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Gunosy,DMM,LayerXでCTOを歴任!凄いエンジニア登場|LayerX CTO松本勇気(全5記事)

全社員に公開したCTOの日報、社内情報の流れの可視化… DMMのKPIを2桁上げた松本勇気氏の“文化作り”

つよつよチャンネルは、bravesoft CEO&CTOの菅澤英司氏がエンジニア的に「おもしろい話」や「ためになる話」を届けるチャンネルです。今回のゲストは株式会社LayerX代表取締役CTOの松本氏。DMMでの大企業改革で実施したことと、CTO・CEOの役割について語ります。前回はこちらから。

怒涛のGunosyから、DMMでの大企業改革へ

菅澤英司氏(以下、菅澤):つよつよエンジニア社長の菅澤です。前回引き続き、株式会社Layer X CTOの松本勇気さんに来ていただいてます。よろしくお願いします。

松本勇気氏(以下、松本):よろしくお願いしまーす。

菅澤:前回は怒涛のGunosyストーリーがあって、結果的に(Gunosyには)5年半ぐらいいたという。

松本:そうですね。

菅澤:「そろそろ次行ってみようかな」みたいな。当時はどんな感じだったんですか。

松本:Gunosyの次にまた大きなことやってみたいなと思っていたところで、ブロックチェーンやっていて。金融系の知識がけっこう増えてきたから「金融系をやってみたいな」とか、興味が広がっていって。

ゼロからスタートするとしたら、今は何を考えなきゃいけないかなと考え始めて。日本は10年20年経つと、少子高齢化がドンドン進む。生産性がドンドン落ちていく、生産性を上げないと立ち直れない国になってる中で、何ができるんだろうと考え始めて。

ソフトウェア使って経営することに関しては、Gunosyがすごく体系化されてきていたので、それを使って、いろいろな会社の改善などができそうだと。一案としては、シンガポールに友人がいるので、ファンドをやろうかと話をしていたり、「大企業改革とかやれないかな」みたいな話を自分の中で考えていたところで、舞い込んできたのがDMMの話で。

菅澤:大企業改革をやりたいと思ったのは、どういう(理由ですか)。

松本:日本の生産性上げるにあたっては、やはり大きい組織が変わらなきゃいけないなと。少なくとも、企業が変わっていかなきゃいけない。企業の中にたまってるお金だけで相当の規模があって、これがもっとうまく使われるだけで、この国はもっと良くなるはずだとシンプルに思うんです。

大企業改革は重要なスキルになってくるし、5年10年経つにつれて、ソフトウェアと企業変革みたいなところは、か市場が求めるものになっていくと思っていたので。その走りとして1個やってみようかなというものがDMMだったという。

菅澤:誘っていただいた?

松本:僕の前のDMMのCTOから「交代してほしい」と話がきて。

菅澤:いきなりCTOとしてきてというかたち(笑)?

松本:そうです。いきなりCTOとしてきて。もう就任直後にCTOでした。

菅澤:ずーっとCTOじゃないですか。

松本:そうです。

菅澤:誘うほうもよくって感じもありますよね。

松本:そうですねー。おもしろそうだったのと、事前にいろいろな下調べをして、「この会社だったらこういうふうに変えられそうだ」というのを自分なりにまとめて、「やります」という話を(しました)。

菅澤:当時は何歳ぐらいですか。

松本:29歳かな?

当時のDMMが抱えていた“典型的な”課題

菅澤:DMM自体は、社員は何人ぐらいですか? 

松本:当時はグループ全体で三千数百人。

菅澤:ビビんなかったんですか。

松本:むしろおもしろい問題だなと。

菅澤:例えばどういう課題というか、どういう問題があったんですか。

松本:すごく典型的な、よくある「ソフトウェアを使おうとしているけど悩んでいる会社」だったんですよね。社内受発注型の組織になってしまっていたというか。

もともとDMMって、開発部隊と事業部隊が別の会社になっていたんですよ。いわゆる受発注型になることで、プロダクト改善を考えてやって、サイクルも遅くなってくる。あと、プロダクト品質とプロダクトのあり方とがそぐわないものになっていたりとか。

エンジニアも積極的に参加して、どうプロダクトがあるべきかに向き合えていなかったし、そうすると、結果としてプロダクトの中にたまってるデータと、それを使っての数値分析が経営とちゃんと結びついていなかったり。

このあたりの課題は、一つひとつ解きほぐして解決しなければいけないなとなった。

菅澤:そういうのをやってほしいという話でもあった?

松本:いや、オーダーは「テックカンパニーにしてほしい」という(ものでした)。

菅澤:(笑)。一言でいえば。

松本:テックカンパニー。その中のお悩みをドンドン吸い上げて、全力でヒアリングしまくって整理していった結果、「これならこういうふうな戦略で、たぶん組織が変えられるんじゃないかな」という仮説ができて。それで入社して、さらにもう少しヒアリングを重ねて、改革を始めた。

菅澤:入社前にいろいろヒアリングしていけそうだなと思えたのは、やはりフェーズはあったってわけですね。

松本:そうです。

組織のOSを作り替えるために実施したこと

菅澤:入ってみたらどうですか? 小さい会社と大きい会社って、動きがぜんぜん違うと思うんですよ。

松本:具体的な1個の事業に関わるよりも、もう少し広いところ。組織のOSを作り替える仕事なので、考え方、戦略とかをまず中心に考えていって。1つの村作りみたいなイメージをしていました。

3,000人って1個の村じゃないですか。僕が村長さんだとした時に、「村長さんやるべきことなんなんだろう」みたいなことをずっと考えて仕事をしていて「改革・変革の先、どういうことがゴールなのかをまず示そう」というところからスタートして、まず改革のパッケージを作ったんです。

DMM TECH VISIONという資料を使って、「僕らはこういう組織になっていこうとしてるんだ」「この中でこういう振る舞いを大事にするんだ」と。それに対して、そのバリューに紐づいた4本柱の戦略を作った。

最終的に、それを見ることで社員一人ひとりがどう意思決定すれば正しいのかを判断できるもの。文化を変えることをやらないと、いつまでたっても変わらないので。僕と一緒に仕事する範囲だけしか変わらないのなら、組織変革としては失敗。全体の振る舞い方が変わるように、みんなの考え方をまず刷新していく。

菅澤:なるほど。

松本:ビジョン、バリュー、経営戦略を作って、その中で戦略に紐づいた小さい成功を1個作ろうということで、具体的なプロジェクトにやっと入っていく、みたいな。

菅澤:統括してマネジメントするのはなかなか難しそうですよね。

松本:透明性の確保は最初の時期にすごく大事にしていて。みんなが注目しているうちに、まず情報の流れを作り替えるんですよ。社内を分析して、誰が誰のいうことを聞くのかとか、この人はこの人と仲がいいとか。大まかなハブな人材は誰なのかを自分の頭の中に入れていって。

その人たちにちゃんと情報を伝えるような仕組みを作っていったり、(Slackで)times CTOというチャンネルを開設して、僕が毎日日報を上げていたんですよ。僕のカレンダーに載ってる、みんなにしゃべれるすべての予定について、今日の反省として日報を書いたんです。

菅澤:それは全社員に向けて?

松本:全社員に向けて。「僕は今日こういうミーティングに出て、こういう意思決定をしました」ということを全部書いて公開する。みんなに出してあげることで、この人のほうを見ればとりあえず情報はある。ついていくための根拠がここにある。だから、全員の目がそこに集まるようになったんですよね。僕の意思決定基準が、全部そこに載るわけですよ。

こういうパッケージがあるんだけど、まあなんかフワッとしてる。でも、CTOの振る舞い方を見ていると「ああ、こういうことなんだ」みたいな。「アジリティってこういうことなんだ」みたいな。「サイエンティフィックってこういうことなんだ」みたいなことをそこから学ぶような。

その中で1個の小さいプロジェクト、オンプレからクラウドに刷新することを戦略の中にあったのでまずやりました。一緒に二人三脚やってみて、2回ぐらい失敗したんですよね。

「ロールバックした、失敗したけれど、これはこういうことでいいチャレンジなんだよ。3回目にはこれをやれたよね。こうやってクラウドに持ってくことで、僕らは改善サイクルをこれだけ早くできた」とか、丁寧に説明してあげるんです。

こうすることで、だんだん自分たちの考え方の変化につながっていく。みんな、自分で意思決定できるようになる。指示を受けて開発するのではなく、自分からどうあるべきか考えられるチームになっていく。

菅澤:「できたー」みたいになるまでに、どれぐらいかかりました?

松本:2年ぐらいたって、けっこうそれができる人が増えてきて。

菅澤:2年間、毎日日報も書いてるし。経営や事業側とのコミュニケーションはどうですか。

松本:「テックよくわからん」という経営陣が多かったんですけど、パフォーマンスが上がるとか、いろいろ感じてくれる部分もあったので、手伝っていただけました。

泥臭いコミュニケーションを僕がすごくやっていて。飲みニケーションもやるし。最初の頃は毎週飲みに行ってたり。会長がバーにいるから、必ずそこ行って飲むこともやっていたし。

菅澤:(笑)。

松本:各経営陣のお悩みだけはちゃんと聞いて、それに対してできることはいろいろ解決してあげる。

菅澤:直接事業作りとかはしたわけじゃなくて?

松本:事業作りそのものよりも、今ある事業の戦略改善みたいなところですよね。戦略の整理を一緒にやるっていう。

菅澤:なるほど。「これは自分でやりたい」みたいなことは特になかった?

松本:自分でやりたいことあったんですけどね。改善することのほうがレバレッジが大きく効くので。売上が2,300〜2,400億円規模の会社で、既存事業にレバレッジをかけるほうがまずは大事かなと思ったので、いろいろサポートしていった。

ビジネスモデルを整理して、開発のパイプラインがあるから、「ここでこういう数字を見とかないとまずいよね」「こういう条件はクリアしなきゃいけないよね」ということを整理して。その条件を整理することで、何をすべきかが整理されて、それで改善できるので。

それがいろいろなところでけっこう効果が出たので。スタート時からとあるKPIが2桁上がった。元が低すぎたんですけどね。

大きい会社でのCTOの役割、小さい会社でのCTOの役割

菅澤:(笑)。大きい会社と小さい会社のCTOをやったりして、CTOとしての役割とか、上げるべきパフォーマンスがやはりちょっと違うと思うんですけど、どんな違いですか。

松本:小さい時は、コード書いて貢献してなんぼぐらいには思うんですけど、根本はあんまり変わってないと思っていて。すぐにやらなきゃいけないことというのは、組織とプロダクト、ソフトウェアアーキテクチャを一体として設計すること。設計するというのは、たぶん人事的なことも入ってくるし、チーム分けの考え方もある。

そのチームが一番うまく動けるようなソフトウェアアーキテクチャや、どういうふうにマイクロサービスして分けていけばいいのかみたいな、設計みたいなものを、表裏一体でやっていく。会社のアーキテクトみたいな。(その)立ち位置がCTOの役割の大きなものだと思っていて。

それと合わせて、新しい技術が登場した時に、自分の事業が陳腐化したらCTOの責任だと思っているので、より先の技術に目を向けてあげること。この2点をすごく意識してやっています。いいプロダクトとしての会社組織を作るためには、いい人を呼ばなきゃいけないからブランディングをがんばらなきゃいけない。広報もがんばらなきゃいけない、とか。

経営者としては、ガバナンスを適切に保たなきゃいけない。株主にちゃんと向き合わなきゃいけないから、経営として健全であるためには何が必要か。

要は、僕らは何をコミットするのかをちゃんと整理することも必要だし、「事業計画はこういうふうです」「1年後にはこうなると思います」「この根拠はこういうことで、ある程度の角度でこの計画は達成できるんです」ということをちゃんと考え抜かなきゃいけない。いろいろなことをやる。これは(会社が)小さかろうが大きかろうが考えなきゃいけないこと。ただ比率がちょっと変わるだけ。

CEOにはわけのわからないことを言ってほしい

菅澤:経営、組織ってシステムだし、事業もシステムなので、そのシステムをいじって変えていくということは、経営そのものも変えていくことになっていて。CTOがシステムも変えていくけど、CEOはまた違う仕事があるんだという。

松本:僕は、CEOには最終的にはわけわかんないことを言ってほしいんですよね。技術のありようとかも関係なく、何がしたいかが一番根幹にあるべきだと思っていて。CEOの考え方、ミッション、ビジョンというのは、迷った時に、強烈に決める原動力なんですよ。

強烈に自信を持って、周りを振り回してほしい。具体的に「これを達成する」となったら、組織ってすごく陳腐化するんですよ。「達成したらどうするの?」みたいな。「解散するの?」みたいな。

「解散するわけにはいかないよね」「株主いるよね」みたいな。それはできないので、経営者として僕らが大事にしなきゃいけないのは、その先も何をやり続けるのかという熱い思いだと思うので。

菅澤:CEOに求めたいことは、わけわかんないことを言う(こと)。

松本:そうそう。(わけわかんない)ミッション・ビジョン持ってるという。

菅澤:腹も座ってるような。CEOに求めたいこと、他にどうですか。

松本:それがもう本当に一番なんですよ。そこに対してやはり具体的な戦略を作れる必要があるので、プライオリティ設定ができること。「今はこれをやらなきゃいけない」「これをやらなきゃいけない」とか。「これ無駄だよね」とかをスパッと切れる。

菅澤:CEOが?

松本:CEOが。僕らもそれに従って、それができるようなプロダクトととして会社を、作っていく。外側の仕事をCOOがやったり、お金と組織のガバナンスみたいなところはCFOがいたりという感じで分担されていくのかな。

菅澤:CEOがズバッと「これやってくれ」と言っても、誰にでもついてくわけ(ではない)じゃないですか。こういう人についていきたいとか(ありますか)。

松本:ストーリーとして語れる人じゃないですか。

菅澤:魅力的なストーリーが語れる。

松本:理路整然としたストーリーをちゃんと語れるかどうかはすごく大事なので。僕らが熱狂できる未来を見せてくれること。僕たちがデジタル化をしていく過程で、「こういう日本になっていきたいんだ」「こういうことがおもしろいと思うんだ」ということを語ってくれるようなことが大事で。

今の話は福島(LayerX CEO)。福島はやはりそのあたりのセンスがズバ抜けてると思っているので。みんなが「なるほど納得」という。

菅澤:もちろん論理的でもあるんだけど、ぶっ飛んでもいるという。

松本:圧倒的に論理的だし、論理的にすごく先のことをやろうとする。それに従って今がちゃんとあるという、その整合性も取れているということで、未来からやはり逆算しなければいけない。そこがちゃんとなされているところが、おもしろいところだと思っていて。

菅澤:メチャクチャいいタッグですね。

松本:リーダーを支えるのが楽しい、みたいなモチベーションもあって。

菅澤:なーるほど。これは成功間違いなし(笑)。

松本:いやいやいや(笑)。成功よりは、その先にどうなるかだと思っていて。会社としての成功は簡単ではないとはいえ、そこにまず1個ハードルを設けて、「僕らは普通の会社じゃないんだ」と。

菅澤:10パーセント成長とか、黒字がどうたらじゃなくて。

松本:もっと先を見据えて、大きなことを成していこうよと。日本をデジタル化するんやと。みんなの未来が明るくなるようにがんばりたいですね。

菅澤:我々もがんばりますので。

松本:がんばりましょう。

菅澤:次回はエンジニアトークというか、いいエンジニアはどういうエンジニアかなどの話を最後にしたいなと思います。いったん締めたいと思います。ありがとうございました。

松本:ありがとうございました。

(次回に続く)

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