2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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――パソコン、車、ゲーム機など、さまざまな製品の納期遅延の原因は、現在起こっている世界的な半導体不足であると言われています。そこで、半導体戦略を取りまとめている経済産業省の荻野さんにおうかがいをしたいのですが、世界規模で起こっている半導体不足の根本の原因は何になるのでしょうか?
荻野洋平氏(以下、荻野):なかなか難しくて、私たちもはっきりと定量的にわかっているわけでもなければ、定性的にもビシッと一言で言えない中で、きっかけはたぶんいくつかあると思っています。コロナ禍において一瞬需要が減退したタイミングと、逆に巣ごもり需要で膨らんだタイミング。その瞬間にズレが生じました。
半導体は、非常に工程が長いので1個を作るのにだいたい半年かかると言われているんですね。そういった観点から、需給バランスのズレが生じました。需給バランスが生じて、再度需要が高まった中、半導体が供給されないことによって、みなさんが確保する方向に動いたと思っています。
半導体のサプライサイドの声を聞いていると、半導体業界は今までシリコンサイクルと言われる、数年に1回ぜんぜん足りない時期と、逆に投資をしてそのまま一気に余る時期を繰り返してきた歴史があることがわかりました。サプライヤー側は、今この瞬間に相当大規模な投資をしていますが、一方で数年後に対して不安を抱えながらやっている部分もあると思っています。そこらへんは、小口で収支を見ていかなければいけないと思います。
今、半導体が足りないと言われていますが、サプライヤーサイドから見ると実は極めて高いレベルで半導体生産はずっと続いています。過去最高レベルで生産はしているのですが、それでも足りない状況になっていると言われています。
では実際に最終製品がそこまで増えているかというと実はそうではなくて、むしろ最終製品はそんなに増えていないのに、半導体が足りないと言われています。マクロでは足りていても、半導体は非常に多様な製品に使われているので、一部の製品で足りていないと、「足りない」と言われてしまう部分もあると思います。
荻野:原因はいろいろな経済学者の方が分析されていて、あまりはっきりとは言い切れないのですが、半導体工場はそもそも作れる地域が限られているんですね。技術的に極めて高いので、今日米欧・台湾・中国ぐらいと限られていて、生産できる企業も相当限られています。
また、投資額が極めて大規模です。今回も1兆円規模となっていますが、1つの工場を作るのに1兆円単位が必要なので、投資は相当決断のハードルが高いです。他方で、工場を1個作ると半導体が大量に作れてしまうという中で、半導体が不足をして投資をするタイミング。実際に投資をして3、4年後に工場が稼働するという中で、ズレが毎回発生しているのではないかなと思っています。
半導体が足りないと言われて、ユーザーからプレッシャーを受けて投資をして、工場が動き出した頃には、実はどこの工場も投資をして増えているので十分に供給が足りてしまうという状況が起きたのではないかなと思います。1度多重供給になると、サプライヤー側は次の投資に躊躇するので、そうするとしばらく投資が行えなくて、また半導体が足りない時期が出て、そこでまた一気に投資が行われる、ということがたぶん1つの要因だと思います。
――需要と供給のズレを生じさせないために、経済産業省から企業へ投資のタイミングをアドバイスされることはないのでしょうか?
荻野:もちろんマクロ単位でのトレンドは私たちもよく言っていますが、四半期ごととか、1年ごとに関しては、正直経産省よりやはり現場でビジネスをやっている企業の方が圧倒的に詳しいと思っています。そこの投資判断は尊重していて、私たちは引っ張っていく予定ではありますが、無理矢理投資をさせるのではなくて、民間企業の投資判断も尊重しながら、そこに一緒に寄り添っていこうとしています。
――今回の半導体不足において、車に関する報道を多く見かけました。車産業は日本を支える大きな産業だと思いますが、そこに打撃を受けていることについてどう思われていますか?
荻野:やはり日本において自動車産業は、今や1本しかない柱だと思っているので、そこに影響が生じているのは、本来であれば何とかしていかなければいけない部分であると思っています。一方でよくよく聞いてみると、実は半導体以外の部分で影響が起きている部分も多々あります。
それを「半導体のせい」と一言で済まされているのも、実はサプライヤー側からすると、納得がいかない部分があると思っています。ただ、最初のいくつかのきっかけで半導体の不足が影響しているのも事実だと思うので、今経産省でやろうとしているのは足元の工場の整備です。
1年間で設備投資できる部分の増強については相当後押しをして進めようとしています。ある意味半導体不足が発生してしまってからにはなっていますが、対策は打とうとしています。
――今起きている半導体不足に対して、経済産業省は今具体的にどんなアプローチをしているのでしょうか。
荻野:1つは設備投資増強です。各社が足りないと言っている設備投資を支援しています。2021年の補正予算で認めてもらったもので、一応補正予算が成立した翌日から公募を開始しました。2021年2月には施行を決定して、目下の設備投資をしています。
2023年の末までの1年間で設備投資される案件を支援してきたのですが、試算によると、私たちが支援している範囲だけでも国内生産の1割ぐらいを増やせる規模にはなっています。また、個別にお話をいただいたところは、情報収集をしながら適宜間をつなぐということをやっています。
――そういった施策をしていく中で、今起こっている半導体不足はいつ頃解消されるのでしょうか?
荻野:申し訳ありませんが、私たちも残念ながらはっきりと目処が見えているわけではありません。というのは、マクロで足りていないのか、それとも個別で足りていないのかで言うと、やはり個別の世界に入りつつあると思っています。そして、同じ品目がずっと足りていないというわけではなくて、ある時にはあるものが足りなくなり、ある時には実は半導体ではない別の製品が足りていなくなっています。
特に自動車関係だと、現状はむしろ半導体以外の不足が増えていると思いますが、そういった状況になっているということもあって、半導体が不足しているという状況をみなさんが大丈夫と言えるようになるのはちょっと見えないです。
――車に関して言えばサプライチェーンのところで他の部品のところにも影響があるので、一概に半導体不足が大元ではないということですね。
荻野:ですが、みなさんはそれを半導体と一言で言っているので。
(一同笑)
――なるほど。
荻野:圧倒的に半導体が足りていないように聞こえますが、よく聞くと実は今はそうじゃないというのがそうですね。半導体が一切足りているわけでもないのですが、他の製品が足りていないというのは、現にあります。「〇〇部品が足りない」と言われてもわからないわけで、半導体と言うとみんながわかりやすいというのもあるのかもしれません。
――次は、今起こっている半導体不足ではない部分をおうかがいします。経済産業省は、2021年6月に「半導体・デジタル産業戦略」をまとめていますが、背景には何があったのでしょうか。
荻野:「半導体・デジタル産業戦略」の公表は、世界的な環境変化における日本の半導体産業の立ち位置について相当な課題意識を持ったのがきっかけとなりました。
今後あらゆる産業でのデジタル化は不可避だと思っていますが、それを支えるのはデジタルインフラであり、そのもっとも根幹の部分が半導体だと思っています。
10年ぐらい前まで、半導体はどこかで作ってくれればいい、どこかで供給されればいいという雰囲気があったと思います。他方で、この数年で米中間の対立が相当激化してきました。これは単に貿易赤字・貿易黒字の関係で対立しているというより、安全保障に長けた技術を特定国に持たれてしまっている、特定国に握られてしまうという状況に、他国が大変な危機感を持ったという環境変化があったと思っています。
従って今の米中対立は、主に半導体を中心として起こっていますが、半導体は「どこで作られたものでもいい」というわけでもなくて、特に半導体の中でも重要な部分は、それぞれ自国で持っているということが、その国もしくは地域にとって安全保障に影響を与えるような大きな役割を持ち始めていると思っています。
――半導体は各国にとって安全保障に影響を与えるくらい大きな存在になっているのですね。その中で、日本の半導体産業は現状どうなっているのでしょうか。
荻野:半導体を作れる地域は限られていて、日本は限られた地域の中の1つです。かつ1980年代は世界ナンバー1でしたが、この30年ほどずっとシェアを落とし続けてしまっています。
一番シェアが高かったのは1988年だと思いますが、当時日本は世界の50パーセントのシェアを持っていました。ただ、最新の足元である2019年になるとシェアは10パーセントにまで落ちているんですね。日本の国内生産高や、出荷高が減ってきたわけではなくて、ほぼ横ばいで来たという意味で言うと、半導体の製造が世界的にすごく増えているがために、日本の存在感がどんどん薄れていったという状況になっています。
半導体戦略(経済産業省)
このままの状態でずっと続けていくと、日本にせっかくあった半導体産業がなくなってしまうのではないかという危機感があります。それは単に1つの産業がなくなる・衰退するという意味を超えて、日本の安全保障といった意味の中で重要なパーツが失われてしまうのではないかというところが課題認識でありました。
また、アフターコロナ。まさに今日のインタビューのように、オンラインが増えた中で、デジタル化に対応する半導体や、カーボンニュートラルの実行にはやはり半導体が非常に不可欠になります。
そういった問題意識もありますが、大きなところは、やはり世界的な環境変化と、その中での日本の立ち位置が凋落してきたという部分だと思います。
――そんな中、経済産業省が掲げている解決策はどういったものになるのでしょうか?
荻野:2021年6月段階で方針として決めたことは、半導体というのは産業としての位置付けというより、安全保障や私たちの生活にとっても不可欠なものであり、ある意味食料品やエネルギーと同じ意味合いで、いかに安定供給・安定調達するかという点において、同じぐらい力を入れるべきなのではないかということを打ち出しました。
また、それを実現するためには世界各国がやろうとしていることと引けを取らないような措置が必要になるということを打ち出しました。
世界はというと、アメリカは5兆円、EUが10兆円超と大規模なことをやるという噂もあります。少なくともアメリカやEUなど、こういった分野に産業リスクを取ってこなかった国がそこに舵を切りました。それらの国に引けを取らないようにしなければいけないと決めたのが2021年6月でした。そして、それを踏まえて11月に具体的に何をやっていくかを決めました。
半導体戦略(経済産業省)
――アメリカやEUも半導体施策に力を入れているとのことですが、今回政策を打ち出すにあたって参考にした国はあるのでしょうか?
荻野:やはりアメリカやEUは相当参考にしています。アメリカは5兆円という全体だけでなくて、例えば設備投資1件あたりに3,000億円とか、今までにないことをやっていると発表していたので、そこは参考にしています。
さらに言うと、アメリカ政府やEU政府とは常に意見交換をしながら、相互補完的でありたいと思っています。そういった有志国の間では同じことを重複してやってもしょうがないので、お互いに足りない部分を補い合うという観点から日本政府としてこういうことをやろうとしています。
アメリカ政府はどうしようとしているのか、日本政府のやることについてはどう思うのかといった意見交換は常にしていて、お互いに最大限の効果が出るようにやっています。
――なるほど。世界各国と引けを取らない措置として、具体的にどのような解決策を掲げたのでしょうか。
荻野:決めたことの1つは足元の生産体制の強化です。比較的短期的に、すでにある国内の工場の生産能力を増やしたり、報道されているような海外のファウンドリーを国内に移したりすることで、生産能力の確保する・維持するという部分がステップ1です。
――「生産能力の確保する・維持する」のステップ1以降はどうなるのでしょうか。
荻野:ステップ2、ステップ3と続きます。ステップ2は2020年代中盤から後半ぐらいに実現するものです。ステップ3は、2030年以降なので、正直どういう世界になるのかは見えませんが、ゲームチェンジになり得るものにしっかりと支援をしていきます。
いずれのステップも、国内の企業、つまり日本の資本だけで進めていくのはこれまでの経験からもはや無理だと思っていますし、それが効率的だとも思っていません。したがって、海外の力を最低限使います。その時に意識しているのは、日本にとってどういう刺激になるかということです。国内の中に、どのように産業などが来るかをイメージしながら進めています。
――いずれのステップも日本の資本だけでは難しいと考えられるのはなぜでしょうか?
荻野:日本は1990年代から2000年の段階で、最先端の技術を実現していくというより、量産で比較的数が出るという領域に留まっています。
それ以降の技術を、少なくとも国内では誰もやったことがないので、それを今から自分たちだけで技術開発をして、20年間分を一気に追いつくのは時間的にほぼ不可能だと思っています。だとすれば、今回海外のファウンドリーを誘致するという話があるように、今この瞬間に最先端の技術を持っているところとしっかりと組み、そこから学べるところは学ばないと、20年分の遅れはいつまでも取り戻せないと思いますし、半導体という物資を考えた時には、世界市場を常に見なければいけないと思います。
ユーザーは当然日本企業だけではないので、そういったところに使ってもらおうとすれば、そこへのルートやマーケティング力を持つ企業と組むとか、もしくはすでにそこに導入している企業とのコラボレーションなどを当然考えていかないと、なかなか浸透するのは難しいんじゃないかと思っています。
――過去も経産省はいろいろと半導体の施策に取り組まれていたと思いますが、実を結ぶというところはなかなか難しかったと記憶をしています。新たな施策は今までのアプローチとはなにか違うのでしょうか?
荻野:そうですね。やろうとしていることはいくつか掲げていますが、例えば昔の施策は、基本的に日本国内の日本企業や、日本の大学や、日本の研究と組む体制でやってきました。少なくとも経済産業省は、そういった視点ではなくてグローバルな連携はむしろマストだと思っています。
また、設備投資という大規模な中で今までの日本政府の経産省の支援策が十分な規模だったかというと、たぶんそうではなかった。そういう意味でいうと、他方に匹敵する規模に舵を切っているというのは今までと違うアプローチの仕方です。当然こういったことに限らず、これまでの反省を踏まえながら打てる施策を打っていこうとしています。
(次回へつづく)
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