CLOSE

始まる!行政でのプロダクトマネージメント(全3記事)

「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を」 民間出身CPOが語る、デジタル庁のミッション

「プロダクトマネージャーカンファレンス 2021」は、プロダクトマネジメントに携わる人たちが共に学び、切磋琢磨することを目的に開催されるイベントです。ここで登壇したのは、デジタル庁 Chief Product Officerである水島壮太氏。デジタル庁における取り組みについて発表しました。全3回。1回目は、水島氏がデジタル庁に入庁した経緯と、デジタル庁のミッション・ビジョン・バリューについて。

ラクスルCPOとして働きながらデジタル庁CPOも兼任

水島壮太氏:こんにちは、水島と申します。どうぞよろしくお願いいたします。2021年の「pmconf」では、なんとデジタル庁のCPOという立場でお話しすることになりました。pmconfは2019年、2020年とお邪魔しましたが、まさか国のプロダクトのプロダクトマネージメントのお話をするなんて想像もしていませんでした。

今回デジタル庁ができて、そこにはCPO(Chief Product Officer)というポジションにいる人やプロジェクトマネージャーという人たちがいます。行政の人間として、プロダクトマネージメントをマージできるのは、日本のデジタル化が進むうえで非常に良いことだし、第一歩かなと思うので、デジタル庁には感謝をしたいですし、今日こうやって発表できることを大変うれしく思っています。

まだ始まったばかりでこれという大きな成果を出せておらず、トラックレコードもない状態なので、ノウハウを共有するかたちにはあまりならないと思いますが、プロダクトマネージメントの観点から私がこのデジタル庁を今後どうしていこうと思っているか、どうしていきたいかを中心にお話ししたいと思います。

なので、勉強というよりは興味本位で聞いてもらえればいいのかなと思います。デジタル庁では通年で採用しているので、おもしろそうだなと思った方はぜひアプライしてください。

さっそくですが、私のことをご存じない方もいらっしゃると思うので、まず自己紹介をしたいと思います。今はデジタル庁のCPOをやっています。これは非常勤で、週2日程度行っています。残り3日は当然ラクスル株式会社のCPOとして働いています。

突然重要なミーティングや、外部の有識者との会議がいろいろと入るので、リモートワークじゃなかったらこの働き方はできないなあと思います。デジタル庁もほぼフルリモートワークができる状態になっていて、そういうかたちでラクスルとデジタル庁の双方でお仕事をしています。

ラクスル側の勤務時間がちょっと減ったこともあって、ガッツリ印刷のラクスルのところをやるというよりは、今はデザイン推進室の室長としてCXOのようなかたちでデザイン組織の強化をしています。

ほかには、ラクスルのベトナムの開発拠点ですね。そちらの代表もやっていて、相変わらずエンジニアの組織の拡張に干渉しながら、ラクスルのプロダクト戦略の立案など、各事業とコミュニケーションを取りながら壁打ちしたりしています。

右側が簡単ですが私の略歴です。ここには書いていませんが、学生時代はベンチャー企業でメチャクチャ働きました。そのあとはまさに大規模なSIのところで、IBMに行って、その後はDeNAとラクスルで働きました。ラクスルもDeNAのようなメガベンチャーのサイズになってきましたが、事業会社でプロダクト開発をして、今度はデジタル庁に入りました。

IBMとデジタル庁は、請負側と発注する側の関係性でちょっと違うところはありますが、IBM時代の開発のやり方を彷彿とさせるデジタル庁に入りました。

とはいえデジタル庁は、「Government as a Service」と言っているので、こういうスタートアップのカルチャーと、いわゆる大規模SIのところをミックスしていくところを楽しみながらやっています。

PMカンファレンスに来ている方々は、ほとんど左側のアジャイル、スクラム開発、内製中心でやっていると思います。いわゆる大規模ウォーターフォールの開発と、アウトソース中心という両極端な開発がありますが、当然イノベーションを起こすための開発手法は、左側だと思います。

デジタル庁は社会インフラの開発の手法として、右側の手法を採用することもいっぱいありますし、国民の生活をより豊かにしていくための非連続なプロダクト開発という意味で、左側のアジャイル、スクラム開発をうまく組み合わせてやっていくことが非常に重要になると思っています。これを両利きのプロダクト開発と言っていますが、こちらをやっていきたいなと思っています。

ここまで両極端ではありませんが、ラクスル開発でも、やはりマーケット不確実性が非常に高いところで、検証サイクルを速く回す開発と、とはいえ基盤としてこういうものが必要だよね、きっちり作りましょうという開発が混在しているケースがあります。

これはどちらがいいという話ではなくて、どこをアジャイルでやって、どこを大規模ウォーターフォールできちんと進めていくかという、この見極め・使い分けが非常に重要になってくるんじゃないかなと思っています。

アジャイルなプロダクトマネージメントをリードする立場として入庁

私がなぜデジタル庁に来たかは、「note」とかにも書いているのですが、アジャイルなプロダクトマネージメントをデジタル庁に持ち込んで、それをリードする幹部人材というかたちで入っています。

口では「アジャイル! アジャイル!」と言うのですが、やはりそこの体系化だったり、チームの育成だったりもきっちり含めてやっていきます。面接の中で「デジタル庁も内製化を推進していくということですよね」と聞いたところ、それも基本Yesでした。

国民にきちんと使われる、国民が熱狂するようなプロダクトを作る組織をデジタル庁の中に作っていくことが私の大きなミッションかなと思っていて、デジタル庁に来てまだ2ヶ月ですが(※取材当時)ちょっとずつその計画を練り始めています。

国民向けのサービスグループがフォーカスポイント

ホームページを見た方もいるかもしれませんが、デジタル庁の組織体制です。私はこのデジタル監の下にいるCPOです。各グループのグループ長は、官の幹部クラスの方々ですが、そのグループ長の方や、当然デジタル監とも議論をしています。

今日もデジタル監とランチミーティングをしてからpmconfに来ました。今はまだ課題だらけですが、この幹部レイヤーできっちりディスカッションをしながら、ここからどうしていくべきか、などを議論しています。

今私がフォーカスしているポイントは、国民向けのサービスグループです。UI/UXが非常に重要なところですね。その下にはプロダクトとプロジェクトと書いています。今までの各省庁のプロダクトの作り方は、全部プロジェクトベースになっていて、プロダクトとして継続的にインテグレーションしながらインクリメンタルに作っていくというかたちにはなっていなかったので、デジタル庁の中では、特にUI/UXが重要なポイントです。

あとは、使われるか使われないかという不確実性が非常に高い部分と、このプロダクトチームを組成して、今までのプロジェクト型とはちょっと違うやり方でプロダクトチームを作っていくというところを、CDO(Chief Design Officer)の浅沼尚さんとディスカッションしながらやっています。

こういうところをどう進めていくかを、今いろいろと相談しています。これから実際にプロダクトチームを作って、プロダクトを再定義して、PDCAサイクルを回しながら国民と半永久的に付き合っていけるようなプロダクトを作っていくことを考えているところです。

今デジタル庁にプロダクトマネージャーはいるんですか? という話ですが、最初はいないかなと思ったのですが、いました(笑)。

私のユニットの配下にはプロダクトマネージャーが10名ほどいて、先ほどフォーカスポイントといった重要な案件に入っています。例えば「マイナポータル」というサービスだったり、「アイデアボックス」という国民の声を拾うシステムだったり。実はワクチンパスポートの開発もやっています。そういう各重要案件に入り込んでいるかたちになっています。

デジタル庁のミッション・ビジョン・バリュー

次は、デジタル庁で最近ミッション、ビジョン、バリューができたので紹介します。このミッション、ビジョン、バリューがどういうプロセスで作られたかというと、官と民のメンバーがワークショップをしながら、デジタル庁がどういう組織であるべきか、どういうミッション・どういうビジョンを持って、どういう行動規範・バリューに沿ってやっていくかを決めました。

これは非常に仕上がりがいいなと、プロダクトマネージメントの文脈で見ているのですが、プロダクトマネージメントで見た時のコアな部分は「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を」というところで、みんなが同じ目線を持って動いています。

Government as a Service、Government as a Startup。もちろんスタートアップで働いたことがある方々ばかりではありませんが、特に私たち民間のメンバーだったり、スタートアップのスピード感を持っている人たちだったりが体現しながら、こういったビジョンを作っていくというところは、コアとして非常にしっかりしていると思います。

バリューのところに関しても、誰のために、というところのWhoのところですね。ほかにもHuman Centerdで考えていきましょうというところは、プロダクトマネージメントの界隈の中でも非常によく言われていることだと思います。これがきちんと明文化されているのは素晴らしいなと思います。

それから「常に目的を問い」というところですが、しっかりWhyを考えましょうというのは、プロダクトマネージメントでもよく言われることだと思います。また、これを全職員でやっていきましょうという話が出ているのも、非常にプロダクトマネージメントに沿った考え方かなと思っています。

また、「あらゆる立場を超えて」とありますが、今もダイバーシティ&インクルージョンの話が出てきていますし、私がやっているCPO協会や海外のプロダクトヘッドの話では、人材の多様性という言葉が強調されています。Openess、Transfarencyといった非常に透明性が高くオープンなところ。これもプロダクトマネージメントで重視されている言葉かなと思います。

最後のこれはみなさんもよく言っていますが、アウトプットではなくてOutcomeですね。私は最後にレビューをしたのですが、成果へ向かってチャレンジするというところも含めて、デジタル庁はプロダクトマネージメントの考え方に非常に沿ったかたちでやっているという安心感がありました。ここは良いスタートが切れているんじゃないかなと思っています。

(次回へつづく)

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 今までとこれからで、エンジニアに求められる「スキル」の違い AI時代のエンジニアの未来と生存戦略のカギとは

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!