チームでデザインすることでクオリティを上げていく

五ヶ市壮央氏(以下、五ヶ市):カヤックさんのほうでは、PMの組織としてどんなふうに取り組みをされているかというお話をしていただきました。私からはデザインのプロジェクトですね。実際の案件についてお話をしてきます。「デザインプロジェクトの初期の不安定な時期をどう突破するか」というお話をします。どうぞよろしくお願いします。拍手!

(一同拍手)

ありがとうございます。簡単に自己紹介しますね。俺の名前は五ヶ市。UXデザイナーさ!(カヌーさんのモノマネ)Goodpatch AnywhereとsmartLureという……うーん、やっぱムリっすね。

UXデザイナーとプロジェクトマネージャーをやっておりまして、Goodpatch Anywhereと、あとはのスタートアップのsmartLureというところで働いています。私、札幌に住んでます。

そういう感じで……もうぜんぜん見えないじゃないですか、これ(笑)。ちょっと騒がしすぎじゃないですか。リモート環境を作る人だったりとか、miroでワークショップやったりとか、こんな感じのワークをコーディネートしている役割です。

じゃあここだけ瞬間的にちょっとまじめにいきますね。私たちは「Goodpatch Anywhere」というフルリモートのデザインチームです。ここ2〜3ヶ月で「リモートでいろいろなワークをしよう」と、デザイン以外も含めてリモートワークが盛り上がっていますね。私たちは2018年の夏ぐらいにこの「Goodpatch Anywhere」という組織を立ち上げまして、今でもう1年半ぐらいずっとリモートワークでデザインをやっております。

私たちの中でテーマとしているのが、「チームでデザインする」というところです。これを特徴として持っています。テクノロジーを駆使したリアルタイムコラボレーションによる密度の高いコミュニケーションで、パートナーとワンチームで事業推進をお手伝いしています。Slack、Zoom、Discord、Figma、miro、Scrapboxなどなど、いろいろなツールを使いながらやっています。

体制としては、1つのプロジェクトに対して、PMとUXデザイナーを兼任しているメンバーがだいたい2人、UIデザイナーが2〜3人というかたちです。

普通のプロジェクトだと「UXデザイナー1人とUIデザイナー1人、フルコミットで」みたいなかたちなのですが、Goodpatch AnywhereのPM・UXはフリーランスの方や副業的に働いている方から、私みたいにほぼGoodpatch Anywhereというメンバーまで、さまざまいます。

その案件に応じて、UIデザイナーそれぞれ、本当は1人というところを50パーセント・50パーセントで1人ずつ2人つけたり、クオリティを上げていったりアイデアの数を増やしていったりできる体制を作ろうということで、この「チームでデザインする」という環境を作ったりしています。

というところで、いい感じに(共有画面が)汚れてきましたね。今回は楽しい感じで汚していますが、こんな感じで私たち勉強会をするときは常に汚しながら、実際に気づいたことをメモりながらやっています。

プロジェクト開始から2週間、チーム内で不信感が生まれ不安定な時期に

今日のテーマはこちらです。「デザインプロジェクト初期の不安的な時期をどう突破するか」。今回のスコープは、デザインプロジェクトの初期の「何を作るか決めるまで」です。

私たちのお仕事のほとんどが体験設計から入ることが多いです。いわゆるデザインが降ってくるときに、もうやることが決まっていて仕様も画面数もそこの中に入ってくるコンテンツ・UIまでほぼ決まっている状態で、いわゆるチケットベースでゴリゴリと作っていくような感じではなく、要求とか要件を自分たちで作るところから始めています。

というところで、この仮説検証をやって、体験設計をやって、コンセプト設計してというところで、何を作るかを決めるところから自分たちでやっていくというところで、プロジェクトの初期と定義します。

プロジェクトを始めて最初の1週間ぐらい。この写真を見てください。なんか握手してますね。プロジェクトを始めたときは、やる気にも満ち溢れ、お互い期待で溢れ、「よっしゃ、やったるぜ!」という気持ちでいっぱいで、こんな感じでいい感じでプロジェクトが始まるわけなんですけれども、2週間後ぐらいには、現実が始まります。

2週間目ぐらいからは不安でいっぱいです。まず、そのお手伝いする事業の不確実性への不安って書いたんですけれども、「その事業のユーザーって誰なんだ? わからん! 業界というところがわからん! クライアントのこともわからん! もうわかんないことだらけだ!」ということに気づき始めるのが2週間目ぐらいです。

さらにやり方に関する不安がこのあたりからどんどん出てきます。ユーザーのことも業界のこともクライアントのこともわからんというと、だんだん自分たちに自信がなくなっていきます。「ああ、どうしようどうしよう」。

最初のころってデザインを作るみたいなアウトプットがすぐできるわけじゃないので、なかなかかたちにならない。しかもそのかたちになるまでの全体像というのも、UXデザインのプロセスはあるんですけれども、毎回、事業とかお仕事・役割・立場に応じてやり方って変わっていくじゃないですか。

というところで、だいたい最初のころは全体像が見えないです。見えないのが当然なんですけれども、着地点が見えずに、だんだん不安になっていきます。もう本当このまんま「胃薬持ってこい!」っていう感じです。

そうすると、だんだん徐々にお互いのことが信じられなくなってきます。これはパートナーさんはもちろんのこと、チーム内でも不信感が強まってきます。「ちゃんとやっているのかな?」「なんでそこまでしかできないんだ?」「なんでそれやる必要あるの?」「やる気はわかるんだけど、空回りしていないか?」とか、あと「なんか言われそうで怖いな」とか、不信がどんどん溜まっていく状況になります。

事業に対する不安がやり方の不安を生んで、最悪の場合、その不安はメンバー間や組織間の不信につながります。個人の不安がたくさん積もって、チームの中の状態、結果、不安定な時期が訪れてしまいます。もう怖いですね。

コミュニケーション量が少ないと不安になる

じゃあ「どうしたら不安定にならないか?」というお話をこれからしていこうかなと思います。

ムリです。不安定というのはどうしても訪れちゃいます。だいたい高確率で訪れます。もちろんたまに訪れないこともあるんですけど。

というところで、考え方としては、きっと不安定な時期は訪れるでしょう。では、どうやって不安定な時期を突破するかという話を、ポイントを3つ、今からお話ししていきます。

1つ目は、コミュニケーション量を最大化するというお話をしていきます。最初からコミュニケーション量が少ないとどうなるかなというお話をしていきます。コミュニケーション量が少ないと、想像の部分が増えて批判しがちになります。

みなさんこんな経験ないですか? クライアント、もしくはパートナー企業さん、あとは新卒入ってすぐとかだとよくあるかなと思うんですけれども、「こんなことを思われてないかな。心配だな」みたいなことをすっごい気にしちゃったりとか、逆にちょっとしたひと言を言われたのにそれをすごく大きく感じ取っちゃって、「これってどういうことだよ?」みたいに怒ってしまったりする。

もう1つは、不確かな情報で物事を進めがちになってしまいます。ベタな話なんですけれども、「偉い人プレゼン」みたいのがあるじゃないですか。偉い人とは、なかなかコミュニケーションが取れない。だって偉い人って忙しいですもん。予定がなかなか取れないです。怖いです。

ということで、何かプレゼンするとなったら、守りのためにあれもこれも準備してコミュニケーションしなきゃってことになりがちです。「こう言われたときのためにこのスライド入れておかなきゃ」「こういう返し来たときのためにAppendixにこれ入れなきゃ」みたいなことがまぁまぁありがちかなと思います。

そういう大きいのだけじゃなくても、ちょっとした返しが怖い、もしくはちょっとその話が聞けないからこういう準備もしなきゃ、みたいのはある話かなと思います。

だいたいこれで解決するんです。「その懸念、本人に確認した?」というふうに私よく聞くんですけれども、確認しちゃえば、怒られることもなく、「こういうことだよ」というような話が返ってきます。そうです。「聞け」なんです。聞いたらだいたい解決します。

でもでも、聞けないんですよね。聞けない事情ってありますよね。

コミュニケーション量を増やして心理的安全性を確保する

ということで、世の中ってこういうことを最近言われるわけですよ。コミュニケーション量が最大化する健全な状態で、何を言ってもアホだと思われない、思ったことをすぐ言える、尊厳がある批評ができるみたいな感じで、いわゆる心理的安全性ってやつです。もうこれは、アチコチで言われているのでみなさんご存じのワードかなと思います。

が、「いやさ、こんなの甘いじゃん。ぬるい環境でいい成果できるわけないっしょ」って。「しかも、なんか上の人も怖いし、下の人も怖いし、そんなのムリじゃん」。まぁまぁ、こういうのを信じられないというのは、わかるなぁと思います。

どちらかというと、いい状態というよりも、このコミュニケーション量が激減する状態を不健全と捉えると、心理的安全性の話はすごくわかりやすくなります。

例えばなんですけど、めっちゃ賛成しているのに最初からダメ出しするとかありますよね。配信のための事前準備に時間も心も消費する。中身よりも人間性がなぜか批判されちゃうなどなど、このへんは本当心が折れて非効率だし、不健全な状態はまったくいいことがないです。

何が言いたいかといいますと、この心理的安全性を確保するというところは、すべては中身の本質的な議論に集中するためです。「人間には尊厳、中身にはストイックさを」ということで、中身に対して緩くしろというのが、心理的安全性ではありません。

脳も体力も心のリソースもすべて成果をあげることにぶちこむんだと。余計なことにリソースを費やすのは本当にムダなんです。それだけでコミュニケーションの量が減る。コミュニケーションのタイミングが遅くなる。もう悪いことしかないですよね。

事業をよくするために、あくまで中身の議論に集中するために、心理的安全性というところにパワーを費やしていきます。というところで、不安の種はまずコミュニケーション量で取り除こう。これがすべての基本です。

信頼を勝ち取るには、3つの共有が大事

次はこれです。「最速で信頼を構築する」。反応が少ない。成果が見えない。気持ちがわからない。正直こういうメンバーは厳しいですよね。「厳しいなぁ、厳しいなぁ」って思うんですけど、油断すると誰しもすぐこうなります。

ということで、信頼を勝ち取るには、3つの共有が大事です。1つ目は作業と過程の共有。2つ目は気配の共有。3つ目は気持ちの共有です。

「作業と過程の共有」。これは、現状がわからない、もうそれだけですぐに不信感につながっちゃいます。

よくデザインでありがちなのが「完璧に仕上げてからめっちゃきれいな状態にして、寸分の隙もない状態でシェアするんや」。これは最近よく言われてるんですけど、ダメですね。あんまりよくないです。途中経過をシェアして、どういう過程なのか、今どういう状況なのかをシェアするほうが圧倒的に成果もよくなりますし、そこからパートナーや仲間からフィードバックを得られるので、よりよいです。

一番下の「一緒に作業する」というのがやはりよいです。報告とかそういうことではなく、最初から一緒に作業してしまえば、作業も過程も自然と共有されていきます。

Goodpatch Anywhereでは「宿題は出さない。もうそもそも作業の結果をログとして残していけ」という思想があります。打ち合わせって報告パターンでレビューをもらうみたいなことが多いんですけれども、そうではなくて、作業もその場で一緒にしてしまうことで、背景から成果からすべてを共有しようという思想です。

2つ目は「気配を共有」。いつ何をしているかわからない。もうそれだけで不信感につながってしまいます。予定がわからなくて、成果がわからなくて、反応が薄い。もう言葉にするだけでけっこうしんどいなというのを感じていただけるかなと思います。

意外といけるのは、忙しいこと、遅れていることを素直に報告する。しかも大きく遅れてしまう前に小さく遅れた時点で報告をしよう。これはむちゃくちゃ大事です。チーム内の仲間にもパートナーに対しても一緒です。そうすると、「じゃあチームとしてどうしていけばいいだろうね」というお話とか「なぜ遅れてるんだ?」という話が手遅れになる前にできます。

もちろん具体的に解決できるといういいこともあるんですけれども、「何で遅れているかわからない」というのとか「遅れているのか遅れていないのかわからない」ということが自体がすでにこの不信感につながります。なので、気配を感じさせるという意味でも、忙しいことも遅れてことも素直に報告するのがむちゃくちゃ大事です。

やはり一緒に作業をする時間というのも、この場合もベストとなります。だって、一緒に作業しているので、気配というのは自然と感じられますもんね。

一緒に作業をする時間を作る。お互いの背景がわかればムダな不信感は自然に消える

最後に「気持ちの共有」です。何を考えているかわからない。それだけで不信感につながってしまいます。

けっこうダメなのが、敬語と謝罪中心のコミュニケーションです。本当に何を考えているのかわからないです。「すみませんでした。ごめんなさい。すぐやります」「(いや、聞きてぇのはそこじゃねぇんだよ)」みたいなことが往々にしてあるかなと思います。

いいのは「思っていることを早めにシェアする機会を作る」です。思っていることを言えというのは、むちゃくちゃハードル高いんですけれども、ちゃんと思っていることを言える機会を作るというのが大事です。

これもベストなのは「一緒に作業する時間を作る」です。気持ちを共有するときって、機会を作るというより、無理やり作るのもそうなんですけれども、同じ時間を長い時間過ごすだけでクリアできるものがたくさんあります。なので、この場合も一緒に作業する時間を作るのがベストです。

ということで、これです。これがんばりましょう。一緒に作業する時間を作る。お互いの背景がわかると、自然とムダな不信感は消えていきます。Goodpatch Anywhereでは、チーム内で一緒に作業するというのはもちろん、パートナーのみなさまとも一緒に作業をしていきます。

さっきの宿題形式ではなくて、例えば体験設計とかデザインのアイデア出し会みたいなところも一緒に作業していきながら、どうしてそれをやっているのか、こちらが意図するところ、パートナーが意図するところもお互いの学びを使いながら、成果にすべてをぶちこんでいくことができます。

プロジェクトマネージメントに関する法則を活用し、「あるある」を集める

ではでは、最後です。次は最後です。ポイント3「不安を予測の範疇に含める」。

今までお話ししたいろいろなことってもうあるあるかなと思います。なんですけれども、プロジェクトの流れに飲み込まれてしまうと、あるあるで立ち止まれなくなってしまいます。ということで、チームの健康状態を常にモニタリングすることが大事で、チームをメタに把握して、流れに飲み込まれる前に「あるある」に対処していくことが大事です。

言葉にすると「プロジェクトのあるあるを文章や図で見える化して、それをチームにも見える化して浸透させて、あるべき姿と現状のギャップを見つけて、そうして予測ができていくとチームとしての作戦が立てられる」なんですけれども、この最初の起点の「あるあるを文章や図で見える化する」というのがなかなか難しいですよね。

いわゆるプロジェクトマネージメントでもリスクみたいなものを洗い出すみたいなことをやっていく必要はあると言われておりますが、「プロジェクトの初期にそんなにできないよね。リスクを洗い出すなんてなかなか難しいよね」というところで、最初のころはこの、プロジェクトマネージメントに関する法則というのが世の中にいっぱいあるので、これを使って「今現状プロジェクトとしてはどの位置にいるだろうね?」というのをモニタリングしたりとか、はたまた「プロジェクトの序盤にこういうものがありそうだよね」というものが最初のうちに予測できているとよさそうかなと思います。

今回お話ししている趣旨が、このプロジェクト初期は不確実な状態だよというのを予測の範疇に含めていただきたいなというのが趣旨になっております。なので、何かチーム内で不安が起こったとかプロジェクト内でコミュニケーションのぶつかり合いがあったみたいなときは、「あっ、もしかしてこれのことかな?」というように、予測の範疇に含めていただけるようになるかなと思います。

チームとしてデザインの力を100%発揮できる状態になってからがスタート

ちょっと困りごとなんですけれども、UXデザイナーというポジションの方いらっしゃいますか? これUXデザインあるあるなのかな。UXデザイナーはプロジェクトの初期って何も見えていない時期というのを知っているので、不安が少ないです。

これは何を言っているかというと、リサーチして、仮説を見つけて、ペルソナがいて、体験設計を描いて、コンセプトを作って、もう1回そのコンセプトを見直して、検証し直して、じゃあプロダクトとしてはどうしようかなみたいなところまで、UXデザインの教科書的に正しくステップを踏んでいくと、まぁまぁ、ものが見えるまで、もしくは何をやるべきかが見えるまでというのが時間がかかってしまいます。

なんですけれども、それをわかっているのはUXデザイナーだけなんですよ。「ものにたどり着く前にやるべきことがいろいろあるよね」みたいなことを思っているのはUXデザイナーだけなんやで。普通は予測できないんやで。ただ、しかもそのUXデザイナーだってプロセスが正しいかどうかわからないんやでと。

ということで、「先が見えないとかものが見えない不安というのは普通のことですよ。UXデザイナーはこの不安を自分ごととして捉えてプロジェクトを進める必要があるでしょう」というのは私の気持ちです。

もちろん、泥臭く着地点を置き直し続けて、見える化する必要があります。あるべき着地点とか求められる着地点はどんなプロジェクトでも日々変わっていきます。変化する前提で定期的に見直していくのが、泥臭いですけれども、大事になってきます。

そうやって小さな不安を取り除いていって、やっと事業の不確実性と戦うスタートラインに立てます。「チームとしてデザインの力を100パーセント発揮できるのはここから」は、デザインで解決できることの前に、チームとしてデザインの力を100パーセント発揮できる状態まで持っていかなきゃならないよねという話です。

これがないままデザイン、例えばそれこそUXデザインとかサービスデザインみたいにまるく言われていることをやろうとしたって、うまくはいきません。

気になったことはいつでも吐き出せる環境を作る

ここからは軽くGoodpatch Anywhereの取り組みを紹介していければと思います。いわゆる銀の弾丸みたいなものはないんですけれども、泥臭く積み重ねた小さな取り組みをたくさん紹介していければと思います。

まずはすごく小さなところでは、スーパーポジティブリアクションをするというところです。これSlackのスクショです。ぼんやりしていて見えないかなと思いますが、これは「今日からジョインする私です。よろしくお願いします」に対して、すっげえ量のリアクションが飛んでくるんですよね。

こんなレベルでまずは始めていきます。リアクションが必ずあって、かつポジティブさが感じられる状況を作る。これはぶっちゃけ無理やりやっているところもありますが、こうやってまずは空気を作っていきます。

次です。Scrapboxを使った日報で個人予定を記載。ちょっと大きくしましょうか。はい。

ある日の日報です。「この時間は稼働します。そのうち何時間稼働します。こんなことやります。最近食べたおやつでおいしかったのはこれです」みたいなことをちょっと共有するだけです。これで誰がいつ稼働してどんな作業をする予定なのかがざっくりとわかります。これは正しくわかるというよりも、わかる状況を作るというのが大事です。

次はそれをもうちょっと発展させたDiscord共同作業タイムです。これが一緒に作業するという文脈と関わってきます。

Discordってみなさんご存じでしょうか。ゲームの配信用の音声チャットツールですね。ここ「日本海」とか「ディナー会場」というのはそれぞれのチャットルームだと思ってください。

「この日本海にいるみなさんは、ずっとボイスチャットしてめちゃコミュニケーションとっているのかな?」というと、ぜんぜんそんなことはないです。たぶんこの3人はゴリゴリ自分の作業をしています。

ちょっと気になったときにすぐ吐き出せるとか、おはようを言ってちょっとその日にあったこととかをしゃべるとか、毎日思ったことや気づいたことを吐き出せる環境をこうやって作るだけで、コミュニケーションがめちゃくちゃ増えるということではないんですけれども、いつでも出せる環境を作るというところで効果を発揮します。静かでもいいのよ。そうなんです。

お互いの状況を複数のタイミング、複数のチャンネルで共有する

もう1つ似たような取り組みで、SlackBotでGoodとMoreを書くという取り組みをしています。アジャイル界隈の振り返りでやるレトロスペクティブでやるKPTのKeepとかProblemみたいなことを書くような場所ですね。

毎日夕方ぐらいにBotが「今日あった困ったことや悩み、もっとこうしたら改善しそうな点をメモしてみよう」というのが飛んできます。プロジェクトが危険な状態にあればあるほど、ここに大量のコメントが投下されていきます。これはたぶんわりと大変だったときだったんじゃないかなと思います(笑)。

もちろんGoodのほうも書いていきます。こうやって毎日思ったことや気づいたことを吐き出せる環境を作ります。

吐き出すタイミングというのは、同じように毎日ちょっとしたコミュニケーションでというものだけではなくて、毎週KPTをやったりとか週次の全体レビューをやったり、隔月では360度フィードバックのようなものをやったり、時には1on1をやったりもします。

このようなかたちで、状況をシェアするタイミングを複数のチャンネルで複数のタイミングで作っていきます。そうすると文脈が変わっていくので、フィードバックされる内容もその時々に応じてけっこう変わっていきます。ふだん出せないことも出せるようになったりします。

とくに毎週のKPT、これはパートナーとともに行うことも多いです。チームの課題って中に閉じてしまったりとか、クライアントとどうやって……こんなうまくいかないことがあるんだろうかみたいな話をもうクライアントとともに共有してしまって、チームごととして課題を見つけてクリアしていくということをやっていってます。

そんな取り組みをするにあたって大事なのは、メンバー自身の「自分で成功させるんだ!!」というマインドセットです。これはPMに依存してコミュニケーションのハブを作ってしまうとうまくいきません。メンバー個人がそれぞれの力を有効に使ってチームとして戦うことで、効果の最大化をすることを目指しています。

コミュニケーションはテクニックではなく量をこなすこと

というところで、そろそろ終わりです。まとめです。

プロジェクトの初期は不安の連鎖によりチームが不安定な状況になります。コミュニケーションを増やしましょう。最速で信頼を構築しましょう。不安を予測の範疇に含めましょう。そうすることで、やっと事業の不確実性と戦うスタートラインに立つことができます。

最後にですね、最近1つプロジェクトが終わりまして、そこで出てきた付箋を紹介します。

「コミュニケーションを諦めなかった(えらい)」。これは、プロジェクトの最初の頃にけっこうぶつかり合うメンバーがいました。もちろん中身についてやり方がうまく合わないだったりとかお互いのスキルの方向性の違いみたいなところでけっこうぶつかり合うことがありました。その2人とも「もういいよ。お前なんか知らねえ」というふうに関わりを断つのではなくて、そのぶつかり合いを「あるものだ。ここを超えるべきものだ」ということを意識して、それこそPMがハブになるだけではなくて、個人が自分でやるべきだと思ってコミュニケーションを諦めなかった。その結果、そのメンバー同士は今すごくいい関係でプロジェクトを回してくれています。

というところで、コミュニケーション単体のテクニックではなくて、その量をこなすところも大事だなというエピソードで紹介しました。

「世界平和」というところで(笑)、はい、これで私のお話を終わります。どうもありがとうございました。