クライアント協業とDX

石黒卓弥氏(以下、石黒):せっかくDXミートアップっぽい話なので、この話(「クライアント協業とDX」)ができればいいかなと思ったので。僕から読ませていただくと、外部からクライアントDXってできるんだっけ? という話がけっこうあったので、できるとするとどういう切り口がポイントだったのかっていうところ。たぶん両者とも進んでいる案件についてお話いただくとおもしろいかなと。

もう1つこれもよくある話だと思いますし、こういったスタートアップとかネットの世界にいると、対象のお客さんのITリテラシーに合わせてやるんですか? とか。それってどうやって進めているんですか? という話がけっこう(ありました)。画面が見えているみなさんはうなずいていただいているので、このへんを聞いてみたいのかなと思ったんですが。

ちょっと趣向を変えてLayerXの榎本さんから先にいきましょうか。

榎本悠介氏(以下、榎本):いやぁ、いい質問ですね。一口にDXって言ってもたぶんいろいろな攻め方があるんだろうなと思っていて。わかりやすく現場から、下からいくのか、上からいくのかみたいな話は僕らよくやったりするんですけれども、一番やりやすい切り口は、DXしないっていうやり方かなって正直思っています。スクラッチで作るっていう。

最初の例に出した三井物産さんとのジョイントベンチャーの例は、完全にゼロから作るみたいな。既存のアセットマネジメント会社を変えていくとかではなくて、新しく箱を作ってゼロベースで、ゼロイチベースで作っていく、というのがある意味一番やりやすいやり方なのかなと思います。もちろんその分、リスクは取ってですけど。

けっこうそれってアセットマネジメントだけではなくて、銀行とかでも一緒かなと思っていて。クラウド勘定系とかって既存の勘定系システムを入れ替えていくとかではなくて、福岡銀行さんとかも完全に新しい会社を作ってそこで新しい銀行システムを作っているんですよね。

っていうのがクラウド勘定系で起きていることなんですが、新しい箱を作って、そこのガバナンスは完全に変えてしまうというのと、一緒なんだろうな。大きい会社って、完全にこういう仕組みでやりなさいみたいな開発するところがあるんですよ。予算が超えたときはこういう稟議フローでやりなさいだとか。クラウドは使っちゃダメだとか。

そういういろいろなガバナンスルールがガチガチにあって、そこで戦って作るよりも新しい箱を作ってスクラッチでやるのは、ぶっちゃけ人生の勝ちパターンだなと正直思っています。

ただ、それはわかりやすい例ではあるんですけど、けっこうリスクはリスクというか。ジョイントベンチャーをボンボンやるごとに出資はしないといけないので、けっこうリスクはあります。

っていうので、そこの見極め難しいなと。そのオプション1個だけだと会社としては正直弱いなと思っていて、エクスチェンジできる会社ではありたいみたいなのは思っているのでそうなったときに、何度かやって感じているのは、やっぱりDXって開発文化の輸出だよねって。

ある意味、もともと僕はDeNAとかGunosyとかでtoC向けのSystems of RecordというよりはSystem of Engagementみたいな世界で生きてきた考え方を輸出していて、アジャイルっていうのは息を吸うようにできて。

それを当たり前にしていく文化を作っていくところが本質なんだろうなと。結局その文化がなくて稟議フローがガチガチのところにアジャイルだとか言っても絶対機能しないわけですよ。

毎日デプロイ何回しましたか? みたいな世界で生きてきたのに、デプロイするために1ヶ月書類書く必要がありますとか。無理に決まっているんですよね、そんなところで(笑)。

理想はスクラッチなんですけど、せめて開発文化をどう輸出していくのかみたいな。例えば受託外注文化だったら、内製エンジニアを組織していくところから始めましょうよだとか。どちらかと言うと、上から落とすかたちですかね。DXって内製組織を作ることですよね、といった感じで。

それでアジリティの高いデリバリーフローを作っていくことですよねって。そういう話とかをして組織文化を変えていくっていうのがないと、本質的なDXはできないんだなっていうのを最近感じているという状態です。以上です。

石黒:榎本さんはDXになると話がだいぶ(笑)。先ほどの石川さんばりに(笑)。

榎本:ははは(笑)。

既存システムとは少し離れたところにシステムを作る

石黒:では10X石川さんも同じご質問をぜひお願いします。

石川洋資氏(以下、石川):やっぱり榎本さんが言っていることと近くて、僕らも外部から既存のシステムとは連携しないというか、既存のシステムとは離れたところでシステムを作ることにしています。ちょっと違うのは、言っても僕らいきなり商品データとかをもっているわけではないので、一部、腐敗防止層みたいな感じで、コネクターみたいなものを作っているんですね。

僕らはフルスクラッチで自分たちの理想の小売りのシステムを作って、そこに対して既存のデータを取り出すためにコネクターを作ってつなげる感じになっています。やっぱり契約上、パートナーの稟議の速度とかに律速されては困るので、基本的にうちの内部で話が進むように契約は進めていますね。

ITリテラシーの話なんですけど、うちの場合はやっぱり物だけ作って「はい!」っていうのはどうしてもできないもので、既存の運用者とは密にやらなきゃいけないんですね。そういう中なので、プロダクトとセットでコンサルも一緒に入っています。

それぞれで我々ってどういうふうにやっているとか、どういう改善の回し方をしているとか、そこに対してどういうふうに内部では進めてほしいかとかを伝えるようにして。コンサルとプロダクトをセットで進めるかたちでDXを進めています。

僕らの将来の在り方としては、小売りは小売りで僕らにはない強みをもっているので、その強みを出してもらいつつ、僕らもシステム側で強みを出して共存して反映していくという姿を目指しています。

石黒:ありがとうございます。共存して反映ですね。

オンボーディング

石黒:次何だっけ? 組織のオンボーディング。少し話が飛んじゃいますが。

このコロナ禍で、もう3ヶ月くらい経っていると思うんですが、オンボーディングで工夫している点。もしくは10Xさんもこの間、採用を強化するみたいなことを矢本さんが話しされていましたけれども、実際どんなふうに進んでいますかね? というところを石川さん、榎本さんから聞かせてもらえれば。

石川:僕が先ですかね?

石黒:はい、お願いします。

石川:まず10Xの場合は採用プロセスにトライアルで働いてもらうというのがありまして、そこでオフィスデーを使うことにしています。今コロナの状況の中で我々も働き方を模索している最中で、今は週1だけオフィスを開放して、行ける人は行こう、みたいな感じでやっているオフィスデーがあるのですが。

トライアルをオフィスデーにぶつけて、そこでどんな感じで一緒に仕事ができるかっていうのをやっています。やっぱりコロナの状況になっても仕事の進め方ってそんなに変わらないと思っていて。

そもそも対面じゃなくても、与えられた情報に対して自分ができることをきちんと整理して進められるっていう人じゃないと、チームには迎え入れられないなと思っています。そういう力をもっている人は、オフラインでもオンラインでも足りない情報は自分で取りに行くし、必要な結果はちゃんと出していくスタンスだと思うので、基本的にはそんなに変わらないかなと思っています。

入社して3ヶ月くらいのエンジニアがいるんですけど。実は今まで通算で5日しか出社したことなかったっていう事実に最近気づいて。その事実をもって、やっぱりコロナでリモートになっても変わらないところは変わらないんだなっていうことを実感しました。

石黒:ありがとうございます。LayerX榎本さんお願いします。

榎本:僕ら3ヶ月前くらいに完全にフルリモートに切り替えて、それまではむしろリモートはそんなに推奨していなかったんですよね。週1リモートのやつがまあいてもいいかくらいのテンションで。

基本スタートアップの強みって密度の高いコミュニケーションだよねみたいな。スピード感を出すためにコミュニケーションスピードを落とすようなことはダメだよねみたいな。っていうところから、完全にアンラーニングみたいなところで今フルリモートやっている感じですね(笑)。

実際やってみて、まあいけるなみたいな。もちろん改めてオフィスの役割の再発見と言いますか、濃いディスカッション。やっぱり音声コミュニケーションってどうしても同時に1人しかしゃべれない。インタラクティブに複数人が並列にしゃべれるとかがないので、密度の高いディスカッションがしづらいっていうのは間違いなくありました。

帰属意識みたいなところで、やっぱりオフィスという場の役割はあったんだろうなと思いつつも、逆に言うとそれ以外のところはかなりリモートでもできている、ないしリモートのほうがいい面もかなりあるのを完全に組織として、ちょっと反省していて……。穴にいちゃダメだな、みたいな(笑)。けっこうカジュアルに経営メンバーでも話したりはしているんですけれども。

というわけで、今はフルリモートからさらにオフィスのよさをどう掛け合わせるかっていうのを実験している最中です。具体的には週1以上、任意で、逆に時期とかは合わせないままで出社してみて、出社するってよかったっけ?っていうのを改めて思い出してもらうみたいなところから始めて……。別に出社しなくていいやっていう意見のほうが今多いんじゃないかくらいにはなっているんですけれども。

石黒:お子さんの声が(笑)。

榎本:いいことですね。こういうのも。うちもすごく家庭仲がよくなりました。リモートになってから(笑)。

オンボーディングで工夫している部分で言うと、とにかくいろいろな技術、ツールを使ってリモートでも雑談みたいなのをいかに減らさないかっていうのを死ぬほど工夫しています。具体的にはつなぎっぱ。常にDiscordっていうサービスでつなぎっぱにしています。

みんなDiscordのどこかの部屋にいて、パッて話しかけられる。パッて話しかけてすぐZOOMに移ったりだとか、そのまま議論できたりとか。いかに話しかけやすい環境にするかみたいなのは工夫してたりだとか。各チームの状況をちゃんと定例で共有するみたいなのを今まで以上にやるだとか。

雑談をいかに減らさないかみたいなところでやっている。入社予定の人は2週間に1回だとか呼んじゃって、今会社の状況はこんな感じです、みたいなのを入社前でも共有したりだとか。数字の共有会にも呼んじゃったりだとかして、スタートダッシュを切れるような環境にしています。

採用要件と組織カルチャー

石黒:ありがとうございます。次に採用要件とか組織カルチャーの話ですね。これ終わったらチャットのほうでいただいている質問に移ろうと思いますが。

3年後の想定規模感。両者ともプロダクトが出たりだとか、協業が始まったというタイミングかと思うんですが。想定規模感と、そこで活躍する方はどんな方ですか? というところをぜひ聞かせていただければと思います。10X石川さんからお願いします。

石川:3年後は、そうですね。スーパーへの提供もいろいろ進んでいっている世界になっていると思います。今はネットスーパーのアプリ版を出すプロダクトになっているんですけれども、3年後には食品小売のいろいろな面の仕組み、例えば物流ですとか在庫管理とか、そういうところをサポートしているような世界になっていると思います。

そうなるとエンジニアの数も当然今の数じゃ足りなくて……。何人くらいですかね。30人から50人とか。それくらいの規模になっているのかもしれないですね。

そこで活躍している人は、やっぱり今の状況とそんなには変わらないかなと思っていて。全員がそうかはちょっとわからないですが、少なくとも今いるメンバーのような人がチームの中心には居て、そういう人をサポートする人なり、そういう人も段階的に迎えていくようにはなるのかもしれないかなと思っています。そんな感じですかね。

石黒:ありがとうございます。ではLayerX榎本さんお願いします。

榎本:基本的に僕は正直ちゃんとわかんないですね(笑)。不確実性が高いことをずっとやり続けているので、1年後の予想すらおこがましいくらいには正直思いつつやっているんですけれども。1000人とかの規模はまったく想定していないですね。けっこう少数精鋭を膨らましていくみたいなので。多くても200いっていないんじゃないかなくらいには思いつつも。

ただたぶんいろいろな事業のやり方があると思います。ドメインによって、そもそもエンジニアじゃなくてここはこういう人を採ってやったほうがいいなとか。当然今後出てくる気はするので、ちょっとすみません、一律でこういう規模ですみたいのは断言しづらいですね。

活躍する人のベースはまったく変わらないなとは思っていて。最初に言ったアニマルっていうところですかね。目の前の課題を全力で解ける人。

これは自分のキャリアのためにならないからとか言う奴じゃなくて、この課題を解くためにはどうしたらいいんだ!みたいなのを全力で考えて、死ぬ気でキャッチアップして突破していく人が引き続き活躍しているんだろうなと思っています。

石黒:突破する人ですね。ありがとうございます。両者とも似ている回答でしたね。両CTOありがとうございます。