混雑レーダの例

藤門千明氏(以下、藤門):「でも本当か?」と。「本当にこうなっているのか?」とみなさん思うと思うので、今日は1つ事例をもってきました。Yahoo! MAPが機能として提供している「混雑レーダー」です。非常に申し訳なく思っていますが、2020年1月にいったんこのサービスの機能を終了しました。

一方、新型コロナウイルスの感染が拡大するにあたり、「この混雑レーダーがあればお出かけするときにすごく安心するのに」という声や意見をSNSなどでもらっていました。そのため、私たちはこの声に応じて、このサービスをもう1回立ち上げようと、もう1回やり直そうと。ただもう1回立ち上げるのは、実はすごく簡単なんです。落としたものを上げるだけなので、すごく簡単。

ただ、私たちが今回重要だと思ったことは、新型コロナウイルスはきっと数ヶ月単位では終わらない。おそらく数年単位かかって、人間はこれを克服していくだろうと。となると、この混雑情報はきっと1回限りではなく、今後ずっと継続してみなさんに提供しなければいけないし、ロケーションやシーンによって、この機能はどんどんアップグレードしなければいけない。

そのためにも、簡単にこの混雑レーダーの機能をアップグレードできるように、我々はこのプラットフォームの上で動かさなければいけないと思い、クローズした混雑レーダーを、改めてサービスプラットフォームを活用するかたちで復活させています。

混雑レーダーをたくさん使ってもらっていますが、たくさんリクエストをもらっても絶対落ちないよう、インスタンスがすぐスケールできるプラットフォームの上に乗っています。例えば、混雑情報、混雑度をリアルタイムで解析したり推定できないと、ユーザーにとって不便。そのため、これを継いでできるプラットフォーム上で動かしています。

また、この混雑情報の基になっているのはユーザーのみなさんからもらった位置情報。これはすごくセンシティブな情報なので、どう安全に格納するか。独自でやるのではなくプラットフォームで動かしているため、このプラットフォームを活用することで、Yahoo! MAPに混雑レーダーが展開できるようになっています。

混雑レーダーが昨年4月にサービスを復活させたあと、これだけの機能開発、精度向上、新機能を矢継ぎ早にリリースできたのも、実はプラットフォームを私たちがもっていたから。それに対して投資をしていたからと理解してもらえればうれしいです。

1年で90以上のサービスをリリースできた理由まとめ

最後にまとめになりますが、私たちYahoo! JAPANが90以上のサービスを早くリリースできたポイントはこの3つです。CI/CDの話、クラウドネイティブな環境の話、そしてその上でのプラットフォームに対して、テクノロジー投資をしていったから。本当に大事なのは、90のサービスを提供することではなく、その上で多くのユーザーに使ってもらったり、支持を得られたこと。これが実は一番大事です。

おかげさまでたくさんのユーザーに使ってもらった結果、一番左の端のトータルデジタルリーチ、スマートフォンやパソコンのブラウザからYahoo! JAPANを使ってもらっている量を表すリーチの数ですが、これが年間を通じて1位を取れたし、Webのブランド調査でも年を通じて1位になれました。

ただ課題解決するだけでなく、テクノロジーへの投資も重要

今日のセッションは「予測できない未来に備える」という話で進めました。予測できない未来に備えるためにヤフー流でどうやっているのかは、このスライドに凝縮しています。Yahoo! JAPANはユーザーのための課題解決をたくさんしています。ユーザーのことを第一に考える“ユーザーファースト”の精神で課題解決をし続けるということです。

ただ課題解決をするだけではありません。そこにテクノロジーの投資をどんどん入れていきながら課題解決をすることが、実はかなり重要だというのが私たち25年間の気づきです。ただ、この技術投資も、その技術投資をしている時、開発している時は、費用対効果があるものだと当然信じてやっていたものの、結果は出ていません。

今となってそれが花開いているので、直接的なリターンがなくても、技術投資をし続けないと未来は作れないとYahoo! JAPANは思っています。ヤフー流の未来の備え方は、課題解決+技術投資だと思ってもらえれば、今日はハッピーだと思います。

ZホールディングスとLINE株式会社の経営統合

最後になりますが、今年25周年。2021年で25周年を迎えます。今日はもう1つお知らせしたいトピックがあります。今年の3月を目途に、ヤフーの親会社であるZホールディングスとLINE株式会社が経営統合をします。

どうして経営統合をするかというと、先ほどもお伝えしたとおり、まだYahoo! JAPANでも解決できない課題はたくさんあるし、LINEさんでも解決できない課題はたくさんあります。日本は課題がたくさんある国です。加えて、この新型コロナウイルスで日本がデジタル化に遅れていると露呈したのも、2020年の大きな気づきです。

もしこのヤフー、創業から25年、LINEもだいたい10年ぐらいですが、もし国のデジタル化や日本全体のアップグレードに貢献していれば、もっとよい日本になっていたんじゃないかと。反省することもたくさんあります。これからLINEとともに予測できない未来に備えていく。そういう構えで、Yahoo! JAPANはLINEと一緒にやっていきたいと思っています。

実はスペシャルゲストとして、今日はLINEのCTOのイビンさんに、今回のYJTCに向けてメッセージをもらっているので、紹介したいと思います。それではイビンさん、よろしくお願いします。

朴イビン氏(以下、朴):みなさんこんにちは。LINEのCTOの朴イビンです。本日Yahoo! JAPANのTech Conferenceにこのようなかたちで参加でき、とてもうれしく思います。2020年のLINE DEVELOPER DAYでも藤門さんに来てもらい、Yahoo! JAPANのCOVID-19への取り組みについて簡単に聞きましたし、また、CTOとして必要な悩みなどについて一緒に話ができて、私としてもとても楽しかったです。藤門さん、改めてありがとうございました。

COVID-19に対して、LINEもいろいろなことに取り組んでいます。まずオンラインコミュニケーションのニーズが増えて、LINEの中でもビデオ通話などの利用が急激に増加しました。このようなユーザーのニーズに応えるために、LINEはLINEの友だち関係ではない人とも最大500人まで無料で通話ができる「LINEミーティング」というサービスをリリースしました。

また、LINE公式アカウントでもLINEの通話機能を通じて、より簡単にユーザーとコミュニケーションができるようにしてきました。また、レストランの店舗などの予約から決済まで、すべてLINE公式アカウントのチャットルームで完結できるようにしていくなど、このCOVID-19で一番厳しい状況に直面している、LINE公式アカウントの持っている店舗のみなさんをサポートするためがんばって努力しています。

さらに今の時期だからこそ、もっと必要になっているサービス。例えばヘルスケアサービスやデリバリーサービスなどに注力していきながら、日本だけではなく台湾、タイなどの国でもデジタルトランスフォーメーションのため、さまざまなことに取り組んでいます。

このような試みは、事業のみなさんの協力によってスピーディーにできたこともありましたが、既存のLINEの開発者向けのプラットフォームや内部の基盤技術によって、より迅速にいろいろなサービスが対応できたのではないかと思っています。このような非常事態で急変している環境で、より柔軟に対応するためには、日頃からの技術への投資がいかに重要であるかを改めて感じた1年でした。

また今年からはYahoo! JAPANのみなさんと一緒にデジタル化や技術の投資を一緒に積極的に進めながら、ユーザーにより価値がある世界を実装できるよう、一緒にがんばりたいと考えています。藤門さん、そしてYahoo! JAPANのみなさん、これからどうぞよろしくお願いします。

藤門:イビンさん、動画でメッセージをありがとうございました。最後に、これはヤフーとLINEの経営統合時に川邊、出澤さん(※出澤剛氏)がプレゼンした時のスライドになります。今まで、ヤフーを中核とするZホールディングスとLINE、お互い切磋琢磨する関係でしたが、これからは同じ未来を見て、ともに作り上げていく最強のOne Teamになっていきたいと思っています。

その上でたくさんのユーザー、今見てくれているユーザーのみなさんと、さまざまな技術開発を通じて日本をよくできるようなインターネットサービスを提供していきたいと思っているので、改めてよろしくお願いします。私からの発表は以上です。今日はご清聴ありがとうございました。