2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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池澤あやか氏(以下、池澤):本日のゲストは、株式会社THE GUILD代表、note株式会社CXOの深津貴之さんです。どうぞよろしくお願いします。
菅澤英司氏(以下、菅澤):よろしくお願いします。
深津貴之氏(以下、深津):よろしくお願いします。
菅澤:まず「note」の話ですが、どれぐらいのユーザーが使っているのですか?
深津:そうですね、パブリックにリリースを出しているものだと、MAUで6,600万ユーザーということになっています。
菅澤:おお(笑)。
池澤:すごい!
菅澤:MAUは「月間で使った人」ということですよね。
深津:はい。
菅澤:6,000万人。
池澤:そんな大きなサービスになると思わなかった(笑)。
菅澤:あ、池澤さんも最初から知っていたんですね。
池澤:そうなんです。私、このサービスがリリースされた直後の紹介ムービーに、なぜか出てるんです。
菅澤:最初のユーザーぐらいの?
池澤:けっこう早めにアカウントはあったと思います。昔のブログは全部消しちゃいましたが。
菅澤:消しちゃった(笑)。
深津:そうですよね。5、6年前くらいに。
菅澤:へぇ。(noteの)最初の時から、深津さんも関っていたとことですか?
深津:僕はその時、note社の昔の名前であるピースオブケイクが出していた、「cakes」というサービスに外部でちょびっとだけ僕と僕の仲間たちが関わっていました。
菅澤:cakesというのは、noteとはまた違うサービス?
深津:そうですね。cakesはブログというよりは、雑誌・メディアのオンライン版です。
菅澤:そうですよね。コンテンツにちょっと課金できたりとかするサービス。そこからnoteに変わっていったんですか?
深津:変わっていったというよりは、2つがそれぞれ別のサービスとして走っています。
菅澤:別々であると。noteが出てきて、そこのCXOに就任されたと?
深津:そうです。僕は2年半ぐらい前にちょうど参加をしました。
菅澤:noteの中ではどういった担当というか、CXOというのはどういう(役割ですか)?
深津:正式にはExperienceですが、比較的なんでも入る、フリーワードのXみたいな感じで(笑)。
ユーザー体験を設計する人という職位になるので、ユーザーと関わるところを、全体的に薄く広く関わっています。デザインもそうだし、マーケティングもそうだし。
菅澤:池澤さんはnoteをふだんから使っているとのことですが、noteの特徴というか、なぜあんなに使われるのかという(のはありますか)?
池澤:ピースオブケイクって、もともと「いかに文筆量でマネタイジングしていくか」みたいなところがテーマにあったような気がしていました。そういった、ブログメディアの走りみたいなところはあるかなと思います。課金ができるような。
菅澤:課金ができるところは大きいですよね。なんとなくサービスとしてすごくシンプルな感じというか、「自分でも簡単にできるんじゃないか」と思えるような印象を受けるんですが、そういう設計とかって(意識されていますか)?
深津:そうですね。「人にやりやすくする・始めやすくする」みたいなところも注意はしています。ただ、そこはあくまで副次的なところかなと考えていて。
やはりnoteが目指す最大の価値や目標は、たぶん僕たちはほかの会社よりカルチャードリブン、ミッションドリブンな会社で、会社のミッションとして「だれもが創作を始め、続けられるようにする」というのを標榜にしています。
単純にPVを上げるとか、単純にバズらせるとか、経営の売上を最大化するというのはあくまで副次的なもので、「いかに荒れないカルチャー、ポジティブなカルチャーで、人と人が自分の意見やアイデアを出しあって、もっとおもいしろいことができるようになるだろうか?」みたいな。
荒れるインターネットと違う方向を目指したコミュニティを作っているというのは、1個大きな特色かなと。
池澤:確かに、ブログってけっこう炎上しやすい側面があると思いますが、noteって炎上とは縁遠いような印象がありますね。
菅澤:「noteだからちょっとブログ始めてみようかな」という人も多そうですよね。
深津:最近はそういう方が増えています。
池澤:どこを機に増え始めたんですか。
深津:数字的に一気に伸び始めてきたのは、2018年1月、2月ぐらいだと思います。
菅澤:転機みたいものはあったんですか?
深津:転機といえば、(この時は)僕がお手伝い始めてたぶん3ヶ月、4ヶ月ぐらい経った時だと思うんですけれど……。
菅澤:いきなり結果が出た(笑)。
深津:もともとnoteというサービス自体、いろいろとよいアセットというか、いいカルチャーだったり機能だったり、いいお客さんだったりというのが揃っていたんです。
それと数字やユーザーの行動をちゃんと組み合わせるのが仕事なので、すてきな感じにあったパズルのピースを、うまくみんなの力で協力して、組み合わせていって成果が出始めたかな、みたいな頃。
菅澤:例えばどういうことをやったらよくなりましたか?
深津:一番シンプルな話としては、いい記事があったらいい記事がちゃんとフィーチャーされてバズるようになるとか、書いた記事に対して、ちゃんと書いたことの実感がわかるようになるとか。そういうことをみんなで一緒に1個1個こまめに洗い出して、整理をしていく。
菅澤:なるほど。
池澤:すごい。意外と地道というか。
深津:地道ですよ。巨匠がきて大リニューアル・大解決とか、そういうのではないです。ちゃんと基盤はあって、機械があるので、歯車の大きさをちょっと変えて油を差してみたいな。そういうことをみんなでひたすらやっていく感じです。
菅澤:深津さんはデザイナーという雰囲気もありますが、デザインというのが広いというか、記事の上がり方の1つもデザインというか。
深津:そうですね。そういう意味だと、僕はデザイナーの中では造形や具象的なデザイナーというよりは、わりと抽象的なほうのデザインを多めにやるタイプかなとは思います。
菅澤:それは自然とそうなっていったんですか?
深津:もともとはガリガリ自分でコードを書いてたりとかもしましたが、やはり最初にデザインの教育を受けた・教わった時に、「デザインの根源はコンセプト設計であって、そのコンセプトをどう具象化するかという話だ」みたいに教わっていた感じだったので、比較的コンセプトに寄りがちなのかなとは思います。
菅澤:そういうコンセプトのところの勉強もして、プログラミングもしたりする?
深津:プログラミングはもともとやっていました。
菅澤:相当多才ですよね、それ(笑)。
池澤:確かに(笑)。
菅澤:プログラミングは自然と覚えたんですか?
深津:プログラミングはけっこう子どもの頃、たぶん小学校3年生、4年生ぐらいから独学でやりだしたと思います。
菅澤:エンジニア的な要素というか、そういうのも自分の中には?
深津:ある程度はあると思います。あと、Flashというものでいろいろコンテンツを作る仕事もしていたので。その頃は物理エンジンや、自分でプログラム書いたり、ゲームで動くようなキャラクターのパーティクルエンジンなども自分で書くとか。
OSに入っているようなコンポーネント、ボタンやスクロール、タブみたいなインターフェースの全パーツを、自分でゼロからプログラム組むとか。そういうのをひたすらやっていたので。
池澤:気持ちいいグラフィックをけっこう作られるような印象が(深津さんにはあります)。そこへのこだわりも、言葉の端々に出ているような。「iPhoneのスクロールのバウンズが気持ちいい」みたいな。
菅澤:でも今やっているのは、PVを計測したり、サービスをグロースさせることというか。やはり使われるところにも、自分の中のテーマが?
深津:コーディングそのものや、グラフィックそのものはnoteのチームに優秀な方々いっぱいいる。そういうことはやはり今となってはもう専業で、餅は餅屋にちゃんと任せたが絶対いいので。
僕の場合は、プログラミングの話もデザインの話も、ビジネスもマーケティングも少しずつちゃんとわかるので、全体のバランス調整や、統合的にどういうふうな設計をするかみたいなところをやるほうがいいかなと。
菅澤:なるほど。何をやるべきかというテーマ設定などもすごく重要で、そこが間違ってしまうと、どれだけ優秀でも違う方向に行っちゃったりもしますからね。
note以外にも、いろいろなサービスを作ってこられたんですか?
深津:僕はnoteのCXOとして活動しているほかに、THE GUILDという自分の会社を持っていて。そちらのほうではクライアントワークをいろいろと請けているので、いろいろな分野のサービスをお手伝いしていると思います。
菅澤:THE GUILDというのがけっこうおもしろい会社で。それぞれが社長なんですか?
深津:そうですね。THE GUILDというものは1個の抽象的なブランドであって、フリーランスのエージェント、フリーランスのデザイナーやエンジニアの集合で、1つの1組織として活動しています。
菅澤:それぞれが社長だからもともと自立できる人だし、自分で稼ぐ力もある人がユニットを組んで、けっこう大きな仕事も請け負いつつ。
深津:そうですね。プロジェクトに応じてチームを組んだり、あるいは1人で動く時もあります。それぞれの案件ごとにくっついたり離れたりしながら、いろいろやるというのが、THE GUILDというチームのコンセプトです。
菅澤:日経新聞とかもやられて?
深津:日経新聞さんは、5年ぐらい前のアプリのリニューアルのところで、プロトタイピングなどでお声をかかけていただいて。その時にTHE GUILDのほうで「こういう感じのインターフェース、こういう感じの設計コンセプトがいいんじゃないでしょうか?」というようなご提案しました。
それ以後もなんとなく新しい施策だったり新しいサービスの設計だったり、いろいろと相談や支援などのお手伝いをさせていただいて、今まで続いています。
池澤:日経新聞のWebサイトがいきなり爆速になった時があったんですよ。あの時も関わっていたんですか?
深津:僕は直接は関わっていないですね。電子版の実装レベルのところまでは関わっていなくて。ただ、電子版チームに昔から「速度を上げるのが1番グロースしますよ」みたいな。
菅澤:確かにそれぐらいの時期から、急激に使いやすくなったような印象はあります。
深津:ただ、僕だけが速度を勧めてたわけではないので。
菅澤:日本中のいろいろなサービスを使いやすくしている人が深津さんということですね。後半、「どうやったら使いやすくなるのか?」みたいなのをもう少し深堀りして聞いていきたいなと思います。
(次回に続く)
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