AI与信のための人のデータに基づくモデル化

曾川景介氏(以下、曾川):今ホットトピックを出してくれたので、このあとAI与信の話をしようと思っていて。なぜかというと、後払いの話をして先払いの話をして、結局それは何に使っているかは、たぶんAI与信。「与信」は「お金を今いくら借りれますか」って調べるのもそうなんだけど、その人がちゃんと約束をまもってくれますか、もそうだし。

さっきのはエビデンスベースでやれなそうだと思ったんですけど、たとえばより給与とかを先払いしていこうと思ったときに、結局はモデルを作っていく必要が出るので、そういう意味だと、結局このAI与信の話に行き着く。業法はいろいろあるし、それを複数同時に対応したりすることもある。そんなEmbedded Financeじゃないんだけど、他の事業者と一緒にやるようなことが必要で。

結局その人自身を認証というか、人のデータに基づくモデル化というか。その人が約束、メルペイの中で約束は「履行能力」と言っていたりするけど、そういうスコアに変えていかなきゃいけないことを意味していると思うんですが。特に最近マークさんはこの辺をよく見ているから、思ってることがあると思うんですけど。

山本真人氏(以下、山本):そうですね。これはトピックにあるいろいろなものと重なるやつなんですけど。

曾川:重なりますよね。

AIでフェアでかつ安全なものが作れる

山本:Affirmの創業者のマックス・レヴチン、いわゆるペイパルマフィア。彼がAffirm以外で最近またBoxの創業者アーロン・レヴィなどと始めたX-oneというクレジットカードがあって、あれの与信も、サイトを見てたらけっこうおもしろくて。今までの与信は、あなたが今までにどんなクレジットを溜めてきたかによりますと。

その会社は、「将来あなたがいくら稼ぐかに基づいて与信します」と書いてあるんです。どういう仕組みかぜんぜんわからないですけど、そう書いてあって。ただ、普通の与信よりもMAXで4倍だか7倍だか多く与信するようなことが書いてあって。AIなどで、どれぐらいの可能性があなたにあるのかを明確に図りますと書いてあって。

ぜんぜん外しちゃって、貸し倒れの人が死ぬほど増えるならすごい問題だと思いますが、どうやっていくのかや、バリエーションがいろいろ出てくること自体は、けっこういいなと思います。

曾川:そうですね。たぶんあとは僕らはそのMAUや、DAUをしっかり見るじゃないですか。お客さまにたくさん使い続けてもらいたいと思ったときに、貸し倒れてしまうと自分たちのお客さまがいなくなってしまうので。それはちょっとありえないと思うし、やっぱりそこはきちんと返せるとか、その人が持続可能であることはすごくしっかり見るべきだとは思うので。

貸付をどんどん増やせばいいというのは絶対に持続の可能性はないし、もっと言うとやっぱりその人のためにもならないと思うんですよね。さっき言ったみたいに、その人がどんどん成長していけるとか、スコアを育てていって、結果としてやれることを増やしていきたいからやっているわけじゃないですか。

そこも含めて貸倒率を最小化していくことを、AIを通じてちゃんとモデルを作っていくことをみんなチャレンジしていくし、自動で車を走らせたり、いろいろなことにAIを使いたい。今はAlexaで声の自動認識してくれたり、そういうことも大事なんですけど。

我々のお金の技術ややりとりのようなところもAIがうまくやれると、これまでは人が匙加減でよくわからない与信テーブルを作ってやっていたことが、ある程度機械的に、むしろフェアでかつ安全なものが作れるところはけっこういい。むしろ、すごく科学しやすい領域でもあるので、データドリブンでやれるし。ただ、その数字の上にも貸し倒れてしまう人がいることも忘れちゃいけない思うので、そこは僕らがやる上では気を付けていきたいところです。

与信は“払う”とセットで学習されていくものになれる

AI与信はどれにでも関係ある。これ自体も、今はそもそも自分たちのバランスシートでやっているけど、使いたい人もいそうですよね。「自分たちのリスクで貸します」のような人たちもいそうな気がします。Banking as a Serviceぽく、後払いをやる事業者も出てくるのかなと思ったりしますね。

「みんなの銀行」の話に、次行こうと思っていますが、そういうプラガブルに持って行って使う。

僕らは基本的に今それをやっているんだけど、そのスコアを返すスコアがあったり、どう使うかはある程度その人たちに委ねられるのようなサービスも。決済サービスは、今までは基本的にSDKを入れたり、つなぎ込んでユーザーをやるんだけど。ユーザー認証したらその枠が返ってきて、その枠は別にリスクを自分たちで取ってやるサービスがあってもいい気はします。

山本:うん。あと単純な与信だけじゃないですけど、いかにテクノロジーやサービスで、よりお金自体を増やしてあげられるかも、セットで領域として伸びていってほしい気はします。

曾川:ありですねー。

山本:いわゆる仮想湯通貨でも普通の投資でもいいけど、そういうのを増やすのもそうだし。そもそもメルカリもそうですけど、「ものをお金にします」というので、お金を儲ける手段というか、お金を手に入れる手段を作ったり。Uber Moneyの考え方は、実は僕はすごく好きだったので残念だったんですけど、あれもある意味、将来この人がいくら稼ぐかが見えるわけじゃないですか。仕事を割り当ててあげられるから。

曾川:そうですね。

山本:そういうのをベースにやって、やっぱり与信は、“借りる”“使う”だけじゃなくて、“払う”とセットで学習されていくものになれると思っているので、“払う”ところも含めてサイクルを回せるのは、やっぱりおもしろいかなと思います。

AIを稼ぐところやお金を生むところに

曾川:そういう意味だと、昔はメルペイの中でよげん会議というか、いろいろなビジネスの企画を作る会議があって出た時に、そもそも働くサービス、メルカリ側でもそういう意見があったけどメルワークとか言ってたけど、だぶん必要なんでしょうね。

そういうのがあると、僕が持っている労働力は、僕がもっていても価値がないんだけど、それを誰か使ってくれる人にマッチングすることで価値を発揮するので、それを把握するコンピュータというか、AIができたら、それをより高く評価できる人のところに届けるようなこともできるわけなので。

そのAIが、稼ぐところやお金を生むところに。僕らがどういうものをもっているかでも、そういうことができると思うので。最近のメルカリだと、持ち物リストでいくらのお金になるかが見れるけど、そういうことができる。メルカリで買ったものが、もう1回メルカリで売ったらどれくらいになるかが、出てくるんですよね。

山本:だから、これまでの歴史上の話で言うと、今まではいわゆる現金で払っていたものを、オンラインでできるようになるような、本当にプリミティブな機能群が出てきた歴史であって、奇しくも最初の質問にあったエコシステムというか、汲み上げていくようなところが、やっぱりこれからは重要になるのかなと。

与信も、単純に与信で「いくらいけるよ」だけではなくて、逆に「どうお金をより多くさせてあげられるか」のようなものと組み合わせると、よりちからが出せるとか。そういう組み合わせができるような世界をやっぱり作っていきたいところに帰着している気がします。

UNIQLO PayはEmbedded Finance

曾川:次のトピックに仮想通貨を選ぼうかなと思ったんですけど。とういうのも、仮想通貨、すごい高くなってるじゃないですか。だからその話もしたいんだけど…。あと10分なので、ユニクロがUNIQLO Payやりますねって話題で締めましょう。

Embedded Financeと一番下のUNIQLO Payのところ。「〇〇ペイ」に、今また違う流れが出てきてる。メルカリに近いような、日常的によく使うコマースがペイになる事例というのが出てきたと言えると思います。

ユニクロのレジで、アプリを出すことはこれまでもあったので、同じと言えば同じなんだけど、決済手段が登録されていて、決済までノンストップでできる。もちろん持ち物リストもできるわけだし、そこからこの人に必要なものもわかる。持っているものと組み合わせてコーディネートの提案もできるわけだから、けっこうおもしろいと。まさにこれはEmbedded Financeだと思うんですけど、マークさん(山本のこと)はどう思います?

山本:そうですね。最初あれが発表されて、「銀行は三菱と三井とりそなだけ使えます」とニュースには最初書いてあったんですよね。

曾川:(笑)。

山本:どんなペイなんだと思って、ちょっといじってみたんですけど、僕個人としては、決済でどうにかやっていくことを目的としているんじゃないなという結論になって。ニュースリリースにも出ていたんですが。

ユニクロはユニクロアプリをずっと押していて。要は“誰”という情報をちゃんと取っていくことをやりたいと前からずっと言っているんですね。小売りはただ店に来てくれた人が買ってくれただけだと、どこの誰か本当にわからないし。

曾川:わかんないですね(笑)。

山本:月に何回来てくれる人なのかもわからないし、サイズもわからない。毎回一見さんみたいにサイズを測らなきゃいけないとか、そういう無駄がすごく多い。お店にとってもお客さんにとっても多いから、やっぱりKYCしたいんですよ、彼らも。

曾川:そうですよね。お客さんが誰か知りたいよね。

山本:ユニクロがアプリを作ったのはいつかな。5、6年くらい前からで、そこをしっかり握るのが究極的に大事であることが、ユニクロの課題感なのかなと思っていて。それが前提にあったときに、まずユニクロアプリを出して、その後の支払いは例えばメルペイで、Pay Payで…になると、アプリを何回も切り替えるので、けっこう障害になるんですよね。

曾川:そうだよね。面倒くさいよね。

山本:そうするとカニバる(カニバリゼーション)んですよね。本来カニバらないはずの会員証サービスと決済がカニバるような状態に課題感を彼らは感じて、「じゃあ1つでやれるようにしちゃえばいいじゃん」ということになったのかな。シンプルにそうな気がしました。

ユニクロアプリは、クレジットカードも登録できるんですよ。クレカを登録したらそのクレカで払えるので、3つしかない銀行からチャージして使うことを前提にしていないことがわかって。ということは、決済は究極なんでもいいんだなと。

あそこにメルペイや、Pay Pay、LINE PAY、いろいろなものが乗っていくんじゃないかなと。結局その決済で戦う気はなくて。決済はなんでもいいけど、ユニクロに来たらちゃんとユニクロアプリひとつで完結すると。

曾川:ユニクロアプリを使ってねと。

山本:そう。体験としてもすごくいいですよね。そこを突き詰めていきたいからこそのものなのかなと思いました。だから、ユニクロアプリは、Embedded Financeの、ある意味本当に良い例なのかも。

ありとあらゆるIDがファンディングソースを使えるようになる

曾川:そうなったほうがおもしろいですよね。いろいろな人たちが、さまざまな決済アプリを作っていく。例えばこの辺りは百貨店なんかもやるでしょうね。以前、スクランブルスクエアのアプリが決済できなくなっていたんです。それこそセキュリティのインシデントだと思うんですけど。

こういうセキュリティの話は前回もしたと思うんですけど、ちゃんと認証や認可をしていないと起こりうる。ちゃんと認証すべき主体とお客さまを識別した上で、アプリやサードパーティに対して認可する必要がある。残高のAPIのキーを渡すようなことができれば、Embedded Financeは進むはず。

なので結局Embedded Financeを進めようと思ったら、基本はあらゆる残高フォルダ…というか、KYCしている人たちのKYC情報を、サードパーティにデリバリーする方法を、お客さまにきちんと同意を得た上でやるというようなことが、すごく重要。

よりこういうものが進めば進むほど、ある種決済サービスの事業者はIDPだと言える。当然銀行もIDP。ありとあらゆるIDPのようなところと、サードパーティ、例えばウォルマートのような小売りとかが繋がって、サードパーティのアプリケーションでファンディングソースが使えるようになる。

これは開発者目線で言ったときにも、十何年前からFacebookやOAuthを作っていろいろやってきたことが、FinTechのところと重なったよね。そういう時代が訪れているのではと感じるので、僕的にはすごいおもしろいトピックだと思います。

聞いている人にも、エンジニアの人がいますよね。IDPと決済は同じだと言われてもわからないかもしれないけど、冷静に考えると、クレジットカードでもこの人が誰であるかを番号で判断して、そのあと認可をやる(いくら使ってもいいかと返す)ので、基本的には認証と認可をやっているんですよね。

なので、こういうサードパーティだったりEmbedded Financeでも認証と認可は当然やらないといけないことですよね。

本人認証が難しい理由は…今は日本だとSMSの方が有効になっているけど、SMSもいつかはハッキングされちゃうかもしれないので、「誰であるかを確認する方法が超重要だよ」というのを叫んで、今日は終わろうと思います。時間来ちゃった(笑)。

山本:いっぱい話せたんじゃないかと思うんですけど、どうでしょうか? ダメでしょうか?(笑)。

曾川:でも仮想通貨とみんなの銀行も話したかった(笑)。

司会者:そうですね(笑)。1つのトピックが5、6分ぐらいで終わるかと思ってましたがぜんぜんそんなことなかった(笑)。

(一同笑)

司会者:ぜんぜんそんなことなかったですね(笑)。今日のイベントは1時間なので、いったんここで締めようと思いますが、消化したかったトピック、話したいものが消化できていないので、これはマークさん、曾川さん、次回に持ち越しでしょうか?(笑)。

曾川:そうですね(笑)。

山本:たぶん企画をやっている間にどんどんトピックが増えるので、ちょっと定期的にやっていくしかない気がしますね(笑)。

曾川:そうですね。しばらくやってもいいかな。「キャリーオーバーしてる」、そうだね(笑)。

(一同笑)

曾川:なんかちょうど社長が呼んでるから落ちるね。ではでは。

司会者:ありがとうございます。

山本:ありがとうございました。