LINEのData Science and Engineeringセンターについて

池邉智洋氏:よろしくお願いいたします。Data Labsの室長を担当しております執行役員の池邉と申します。

本日オンラインではありますが、大変多くの方にご視聴いただいているようで、本当にありがとうございます。私からはまずData Labsの組織の位置づけとその概要についてお話しいたします。そのあと各担当からより詳細なお話をさせていただくという流れで進行していきます。

あらためて、まず我々LINEのプラットフォームについてです。今日見ていただいている方はおそらくお使いいただいているかと思いますが、まず、コミュニケーションサービスの「LINE」のアプリを中心に、現在では日本・台湾・タイ・インドネシアで1億6,500万人を超えるプラットフォームとして成長してきています。

プラットフォームの上では、チャット・通話のようなコミュニケーションを基本として、それ以外にも最近では「LINE Pay」「LINE証券」のような金融サービス。あとは「LINE MUSIC」「LINE LIVE」のようなエンターテイメントサービス。また、「LINEマンガ」「LINE NEWS」のようなコンテンツサービス。メッセンジャーという枠を超えて、非常に多様なサービスを展開しています。

そういった多様なサービスの中から、非常に多くの種類の大量のデータが日々生成されている状況です。また、非常に多くのデータをどう我々として次のビジネスにつなげていく、ビジネスとして拡大していくためにどうデータを使っていくかというのは、我々LINEグループ全体として、経営上の非常に大きな課題として捉えています。

そこで、大量のデータに横断的に対応するための組織として、CTO直下に「Data Science and Engineeringセンター」という組織を立ち上げました。

社内では「DSEセンター」という略称で呼ばれているんですが、「センター」というのがLINEの組織図における担当役員の直下にある最上位の概念となっていて、DSEセンター全体についてはCTOのパク・イビンが直接管掌しております。

DSEセンター全体としては、本日のお話の対象となるData Labs以外にも、大量のデータを保持するインフラの部門であったり、全社のデータをどう活用していくかといった戦略を法務面なども含めてサポートするような役割を持っていて、およそLINEで生成されるデータに関するすべての責任を持つ組織がDSEセンターということになっています。

Data Labsの中も組織としては分かれていて、こういった組織図になっています。

各種サービスの分析を行なうData Scienceチーム。LINEの膨大なデータを使用してマシンラーニングのソリューションを提供するMachine Learningチーム。その他も、主に研究的な活動をしているリサーチのチームもあります。こちらのチームは機械学習関連の論文の発表を積極的に行なっている組織です。

あとは「OCR」「NLP」「Voice」「Speech」のような注力分野をいくつか設けているので、そこはLINEのデータを使うというよりは、もっと一般的かつ先進的なAI技術の開発を行なうチームが存在しています。

Data Scienceチームの紹介

本日はそのなかでもこの赤枠で囲まれた、LINEのデータを使っていろいろなことをやっていくData ScienceのチームとMachine Learningのチームについての説明会となります。

この技術的な詳細はこのあと担当者から詳しくあるのですが、簡単に私のほうからもご紹介しておきます。

まずはData Scienceチームについてです。LINEは非常にユーザーが多いサービスであるため、少しUIを変化するだけでもユーザーに与える影響が非常に大きいです。実際SNS等でも「使いづらくなった」とか「前のほうがよかったなど」、いろいろなお叱りを受けることも多かったりします。

そのため、やはりUIでも大幅な変更等を行なう場合にはA/Bテストなどを行い、「実際にユーザーの行動がどのように変容したのか?」「目論見どおりに成果が出ているのか?」といったことを細かな指標を立てて確認しながら行っています。

LINEではそういったプロダクトの改善のプロセスとして、「仮説を立ててA/Bテストを行って、データを分析して検証」という流れが強く定着しています。

Machine Learningチームの紹介

続いてMachine Learningのチームです。LINEのトークタブの一番上のほうに最近こういった枠がたまに出てくると思うんですが、こちらは「Smart Channel」というものでして、LINEのさまざまなサービスからコンテンツを集めて、ユーザーの行動をもとにどのようなコンテンツがそのユーザーに必要とされているかを予測して提示する枠になっています。

さまざまなコンテンツを横断的に利用してパーソナライズを行って、優れたユーザビリティを提供したいという、LINEならではの試みなのではないかと思っています。

また、今回のイベントの対象ではないんですけれども、「LINE BRAIN」という法人向けAI事業もやっています。

例えば、最近注力しているところですと、「LINE AiCall」という自然言語で電話の応対を行うというものです。適用の範囲ですと、コールセンターやレストランとかの電話予約といったプロダクトをBtoBtoCとして展開しています。このように、研究成果を事業に活かすこともやっています。

まとめますと、我々Data Labsとしては、LINEのデータを分析することによるユーザーの理解の推進。あとはデータを活用することによって提供できる優れたUIや、効率的なコンテンツの露出。さらに研究開発を通じて得た先進的な技術を活用した新しいユーザー体験というものを、Data Labsの活動の主軸としています。

本日のイベントを通じて、こういった我々の活動により興味を持ってもらえたらいいかなと思っています。

それでは、短い時間ではございますが、このあとのコンテンツもぜひお楽しみください。私からは以上です。

では、続きまして牟田さんお願いします。

Data Scienceチームの紹介

牟田博和氏:ただいま紹介にあずかりました牟田といいます。よろしくお願いします。「Data Scienceチームの紹介」です。

まず自己紹介です。名前は牟田博和といいまして、Data Science1チームのマネージャーをしています。業務としては、Data Scienceチーム内の4つのチームの運営をやっていたり、Smart ChannelやLINEマンガ、LINE MUSICなど、いくつかのサービスの分析プロジェクトを担当しています。

実はData Scienceチームは4つに分かれていまして、それぞれ業務領域でData Science1チーム・2チームと分かれています。ですが、実質1つのチームとして運営していて採用も共通でやっているので、いったんチームが分かれているという話は気にせずに聞いていただければと思います。

本題に入る前にご説明をしておきたいのですが、Webに資料を公開しています。今日の発表資料ではなく、Data Scienceチームのジェネラルな紹介をした資料です。ぜひ「Introduction of LINE Data Science Team」というワードで検索していただくか、このURLにアクセスしていただけるとチームの雰囲気がよく理解できるかと思うので、ご興味のある方はぜひ見てみていただけるとうれしいです。

では、本題に入ります。せっかくみなさんに集まっていただく採用説明会なので、Webの資料に掲載していないような、担当プロジェクトの話を厚めにさせていただきたいと思っています。その前にその前提となるようなミッションや働き方の説明を簡単にさせていただきます。

Data ScienceチームとMachine Learningチームの役割分担

まず、Machine Learningチームとの役割分担について簡単にお話をします。池邉からも説明があったように、Data Labs自体はLINEのデータ活用を先導する役割を担っています。その中で、Data ScienceチームとMachine Learningチームがどのように役割分担しているかを端的に説明したのがこのスライドです。

Machine Learningチームがプロダクトを最適化する機械学習、要するにエンジニアリングにフォーカスしているのに対して、我々は意思決定を支援し人を動かすためのデータ分析にフォーカスをしています。ただ、Data ScienceチームがMachine Learningチームのような業務をやったり、オーバーラップする領域は当然あるんですが、基本的にはこのような役割分担でやっています。

Data Scienceチームの業務の例を少し説明すると、例えば、みなさんがイメージされるとおりダッシュボードを作ったりもしますし、LINEに新機能が入ったときに「その効果どうなんだっけ?」というような効果検証をしたり、あとはマーケティングに使うようなユーザーターゲティングのためののモデルを作ったり、ユーザー行動モデルを作ってインサイトを得てプロダクトの改善に活かしたりということもやりますし、事業戦略に近いような分析をすることもあります。

担当するサービスのフェーズや特性に合わせて非常に幅広い分析をしているのが我々の業務になっています。

Data Scienceチームの2つのミッション

次にミッションなんですけれども、Data Scienceチームのミッションとしては大きくこの2つを設定しています。

1つ目が、個別のLINEサービス、要するに各サービスの競争力にデータ分析の力で貢献するというところです。

その中でとくに意識してほしいとメンバーに対しても強調しているのは、継続的改善の仕組みづくりをするというところです。違う言葉で言うと、我々がいなくても適切に業務が回ったり適切な意思決定ができたりといったことが回っていく環境、仕組みを作るといったことです。

そのような取り組みをしながら、2番目にある、より重要な課題への取り組みを増やしていきたいと思っています。

2つ目が、個別のサービスだけじゃなくて、LINE全体にスケールするような取り組みをすることもミッションとして掲げています。例えば、ツールやプラットフォームをData Science Engineeringセンターのほかのチームと協力して作るということや、全社によい分析事例を共有するといったこともそうですし、プロセスや方法論を整理して全体に展開するといったことももちろん含みます。

とくに2番目のほうはあまりできていなかったりするので、これからのところはありますが、こういった全社への貢献を通して、LINEをデータ分析の力でより広くしていくといったことをミッションにしています。

メンバーのアサイン方法

次に、とてもよく質問をいただくアサインの方法なんですが、基本的に1人1プロジェクトを担当します。数名でチームを組んで各事業部やプロジェクトをサポートするかたちで仕事をしています。

分析をするときに技術的なディスカッションや「ここってどうなんだっけ?」というディスカッション、コードレビューや分析レポートのレビューなどを日常的に行っているんですが、それはこの小さいチームの単位で実施します。

先ほどData Scienceは1〜4チームあると言ったんですが、全部合わせて20人ぐらいの規模です。それぞれ数名ずつのチームに分かれて仕事をしているんですが、その20人の中でもSlackチャンネルで情報共有し合ったり、週1で事例共有会というものを開催して最近のプロジェクト事例について共有し合ったりといった活動もしています。

それぞれのメンバーが違うプロジェクトに関わるかたちで仕事をしているんですが、そのサービス同士が連携することもよくあるので、担当プロジェクトを超えて協業するような機会も最近ではとても増えてきています。基本的には1人1プロジェクトにアサインされるよということを覚えておいてください。

複雑なLINEアプリの分析

ここまでが担当プロジェクトを説明するための前提の説明で、ここから担当プロジェクトの説明に入りたいと思います。まず1つ目、LINEアプリの分析です。

DSチームではLINEアプリの主要な機能に対して分析を提供しているんですが、最近ではHomeタブやWalletタブのUI/UXの最適化をやっています。おそらくみなさんの中にも「最近UIが変わったな」と気づいた方もいらっしゃるかと思います。そのあたりは、池邉からも紹介があったように、A/Bテストを含めた分析をたくさんしながら改善を進めています。

LINEスタンプの分析も担当していて、最近は1年ほど前にリリースされたスタンプ使い放題サービスの「LINEスタンプ プレミアム」などのサービスの分析に力を入れていたりもします。

これらのプロジェクトの特徴は、まずデータがすごく大きいことですね。国内だけでも8,400万の月間アクティブユーザーがいるということでご想像いただけるのではと思います。また、LINEアプリはいろいろな機能があるので、例えばHomeタブのUIを少しだけ変えたら予想もしなかった数値が動いたといったこともけっこうあります。

要するに、アプリがすごく複雑なのでユーザー行動も複雑なんですね。だから例えば、指標設計が難しいといった課題もあって、だけどそこがおもしろいみたいな、そういった特徴のプロジェクトです。

LINE公式アカウントや広告の分析

もう1個、我々のチームで担当しているのが、LINE公式アカウントや広告の分析です。一般ユーザー向けというよりは法人向けのサービスの話になります。

最近やっていることは、「LINE公式アカウントのメッセージが多すぎてUXが悪くなってるんじゃないか?」といった課題に対して、機械学習的なアプローチで良くできないかというようなことを試していたりします。

それから、LINE公式アカウントというのは、LINE以外の企業だけでなく、LINEマンガやLINE PayなどLINEが提供しているサービスにとっても重要なCRMツールになったりしますので、各事業部と一緒にLINE公式アカウント周りのユーザー体験を良くするというような業務が多く、社内の多くのデータを触ります。たくさんのサービスのデータを触る機会が多いことが特徴です。

あとは(スライドに)「広告の配信最適化」とありますが、広告はLINEで最も売上が大きなサービスの1つです。少し前までは「LINE Ads Platform」と呼んでいたものなんですが、この領域の分析もData Scienceチームでサポートしています。MLチームを含めてほかの広告の開発チームと連携しながら配信ロジックの改善に取り組んだりといった仕事をしています。

広告の仕事はなんと言っても売上が大きくて、データ分析で改善できるところが多くて、さらに改善効果がすごく見えやすいので、「自分が関わった改善が何億円の売上につながった」といった貢献が見えやすいところが魅力なんじゃないかなと僕は思っています。

連携が重視される金融系サービスの分析

次は金融系サービスの分析の話です。最近一番多いのはLINE Pay関連のタスクなんですが、LINE証券やLINE家計簿、LINE Pocket Moneyなど、そのほかの金融系のサービスの分析も最近とても増えてきました。

金融領域のサービスはLINEの中では比較的若いサービスなんですが、今後の成長が見込めるという点では、いろいろな意味で変化が楽しめそうなサービスだと思います。

金融系サービスはユーザー視点でも、相互利用していただける可能性が高いですし、同じお金に関するサービスということでサービス間のシナジーを生み出しやすいだろうということで、サービスの連携がすごく重視されています。

Data Scienceチームはファイナンシャル全体をサポートしているので、すごくたくさんの金融系のサービスのデータを触ることになったり、Data Scienceチームがサービス同士のハブになるような役割を担っていたりという動きをしています。

金融事業に関しては、統括されている役員の方と対話しながら、金融事業全体のいろいろなことに関する分析業務をしています。業務としてはすごく幅広いと思います。

サービス横断プロジェクトの分析

サービス横断プロジェクトの分析について最後に説明します。まず、「このサービス横断プロジェクトって何?」という話です。

LINE社にはすごくたくさんのサービスがあるんですが、実はよいサービスがあってもユーザーに知られていないということがたくさんあるので、ユーザーのみなさまにLINEのサービスの魅力をより深く知ってもらうための取り組みを強化していて、その1つがこのサービス横断プロジェクトになります。

例えば、例の1つがこの左側のSmart Channelなんですが、Smart Channelはこの絵にあるチャットリストの上のほうにたまに出てくるものです。ここはユーザーごとにパーソナライズされていて、ここにいろいろなLINEサービスから収集したコンテンツや広告が出たりします。

要するに、ある最適化が裏側で走っているんですが、この最適化ロジックはMachine Learningチームが開発しており、そのMachine Learningチームと一緒になってその最適化・改善に関わるといった業務をしています。

あとは、LINEポイントクラブというのも事例に挙げています。これは、過去6ヶ月間に獲得した「LINEポイント」の総量に応じて、“レギュラー“、”シルバー“、”ゴールド“、”プラチナ“の4段階の「マイランク」ごとに、毎月LINEの各種サービスがお得に利用できる様々な特典を受けられるプログラムです。どのユーザーにどのサービスを訴求するか、あとは付与するLINEポイントを増やすとユーザーの行動がどう変わるのかとか、最適化する対象がすごく多いので、課題としてはすごく難しいと思うんですが、これも我々のチームでサポートしています。

これらの横断プロジェクトの特徴は、先ほどの説明からわかると思うんですが、いろいろなサービスのデータを使う機会があったり協業する事業部がすごくたくさんあったりするので、問題としてはすごく難しいものが多いんですけど、だからこそおもしろいと僕は思っています。

ということで、いろいろ説明しましたが、一言で言うと、Data ScienceチームはLINEの重要なプロジェクトにすごくたくさん関わっています。今日は説明を端折りましたけど、一番下のファミリーサービス、LINEマンガやLINE MUSICにも関わっています。

重要度の高いサービスに分析者として関われるのはすごくおもしろいし、たくさんのユーザーが使うサービスで効果が見えやすいし、難しい課題もたくさんあるので、分析者としては魅力的な職場だなと我ながら思っています。

最後にまとめです。サービスの事例でご紹介したように、LINEには分析者の視点でたくさんのおもしろいサービスがあると思っています。データ分析の力で我々と一緒にLINEを良くしていきたい方、ぜひ応募を検討いただければと思っています。

といったところで、私の発表を終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。