2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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栄前田勝太郎氏(以下、栄前田):みなさん、自己紹介をお願いします。セルジオさんからお願いします。
伊藤セルジオ大輔氏(以下、セルジオ):これは自己紹介ではなく、今日の話に関係ありそうなものを用意をしただけなのですが、弊社はマネーフォワードという会社で、ミッションは「お金を前へ。人生をもっと前へ。」です。「マネー」と会社の名にあるとおり、お金を扱ってはいますが、「フォワード」というところを大事にしていて、人生をもっと前へ、社会を前にという活動をしています。
プロダクトとして「マネーフォワード ME」という家計簿アプリを提供しています。1,200万ダウンロードされていて、多くの方に利用してもらっています。右側のスライドに並べているとおり、「マネーフォワード クラウド」というB to B向けのサービスのほか、40くらいのサービスをやっています。実は、さまざまなB to BとB to Cプロダクトを展開している会社なので、オーガナイズしていくのが大変です。今は50名くらいのデザイナーががんばっていますが、さらにデザイナーが必要です。
デザインに絡めて言うと、会社としての価値観や行動指針、バリューに「User Focus」という言葉が入っています。僕らはこれを強みと捉えていて、デザイナー以外のメンバーも、ユーザーを中心に考えていくことが根付いている会社だと思っています。エンジニアやビジネスのメンバーもこれを軸にプロダクトを作っていくという姿勢でやっています。
スライドの右側に組織図を載せたので紹介します。さまざまなプロダクトをどのようにデザインしているか。B to BやB to Cの事業のほかに、「共創事業」と呼んでいますが、一部クライアントワーク的にB to B to BやB to B to Cの部分があり、そのそれぞれにデザイン部があります。より事業にコミットして、より深くユーザーを知るために、そういった体制を敷いています。一方で、それだとどうしても全体の目指す方向性にバラつきが出てくるので、デザイン戦略室という横串の組織を作っています。このように縦と横でつながる組織構造の会社です。
50名強のデザイナーの7、8割くらいがプロダクトを作っていて、それ以外はコミュニケーションデザインや、ブランド系のデザイナーという感じです。僕自身は今、執行役員CDOとして、デザイン責任者も務めています。よろしくお願いします。
栄前田:トップバッターありがとうございます。続いて平野さん。
平野友規氏(以下、平野):平野です。ユーザベース(Uzabase )は「B2B SaaS事業」として、経済情報プラットフォーム「SPEEDA」、B2B事業向け顧客戦略プラットフォーム「FORCAS」、スタートアップ情報プラットフォーム「INITIAL」という3つの事業があって、僕はそのデザイン組織のヘッドをやっています。よく「CDOって何ですか?」と聞かれるのですが、ユーザベース全体ではなく、特定の部門だけを見ているのが僕の仕事の特徴だと思います。
プロフィールはスライドに書いてあるとおりですが、人生観を毎回伝えたいと思っています。僕は最近、「悲観主義は気分によるものであり、楽観主義は意思によるものである」と「学ぶ心さえあれば、万物すべてこれ我が師である」を大切に生きています。
新卒で入ったトランスコスモス社がキャリアのスタートなのですが、その研修でこの言葉を教えてもらった時に「へー!」と思いました。「楽観主義はコントロール可能なものだ」ということに気づきました。デザインをする時も、制御可能なものは何なのか、制御できないものは何なのかを見極めていて、デザインできる部分はどうなのかという部分もこの言葉から転じて学んできたと思います。
今、38歳なのですが、どんどん学びの機会を自分で作っていかなければ40代で生き残れないという危機感があるので、「学ぶ心さえあれば、万物すべてこれ我が師である」、何でも学べるマインドで日々生きています。よろしくお願いします。
栄前田:かっこいいですね。「かっこいい」というコメントが来ています。
セルジオ:そうですね。僕も座右の銘を言いたいですね。
平野:いつからか、プロフィールで肩書きを言うのをやめたんです。あまり僕のパーソナリティが伝わらないなと思って。どうせならパーソナリティを知ってもらいたいので、人生観を入れるようにしました。
栄前田:確かにこれはいいですね。みんなリスペクトし合いましょう。あえてパクるとは言いませんけど。
(一同笑)
平野:どうぞパクってください。僕も誰かのをパクったので。
栄前田:では、西村さんお願いします。
西村和則氏(以下、西村):株式会社ルートの代表の西村です。ルートという会社はデザインファームなのですが、事業開発にフォーカスし、UI/UXデザインやサービスデザインを支援するというポジションにいます。会社はパートナーさんも含めると20名くらいの体制で、今オールデザイナーという組織を作っている最中です。
ルートの立ち上げ時に、デジタルプロダクトを開発し、創業しています。自社事業を立ち上げたことから始まりましたが、ちょうどスマートフォンが普及しつつある時期でした。事業を作るところからやりたくて独立しましたが、そこで一度大きな失敗をして、事業を立ち上げられなくなった経験をしています。
僕自身がもともとデザイナーなので、ビジネスサイドからビジネスを作るのではなく、デザインサイドから事業をやりたいという欲求が強く、この領域を説きたいという思いでデザイン会社を始めたことから今のルートができました。
今はお客さんの新規事業だったり、大きな会社の中で小さなチームから事業を拡大していくというフェーズだったり、本当に小数のチームでデザイナーが不在だったりというところに関わらせてもらうことが多いです。
デザイナーさんがいて一緒に協働するケースもありますが、私たちが先行をして実践をして、その内部の体制に対してプロセスや進め方を残していくという関わり方をしていて、ちょっと特殊な動き方をしています。
デザイン会社はどうしても、クライアントに納品して、コンサルティングして終わるという関わり方に留まりやすいと思いますが、私たちはどちらかというと持続的に、一緒に走る中で体制を作ったり、事業自体をグロースさせるように支援するという関わり方をしているのが特徴だと思います。自己紹介は以上です。
栄前田:最後に曽根さん、お願いします。
曽根誠氏(以下、曽根):株式会社ゆめみでチーフデザインオフィサーをしている曽根です。会社は私が立ち上げたわけではありませんが、設立20年になる老舗のベンチャーで、システム開発やアプリ開発による内製化支援のプロ集団として、クライアント企業を支援しています。「アウトソーシングの時代を終わらせる」というミッションを最近掲げました。これまでは一気通貫で「アプリなら我々におまかせを!」という話をしていましたが、これではクライアントさんは幸せにならないと思ったので。
スライドに「クライアントと共創する『BnB2C』モデル」と書いていますが、カスタマーに並走してプロダクトを提供しています。「一気通貫で我々が代わりにやります」ではなく、「我々がクライアントのチームと、ちゃんとくっついて、やる」というスタイルでやりたいと思っています。
(スライドを指して)それをクライアントに提供してチームでやっていくために、ゆめみはかなり変わった組織形態をしています。ヒエラルキーを捨てて権限を委譲した「分散型のホラクラシー」と呼ばれる組織です。誰かに何かを言われたり、上から指示がある組織ではありませんが、これがあるべき姿だと思っていて、今はデザイナー組織ではなくデザイン組織を目指しています。
みんながデザインする組織を目指しています。そのホラクラシーを説明しているのが下のスライドにある「アジャイル組織」や「全員が意思決定」です。社員全員がCEOの権限を持っています。クライアントも社内も、「GROW with YUMEMI」をキーワードに、みんなで成長していきましょうと、成長環境を提供するプラットフォームを謳っています。
栄前田:以上、4名を中心に進めます。
栄前田:では、さっそくテーマに行っていいですか? スライドを物々しく隠してあるけどテキストしかないという。
(一同笑)
この「風土なき文化、文化なき思考は根づかない」は、事前打ち合わせをしている時にセルジオさんから出てきた言葉だったかな。
セルジオ:これは平野さん。僕はこんなにかっこいいことを言えない。
(一同笑)
平野:僕は中学校の時、詩を書いていた人なので。
一同:へー!
平野:闇歴史なんですが。
(一同笑)
セルジオ:闇なんだ(笑)。
平野:デザイン組織のクライアントワークの時に、どうやってデザインの価値をインストールするかがたぶんテーマとしての接点なのですが、僕がこの言葉に気づいたのはデンマークに行った時です。
今のデンマークには、みんなで語る文化があるじゃないですか。厳しい冬の環境では日照時間が5時間ほどなので、朝10時に夜が明けて、3時には暗くなる。そういう風土があるから家でみんなで暖まって対話をするヒュッゲという文化があります。風土や文化がないと、思想は出ないということを身をもって体験したんです。風土からデザインの価値をインストールしないと、うまくいかないという原体験を自分で持っています。
例えばクライアントワークをした時に、新規事業の立ち上げとともに、いわゆるデザインスプリントやデザイン思考のワークショップを一緒に立ち上げたり、スタートアップ支援の話をしたりするんです。支援する時にもいわゆるプロダクト・レッド・グロースみたいな感じで最初からやるんだと決めていくと、ファウンダーやボードメンバーがそういう文化や風土を作っていくので、そこでようやくデザインの価値が乗っかっていくという体験談を話した時に、このキーワードをテーマとして出したというのが背景です。
セルジオ:そこでいう風土は、経営者の意思やその方の考え方が大きいんですか?
平野:そうですね。この風土は気候みたいな意味なので、厳密に言うと例えばリモートワークでやる機器、デザインのツール、ペンなどがより適切だと思うんです。そもそも「リモートワークをやる」「フルリモートでやる」という思想でやっても、その環境が整っていない人はうまくいかないのと同じです。
例えば、デザインを根付かせていく、もしくはデザインを大切にしていくという思想であれば、バジェット(予算)を積んでいるのかが大事だと思っています。僕はUB(ユーザベース)で、デザインの投資金額を上げていかなければならない立場なのですが、そこのバジェットを計画をスタートする前に、僕がいくら「デザインに投資しろー!」と言ってもしょうがないので。
(一同笑)
平野:身をもって証明して、予算の風土、そのリソースをきちんと作ってからいくみたいな。それをやっていかないと入っていかない。僕の言っている風土は、あくまでも実環境やリソースの意味が大きいです。
セルジオ:なるほど。その風土自体もある意味作りにいけるということなんですか? 今言ったバジェットも、ある意味作りにいくと思うのですが。
曽根:気候や環境ということですよね。それは集まる人が作りあげていくものだと思います。私たちの組織も、与えられて学ぶというより、自ら学ぶ人が多いのですが、そういう人たちが集まっているからホラクラシーみたいなものができやすいと思ったので。
西村:そうですね。人は人から影響を受けやすいので、創業期にデザインやユーザーと接点を持つこともそうですが、そういう機会をどれだけ作れるかも大事だと思っています。デザイナーが少ないせいでもありますが、立ち上がりにデザイナーが入っていない組織が多い。
それを風土だと思っていて、その構造で立ち上がるからそもそもデザインという文脈が入っていきづらい構造になっていると思うんです。これはよくあるパターンで、一度前提みたいなものが形成されると、前提がずれちゃうので、私たちの支援をなかなか受け入れられないんです。少数での立ち上がりの中でデザインとの接点をどう増やしていくのかが大事だなと、今聞いていて思いました。
栄前田:今西村さんは風土と言いましたが、それが風土だとして「文化」はいつできあがっていくんでしょうか。
西村:ミッション・ビジョン・バリューもそうですが、形式化されるのはもう少しあとで、最初は暗黙知で取り組んでいくじゃないですか。創業期もそうだと思うのですが、新しいことを始める時。活動の集積の結果、言語化されたり、何らかで視覚化されたりしたものによって文化になっていく。認識や認知されるようになっていく構造だと僕は捉えています。みなさんはどうですか?
セルジオ:そうですよね。途中から築かれるものだと思うのですが、マネーフォワードの場合は、代表の辻がデザインをすごく大切にしてくれています。それも色・形ではなく、本質的な価値を見出して、それを増幅していくという意味合いでデザインを捉えてくれています。
それに気づいたきっかけが、代表から創業当時のデザイナーに「行動指針カードを、みんなのポケットにキレイに入るようにデザインしてくれ」とオーダーが入った時でした。「そもそもこの内容をきちんと見返さないと、みんなに浸透しないと思いますよ」という会話がその時にあったんです。
実際に、そこからMVCのアップデートを行うことになって、デザインはこういうところで活躍できるという気づきがありました。そこから風土・文化みたいなものができあがっていくタイミングがあったんです。なので、途中からできあがっていくと思っています。
曽根:文化とは、風土みたいな環境の上にある生活様式みたいなプロトコルだと思っています。振る舞いを規定して、そういう風土のある人が集まった中で物事を決めていく。決めていくやり方が文化という言葉になっていくのかなと。共通のプロトコルがあれば、その上に何かができていく。プロトコルなので、場合によっては更新されていく、変わっていく、進化していくこともあるかと思いました。
栄前田:今平野さんがスライドに貼ってくれたんですが、確かに一番下に風土があって、その上に文化が醸造されると思うのですが、この上はどうなんですかね。思想・態度・フレームというところ。
平野:なぜデンマークではうまくいって、日本ではこんなにうまくはまらないんだろうと考えたのですが、デザインはある種のフレームなんですよね。フレームを成り立たせるのはそれを使う思想や態度ですが、結局それは文化の上にあって、文化からつながるし、文化は風土から出ると思いました。
仮にデザインスプリントみたいなフレームを上から下に落としていく場合、どういう状況でこれをやっていこうかというマインドの部分。セルジオさんたちはすでにそれを持っていて、文化をうまく接合させたんじゃないのかと話を聞いていて思いました。
特に風土は、デザインに投資がされれば自ずと作られていくと思います。究極「Figmaがセキュリティ上、入れられません」とか、その参考書になぜデザイン書が必要なのか、いちいち稟議を通さないとダメみたいな制度設計も、僕は風土に入ると思っているので、デザインスプリントをとってみても、それを反映しやすい風土の制度は自然にではなく人工的に作った仕組みだと思います。だからマネーフォワードがメチャクチャうらやましいです。
セルジオ:どうなんでしょうね。わからないのですが、ジワジワだと思うんです。そういう環境がいきなりあったわけではないと思います。風土自体が変わっていくこともあるんですかね。文化や思想がよりワークしていくことで風土が変わっていく。そこに影響を受けている。そういうのもあるんじゃないかと僕は思うんです。さらにみんなが文化の思想の大切さに気づくことで、そこに投資をするとか、その環境が整っていくことはあるなと思います。
平野:あると思いますね。東京のインフラなんかもまさにそういう意味でどんどん変わっていく。
セルジオ:なるほど。
西村:そうですね。大手のクライアントさんとご一緒する時にすごく感じます。もともと組織体の中の文化や風土はあるのですが、新規事業をやる時に、あるものの中で組成しようとするとうまくいかないケースがすごく多いと思うんです。
これをフレームから始めるとやはりうまくいかないので、最初に中にいる人や立ち上げる人が土壌・チームをきちんと風土から作るというアプローチをする。それだけの熱量やそれを変えることの意義をきちんと持っていることがすごく大事だと思っていて、これが広がらないと大きい組織で違うものを生み出す構造はなかなか作れないと実感することは多いです。
平野:僕も西村さんの話を聞いて思い出したのですが、三菱重工業の社会インフラ事業のDX推進に向けたビジョン策定支援をやっていた時、まさに風土でいうなら常駐型でしたが、「部屋を1つ作ってください」と言ったんです。当時はコロナ禍前だったので品川に行っていて、まず1つプロジェクトルームを用意してくださいと言いました。
そこにステレオ音楽とネスレのコーヒーとホワイトボードを用意してほしくて「ホワイトボードの面積がプロジェクトの成功確率です」と言ったら用意してくれたんです。だけど、たぶん(向こうは)最初は「この人は何を言っているんだ」くらいに思っていたと思うんです。実際、コーヒーを飲みながら立ち話する空間でホワイトボードにサッと書いたりしていたら、途中から僕が注文した以上にホワイトボードが増えたんです。
(一同笑)
平野:そういうことが最初からインストールされていると、デザイナーとして活躍や立ち上げがしやすいんですよね。今のお話を、「あったな」と思いながら聞いていました。
西村:あまり意識はしないけど、前提になる部分は本当に重要だと思います。
曽根:いろいろなデザイン経営の成功例を聞く中で、不可侵な領域、別のアイランドの出島みたいなところをいかに作れるか、そこに観客をどれくらい集められるかが大事で、まさにそこに尽きると思います。
(次回へつづく)
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