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人気ブログサービス「note」成長の秘訣とは?|note CXO深津貴之(全4記事)

「いざとなったらフルセットで作れるのが僕の強み」 スマホ“原始時代”を経験した深津氏が目指すキャリア

つよつよチャンネルは、bravesoft CEO&CTOの菅澤英司氏がエンジニア的に「おもしろい話」や「ためになる話」を届けるチャンネルです。今回のゲストはnote株式会社でCXOを務める深津氏。独立後からTHE GUILD設立までについてと、これからのキャリアについて語ります。前回はこちらから。

独立後、iPhoneのアプリで生計が立てられるように

池澤あやか氏(以下、池澤):本日のゲストは株式会社THE GUILD代表、株式会社noteCXOの深津貴之さんです。

菅澤英司氏(以下、菅澤):お願いしまーす。

深津貴之氏(以下、深津):よろしくお願いします。

池澤:よろしくお願いします。

菅澤:独立されて、iPhoneが出た。当時はiPhoneを、どういうふうに見ていましたか?

深津:おもしろかったですね。新しい可能性の塊みたいな感じには見えましたが、周辺のエンジニア、デザイナーは、プロダクトとしてiPhoneに興味はあるけど、開発とかアプリ出すのは様子見みたいな感じでした。

池澤:当時は未完成感が強かったような気がします。

菅澤:そうですね。リリースされて3年ぐらいは、持ってる人も少ないし。

池澤:アプリはメッチャ落ちるし。

深津:「新しいおもちゃ出てきたぞ」ぐらいで。ここで何か新しいことをやるかはか誰も興味を持たず、「様子見です」みたいな時代でした。

池澤:初期の段階は、Flashが動かなかった? 

深津:Flashは動かなかったです。

菅澤:それまではけっこうFlashをやられてたんですもんね。

池澤:前職の完全に敵じゃないですか。

深津:むしろ「Flash動かないから新しい言語を勉強するか」みたいな感じで、勉強していました。

菅澤:当時ならObjective-Cですか。学ぶのは簡単なものですか? 。

深津:Objective-Cという言語自体は、けっこうややこしくて気持ち悪い言語ではありましたが、書いて書けないことないという感じで、1ヶ月ぐらい勉強して、アプリを(作りました)。

菅澤:独立してiPhoneが出たって感じですか? それともiPhoneが出て(その後に独立した)? 

深津:iPhoneが出て、アプリを作って、何年かTHAで働いたんので「そろそろ独立します」とリリースする前に報告して、その後にiPhoneアプリが出て当たったという順番です。

菅澤:独立してちょうどiPhoneもあったし、アプリもおもしろいし。怖くないですか、独立するって。

深津:いやあ、あんまり深く考えていなかったですね。

池澤:THA自体に独立文化があるという話を(聞きました)。

深津:ありました。深津:最初に入った時も、飲み会の時も、(中村)勇吾さんから「THAに何年も居続けるなよ」みたいなことを毎回言われるっていうことはあったので。なんとなく、THAの社員は3年働いたら独立というカルチャーがあるのかなと。

菅澤:すごいですね。はっきりしてます。ある種の生計というか、売上を立てるのは、そのアプリ1本だと?

深津:当初の予定には何も入っていませんでしたが、出たアプリがたまたまバカ売れしたので。

菅澤:1発目ですごいですね。どれぐらい使われたんですか。

深津:最初のアプリはたぶん20万本ぐらい売れて。

池澤:へえ、すごい。

菅澤:そんなにまだiPhoneユーザーがいない時に。

深津:1年間、iPhoneのトップランキング2位とかにずーっといるような。

菅澤:どんなアプリだったんですか。

深津:「トイカメラ」っていう、カメラのアプリケーションですね。

池澤:ん? 使っていたかもしれない。

深津:当時は、AppStoreの上から2番目に、1年ぐらいずーっといたアプリだったので。その後に連写型のカメラアプリを作って、その後にミニチュア撮影のカメラアプリを作って。この2つもそれなりに当たって。

ミニチュア撮影のアプリとかは、1年ぐらいiOSストアのトップランキングにずーっと載っていて。なので、2009年、2010年、2011年ぐらいのトップランキングにずーっと(僕の)アプリが入っていて。なんか知らない間に生計が立つようになったという。

菅澤:(笑)。いきなり簡単でしたね。

池澤:意識せずとも生計が立つ。

深津:正規のアプリをちゃんと作って、アップデートして回していけば、なんとか生きていけるふうに(なりました)。

企業の参入に伴い、THE GUILDに移行

菅澤:その後にTHE GUILDを作ったのは?

深津:人生イージーモードも長く続かないという感じで。iPhoneのシェアが大きくなってプレイヤーが増えてくると、「ここはビジネスになるぞ」ということで、2012年、2013年からスタートアップがボンボコ出てくる時代になると、ソーシャルゲームが台頭してきて。DeNA VS GREEみたいな。

池澤:あー、あったなぁ。

深津:iOSに広告費を何億も積んで怪獣大戦争みたいな世界が訪れるから。

菅澤:(笑)。いきなり大人たちが押し寄せてきた、みたいな。

深津:そうそう。そうすると、口コミだけで1年間ずーっとiOSのトップみたいなものは、もはや夢の時代で。広告費を何億積むかみたいな勝負になってくると、もう僕とかは守備範囲外になってくる。「上のほうでフリーザと悟空がけんかしてるぞぉ」みたいな気分で、新しい生計の道を立てよう、ちゃんともう1回仕事しようかなという気分になって、THE GUILDという組織を再結成していく。

これからも分野を絞らず取り組んでいく

菅澤:なるほど。これからの話もちょっと聞きたいんですが、今はnoteにけっこう時間を使われていますが、これからの新しい展開とか、「こういうことをやっていく」みたいなことはどうですか。

深津:僕個人としては、数年はnoteとお付き合いをしつつ、プライベートのほうは逆に新しいことやるための充電に使うみたいな。次の新しいことを探していくタイミングではあるかなと考えています。

菅澤:なるほど。iPhoneは今(登場してから)10年たって一段落というか、いろいろなことが1周した感じはあると思うんですが、これからはどういう分野に?

深津:そういう意味だと、僕はやったことないものに定期的にリセットして移動するタイプなので、VRなのか、ロボティクスなのか、AIなのか。そういうようなところに移動してもおもしろいかなとは思います。

菅澤:エンジニアリング、デザインやビジネスなど、いろいろと範囲があると思いますが、どういったところに尖っていくというか。

深津:僕は混ぜてやることで、他の人ができない角度からの手を打つことが多いので、1個に絞るかというと、そこは絞らないかなとは思います。

菅澤:いろいろなことをやっていく。一番ポイントになるのが、いろいろな範囲を押さえて、そのサービスやプロダクトが本当に使われるのか、使いやすいのかを押さえることだと思うんですけど。そこができてる人が、なかなか少ないかなと。

深津:そうですね。キャリア的に僕の最大の長所は、いざとなったらフルセットで自分で全部作れるという、テクニカルあるいはデザイン上の裏づけみたいなものがあるので。わりと当たりか外れかの肌感覚の検証を、初期の段階で1人で完結できるっていうのが強みだとは思うので。

小さいプロトタイプやコンセプトモデル、おもしろいものをポコポコ作って、当たりそうなの見つけたらば、それをBiz周りの人や、エンジニアの人、デザイナーの人と組んでやるみたいな。そういったことになるんじゃないかなと思います。

専業だとゼロから自分だけで作り上げるのは難しい

菅澤:どうしたら深津さん(みたい)になれるんですかね。

深津:たまたま僕の場合は何も無い時代みたいな、原始時代を過ごしてきたっていうのはあるので。

菅澤:(笑)。生まれた時代が大事。

深津:そうですね。原始時代・無人島を経験するみたいなことはわりと重要かなとは。

菅澤:エンジニアであっても、本当にコーディングしかしない。「これを作って」というものを作っているだけだと、自分がいざゼロから(何かを)立ち上げて、当たるものにしようとすることは難しいですね。

深津:そうですね。それは職業上は価値があることだし、エキスパータイズとしてすごく尊敬できることではありますが、そのエキスパータイズが即座にサービスやビジネスにつながるかというと。専業だと、そこの部分にある程度の課題が出てくるかなと思います。

菅澤:そもそもかたちをどうするかというデザイン、デザイナーもいますし、ソフトウェアの世界でもソフトウェアの設計をデザインと呼んだり。どう作るかということを、エンジニアが考えるべきか、デザイナーが考えるべきかいつもわからなくなるんですが、どう思いますか?

深津:厳密に考えると、正しい意味でのデザインというのは、意匠の話というよりは構造化だったり設計だったり仕組み化というニュアンスを含むものなので、デザイナーというのはエンジニアの1職種であるという構造だと思います。

菅澤:なるほど。ただ実際エンジニアがUI作ると、すごく地味みたいな(笑)。

池澤:すぐBootstrapを使う、みたいな(笑)。

深津:単純にそれは、デザインの言葉をエンジニアリングとしてやっている教育機関やリソースが日本にないという話だけの話であって、僕個人の肌感覚で言うなら、デザイナーにエンジニアリング教えるよりも、エンジニアにデザイン教えるほうがぜんぜん楽だし、いいデザイナーが生まれやすいかなとは思います。

池澤:それこそ、THE GUILDのメンバーって、デザインもできるしエンジニアリングもできるメンバーが多いですよね。

深津:ハイブリッドな人が多いですね。

菅澤:日本の美術の授業で、僕も「あ、美術苦手なんだ」と思っちゃったので、そのあたりがけっこう悪いのかもしれないですね。

深津:グラフィックデザインや、フロントの意匠造形を担当するデザインとしては非常に重要なスキルのパートですが、極論、構造化とか仕組み化とか、世界をどうモデル化して整理するかという部分は、別に美術の素養がなくてもできることではあるので。エンジニアリングの一環として、そういうことをやってしまうほうがいいということはある。

池澤:私もTHAからTHE GUILDに参加しているメンバーの下で働いてたことあるんですが、最初に構造化して、完全に作りきっちゃってから、気持ちよさを追求するみたいな。ちょっと微調整をするみたいな作り方をしていて、なるほどって。

菅澤:独特なんだ。

池澤:最後は体感、みたいな。

菅澤:ぜひ深津さんには学校を作ってほしいですね。

深津:教育はおもしろそうですね。

菅澤:時間がきてしまったので、このあたりで終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

深津:ありがとうございます。

興味があってやったことも、後にはつながる

池澤:ありがとうございました。というわけで、本日のゲストは株式会社THE GUILD代表、株式会社noteCXOの深津貴之さんでした。

菅澤:今回もあっという間に過ぎてしまいましたが、どうでしたか。

池澤:おもしろかったですね。UXデザインとかUIデザインとかを深津さんがされていることはもちろん知ってたんですが、思想の根本がどこからきているのかみたいなお話をうかがえて。なるほど、と思いました。

菅澤:深かったですね。経歴がすごくおもしろくて、突拍子もないようなんだけど、いつも興味で動いている。興味で動いたことが、後からかたちになるというか。

池澤:定期的にリセットしてるのはおもしろい。

菅澤:リセットして、でもそれがすべてつながって。iPhoneにもつながって、今にもつながっているというところで。産業が成熟してくると、やはりみんな職業にデザイナー、エンジニア、フロントエンジニアとか名前をつけて、そこの範囲に収まっちゃう人が多いんですけど、興味があったらなんでもやっちゃうってことで、

それは全部後につながっていくんだということが、非常に学びになったかなと思います。今日も勉強になりましたね。ということで、終わりにしたいと思います。

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