既存の顧客に支えられている点を重視しないといけない

稲守貴久氏(以下、稲守):ありがとうございます。今たくさんグループ経営についてお話いただいたので、次のトークにいきたいなと思うんですけれども。まずは社長としての事業戦略。あとはエンジニア出身というところで、技術としてどのようにやっていくのかといったお話を聞きたいと思います。ではここは平岩さんから。

平岩健二氏(以下、平岩):まず言いたいのは、本当に、既存のお客様に支えられてきたという点なんです。弊社のサービスは、先ほど述べたように創業から18年経つんですけれど、この前お客様の利用年数を調べたら、15年以上のお客様が1万人、18年、創業当時から支えてもらっているお客様も2000名とかいまして。本当に常に感謝したいという気持ちです。

会社というのは、やはり新規のお客様を集めたいというのがどうしても出てしまうんですけれど、既存のお客様に支えられているという点を、弊社は本当に重視しないといけないと思っています。新しい時代に合わせていくーー5Gもそうなんですけど、それを既存のお客様に、どういうかたちでうまく使ってもらえるかをすごく考えているところです。

弊社はドメインとかレンタルサーバーの、いわゆる世代でいうとネットのサービスの中でも古い世代のサービスではあるんです。そのサービスに、どう新しい技術とか新しい考え方を導入していくかが、既存のお客様に新しいものを使ってもらえるかという視点で、すごく重要かなと思っています。

ドメインサービス、レンタルサーバーサービスもそうなんですが、今後新しく出る5Gに対応できるようなレンタルサーバーを弊社は近々リリース予定なんです。それについても、そういう視点で既存のお客様によりよく新しいサービスを使ってもらう、かつ新しいお客様にも魅力的に思ってもらうことを重視していて、技術的にも開発を進めつつ、事業的にもそういうかたちでみなさんに貢献したいと考えています。

現金からクレジットカード決済へ。テクノロジーシフトで見えてくるパラダイム

稲守:ありがとうございます。では続いては杉山さんはいかがでしょうか?

杉山憲太郎氏(以下、杉山):我々は先ほど紹介にもあったとおり、7月15日に東証マザーズに上場しました。上場を1つターニングポイントとしてしっかりと事業戦略は考えていきたいと思っています。

具体的に話すと話がかなり長くなってしまうんですけれども(笑)。まずは一番直近で対応していきたいのは、先ほど話したコロナ禍で影響を受けた加盟店様は、かなり飲食店を中心に人の流れが変わってくるので、そういったところをキャッシュレスで、なるべくリスクを回避するようなサービスを提供していきたいと思っています。

テクノロジーシフトとしては、やはり決済という行為が現金からクレジットカード決済になることによって、リアルタイムでいろいろな購買の情報が取れてくる。そんな世界に変わっていくと思います。

例えば、飲料自販機のオペレーターさんがわざわざ現地に出向いて飲料自販機を開けて、在庫を確認して足りないものをトラックからもってきて詰めていく、といった従来型のオペレーションから、リアルタイムで足りないものや売れ筋のもの、あとはその周りのイベントあるいは気候の情報と連動させて、新しいデジタルトランスフォーメーションを作っていければと思っています。

話すともっとたくさんあるんですけれども、限られた時間ですので(笑)。そういったデジタルトランスフォーメーションを一緒にしたいと思っています。キャッシュレスのプラットフォームを使って、いかにそういった世界を導いていけるかが、我々の戦略なのかなと思っています。

稲守:ありがとうございます。今のお話の中で聞きたい部分があったんですけれども。例えば私が、とあるホテルでケーキを買いますとなったときも、まさにフィナンシャルゲートの機械があって、レシートが出てきてGMOって書いてあって。あ、弊社だ!って僕は思ってたりするんですけれども(笑)。いわゆる人間の行動様式が変わってきていて、そういった中で、今フィナンシャルゲートとしてビジネスが変わってきている部分はあるのでしょうか。

杉山:足元で一番変わっているのは、やはりセルフ化の要望が多くなっていますね。今までカードを渡して決済するのが、クレジットカード決済の主な振る舞いだったんですけれども、それがだんだんセルフ化されて、最近ではカードを渡さずにかざして決済したり。そういったところもカード決済のブランド側も推進しているので、そこが変わってきていますかね。なので、接触しないというかたちでサービスを提供する。

稲守:リアルなんだけど接触しない。

杉山:そうですね。

稲守:なるほど、まさに新しい行動様式ですね。わかりました。ありがとうございます。

楽しさをいかに失わず大きくなるか

稲守:ではぜひ荻田さんにも、事業戦略や技術戦略の話をお聞かせいただきたいんですけれども、いかがでしょうか?

荻田剛大氏(以下、荻田):先ほどの話とちょっと被ってしまうんですけれども。僕らの事業、技術を含めた組織戦略として、数人の会社から、もっと大きくしっかりした会社になっていきたいなと思っていて。その際に、楽しさみたいなところをいかに失わずに大きくなるかというのがやっぱり一番の課題なんですね。

稲守:楽しさ。

荻田:例えば難しいですけど、技術戦略だと、レガシーなシステムは嫌じゃないですか。新しいバージョンが出たら使ってみたいじゃないですか。とりあえずアップデートしたいじゃないですか。

稲守:すごくわかります(笑)。

荻田:でもアップデートしたら影響はわからないし、絶対不具合はあるし、踏んじゃうし。でもアップデートしたいからしてみよう、というスタンスなんですよね。だって嫌じゃないですか、いいのはわかっているのになんで使わないの?みたいな。そのリスクは取ろうよ、というスタンス。こうしたらユーザーにとっていいサービス作れるじゃん、という判断軸でやっているんです。

僕らって、すごく情けない話、僕の承認プロセスってほぼないんですよ。ユーザーに接している人が一番正しい、というスタンスで会社を経営しているので、エンジニアがこの技術がいいとかこの機能がいいとか、仕様はこれがいいみたいな。APIサーバーは絶対直したほうがいい、増強したほうがいいなど、そういうときには勝手にやっているんですね。それで「あ、意外に高いな!?」というときもあれば(笑)。

ただそれによって、自分たちが正しいと思えることをやっているから、楽しく仕事ができているんですね。やるべきことをやれているなっていう。

これってけっこう組織を大きくしていく上で、失われていく感性でもあると思うんですよ。 Androidの4系はもう切りたいんだけど、でもユーザーは1パーセントいるなぁみたいなときに、今までだったらアップデートできないだけなので、基本機能使えるし、それ以外の99パーセントのユーザーにはいいものだから、やっちゃおうよってしているんですよ。ちゃんと通知してユーザー問い合わせには対応しているんですけれど。そのノリ。こっちのほうが絶対いい、自分はいいと思うみたいな。

デメリットあるけども、これがいいと思っているみたいなのを突き通せるノリみたいなのを、いかに大きな組織で担保し続けるかっていうのがけっこう課題だなぁと思って。ユーザー数が、今僕ら1000万ダウンロードくらいあるので、これやっちゃうと……1パーセント減っただけでも10万ダウンロードじゃないですか。なのでちょっとできないねとか。

さっき5Gの話もありましたが、僕らはGMOインターネットと一緒に、5GのWi-Fiルーターをどうしようかみたいな話をしています。作っちゃおうか、みたいな。完全にゼロからのスクラッチって、やっぱりノウハウがないのであれですけど、ただ中に1人、けっこうそういうのが好きなメンバーがいて。

ビジネスの話からしても、どこかから仕入れたものを販売するだけじゃなくて、やっぱり自分たちで深センとかに外注してオーダーメイドすれば、ストック型になるじゃないですか。ビジネス的にもいいし、そっちのほうがいいサービスを作れそうだし。そういうときに、ノウハウはないけどやりたいからやっちゃおうか、みたいな話をしているんですね。

そういうノリみたいなのをどう担保させつつ、組織を大きくするかというのが、最大の課題なので。最近上場されて、一番そういうノリが通じなくなっているんじゃないかなっていう杉山さん、どうですか?(笑)。

「ユーザーが決める」が確かに正しい姿

杉山:先ほど話していた「ユーザーが決める」というのは、確かに正しい姿だと思うんですよね。ユーザーが望んでいるものをサービスとして、当然そこに安全性も含めて提供できるかが、我々のテクノロジーを知ったサービスプロバイダの役割だと思うので。すごくそれはありますね。

でも上場したからそれができなくなるかというと、そういうことでもなくてですね。上場すると、やはり市場に対していろいろディスクローズしていかなきゃいけないんですけれども、そういったところをしっかりしていけば、非常に……何と言うか、イズムみたいなものは変わらずもっていきたいと思いますけどね。「ユーザーが使いやすいもの」というのは一番の選択肢になると思いますね。

荻田:杉山さんがエンジニア出身でものづくり畑の人だったから、そういう発想になるんですかね?組織が。

杉山:あー、そうですね。やはり中身が気になるんですよね、なにを見ても。そう言った意味では、エンジニア出身でそういった知見があるから、いろいろなサービスに早く取り掛かれる、というのはあるかもしれないですね。

荻田:けっこう現場まで入っているんですか?

杉山:今はそこまでは入っていないですけれども。サービスをリリースする前にいろいろな判断をしていかなきゃいけないときは、質問もちょっと技術寄りな質問になって。これが正しいのかなと思いながら(笑)、アセスメントに関してはそういうふうになっちゃうっていうのはありますね。現場のエンジニアは嫌がっているのかもしれないですけども(笑)。

荻田:平岩さんはどうなんですか?

平岩:私もまだ口を出しちゃいますね、嫌がられていると思いますけど(笑)。でもできるパートナーに、本当に刺激を受けていて。その方々を成長させたいためにも、いい意味で対抗心をもって新しい技術だったり新しいニュースだったり新しいいろいろなサービスだったりを提案するは常に行うようにしています。

荻田:対抗するんですね(笑)。

平岩:負けたくないっていうのがあるかもしれないですけど(笑)。そろそろおとなしくならないといけないのかもしれないです。

荻田:すごいですね。僕は全然勝てないって諦めちゃいましたね。無理だって(笑)。

得意なことをやって得意じゃないことはやらない

稲守:新しい技術をどんどん取り入れていこう、チャレンジしていきましょうっていうカルチャーって、みなさんどうやって作られているんですか? 意識されているのか、社長自らガンガンやっていくのか、それともチームで常にそういうのをやりましょうとか。

荻田:身も蓋もない話をすると、もうこれはその人の特性なので採用しかないと……が本質だなとは思いますね。僕らって「得意なことをやろうよ」っていうのを合言葉にしているんですね。得意なことをやって、得意じゃないことはやらなくて、あなたにとって得意じゃないことでも、誰かの得意だったりするので。

うちのエンジニアはけっこうインフラ周りが苦手だったりするんですけれど、インフラ得意な人もいるじゃないですか。すごくきれいなインフラが作れる人。GCPなので、GCPのノウハウがあんまりなくて苦労しているんですが、すごくノウハウがある人もいると思うんですよね。

そういう人を採用して、採用するときもユーザーのためにって言える人であれば、僕らのカルチャーにも合うので採用して……だと思っていますね。教育というのが僕らは今は苦手で。なんですけど、そのへんはどうですか?

杉山:企業は人なり、というのは常日頃私は感じていて。自分が全部やるのは難しくなってくるんですよね。そうすると、やはり中途の採用もそうですし、新卒の採用もそうですし、採用してからが終わりじゃないので。

そこから同じイズムをもって、同じベクトルでいろいろな得意な分野をより伸ばしてもらって、というところは我々も一事業体としてしっかりやらなきゃなっていうふうには思っています。それは課題と同じように思っていて。それをやらなければ成長はないなっていうのはわかってはいるので。そこはしっかりと対応したいなと思いますね。

荻田:教育も含めて一緒に伸ばしていこうっていう。

杉山:そうですね。採用して終わりって感覚はみんなにもってもらわないように、そこからいかに育てるかといったところも含めて。お客様にも育ててもらっていますし。その恩返しも含めてですね。

荻田:ここが大人な会社ですよね(笑)。うちは言っても10数人なので。育てるみたいな発想がみんなないんですよね。自分たちと同じようなレベルの人たちをがんばって採用して、教え教わるみたいな。そういうスタンスになっちゃっているので、すごく苦労しているんですが、そういう大人な会社になりたい(笑)。平岩さんのところはどうなんですか?

平岩:今は荻田社長と同じようなスタンスですね。僕が個性があるのかもしれないですけど、個性的な人をうまくその能力を活かすようなかたちで。まあ少人数だからできるというのもあるんですが、そういうやり方にしていますね。会社で決めたルール通りにやってください、という感じは極力避けたいなと。

ともに「すべての人にインターネットを」というミッションを目指す

稲守:ありがとうございます。残り時間も少なくなってきたので、まとめではないんですけれども、最後に視聴している参加者、エンジニアが半分くらいいたと思うんですけれども、ぜひスピーカーのみなさまから参加者にメッセージをもらえればと思います。荻田さんからお願いできますか?

荻田:みなさん、40分に渡って視聴いただきありがとうございます。実は今、けっこうGMOのエッセンスは伝わったんじゃないかなと思ってですね(笑)。こういう僕らみたいな、まだまだスタートアップのゴリゴリな会社もいれば、杉山さんみたいな上場して大人になっている会社もいて。

それぞれが支え合ってというか、いいところ悪いところを改善し合って、一緒にすべての人にインターネットという……僕これすごく好きな言葉なんですが、「すべての人にインターネットを」というミッションを目指していくという、あんまり伝わらないかもしれないですけど、実は熱い志をもった僕らなので。ぜひ興味をもったら、また一緒に、いつかリアルでお会いできればいいなと思っています。本日はありがとうございました。

稲守:人の採用も強化しているということですので。

荻田:言っちゃダメかなぁと思って(笑)。

稲守:いやいや、全然いいんじゃないですか。

荻田:今僕らエンジニアは3名、デザイナーは2名なんですね。自分の得意なことをやろうというのと、自分たちが正しいと思っていること、ユーザーにとっていいと思うことを自由にやれる環境をがんばって作っていますし、今後組織が大きくなっても作っていきたいなと決意しているので。

自分が決めてユーザーへのいいことを自分がやりたいっていう意志をもっている方は、うちに合うんじゃないかなと思います。採用って合う合わないなので。優劣か優秀じゃないかじゃなくて。

稲守:先ほどの話と一緒ですよね。

荻田:そうですね。以上です。ありがとうございました。

変化の中で存在感を出せる千載一遇のチャンス

稲守:ありがとうございます。では大阪の平岩さんからもぜひ一言ほしいんですけれども。

平岩:そうですね。時間もないので。今コロナで大変苦しんでいる方も多いと思います。この変化の時代は、ある意味チャンスだと思っていまして、弊社のように地方だったり小さな会社にとっては、この働き方が変わる中で、存在感を出せる本当に千載一遇のチャンスだと思うので。

この大変な状況を乗り越えつつ、次の時代につながるような組織改革だったり成長を、みなさんと一緒に、かつ変化を楽しむスタンスでやっていきたいと思っています。今後ともよろしくお願いします。今日はありがとうございました。

稲守:平岩さんありがとうございます。今年全然大阪オフィスには行けていないんですけれども、行けたらまたぜひよろしくお願いいたします。

平岩:はい、ありがとうございます。

手を挙ればどこかの会社のスペシャリストが助けてくれる

稲守:では最後に杉山さん、よろしくお願いいたします。

杉山:短い時間だったんですけれども、エンジニアのみなさんには、本当にものづくりってサービスにとっての根幹なので、しっかりと自身の強みをより表現してもらいたいなと思っています。

GMOの宣伝をするのもあれなんですけれども、GMOって必ず、どこかの会社のスペシャリストがいるんですね。手を挙げると、その方が必ず助けてくれる、そんな文化なので。自分がやりたいこと、自分の強みをより活かしたい、環境を変えて活かしたい方は、GMOグループって非常にアグレッシブな選択になるかなと思っています。

そういった仲間たちと働けるというのが、私は非常に幸せだなと日々思っています。本日はありがとうございました。

稲守:ありがとうございます。では以上でスペシャルセッション『GMOのエンジニア社長』を終了したいと思います。ご清聴ありがとうございました。スピーカーのみなさんに拍手をお願いします。

(会場拍手)