の方もそうですが、わりと「ポジショントーク的に”こうである”」と決めて話をしている部分がちょっとずつあるんですよ。

NFTをやっている人は「メタバースにNFTは欠かせない」みたいなことをやっぱり言うじゃないですか。実際にはメタバースとNFTは関係させようと思えばさせられるし、すごく重要な技術として使うこともできるんですけど、別になくても成立はするんですよね。だけど「核となる技術」と言っていたりします。

そんな中で僕がメタバースとして重要なんじゃないかと思っているのは、社会性と創造性と経済性がデジタル上の世界に存在しているということです。

最近の主なメタバース

「主なメタバース」ということで、「こんなメタバースがありますよ」という話ですが、みなさんだいたい知っていると思うのでパッパッといきましょう。

clusterでやっているのに最初に出すのはどうかという話ですが、「VR CHAT」あとは、「Workrooms」です。これは元FacebookのMeta社のメタバースですね。

Workrooms

「Horizon Worlds」はまだ日本では体験できませんが、北アメリカではすでにサービスが展開されています。「Horizon Worlds」がおもしろいのは、自己防衛空間みたいなものが用意されていて、「これ以上近寄らないで」という設定ができるようになりました。そういう世界観なんだなと思いました。

あとは「hubs」というものがあります。これはWebを作っている人たちだったらわかる、Mozillaという会社が提供しているVRで、ブラウザーベースで動くメタバースです。

hubs

「SECOND LIFE」です。年齢がちょっと上の人は2007年頃に大ブームになった事を知っていると思いますが、依然として続いていて、この中でちゃんと仕事を持って働いている人たちもけっこういます。日本人は少ないと思いますけど。

SECOND LIFE

お待たせしました、clusterです。最近「WORLD CRAFT」が正式にリリースされて、ワールドを作れるようになりました。すごくお手軽に自分のワールドを作れるようになっているので、まだやっていない方はぜひ試してみるといいんじゃないかなと思います。

cluster

「REC ROOM」は日本ではあまり話を聞かないんですが、僕はけっこう好きで。あと、N高やS高とかが「REC ROOM」にけっこう力を入れて学生を参加させています。

ゲーム中心で遊べるメタバース空間で、実はクリエイト機能がすごく充実していて、この中でプログラムをしてゲームを作れたりするんですよね。なので、メチャクチャ奥が深いです。ただ、リファレンスがぜんぜんなくて調べるのが大変なので、僕もすごく手探りで作っているところです。

あと「Virtual Cast」です。これは、角川さんがバーチャル空間で撮影ができるスタジオ機能に特化して作っていたものです。

あとは「そんなのもメタバースと言っちゃうの?」みたいなところで言うと、例えば『どうぶつの森』とか。よくメタバースのゲームというと出てきますね。

『FORTNITE』も戦っているばかりのイメージがあるかもしれないけど、実はクリエイト機能がすごく充実していて。最近ではクリエイティブのほうで遊ぶ子どもたちがすごく増えてきています。実際に「クリエイティブのワールドでこんな体験をしましょう」みたいな記事も出てきていますからね。よかったらぜひ調べてみてください。

ということで、ざっと説明しました。コンピューターの中に空間があって、経済と社会性と創造性があったらメタバースなんじゃないかという意味では、ゲームとかも入るということです。

UXとは何か?

みなさんすでに知っていると思いますが、あらためて説明します。

UXというのは、プロダクトやサービスを通じて得られるユーザー体験です。ユーザー体験をUX、「ユーザー・エクスペリエンス」と言います。例えばプロダクトだったらパッケージとか、どこで売っているかとか、そういうのもすべて含めてユーザー・エクスペリエンスですね。

「ユーザー・インターフェイス」というのは、ユーザーとプロダクトをサービスする接点、UXに含まれるインターフェイスのことです。UXとUIみたいなことをよく言いますが、UXの中にユーザー・インターフェイスは重要な要素として当然入るし、いいUXとはいいUIから成立しているというのは言わずもがなです。

(スライドを示して)これはケチャップの瓶です。Twitterでちょっと炎上していて、僕も炎上する少し前にこれをツイートした日本人のとあるWebディレクターの方に質問をしちゃったんですけど。その人が言ったんじゃないんですよ? アメリカのUXコンサルタントか何かの会社の人が言っていたものがベースらしいんですが、この左の瓶がUIで、右の逆さにしているボトルがUXだと。

その日本のWebディレクターも「これは非常に良いUXとUIの比較だね」と書いていたんですよ。僕はちょっと意味がわからなくて「申し訳ないけどどういう意味か教えてください」と言ったら、「僕が間違っていました、すみません」みたいな感じで謝られてしまって、そのままなくなっちゃったんですけど。「いやいや、謝ってほしかったんじゃなくて僕は説明をしてほしかったんですよ」「純粋にわからなかったので知りたかったんですよ」と。

意図があってしゃべったのかなと思ったから聞きたかったんです。「瓶だと底に溜まっちゃって使いにくいですよね。それをユーザー・インターフェイスを改善するとこういうかたちになりました。そうするとUXが向上したんです」と。たぶんそういう説明なんですよ。

「ほんまかいな」とちょっと思っていて。これはボトルとして使う意味があるし、逆さに置く意味もあるし、それぞれ重要なUXを提供していたりする。そもそも「ケチャップのボトル」と言ってしまっている時点で、「提供するUXはボトルの形状なのかい?」「ケチャップが提供するものって、例えばおいしい食卓なんじゃないの?」とかあるじゃないですか。

議論がすごく膨らむはずだから、これだけで端的に「これがUXでこれがUIです」というのは違うなと思ったので、ちょっとネタとして取り上げました。おもしろかったので。

(次回に続く)

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