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【オープニングトーク】 モダンなプロジェクトマネージャーの役割(全1記事)

2021.02.03

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おもしろさはプロジェクト管理の先にある 本当は楽しい“モダンな”プロジェクトマネージャーの役割

提供:LINE株式会社

LINEのプロジェクトマネジメントのスペシャリストたちが、どこまでの裁量を任されていて、どんなビジョンを持ち、どんなテクニックを駆使して、チームやプロダクト、ユーザーへの価値提供に貢献しているかを伝える「LINE Project Management Meetup!」。オープニングトークでは、AI企画室室長の中村浩樹氏が、プロジェクトマネジメントのおもしろさについて話しました。

LINEで活躍しているプロジェクトマネージャーの役割

中村浩樹氏(以下、中村):LINEの中村です。トップバッターということでオープニングトークをいたします。私からは、LINEで活躍しているプロジェクトマネージャーの役割であったり、どんな視点をもっているのかについてお話ししたいなと思っています。

タイトルに「モダンな」と書いてあり、ちょっと今言ったことと違うじゃんと思われたかもしれないですが、なんでこんな大きなタイトルを付けているのかについては、後ほどオチをお話したいなと思っています。

自己紹介ですが、改めまして私はLINEの中村と申します。LINEに入って2年半ぐらいになります。今はAIの事業の企画、プロダクト全般を見ています。チームの役割としては企画とかプロダクトマネジメント、プロジェクトマネジメント、その他プロダクトに関わる全般を見ています。いろいろと書いてありますが、しゃべると時間がないので、この辺は飛ばします。

AI事業部で進めているプロジェクト

今日はLINE Project Management Meetup!なので、LINEのAI事業ではどんなプロジェクトをやっているのか、ちょっと紹介したいなと思っています。まずは対話AIですね。「LINE AiCall」という音声応対AIサービスを開発しています。

その中の1つのプロジェクトとして、ヤマト運輸様と一緒にオペレーターの荷物の受付の電話業務を自動化することをやっています。また、右下に書いているのはLINE Payなどに活用されているオンラインで本人確認するサービス「LINE eKYC」です。聞いたことがある方もいるかもしれませんが、顔認証や身分証の読み取りといったところでAI技術を使っています。

左下に書いてあるのは、これはすごくチャレンジングなプロダクトなんですが、日本語に特化した超巨大言語モデルを開発しています。今まで言語AIというのは、例えば翻訳だったり、対話だったりを、それぞれ個別に開発していたんですね。これを1750億以上のパラメータと100億ページ以上の日本語データを学習データとして利用して、汎用的な言語モデルを作りましょうということをやっています。

これは一例でして、こういったプロジェクトが数多く同時進行しています。LINE全体でいうと、当然他にもさまざまなプロジェクトが動いています。なのでこういうプロジェクトを率いていただける方を常に募集しています。

「ゴールの不確実さ」と「実現の不確実さ」

非常にエキサイティングなプロジェクトがあって、中にいる自分としてはすごく楽しいなと思っているので、まずは実態をお伝えして、興味を持っていただいて、そして応募してくださる方を増やしたいと思っています。まず「来てください」と言う前に、楽しさを伝えたいなというのが、今回のミートアップの趣旨だったりします。なので、私がなぜしゃべっているのかというと、このおもしろさを伝えたいというモチベーションです。

例えば、おもしろくないプロジェクトマネージャーの役割はこんなのかなと思って書いたんですが、決まったゴールに対してWBSを引いてガントチャートを更新していくとか、課題管理表のステータスをアップデートしていく、そうした管理系の仕事ばかりだと、確かにおもしろくないなと思います。

ただ、少なくともLINEの中でやっているプロジェクトマネージャーの仕事に関しては、こういう管理系の仕事だけで終えられるプロジェクトはもはやないと言い切れると思っています。

じゃあなぜこういう仕事だけでプロジェクトが終えられないのかというと、当然プロジェクトとしての難しさがあります。何が難しいかというと、端的にすごく不確実性が高いというものが一言で言える難しさです。

これも2つあって、1つ目はゴールの不確実さです。LINEでやっているプロジェクトは、既存のインダストリーを塗り替える、ディストラクト(破壊)するものであったり、そもそもマーケットがないものです。

AI事業はまさにそうなんですが、こういったものをやっていると、開始当初は仮説があるのですが、やっている途中で「こっちのマーケットのほうがよさそうだ」とかなります。あとはプロジェクトの開始当初には何らかの完了条件があって、リリースしたあとに意味のある事業成果かどうか、そういうことを完了条件として設定することが多いですが、やっている中でうまくいかなければ、当然ピボットします。

もう1個は実現の不確実さというのがあります。先ほどの超巨大言語モデルを作りましょうというのも、ぶっちゃけた話をしますと、やっている僕ら自身も、何がどこまでできるのかをすごく手探りでやっています。そうすると、最初に「ここまでできるからこういうビジネスをしよう」と言えないことが多くて、やりながら「ここまでできるんだったらこういうビジネスをしよう」となるケースが非常に多いです。

不確実さに向き合うための3つの要素

こういう不確実さにどう向き合っているのかというと、主にLINEのプロジェクトマネジメントには、3つぐらいの要素があるかなと思っています。1個目に柔らかくすると書いているのも、さらに2つに分かれるんですが、1つ目はシステムとかアーキテクチャを柔らかくしましょうということです。

事業要件をその瞬間にだけ必要なものじゃなくて、ちゃんとこの将来の変化を読んだ上で、それを実際のシステムのアーキテクチャとしてメタ化する。トランスレーションという言い方もできますね。ちゃんとモノづくりをする人たちに伝わる言葉にトランスレーションして、そこで実装をリードしていくのが1つですね。

もう1個はチームの柔らかさで、先ほどゴールが変わったときに、やっぱり時と場合によっては右から左にグイッとチームを動かす必要があって、このいざというときにちゃんとチームを動かすための信頼関係だったり、フラットな組織を作っていくのも非常に重要な役割だなと思います。

あと、できることがわからないということに対しては、これはとにかくインクリメンタルに積み上げていく、回転数を上げていく。スマートなデリバリープロセスを作って、回る仕組みを作った上で、アウトプットを積み上げていくと。

LINEで活躍している優秀なプロジェクトマネージャーを見ると、いきなりアウトプットを急ぐんじゃなくて、ちゃんと仕組みを作ってから積み上げていく、そういうパターンが非常に多いなと思います。

あとは外に対してのアプローチですね。理解を得ましょうと。ステークホルダーの期待値コントロールで、確実なことと不確実なことをちゃんと切り分けを説明して理解を得るということです。ほとんどの場合は、説明をすれば理解をしてもらえるのですが、そうではないケースもまれにあります。

そういったプロジェクトは危険だと思うのですが、そういう危険に対して、時と場合によっては「本当にこれをやりますか?どうですか?」と、ハンドリングする。そこも含めて、プロジェクトマネージャーがリードをしていくというのが重要な仕事かなと思います。

アウトカム とアウトプットのズレ

こういう不確実性に対応していく中で起きることがありまして、一言で言うとアウトプットとアウトカムがズレてきます。当然プロジェクトの開始時点では、アウトカムからアウトプット、事業上意味のあるものからアウトプットするものはリンクしているんですが、ゴールが変わったり、できることがクリアになっていくと、これはどんどんズレていきます。

ズレていったときに、当然プロジェクトマネージャーは、(スライドの)右側ですね。アウトカム、成果に対して視線をずらさずコミットして、ズレていたアウトプットを左から右にグイッとアラインする。これも非常に重要な仕事だなと思います。

ここまでしゃべったことは「それは当たり前のことじゃないの?」と思われるかもしれません。実際、本当に当たり前のことです。当たり前のことがすごく難しいんですが、もう1個ぜひお伝えしたいなと思うのが、この当たり前だと思っていることをプロジェクトマネージャーだけが理解しているんじゃなくて、関係者全員が当たり前に理解している、この状況がすごく大事で、それができているプロジェクトはLINEの中でも非常にスムーズに進行しています。

理解を得るというのが最終的に一番難しく、故にこれを意識し続ける必要があるかなと思います。

プロジェクトマネージャーがもつべき3つの視点

その理解を得るためには、プロジェクトマネージャーがブレていないということがすごく重要で、そのブレないためにもつべき3つの視点をここにまとめてみました。

1個目はユーザーですね。ユーザーニーズはすべての原点であると。これはLINEのカルチャーとしても非常に浸透していると思います。

さらにそのユーザーがほしいと言ったものに対して提供する。これも重要なんですが、ユーザーが本当にほしいもの。よく言うのが「速い馬がほしい」と言われたときに「速い移動手段がほしいんだな。だから車を発明するぞ」と。これは本当に理想的な例だと思いますが、常にその奥に対して思考を張り巡らすことも非常に重要です。

そのユーザーに価値を提供する原動力は何なのかいうと、チームなので、プロジェクトマネージャーがプロセスだけじゃなくこのチームに対してちゃんと目を向けて強いチームを作る。これもプロジェクトマネージャー自身がやっていくべきことかなと思います。

最後に、そのチームを率いて何を生み出すのかというと、プロダクトではあるのですが、それは決められたものをアウトプットしたものじゃなくて、ちゃんと事業上意味のあるアウトカムを体現したプロダクトを作っていく。LINEではこれを「WOW」と呼んでいます。ユーザーがビックリする、ユーザーの期待値を超えていきましょうという枠組みで「WOW」と。会社の中でもよく言うんですが、まさにこの「WOW」を作っていくということかなと思います。

さらにプロジェクトマネージャーは、ちゃんとHOWにまでこだわって、それをエンジニアやデザイナーに完全に丸投げするのではなく、どう作るのかというのをちゃんとモノづくりをしている人と同じ目線で、対等にしゃべれる知識・経験をもっている。これも非常に重要な要素だなと思います。

プロダクトマネージャーとプロジェクトマネージャーの相違はどこにあるか

ここまで話すと、冒頭に話したプロダクトマネージャーとプロジェクトマネージャーは、なんかわりと近いんじゃないかなという印象をもたれた方もいると思ういますが、近いところとそうじゃないところがあるかなと思っています。

そうじゃないところでいうと軸足の置き方、これがやっぱり違うのかなと。プロダクトマネージャーはより事業寄り。何を作るのか、なぜ作るのかですし、プロジェクトマネージャーはどう作るのかという軸足。最終的な意思決定の置き方が違うかなと思います。

けっこうよく言われていることですね。ただ一方で私が強調したいなと思っているところが、下の「重なりが大事!!」というところで、これはとても重要だと思っています。

プロジェクトマネージャーも、ちゃんとWHATの視点をもちましょうと。これはなぜ重要なのかというと、さっきの不確実性の話なんですが、不確実性がなければ、開始当初にちゃんとMECE(ミーシー)に役割を分担して、そのままゴールインすることはできるかもしれませんが、やっぱり何かゴールが変わったときに、できることが変化していくと、チームの中の役割も柔軟に変わっていく必要があります。

そうしたときに重なりがないと、途端に溝が生まれるんですね。溝が生まれると、そのチームはうまくワークしなくなるので、ちゃんと変化に強いチームを作るために、お互いの視点の重なりを作る。それがチームの強さにつながってくるかなと思います。

あとは、LINEの中でいうと、新規事業を立ち上げると、当然そのままグロースのフェーズに行くので、そう考えるとプロジェクトマネージャーにいた人がそのままプロダクトマネジメントをしていく。これはロールの定義としては、ある程度こんな感じかなと分けてはいるものの、実際は同じ人がやったりするケースが非常に多いです。ここまでがLINEの中の話。

LINEと最新PMBOKのプロジェクトマネージャー像が一致

次に書いたのが、これが冒頭で何で「モダン」という大きなタイトルを付けたのかという理由なのですが、プロジェクトマネジメントでは、PMBOKが一番有名かなと思っています。今ちょうどご存知の方もいるかもしれないんですけど、PMBOKは現状6版ですかね。これの7版がドラフティングされていて、これはWeb上でも見れます

何が変わったのかはここに書かれていますが、わりとガラッと変わっていて、社内でも話題になっていたんですが、6版まではHOWを強調していましたと。それが7版になると原理原則であり、マインドセット、アクション、ビヘイビアをガイドするもので、見る側を中心としたデザインをしましょう、と。

あとはプロジェクトのパフォーマンスを図る上で意識すべき視点、ステークホルダー、不確実性、チーム。けっこう今話した内容が含まれていて、(7版のほうが)ちゃんと体系立っているかなと思うんです。この、今後PMBOKが変わろうとする方法が、今まさにLINEの中で活躍しているプロジェクトマネージャーにすごく近いイメージだなと思っています。LINEの中で活躍しているプロジェクトマネージャーが、今後のモダンなプロジェクトマネージャー像になっているんじゃないかなと思って、今日ああいうタイトルを付けました。(PMBOKは)詳しくはWebで見れるので、もし興味があれば見ていただければと思います。

プロジェクトマネージャーのおもしろさを、もうちょっと手触り感のある、ぶっちゃけどういうところがおもしろいの?逆につらいところがあるの?というのは、私はもう時間がなくなってきましたが、次のパネルトークのセッションで、より生々しいお話を聞けると思うので、そちらにお任せをしたいなと思っています。

1つだけ言うと、(スライドの)3つ目に書いてある「すごい同僚」ですね。これは本当にそうだと思います。『ドラゴンボール』的な感じですね。なんかすごい奴が現れたぞ。エンジニアの中でも本当に仕事ができる人に、それも1人じゃなくていろいろな人にプロジェクトとかプロダクトが変わる度に、新しい人に出会うことが多くて、そういう意味では新しい出会いがたくさんある会社という印象です。

これは最後のページですが、私はけっこう趣味でnoteを書いていて、今日お話ししたことも、noteに書いたというよりはnoteに書いてからこのプレゼンを作りました。マネジメントのこととかをいろいろ書いています。

もしよかったらここも見ていただいて、今日の話がちょっとでも役に立ったと思っていただけたら「スキ」をポチッとしていただけると、私も非常にモチベーションが上がってうれしいので、よかったら見ていただければと思います。

15分の短い時間でしたけど、以上になります。引き続きパネルトークをお楽しみください。

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