2024.10.10
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永江耕治(以下、永江):「インフラエンジニアBooks」10回目になります。「近藤誠司氏と読む『運用改善の教科書』」を本日はスタートしていきたいと思います。今日のスケジュールですが、スライドのような流れでお伝えしていきます。
最初に開催の挨拶と説明をしたいと思います。その後ゲストによる講演、近藤さんからの講演を40分ほど予定しています。そのあとはQ&Aがあり、最後にお知らせをして、クロージングしていきたいと思っています。
「インフランエンジニアBooks」は何をするのか。インフラエンジニア向けの書籍を取り上げ、その著者・翻訳者を招いてのライブトークイベントがメインコンテンツです。著者と出会い、楽しく本を知り、仲間を作る。「インフラエンジニアBooks」はそんな場所です。
主催は、株式会社エーピーコミュニケーションズです。ITインフラを主事業としていて、AnsibleやPaloAlto次世代ファイアウォール、Docker、Kubernetesのような特定領域の強みを持っています。
エンジニアから時間を奪うものをなくすため、ITインフラ自動化のプロフェッショナルとして、クラウドも含めたインフラ自動化技術で顧客の課題を解決すると同時に、SI業務の課題を解決するプロダクト・サービスを提供しています。
例えば、AKS、Azure Kuberbetes Serviceとか、今だと自動化に関して。JAL インフォテックさんの事例をWebメディアで取り上げてもらいました。そしてSoftware Designの中の記事の執筆などを、社員が行ったりしています。
司会進行ですが、永江が進行いたします。「インフラエンジニアBook」を立ち上げたのはなぜか、というお話を少しすると、とにかく本が好きだった、というところからスタートしました。これほど投資対効果があるものはないと思っています。著者の方がたくさんの時間を費やして経験・習得した内容を、数時間でインプットできる本は、いろいろなことを学びたいエンジニアにとって、強力な味方になると思っています。
著者の方から直接お話を聞いたり、いろいろな人の意見を聞くことで、1人で本を読む以上に学びが深まるのではないかと思い、このコミュニティを立ち上げました。
事前アンケートの結果についてです。ご回答の総数として、200以上いただいていました。「今回の題材である、『運用改善の教科書』を読んだことがありますか?」という質問に対してです。「まだない」という方が66パーセントいらっしゃいます。「買ったけどまだ読んでない」という方も15パーセントいます。そして、「もうすでに読まれた」という方は17パーセントでした。この回を聞いて、見てみて、ぜひ『運用改善の教科書』買ってみて、読んでみてもらえるといいかなと思っています。
そして2つ目。「現在、運用にかかわる業務をしていますか?」という質問に対しては、ほとんどの方が「はい」とお答えしています。73.5パーセントの方が、運用業務に携っている方が見てくださっているのかなと思ってます。「どちらともいえない」そして「いいえ」という方が、合わせて20数パーセントなので、8割まではいきませんが、7割以上が運用業務に携わっている方なのかなと思います。
というわけで、いよいよメインコンテンツに移っていきたいと思います。ここからは、近藤さんにお願いしたいと思います。近藤さん、よろしくお願いいたします。
近藤誠司氏(以下、近藤):はい、よろしくお願いします。近藤誠司です。今日は私の著書である『運用改善の教科書』を一緒に解説をしながら、サービスの管理みたいなところでみなさんに伝えたいことがあるので、本の解説半分、講習半分のような感じでできればと思っています。
一応講師の紹介としまして、私、近藤誠司と言います。1981年(生まれ)で、今年が40歳になるところです。歴としては、運用や情シスの支援は6年やっていて、アプリ開発は1年くらいやっています。アプリ開発はあまり向いていませんでした。基盤や構築、そういった運用設計などのほうがやはり向いてるなと思い、運用設計などを6年、あとは運用改善のコンサルティングを2年ぐらいやっているところです。
参考書を書く前に小説をちょっと書いてた時期があって。ここで賞をいただいて、「文章書けるんだったら書いてみたら」みたいな流れで書いています。
(スライドを指して)これは名古屋の落語家の雷門獅篭さんという方が描いてくださった似顔絵で、こんなような人が喋っていると思ってもらえればと思います。
それでは本日のアジェンダです。まずは『運用改善の教科書』の目次をベースに解説したいところと、あとはなぜ『運用改善の教科書』を書かなければいけないと私が思ったのか。2019年ぐらいに、いろいろと運用にかかわる変化みたいなことが起きていたので、その解説をしたいと思っています。
ここから残りは中身にも触れつつ、実際に『運用改善の教科書』を使って改善をしていったらどういうことが起こるのかを説明したいなと思っています。テーマはサービスポートフォリオ管理ということで、どのようにサービスを全体的に管理していくのかををお話できればと思います。最後はお話しした内容をまとめる予定です。
著書の紹介です。『運用改善の教科書』の前に、『運用設計の教科書』という本を書いていました。これは、私が運用設計が行われず混乱している運用の現場を多く見てきて、なんなら私も一緒に混乱していた時期が長くあったので。ITエンジニアになった時からずーっと「運用はちゃんと設計しないといけないな」と思っていました。
インフラ構築やアプリ開発などやってきた経験の中で、なんとか書けそうだと3年前ぐらいに思い、書き始めたというとこです。
私は運用からアプリ開発やインフラの設計構築にキャリアチェンジをしましたが、そこがけっこう大変だったというのがあって。そもそも運用でやっていた経験がそのまま活かせる設計の分野がないので、誰も体系的にまとめていいない。ここをまとめることによって、運用からの次のキャリアとか、スキルのロードマップみたいものができるんじゃないかと思いました。運用設計というジャンルをちゃんと確立させたい思いもあって書いたというところもあります。
運用設計は、運用したことがある人がちゃんと学んでいけば、おそらくいろいろと経験値があり、やりやすい分野で、潜在的に運用設計ができる人がたくさんいるはずなので、そこをなんとか可視化、言語化して、みなさんに届けるということを『運用設計の教科書』では標榜してやっていました。
『運用設計の教科書』はほとんど私の経験をベースにして書いたので、いろいろと書きそびれているところがあるなと思って書いたのが、『運用改善の教科書』です。『運用設計の教科書』はどちらかというと、SIerの私が体験してきたことがベースになっているので、システム導入のところにフォーカスしています。「運用は入れた後が本番だよね」という話もあるので、継続的に改善していかなきゃいけないというところで、書き終えた瞬間に『運用改善の教科書』を書いていかなければいけないと思っていました。
どのあたりの分野かというと、クラウドサービスの運用だったり自動化、あとはセキュリティや、チームとしてスキルを上げていく、つまり、人の教育の話みたいなところは、運用改善としてやっていかなければいけないというところで、書きたいなと思ったので、2冊目もすぐ書き始めました。本当はちょっと違うかたちで出そうと思っていましたが、結果として連作になってしまったので、同じような見た目の2冊が出来上がって、これは上下巻で打ち止めかな、と思っています。
今日は『運用改善の教科書』のほうを説明していきたいと思うので、ちょっと目次を一緒に見ながらお話しできたらと思います。
全8章からなっていて、まず1章目です。ここは、なぜ運用改善しないといけないのかをまとめて書いてあります。ここは中身がふわふわした状態で書き始めたので、もう20回ぐらい書き直していて、正直僕も最終的にどれが採用になったのかわからないくらい毎日書き直していたところです(笑)。
ここは運用改善の目的やゴールは生産性の向上をするためとして書いています。それとは別に、エンジニアだったら好きなことやっている時に、「こういうの動いておもしろかった」「自動化できてやったぜ」みたいなところがあると思っていて。それを1章で書きそびれているので、最終的には7章のスキルのとこでそういうことを書いています。そのため、1章は全体的におもて面というか、外観としての運用改善の目的だったりを書いています。
2章のところは、主に可視化の話です。運用改善するために、まず可視化しないといけないという話です。サービスポートフォリオの話や、全体で考える運用設計の話などをこの後半で説明しようかと思っていますが、まずは可視化が必要なので、2章は可視化のお話しをしているというところです。
続いて3章ですが、3章に関しては私がコンサルをやっている時に、どういうふうにやっているかを1から10までそのまま書いた章になっています。これを見てもらうと、運用改善のコンサルティングは何やるんだ、という時の指針になることが書いてあるかと思います。なので2章で可視化して、3章で計測して改善していくというところで、2章と3章は1つの流れとして書いてあります。
続いて4章、自動化のとこです。本当は2章のちょっとした章でした。しかし、ネット上を調べてもなかなか運用目線で自動化のツールと、そのツールが与える影響とみたいなものがまとまってる記事がなかったので、いろいろと調べたり自分でやってみたりとかしていたところ、もう2章には収まらないボリュームになってきたので、4章として独立したものになります。
ここは運用を自動化した場合のメリットとデメリット、あとは運用に与える影響とかが書いてあります。実は「システム管理者の会」というところでコラム書いているんですが、そこに抜粋版が載っているので、もし興味がある方は、そちらのコラム読んでもらっても、ここの内容は半分くらい書いてあるので(笑)。ぜひ興味がある方は読んでもらえればと思います。
続いて5章です。これはこの本を書こうと思った時の1個のトピックの1つです。『運用改善の教科書』はクラウドやオンプレミスなど関係なく、導入する際に必要な人の動きみたいなことを書いていました。しかし、やはりクラウドサービスが入ったことによって、いろいろと大きく変わっているところがある。情報システム部門の方々とか、そういったところはけっこう気になっている方もいると思うので、そういったところを補足できるような内容を書きたいなと思っていました。
私の一番のおすすめは、5.3の「オンプレミスから変わる運用項目」です。基本的にこれに従ってやってもらうと、オンプレからクラウドに変わる時にうまく運用を変えれているかが点検できるようになっています。情報システム部門が、簡単な、軽いSaaSのサービスを自分たちで導入することが増えてくと思っています。内製化に近いことですが、それがあると思うので、そういった場合にどうやって運用設計すれば漏れなく効率よくできるのかを5.4に書いています。
なので、5.3、5.4みたいなところを見てもらうと、クラウドサービスについて運用でやることが、ちょっと深く知れるのではないかなと思います。
続いて6章はセキュリティです。セキュリティを扱うかどうか迷いましたが、ただ触らないわけにもいかないと。今回はもう最低限、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の推奨している項目に従って、運用のセキュリティの強度を上げるためにはどうしたらいいかを書いています。
あとはゼロトラストとか、キーワードとして知っておいたほうがいいことについて。基本は引用していたり、参考書があるので、このあたりは目をとおしておいたほうがいいですよ、ということを踏まえながら。もう最初から言っておきますが、最低限ちょっと触れただけというかたちですね(笑)。
本当はSOCとCSIRTと運用の関係性みたいなものを書きたかったんですが、正直ちょっと私の知識がまだ足りてないということで、まとまったらいずれどこかで書きたいと思っています。
7章です。ここではメンバーのスキルの話を書いています。古くからある“カッツモデル”という、工場の工場長が経営の考えを得るためにはどうするか、みたいな論文があって。そこをもとに、テクニカルスキルやヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルなどを、今のかたちにまとめ直して、関連するキーワードをひもづけてとやりながら、メンバーのスキルの可視化や、どうやってチームとして維持していくか。運用は、人の入れ替えがあっても、対応していかなければいけません。スキルを明確にして、それをどう維持していくかを書いています。
このあたりは先ほど言ったように、スピノザという哲学者が言っている、「コナトゥス」や「自由」などの考え方があって、ちょうど書いている時にそのあたりに強く感銘を受けて、やはり好きなことをやっている時って楽しいよね、というのをどこかに書きたいなと思っていて。ここの7章は、基本的には先ほどの生産性の向上などはいったん置いておいて(笑)、みんなが得意なことを好きなようにやって、チームとしてまとめていって効果を出しましょう、みたいな内容を書いています。
私がコンサルとかで入ってやっている、スキルの具体的な可視化の方法なども書いてあるので、ぜひ読んでいただきたいと思っています。あとこれを見てくださった方に、実は7章をまとめた時に作ったExcelの参考資料があって、技術評論社の私の書籍のところにいくと、無料でダウンロードできるようになっているので、興味がある方は表をダウンロードして、見てもらえるといいかなと思います。
8章はCOBITというところに示し合わせ、運用改善を組織から変えていくというか、運用改善をずーっとやっていても、評価されないと続けることがなかなか難しい活動なので、どう評価してもらうかをCOBITというフレームワークをベースに書いています。これは後ほどちょっとお話しするので、詳しくは割愛します。
最後にAppendixと書いてありますが、これはAppendixというよりも、どこの章にも入らなかったことが2つあったので、それを2つまとめているというところですね。心理的な安全性と、運用とアウトソースの話を書いているので、時間がある方は読んでもらえればと思います。
書籍の紹介としては以上で、ここからは研修やセミナーっぽい感じの内容を話したいなと思います。そもそもこの本を書こうと思ったところで、まずは2019年あたりにいろいろと運用に関する変化が起こったことを説明します。
(次回につづく)
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