みんなが気持ちよくスタートを切れる、滑走路おやじでいたい

いかくん氏(以下、いかくん):ちょっと論点がずれて、中小企業のDXなんたらみたいな話とも関わってくるのですが、経営層、管理職だって、IT関係の会社でもあまりITをきちんと知っていないイメージがやっぱりありますよね。

だからそういう人たちに、アプローチしていくことも少しずつできればいいなと思ってはいるんです。

kyon_mm氏(以下、キョン):そうなんですよね。本当、日本の中小企業のプロダクト支援を見ていると、ようやく「FAXやめました」みたいな。「お、おう…」みたいな。スマホを使って「DXです」みたいな。「お、おう…」「なるほどな」みたいなITリテラシーがよくあるので、けっこう大変なんですよね。

いかくん:そうですね。そこを変えてくのはすごく大変な作業だと思いますね。

キョン:社長は「メールは打てない、メールを打つのは部下の役目です」お、お、おーう、なるほどぉみたいな、確かにDX必要そうだねという感じになるんですけど(笑)。

いかくん:本当DXも、やっぱり開発側の話とも結びついてこれからの大きな課題ですよね。

キョン:そうですね。なので、そういったところをうまくやっていきたいんですよね。

特に日本は、中小企業が全体の企業数の9割、8割を占めているので、そこをよくしないと、日本の経済自体が沈んでいっちゃうんですよね。もちろん大企業がやることで、中小企業がフォローしやすいというのはあるので、大企業のDXはある種、北極星としてすごく重要なんですが、それ以上に中小企業が変わらなければ日本の産業が衰退するという問題があるので、やはり中小企業のビジネスをどうやってよりうまくしていくのかは、力を入れていかないといけないなという課題感は自分の中にはあります。

そういった意味でも、有名な企業に入る学生だけではなくて、それ以外の、例えば「地元のこういう企業に入りたい」という人たちも増やしていけたらいいなとは思っているんですよね。

そういう活動も今後増やしていきたいと思ってます。いかくんさんが今やっている教育も、いろいろな方向にアプローチできる感じなんですよね。

いかくん:そうですね。幅広くやろうと思うと、どうしても浅くなりがちではあるんですが、深めるのはスタート切ってからいくらでもできることだと思います。

私はおこがましく「すごい天才を作り出すぞ」ということではなくて、みんなが気持ちよくスタートを切れる、そういう“滑走路おやじ”でいられればいいかなという気持ちでね、怖がらずに「こっちへおいでよ」っていうね。そうなると滑走路じゃないですね、妖怪みたいになっちゃいますけど。

キョン:“滑走路おやじ”、いいですね。

いかくん:はっは(笑)。でもそうやって企業と人の垣根や、入ってくる人の敷居を下げられたらいいな、自分のサバイバル経験が、伝わればいいなと思いながらいるんですけどもね。

キョン:いやあ、おもしろいですね。それは重要ですよね。

スマホにちょっと詳しい新卒がIT担当になっている現実

いかくん:先日もちょうど仕事の関係で、中小企業さんにDXをどう進めるかという話をしていたのですが、やっぱり現実として、中小企業さんでITの担当部署は当然ないところが多くて。じゃあどうなってるかというと、ちょっとスマホに詳しい新卒の兄ちゃんがいきなりIT担当になって泣いているわけですよ。

キョン:はははは、ヤバい(笑)。

いかくん:いやそれが、けっこう現実で。それを私が言ったら、みんな「あるある」という話で、あ、みんなそうなんだ、怖っていう、そんなホラー話で盛り上がったんですけれども。

でもだからそういう現実を、やっぱり少し変えていければ、その兄ちゃんが泣かなくて済むようにできればいいなという気持ちでやっている部分もありますね。

キョン:確かに聞きますね。そこを変えていきたいですね。

いかくん:大都市でもそういう状況の会社がいっぱいあるので、そうならないように。私自身も若い女性が担当として出てきて、大丈夫だと思って専門的な話をしたら「ん?」という顔をされたので、すごく噛み砕いて話したことがあったんですね。

その分ちょっと説明量が増えちゃったので、まずいなあと思っていたら、その日の夜にそこの社長さんから「何々くんが泣いているんだけど」と電話が来て「うわあ、すみません、僕泣かしましたか、申し訳ありません」「僕も泣きたいです」という(笑)。

キョン:あはははは(笑)、なるほどね。

いかくん:そういう現実もある程度横たわっているので。

キョン:そう言われると本当に、広く浅く広めていくのはすごく重要ですよね。

勉強するために使っているツール

キョン:いかくんさんの受講生は、どういった学習環境が多いとか、傾向はあるんですか。あとは、いかくんさんがよく勉強するのに使っているツールはありますか。

いかくん:私も実は学習用として、Discordにサーバーを立てています。学生はみんなそこに入ってきてくれる状態です。幸いリモートワークかつデスクワークなので、僕は1日中ボイスチャンネルにいるんですよ。

対応できない時もあるのですが、「暇な時は入ってきて話していいよ」と言っています。きちんとした質問が多いんですが、気軽に雑談でもしてもらって、新人で企業に入って研修受けているみたいな気持ちで育ってもらえばいいなと思っています。

キョン:それはいいですね。

いかくん:なるべくマン・ツー・マンでお話できるように心がけてます。

キョン:いいっすね。

いかくん:ツールというと、とりあえずVS Codeになんでもブチ込んで機能持たせりゃいいだろうとなっちゃっているので、そこはお恥ずかしい。

キョン:メッチャわかります。VS Codeメッチャ便利ですよ。

いかくん:メモアプリの話をキョンさんとした時も、なんか僕だけ「VS CodeでGitHubに上げています」とか言ったら、1人だけうどんの浮いてるネギみたいな生き物になっちゃって本当に恥ずかしいんですけど(笑)。

キョン:(笑)。

いかくん:そんな感じなので、学生さんたちは真似せずに、「Notion」とか、いろいろなノートアプリを使ってもらえればなとは思います。自分自身は恥ずかしいんですが、ちょっとレトロ感がありますね。

キョン:いやあ、でもわかりますね。僕もVS Code出る前はemacsが好きでひたすらemacsのorg-modeから離れられずにずっと何年も過ごしていて、VS Codeが出てきたのを見て「もうそろそろこれはやめたほうがいいんだろうな」と思ってemacsを捨てて、VS Codeに移りました。

最近は、「MarginNote」というアプリを使っています。MargineNoteは、要は論文のまとめで使うようなツールなんですが、ホワイトボードといわゆる読書アプリが一緒になったアプリで、PDFとかEPUBとか、Evernoteの中身をインポートできます。例えばインポートしたPDFを読んでいる時に、PDFをずーっとドラッグして……今ビデオ映っていないのに指でやっちゃっていたけど(笑)、そのPDFで選択した部分をそのままホワイトボードの付箋にできたりするんですよ。

いかくん:すごいなあ。

キョン:それでホワイトボードにいろいろメモも書けるし、引用の付箋も書けます。なおかつすごいのが、ホワイトボードモードにした時に、ホワイトボードの付箋をポチッと押すと、画面の右側にその書籍がバンって出てくるんですよ。メチャクチャ捗るんですよね。これの体験は、VS Codeとemacsではできない。

いかくん:参りました。

キョン:emacs最強だとずっと思っていたんですが、これはemacsじゃできないから、MargineNoteにしようという感じですね。

いかくん:すごいツール出てきたもんですね。みんなで作るノートアプリとかやりたいですよね(笑)。すいません、話がそれちゃった(笑)。

キョン:確かに(笑)。たぶんNotionとかCraftViewとかも、そもそもの発想はそういった雰囲気なんじゃないかと思うんですけどね。

いかくん:そうですね。マイナーかもしれませんが、私は「Roam」というノートアプリを使っています。ヒエラルキーがけっこう好きで、段階分けができるので使ってみたんですが、結局VS Codeに戻るというね、ダメな感じです(笑)。ちょっと見習って、ブレイクスルーしなきゃいけないなと思いました。

キョン:VimはどのVimを触っていたんですか、GVimですか。それとも素のVimですか。

いかくん:コンソールの素のVimですね。

キョン:そうなんですね。すごいな。

いかくん:でもそこからようやくモダンになったかと思ったら、置いていかれているというこのマズさですね(笑)。ちょっと見習おう。

キョン:(笑)。でも開発する時のエディターはもうVS Codeでいいじゃん感はすごくよくわかります。

いかくん:開発する時は、ちょっとマッチョなほうがいいかもしれませんね。

キョン:そうそうそう(笑)。

いかくん:掲示板がすごく盛り上がっていますね(笑)。

キョン:「男は黙ってなんとか」。

いかくん:「nano」。僕はnanoは使えないです。

キョン:nanoはどうやって終了するのかがわかんなくなるんですよね。

いかくん:すいません、こんなマニアックなトークをみなさんが楽しんでくれているかちょっと心配ではあるんですが(笑)。

キョン:メッチャ楽しんでると思います。大丈夫だと思います。

いかくん:本当にありがとうございます。

早いうちからチームでやるという実体験をしたほうがいい

キョン:(Discordのオーディエンスに向かって)ちなみにみなさん今は何していますか?(Discordを見ながら)仕事中、移動中、もう仕事終わった、ご飯食べてる、アジャイル、その他。アジャイル、超おもしろい。

いかくん:アジャイル、すごいですね、存在そのものがアジャイルな人がいるかもしれませんね。

キョン:ヤバい。「Be Agileが大切なんですよね」と言うからには、アジャイルをやっていると言わなければいけないみたいな。

いかくん:はっはっは(笑)。Be、すごいな。

キョン:「Do Agileじゃない、Be Agileだ。そして俺がアジャイルだ」みたいな感じですかね。

いかくん:はっはっは(笑)。すごいなあ、まあでもそういうところも大事ですよね。方法論をしっかり学んで、持ち込んでもらいたいな。

キョン:そうですね。

いかくん:私はもちろんプログラミングも教えているんですが、実際の業務とどうつながるかというところはやっぱり勉強しているうちに知ってほしいです。そういう意味ではキョンさんみたいにチームを作るというのはすごく共感できる学習方法だなと思いましたね。

キョン:やっぱり授業全体や研修全体で見ると、最初にサブジェクト型、その次にいかくんさんがやっているようなプロジェクト型学習があるという流れになるんですが、ある程度入門だけでも知らないとですよね。

いかくん:それはそうですね。

キョン:何も手が動かなくなっちゃうというのはあるんですが、両方使っていけるといいよなあと思います。

いかくん:そうですよね。

キョン:あとは、結局仕事はチームで仕事することが多いので、早いうちからチームでやるという実体験をしておくといいなと思っていますね。

いかくん:なるほど。それはとても参考になります、ありがとうございます。

キョン:いかくんさんも小学校、中学校は日本なのでわかると思うのですが、日本の小中高、特に小中でやっているチームって、実はあまりチームっぽくなくて。

「担当決めて分担をします」「あなたが責任者です」みたいな感じなんですね。それで「誰も助けません」みたいな感じ。先生は助けるかもしれないという感じになっていて。

どうやってみんなで助け合ってワークするんだっけというところに対して、あまり習慣化されていない。教室の掃除とかは、特に当番を決めないでみんなで自由にやったり、順番決めてやったりするので、いいかなと思いますけど。

そうではなくて、学校の授業、委員会、係とかって、とにかく分担するのがあったなと思います。

学園祭が唯一、ルールがないという意味で学生が決めていいチームワークだったと思うんですが、結局分担することに慣れてしまった子どもたちは、とにかく「分担してやる」ことが強く残っている。そこが原体験としてずっと残ってると、チームワークが凝り固まった社会人になってしまいます。

私たちがよく言うチームワークをやっぱり若い頃から知ってほしいなというのはありますね。

いかくん:そうですよね。みなさん「班だな」とか「間違いないよね」って書いていますが、実体験をみなさん思い出しているんですかね。

おすすめの書籍

キョン:そうですね(笑)。ということで、そろそろ終わりになってくるんですけど。今日はみなさん、本当にありがとうございました。みなさんがいる間に、質問を投げさせてもらいたいなと思っています。

いかくん:おすすめの書籍がもしあったらぺろっとチャットに(笑)、どうでしょうか。

キョン:おすすめの書籍、入れていきましょう。アレグザンダー(クリストファー・アレグザンダー氏)の本を誰か貼ってくれればいいんですが…『アレグザンダーの思考の軌跡』というやつです。長坂さん(長坂一郎氏)が書いた本なんですが、入門にはもう『思考の軌跡』がおすすめですね。

いかくん:読みやすさはあるんですか?

キョン:これがなんと読みやすいんですよ。なんでかというと、アレグザンダーの書籍は当たり前すぎてわかりにくいんですが、これはアレグザンダーが書いたのではなくて、長坂さんという人が解説本として書いたんですね。なので、一般人にもわかるアレグザンダーみたいな感じですね。

あと、アレグザンダーの最初期の著書から最後の著書までをある程度網羅して、つまりここではこういったことを言ってるんですよ、という紹介になっているので、わかりやすいですね。

いかくん:最初期の本というと、1980年代ですよね。

キョン:そうですね。

いかくん:それメチャメチャわかりにくいもんね。

キョン:当時のポストモダン文化とかみんな知らないんすよね(笑)。

いやあ、初回なのでいろいろ悩むところはあったんですが、いかくんさんが最高におもしろい表現をたくさんしてくれて、滑走路おじさんが私、もう最高にツボりました。

ということで、今日はここまでにしようと思います。みなさん、最後までご視聴いただきありがとうございました。

いかくん:ありがとうございました。